- 作成日 : 2026年10月28日
消費税の経過措置とは?食料品の税率1%への引下げに関連する請求書・インボイスの対応を解説
消費税の経過措置とは、2027年4月以降も一定の定期供給契約や通信販売に8%を適用する特例です。
- 飲食料品は2027年4月〜2029年3月が1%
- 経過措置に該当する取引は8%が継続
- 返品・値引きは元の取引税率で処理する
Q. 経過措置の対象になる取引はどれですか?
A. 2027年1月1日前に締結した定期供給契約で4月前に代金受領済みのもの、および同日前に販売条件を提示し4月前に申込みを受けた通信販売が対象です。
2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品にかかる消費税率を8%から1%へ引き下げる措置が予定されています。一定の定期供給契約や通信販売には、従来の8%を適用する経過措置が設けられる予定です。
この記事では、消費税の経過措置とインボイス・請求書の対応について解説します。
食料品の消費税はいつから1%に引き下げられる?
飲食料品の消費税率は、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現行の8%から1%へ引き下げられる予定です。 外食や酒類などは対象外で、標準税率10%が続きます。新聞についても今回の1%への引下げ対象には含まれません。
飲食料品は2027年4月1日から2年間1%になる
税率1%が適用されるのは、原則として2027年4月1日から2029年3月31日までに行われる飲食料品の譲渡です。税率1%の内訳は、国税である消費税率0.78%と地方消費税率0.22%相当の合計です。対象となる飲食料品の範囲は、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品と基本的に同じです。
スーパーなどで販売される食品、テイクアウト、出前・宅配などは原則1%となる一方、店内飲食などの外食、酒類、医薬品などは10%が続きます。
新聞は1%ではなく8%が続く
現在8%の軽減税率が適用されているものが、すべて1%になるわけではありません。定期購読契約に基づいて週2回以上発行される新聞は、引下げの対象外で8%が続く予定です。制度実施期間中は、代表的には「飲食料品1%」「対象となる新聞8%」「標準税率対象10%」という3つの税率を扱う場面が生じます。
飲食料品と新聞を同時に取り扱う小売店や、複数税率の商品を請求する事業者は、商品マスタや会計システム、レジの税率区分を分けて管理することになります。
消費税の税率引下げに経過措置はある?
2027年4月1日以後の飲食料品は原則1%ですが、一定の定期供給契約や通信販売については、経過的な取扱いとして8%が適用されます。これは「好きなほうの税率を選べる」制度ではありません。要件に該当する取引には8%が適用されます。契約上1%への変更を前提としていることが確認できる場合などは、経過措置から外れて1%となります。
一定の定期供給契約には8%が適用される
2027年1月1日前に締結した一定の定期供給契約に基づき、2027年4月1日前に代金を受け取っている場合、その受領済み部分については4月1日以後の供給でも8%が適用されます。対象になるのは、不特定かつ多数の者へ定期的・継続的に飲食料品を供給する契約などです。代金をあらかじめ支払い、季節の食品が毎月届く定期便などが想定されています。
ただし、契約書などに「2027年4月1日以後は税率1%による」と定めている場合や、税率変更後の税込価格をあらかじめ設定している場合は、1%を前提に契約しているため、この経過的な8%の取扱いは適用されません。
一定の通信販売にも8%の経過措置がある
2027年1月1日前に販売条件を提示し、同年4月1日前に申込みを受けた一定の通信販売では、4月1日以後に商品を引き渡しても8%が適用される場合があります。
販売条件の提示には、カタログ、チラシ、新聞、テレビ、インターネットなどを通じて広く販売条件を示す方法が含まれます。例えば、税率8%を前提としたギフトカタログを2026年中に提示し、2027年3月中に注文を受け、4月以後に商品を発送するケースなどが該当し得ます。
一方、「2027年4月1日以後は税率1%」と販売条件に明記されているなど、1%への変更を前提としている場合は1%となります。
2027年4月1日をまたぐ取引の消費税率はどう判断する?
