- 作成日 : 2026年10月28日
車の費用を経費にするのはずるい?減価償却や家事按分について解説
車の経費計上はずるい制度?
- 経費で減るのは税負担であり車代ではない
- 購入費は減価償却で複数年に分けて計上
- 私用兼用は走行距離で事業分を按分する
Q. 高級車や中古車も経費にできる?
A. 業務使用の実態があれば車種問わず対象になり得ますが、私用分は除外し、使用記録で根拠を示す必要があります。
「個人事業主は車を経費で買えてずるい」「社長は高級車をタダで買える」と感じたことはありませんか。車の経費計上は、事業に使う費用を所得の計算で差し引く仕組みであり、購入代金が戻ってくる制度ではありません。
本記事では、車を経費にできる条件、家事按分やローン・リース代の扱いなどを解説します。
車を経費にすると「ずるい」と感じられるのはなぜ?
事業用の車にかかる費用を差し引いて税額を計算できるため、購入者だけが得をしているように見えることが理由です。しかし、経費にできることと、支払ったお金が返ってくることは別です。まずは「経費にする」という言葉の意味を理解し、会社員と個人事業主の所得計算の違いを整理しましょう。
経費は車代が戻る制度ではない
経費計上によって減るのは、原則として経費に対応する税負担であり、購入代金そのものではありません。 個人事業主の事業所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
たとえば、その年に認められる車関連の経費が50万円で、その経費によって減る所得にかかる税率を合計30%と仮定すると、税負担の軽減額は15万円です。これは仕組みを示す試算で、実際の税額は所得や控除などによって異なります。
車代の支払いは購入者が負担するため、節税だけを目的に不要な車を買うと、手元資金が減ってしまいます。
参考:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁
個人事業主と会社員は所得の計算方法が異なる
個人事業主は事業にかかった実際の経費を差し引く一方、会社員は原則として、給与収入に応じた「給与所得控除」を差し引きます。 給与所得控除は、勤務に伴う費用を概算で考慮する仕組みであり、実際の支出額を積み上げて計算するものではありません。
たとえば、年間の給与収入が400万円の場合、給与所得控除は「400万円×20%+44万円=124万円」です。給与所得は「400万円-124万円=276万円」となり、ここから基礎控除や社会保険料控除などを差し引いて、税額計算の対象となる所得を求めます。車を購入していなくても、仕事の費用を実際に124万円支出していなくても、この給与所得控除は受けられます。
一方、会社員が通勤用の車を購入しても、その購入代金や減価償却費を、給与所得控除とは別に差し引くことはできません。ただし、通勤に使うガソリン代や高速道路料金などは、勤務先が証明した合理的な経路・方法による支出であれば、「特定支出控除」の対象に含められます。
特定支出控除で追加して差し引けるのは、対象となる年間支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1を超えた部分です。給与収入400万円なら基準額は62万円なので、対象の通勤費や研修費などが合計80万円あった場合、追加の控除額は「80万円-62万円=18万円」となります。18万円の税金が戻るという意味ではなく、給与所得からさらに18万円を差し引く仕組みです。
通勤費について適用を受けるには、勤務先の証明書や領収書などをそろえて確定申告します。
会社から非課税の通勤手当などで補填された部分は、特定支出に含められません。
個人事業主や法人は高級車も経費にできる?
業務で使う実態があれば、高級車も経費計上の対象になり得ます。ただし、高額な車を買ったことや、会社名義で契約したことだけで認められるわけではありません。何の業務に使うのか、私生活でも利用しているのかを確認します。また、個人事業主の家事按分と、法人による役員の私的費用の負担は、分けて考えましょう。
車種や価格よりも業務との関係を確認する
車が経費の対象になるかは、事業との関係や実際の使用状況で判断します。 取引先への訪問、商品の配送、仕事道具の運搬などに使う車は、事業に関係する支出として検討できます。
高級車だから直ちに対象外になるわけではありませんが、「社長らしく見せたい」といった説明だけで業務使用を証明できるとは限りません。訪問先や使用頻度などの記録を残し、車種にかかわらず、私的な利用と区別して説明できる状態にしておきましょう。
法人名義でも役員の私用分は別に扱う
会社が役員の個人的な車代や維持費を負担すると、役員への給与として扱われる場合があります。 法人名義の契約や会社の口座からの支払いだけで、すべて事業上の費用になるわけではありません。
役員が受ける経済的な利益には、給与としての課税が生じることがあります。また、支給方法や金額によっては、会社の税務上の経費である「損金」にできない場合もあります。社用車の使用範囲や、私用時の費用負担を社内で決めておくと、処理を整理しやすくなります。
車の購入費は一括で経費にできる?
