- 作成日 : 2026年10月28日
経費とは?経費になるもの・勘定科目・仕訳を解説
経費とは事業の売上獲得・運営にかかる費用で、私的支出や借入金の返済は含まれません。
- 領収書より「事業との関係」が判断基準
- 自宅・スマホ代は事業割合分のみ計上可
- 高額設備は減価償却で複数年に分ける
Q. 「経費で落とす」と支払額は全額戻る?
A. 戻りません。課税所得が減るだけで、10万円の経費計上で実際の税負担軽減は税率分(例:2万円)にとどまります。
経費とは、事業を行うためにかかる費用です。文具代や通信費、従業員の給与などが該当しますが、支払ったお金がすべてその年の必要経費になるわけではありません。
本記事では、経費になるもの・ならないものから、勘定科目、仕訳、領収書やインボイスの扱いなどを解説します。
経費とは?費用・必要経費・損金との違いは?
経費とは、売上を得るための活動や、事業の運営にかかる費用です。 日常の会計業務では広く使われる言葉ですが、税金の計算では、個人の「必要経費」と法人の「損金」を区別します。会計上の費用と税務上差し引ける金額は、必ずしも一致しません。
経費は事業活動にかかる費用
経費には、商品の販売やサービスの提供に直接かかる費用だけでなく、事業を維持する費用も含まれます。 店舗の家賃や広告費など、その支出だけでは売上に直結しないものも対象になり得ます。個人事業主の事業所得は、原則として「総収入金額-必要経費」で計算します。支出と経費は同じではありません。設備の購入や借入金の返済など、その時点では全額を費用にしない支出もあります。
参考:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁
必要経費・損金は税金の計算に使う概念
「費用」は会計上の概念で、「必要経費」「損金」は税務上の概念です。 個人事業主は所得税の計算で必要経費を差し引き、法人は原則として「益金-損金」で課税対象の所得を計算します。
法人では、決算書上の利益に税務上の調整を加えます。たとえば、会計上は交際費として計上していても、税務上の限度額を超える部分は損金にできない場合があります。「帳簿に費用として記録したから、必ず税金が減る」とは限りません。
「経費で落とす」は支払額が全額戻ることではない
「経費で落とす」とは、事業にかかった費用として計上することであり、購入代金の払い戻しではありません。 税務上も認められれば、課税対象の所得が減ります。
たとえば、10万円の支出を全額必要経費にでき、税負担への影響を一律20%と仮定すると、軽減額は2万円です。10万円が戻るわけではなく、差し引き8万円の負担は残ります。実際の軽減額は所得や税率などで変わるため、節税だけを目的とする不要な買い物は資金を減らしてしまいます。
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経費になるもの・ならないものは?
事業のためだけに使った費用は経費になり、私生活のために使った費用は経費になりません。 自宅家賃やスマートフォン料金など、仕事と私生活の両方に関係する支出は、事業で使用した部分だけを経費にします。領収書の有無だけではなく、支払目的や事業との関係を説明できるかどうかで判断します。
経費になるもの|文具代・通信費・交通費・事務所家賃など
事業の売上を得るため、または事業を運営するために支払った費用は、原則として経費になります。業務用の文具代やインターネット料金、取引先を訪問するための交通費、事務所の家賃などです。
経費は、支出の内容に応じて「消耗品費」「通信費」などの勘定科目で分類します。代表的な経費と勘定科目は、次のとおりです。
| 勘定科目の例 | 経費になる事業用支出の例 |
|---|---|
| 消耗品費 | 文具、コピー用紙、少額の事務用品 |
| 通信費 | 業務用の電話料金、インターネット料金、郵送料 |
| 旅費交通費 | 商談先への電車代、出張時の交通費・宿泊費 |
| 地代家賃 | 事務所、店舗、倉庫などの賃料 |
| 外注費 | デザイン制作、システム開発などの業務委託費 |
| 給料賃金 | 従業員に支払う給与や賃金 |
| 広告宣伝費 | ウェブ広告の掲載料、チラシの制作費 |
| 接待交際費 | 取引先との会食費や事業上の贈答品代 |
同じ品物でも、用途によって扱いが変わります。事業で使うコピー用紙は経費になりますが、家庭で使うために購入したコピー用紙は経費になりません。勘定科目の選び方に絶対的な正解があるとは限りませんが、同じ内容の支出は継続して同じ科目に分類すると、帳簿や決算書を比較しやすくなります。
一部だけ経費になるもの|自宅家賃・スマホ代・車両費など
仕事と私生活の両方に使っている費用は、事業で使用した割合に相当する部分だけが経費になります。 自宅兼事務所の家賃、私用と共用しているスマートフォン料金、自家用車の維持費などが代表例です。
このように、支出を事業用と私用に分ける処理を「家事按分」といいます。たとえば、月額10万円の自宅家賃について、使用面積や利用時間から事業で使っている割合を30%と説明できる場合、月3万円を必要経費として計上します。
| 支出の例 | 家事按分の基準例 |
|---|---|
| 自宅家賃 | 事業で使う部屋の面積や使用時間 |
| 電気料金 | 事業用スペースの面積や使用時間 |
| スマートフォン料金 | 業務通話・通信の利用割合 |
| インターネット料金 | 業務で使用した時間や頻度 |
| 車両費 | 事業用と私用の走行距離 |
| ガソリン代 | 事業目的で走行した距離の割合 |
家事按分の割合に「一律50%まで」といった共通の基準はありません。使用面積、利用時間、走行距離、通話記録など、支出の性質に合った基準を用い、計算根拠を説明できるようにしておきます。