車の購入費は、原則として資産に計上し、減価償却によって年ごとの経費へ配分します。同じ価格でも、新車か中古車か、いつ仕事で使い始めたか、どの償却方法を使うかによって、その年に計上できる額は変わります。取得価額が少額の場合には、一括で経費にできる扱いもあるため、通常の減価償却と区別して確認しましょう。
新車は耐用年数と使用月数に応じて減価償却する
一般的な新車の法定耐用年数は、普通乗用車が6年、軽自動車が4年です。 運送事業用や貸自動車などは別の区分になるため、用途も確認します。
たとえば、個人事業主が取得価額200万円の新車の軽自動車を定額法で償却すると、1年分は「200万円×0.25=50万円」です。10月から業務に使い始めた年は3か月分の12万5,000円となり、私用兼用なら、さらに事業分だけを経費にします。
購入代金を支払っただけで、年間分の減価償却費を計上できるわけではありません。
中古車でも購入年に全額を経費にできるとは限らない
中古車は、新車より短い耐用年数で減価償却できる場合があります。 使用可能期間を見積もるのが難しい場合には、経過年数を使う簡便法を利用できます。ちょうど4年使用された普通乗用車なら、「(6年-4年)+4年×20%=2.8年」から1年未満を切り捨て、耐用年数は2年です。
ただし、耐用年数2年と「購入年に全額経費」は別です。個人事業主が通常用いる定額法では期間を分けて償却し、年の途中から使う場合は月割りになります。「4年落ちなら誰でも一括で落とせる」とは考えないようにしましょう。
40万円未満なら少額資産の特例を使える場合がある
一定の要件を満たす青色申告の個人事業主は、取得価額10万円以上40万円未満の車を、一括で経費にできる場合があります。 2026年4月1日以後の取得分から、従来の「30万円未満」が「40万円未満」へ引き上げられました。
この特例の対象期間は2029年3月31日までで、年間の合計限度額は300万円です。取得に加え、業務に使用することなどの条件も確認します。
40万円未満かどうかは、家事按分前の取得価額で判断します。50万円の車を60%仕事に使っても、「事業分が30万円だから対象」とはなりません。また、取得価額40万円ちょうどの車は対象外です。
プライベートでも使う車は何割を経費にできる?
仕事と私生活で兼用する車は、事業に使う部分だけを経費にします。この区分を「家事按分」といい、一律に何割まで認められるという基準はありません。走行距離など、実際の使用状況を表す数字から合理的な割合を算出します。領収書だけでは業務の割合までは分からないため、日頃の運行記録と合わせて管理しましょう。
走行距離などを基準に家事按分する
車の家事按分には、「業務での走行距離÷総走行距離」などの合理的な基準を使います。 年間の総走行距離が1万キロ、そのうち業務分が6,000キロなら、事業割合は60%です。
1年分の減価償却費が50万円であれば、事業分として経費にできる額は30万円となります。計算の根拠を残すため、業務での利用日、訪問先、目的、走行距離を記録し、年間の総走行距離も確認します。「知人が7割だから」といった理由だけで割合を決めるのは避けましょう。
用途が明確な支出は取引ごとに区分する
業務用か私用かを直接区分できる費用は、その取引の実態に応じて計上します。 取引先訪問だけに使った高速道路料金や駐車料金は、その全額を経費にできます。一方、家族旅行の料金は対象外です。
保険料や減価償却費のように、仕事と私生活の両方に共通する費用は、合理的な割合で按分します。同じ車に関する支出でも、すべてに一律の割合を掛けるのではなく、用途を区別できるかどうかで処理を分けます。
車の維持費やローン・リース代は経費になる?