経費にならないもの|生活費・所得税・住民税・借入金元本など
事業と関係のない私的な支出や、税法上必要経費にできない支出は、事業用の口座やカードで支払っても経費になりません。 個人事業主本人の生活費、私的な食事代や旅行代、所得税・住民税などが該当します。
代表的な経費にならない支出は、次のとおりです。
| 経費にならないもの | 経費にならない理由 |
|---|---|
| 個人事業主本人の生活費 | 事業ではなく私生活のための支出であるため |
| 家族との私的な食事代・旅行代 | 売上や事業運営との関係がないため |
| 所得税・住民税 | 個人の所得に対して課される税金であるため |
| 税金の延滞税・加算税 | 税務上、必要経費への算入が認められていないため |
| 交通違反などの罰金 | 法令違反に対する制裁として支払うものであるため |
| 借入金の元本返済 | 費用ではなく、借入金という負債を減らす取引であるため |
| 事業主本人への給与 | 個人事業主が自分自身に支払う給与という考え方がないため |
借入金については、元本の返済額は経費になりませんが、事業用借入金にかかる利息は「支払利息」などとして必要経費にできます。
また、税金がすべて経費にならないわけではありません。個人事業税や、事業用の土地・建物・設備にかかる固定資産税、自動車税の事業使用分などは、必要経費にできる場合があります。
経費はいくらまで?高額な買い物は一括計上できる?
経費全体に共通する上限はありませんが、費用の種類や資産の金額に応じたルールがあります。 高額な設備などは、支払った年に全額を経費にせず、複数年に分けるのが原則です。
経費全体の上限と個別の税務上の制限は異なる
「売上の何%まで」「年間何万円まで」という経費全体の一律の上限はありません。 ただし、法人の交際費などには、損金算入の制限があります。
たとえば、法人が支出する取引先との飲食費は、1人当たり1万円以下で、相手先・人数などの所定事項を記録すれば交際費等の範囲から除外できます。1万円を超えても直ちに全額が損金不算入になるわけではなく、法人の規模などに応じたルールで判定します。
設備は原則として減価償却で費用を分ける
長期間使用する設備や車両などは、原則として資産に計上し、減価償却で各年の費用に配分します。 現金を支出したことだけでは、全額をその年の経費にできません。
通常、取得価額10万円未満の減価償却資産は、業務に使用した年に全額を経費にできます。10万円以上20万円未満では、一定の条件のもとで3年間に均等配分する「一括償却資産」の処理も選べます。土地は減価償却の対象ではありません。
一定の青色申告者は40万円未満の資産に特例を使える
2026年4月1日以降に取得する10万円以上40万円未満の減価償却資産は、一定の青色申告の中小企業者・個人事業主であれば、一括計上の特例を利用できます。 2026年3月31日までの取得分は30万円未満が対象です。
適用期限は2029年3月31日で、年間の対象合計額は原則300万円までです。たとえば35万円の業務用パソコンも、対象事業者・事業への使用・申告手続などの要件を満たせば、使用した年に全額を経費にできます。
金額は採用する税込・税抜経理に応じて判定し、免税事業者は税込金額を使います。すべての事業者に40万円未満の一括計上が認められるわけではありません。
参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
経費はいつ計上し、どう仕訳する?
経費は、原則としてお金を払った日だけでなく、費用の発生や支払義務の確定に基づいて計上します。 未払いの費用を記録する一方で、翌期分の前払いや売れ残った商品は区分します。請求書の受領、カード決済、口座引落しが別の日になる取引でも、一つの支出を重複して経費にしないよう、取引の流れに沿って記帳します。
原則として支払日ではなく費用が確定した時期に計上する
経費の計上時期は、原則として支払義務が生じ、その原因となる取引が完了し、金額を合理的に計算できる時点で判断します。 請求書の発行日だけで決めるものではありません。
たとえば12月決算の法人が、2026年12月に依頼したデザインの納品を受け、代金も確定した場合、支払いが2027年1月でも原則として2026年12月期の費用です。未払いのまま決算を迎える費用も、計上漏れがないか確認します。
前払いと期末在庫は当期の費用から区分する
翌期のサービス分を前払いしても、原則としてその全額を今期の費用にはしません。 対応する期間が来るまで前払費用として扱います。ただし、一定の短期前払費用には例外があります。
商品の仕入れも、支払った金額がそのまま当期の売上原価になるわけではありません。売れ残った商品を期末在庫として残し、売上原価は「期首在庫+当期仕入-期末在庫」で計算します。年末に大量購入するだけでは、全額を当年の経費にはできません。
現金払いとカード払いを仕訳で区別する
カード払いでは、購入時に費用と未払金を計上し、口座引落時には未払金を減らします。 引落時に再び経費を計上すると二重計上になります。税込3,300円の文具を購入し、すぐ使用した場合の仕訳例です。税込経理を前提とし、現金払いとカード払いは別々の購入例として示します。
| 支払方法・記帳時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 現金で購入した時 | 消耗品費 3,300円 | 現金 3,300円 |
| カードで購入した時 | 消耗品費 3,300円 | 未払金 3,300円 |
| カード代金の口座引落時 | 未払金 3,300円 | 普通預金 3,300円 |
領収書やインボイスがなくても経費にできる?