燃料代や保険料などの維持費も、事業に使う分は経費の対象です。車に関する支払いなら何でも同じ処理になるわけではありません。ローンの元金返済は借入金の返済であり、カーリースも契約内容によって扱いが異なります。
燃料代・車検・保険料などは事業分を計上する
ガソリン代、通常の点検・整備費、保険料、自動車関連の税金などは、事業に対応する分を経費にできます。 勘定科目は支出の性質に合わせて選び、継続して同じ基準で処理しましょう。
| 支出の例 | 勘定科目の例 |
|---|---|
| ガソリン代 | 車両費、旅費交通費 |
| 高速道路料金・一時的な駐車料金 | 旅費交通費 |
| 通常の車検整備費・修理代 | 車両費、修繕費 |
| 自賠責保険料・任意保険料 | 損害保険料 |
| 自動車税・自動車重量税 | 租税公課 |
車検時の税金や保険料は、その性質に応じて区分します。また、車の価値を高める改造費などは資産計上となる場合があり、交通違反の罰金などは仕事中に生じても必要経費にはできません。
ローン元金ではなく減価償却費と利息を計上する
カーローンの元金返済は経費にせず、車の減価償却費と、借入利息の事業分を計上します。 ローン購入でも、車の取得価額を資産として処理する点は現金購入と同じです。
毎月の返済額をそのまま経費にすると、元金部分まで費用に含めてしまいます。返済予定表で元金と利息を分け、車の減価償却は別に計算しましょう。減価償却費と元金返済を両方経費にする二重計上にも注意が必要です。
カーリースは契約内容によって税務処理が変わる
カーリースは、月額料金を必ずそのまま経費にできるとは限りません。 通常の賃貸借であれば、使用期間に対応する料金の事業分を経費にします。
税務上売買として扱われるリースは、原則として車を資産計上し、減価償却を行います。所有権が移転しない一定のリースでは、リース期間を基準とする償却方法を使います。「購入なら減価償却、リースなら全額経費」と単純に分けず、契約条件を確認しましょう。
車の経費が税務調査で否認されないようにするには?
購入や支払いの事実だけでなく、業務に使ったことと、計上額の計算根拠を示せる状態にします。領収書があっても、私用の支出まで経費にできるわけではありません。契約書、請求書、運行記録を関連付け、減価償却や家事按分の計算過程も残しましょう。
領収書と運行記録を合わせて保存する
車の経費には、支払内容を示す書類と、業務使用を示す記録の両方を残します。 購入契約書や請求書に加え、燃料代・修理代の領収書、走行距離を記した運行記録を保存しましょう。
固定資産台帳には取得価額、使用開始日、耐用年数などを記録し、減価償却費を確認できるようにします。書類は申告区分や種類に応じた期間保存し、メールなどで受領した請求書・領収書は、電子取引データの保存ルールに沿ってデータで残します。
私用分の水増しを避け、誤りがあれば修正する
経費を過大に計上した結果、申告した税額が少なかった場合は、修正申告で訂正します。 私的な旅行などの支出を仕事の費用に付け替えることは認められません。
税務調査で経費が否認されると、不足する税額のほか、状況に応じて過少申告加算税や延滞税が生じます。単純な計算ミスでも、気付いた時点で内容を確認しましょう。高額な車の購入や、事業と私用の線引きに迷うケースは、申告前に税理士へ相談すると安心です。
会社員でも副業で使う車は経費にできる?
会社員でも、副業が事業所得や業務に係る雑所得に当たれば、車の費用のうち副業に使った分を経費にできます。 ただし、購入代金を一括で差し引けるとは限らず、本業の通勤や私用分の除外、赤字の扱いにも注意しましょう。
副業に使う車の購入費や維持費は経費にできる
副業の取材や商品配送に使うガソリン代、駐車料金などは、副業の収入から差し引けます。 車の購入代金は、原則として減価償却により複数年に分けて経費にします。購入した年に全額を計上できるわけではありません。
本業の通勤や私用分は副業の経費にできない
兼用車は、本業の通勤や私用分を除き、副業に使った分だけを計上します。 年間走行距離の30%が副業用なら、年間の減価償却費50万円のうち15万円を経費にする計算です。按分の根拠として、利用日・目的・走行距離を記録しましょう。
雑所得の赤字は給与所得と相殺できない
雑所得の赤字は、給与所得と相殺する「損益通算」ができません。 副業収入30万円に対して経費40万円でも、赤字10万円を給与所得から差し引けません。事業所得の赤字は原則として損益通算できます。所得区分は自由に選べず、業務の実態などに基づいて判断します。
車の経費は、事業分を正しく計上しよう
「車を経費にできるのはずるい」と感じられることがありますが、経費計上は車の購入代金が返ってくる制度ではありません。個人事業主や法人は、車の購入費やガソリン代、保険料などのうち、事業に対応する部分だけを所得や利益から差し引きます。購入費は原則として減価償却し、私用と兼用する場合は走行距離などを基準に家事按分します。
会社員でも副業で車を使えば経費にできる場合がありますが、本業の通勤分や私用分は対象外です。節税だけを目的に購入すると手元資金が減るため、業務上の必要性、維持費、売却時の税務まで含めて判断しましょう。
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