領収書やインボイスがないことだけで、その支出が必ず経費の対象外になるわけではありません。 事業との関連や取引の実態を証明できるかが判断の前提です。
領収書以外の資料でも取引を裏付けられる
請求書や振込記録などでも、支出の内容を確認できる場合があります。 レシートも、日付・支払先・品目・金額などが分かれば経費の証拠になります。
領収書を紛失した場合は再発行を相談し、難しければ契約書、注文履歴、振込記録などを組み合わせて取引を説明します。領収書が出ない支出は、出金伝票などに相手先や支払目的を記録します。ただし、自作の記録さえあれば必ず認められるわけではありません。
必要経費と消費税の仕入税額控除は別に判断する
インボイスがなくても、事業上の支出は必要経費や損金になり得ます。 インボイスの有無が主に関係するのは、消費税の仕入税額控除です。
仕入税額控除は、売上にかかる消費税から、仕入れや経費にかかる消費税を差し引く仕組みです。一般課税では、原則として帳簿と適格請求書等を保存します。適格簡易請求書の要件を満たすレシートも使えるため、「請求書」という名称の書類だけが対象ではありません。
経費の帳簿・請求書はどう保存する?
経費の帳簿や請求書は、所定の期間、取引内容を確認できる状態で保存します。 法人は原則7年で、一定の欠損金が生じた事業年度などは10年です。個人は申告方法や書類によって期間が異なり、消費税の保存義務も確認します。
個人事業主の保存期間は原則5年または7年になる
個人事業主の帳簿・書類は、申告方法と書類の種類によって5年または7年保存します。 青色申告の帳簿や決算関係書類は7年、請求書など一部の取引書類は5年です。
青色申告の領収書などは原則7年ですが、一定の所得要件を満たす場合は5年になります。白色申告では、法定帳簿は7年、請求書や領収書などは5年です。消費税の仕入税額控除に使う請求書等には、原則7年の保存義務があります。
電子請求書はデータのまま保存する
メール添付やウェブサイトから受け取った電子請求書は、電子データのまま保存します。 紙に印刷するだけでは、電子取引データの保存に代えられません。
日付・金額・取引先による検索や、改ざんを防ぐ措置など、適用される要件に対応します。一定の事業者には検索要件等の緩和・猶予措置がありますが、電子データ自体の保存は残ります。紙で受け取った領収書は紙のまま保存でき、スキャン後に廃棄する場合はスキャナ保存の要件を満たします。
会社員の経費精算と個人事業主の経費は何が違う?
会社員の経費精算は、会社のために立て替えたお金を払い戻してもらう手続きです。 個人事業主が自分の事業所得から必要経費を差し引く処理とは区別します。会社員が仕事用の物を買ったからといって、自由に給与所得から差し引けるわけではありません。
経費精算は会社の費用の立替払いを清算する手続き
社員が会社の業務に必要な費用を立て替えた場合、社内の規程に沿って経費精算を行います。 たとえば業務用の文具を購入し、会社が実費を払い戻すケースです。
支払日、金額、用途、取引先を申請し、領収書等を添えて承認を受けます。これは会社が負担すべき支出の清算であり、税務署から税金の還付を受けることではありません。会社側では、自社の支出であると確認できる精算書類も管理します。
給与所得は原則として給与所得控除で計算する
会社員の給与所得は、原則として給与収入から給与所得控除を差し引いて計算します。 個人事業主のように、仕事の支出を自由に必要経費として差し引く制度ではありません。
ただし、通勤費や研修費などの一定の特定支出が、給与所得控除額の2分の1を超える場合は、超えた部分を控除できる「特定支出控除」があります。適用には、支出内容に応じた証明と確定申告などの要件を満たします。
経費の判断は事業との関係・計上時期・証拠をそろえて行いましょう
経費とは、事業の収益獲得や運営にかかる費用です。必要経費として扱うには、支出と事業との関係を確認し、私用分を区分したうえで、適切な時期に計上します。高額な設備は減価償却や少額資産の特例を確認し、領収書・請求書は定められた方法で保存しましょう。
また、経費計上と消費税の仕入税額控除、会社員の経費精算は別の仕組みです。「経費にできるか」だけでなく、手元資金がいくら減るかも見ながら支出を判断しましょう。
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