原則として、飲食料品の譲渡をいつ行ったかによって8%と1%を判定します。契約日や代金の支払日だけで一律に税率が決まるわけではありません。3月に仕入れた商品を4月に販売する場合や、売り手と買い手で売上・仕入れの計上基準が異なる場合などでは、税率の判断を間違えないよう取引ごとに確認します。
3月までに仕入れた商品を4月以後に販売すると仕入れ8%・売上1%になる
2027年3月31日までに仕入れた飲食料品には8%が適用され、その商品を4月1日以後に販売した場合は、売上げに1%が適用されることがあります。仕入れと販売の税率は必ず同じになるわけではありません。例えば、スーパーが3月30日に商品を8%で仕入れ、4月2日に消費者へ販売した場合、仕入れは8%、売上げは原則1%となります。
このため、税率引下げ直後には「8%で仕入れた在庫」と「1%で仕入れた在庫」が存在することもあります。会計処理では、実際の取引時に適用された税率に基づいて処理します。
売り手と買い手の計上時期が違う場合は売り手の適用税率を確認する
売り手と買い手で売上・仕入れの計上基準が異なる場合、買い手は原則として売り手が適用した税率に基づいて仕入税額控除を行います。たとえば売り手が出荷基準で2027年3月30日に8%の売上げとして処理し、買い手が検収基準で4月2日に仕入計上した場合でも、売り手が発行したインボイスに8%と記載されていれば、買い手もその税率を基礎として仕入税額控除を計算します。
請求書などから適用税率が明らかでない場合には、取引先へ確認して処理することになります。
税率引下げ後のインボイスや請求書はどう書く?
税率1%の飲食料品を販売した場合、インボイスでは適用税率を1%とし、消費税額等も1%で計算します。インボイスそのものの記載項目が新しく増えるわけではありません。飲食料品は引き続き「軽減税率の対象品目」に位置付けられるため、商品ごとに軽減税率対象であることを示し、税率別の金額と消費税額を区分します。
税率1%でもインボイスの基本的な記載事項は変わらない
消費税率が1%になっても、適格請求書の基本的な記載事項は従来と同じです。通常のインボイスでは、発行事業者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、軽減税率対象である旨、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等、書類を受け取る事業者の氏名または名称などを記載します。
また、税率1%の商品について「1%対象品」といった新しい識別表示を商品ごとに付ける必要はなく、「軽減税率対象」である旨を表示すれば足ります。
1%・8%・10%が混在する請求書も発行できる
税率変更の前後をまたぐ請求では、1枚のインボイスに1%・8%・10%の取引を記載することもできます。税率ごとの対価と消費税額等を明確に区分して記載します。たとえば3月16日から4月15日までを1回の請求期間としている会社では、3月分の飲食料品は8%、4月分の飲食料品は1%、雑貨などは10%となるケースがあります。
この場合は、同じ請求書内で「1%対象」「8%対象」「10%対象」を分け、それぞれの対象金額と消費税額等を記載できます。
一方、3月分と4月分で請求書そのものを分けて発行する方法も認められています。
| 取引 | 適用税率の例 |
|---|---|
| 2027年3月の飲食料品 | 8% |
| 2027年4月以後の飲食料品 | 1% |
| 雑貨など標準税率の商品 | 10% |
| 定期購読契約による対象新聞 | 8% |
| 経過措置に該当する一定の飲食料品取引 | 8% |
税率引下げ後に返品や値引きがあった場合は何%で処理する?
返品や売上代金の返還では、返品した時点の税率ではなく、もとの販売に適用された税率を基礎として処理します。 2027年4月以後の返品だからといって、一律に1%で処理するわけではありません。
8%で販売した商品を4月以後に返品された場合も8%で処理する
2027年3月31日以前に8%で販売した飲食料品が、4月1日以後に返品された場合は8%に基づいて税額を調整します。たとえば3月25日に税込10,800円で販売した商品が4月10日に返品されたケースでは、返品時点では飲食料品の税率が1%になっていても、元の売上げは8%です。売上げに係る対価の返還等も8%に対応するものとして処理します。
3月までの8%売上げに係る売掛金が、4月以後に貸倒れとなった場合についても同様の考え方です。
消費税率1%への引下げで事業者向けの特例は設けられる?
税率引下げに伴い、経過措置だけでなく、課税事業者の選択、簡易課税制度、中間申告、総額表示などについても特例が予定されています。飲食料品を扱う事業では、売上げに1%が適用される一方、設備費や家賃、包装資材などの仕入れに10%がかかるケースがあります。従来とは消費税の納税・還付関係が大きく変わる事業者も想定されています。
免税事業者が課税事業者を選択するための特例が設けられる
飲食料品を販売する免税事業者について、2027年4月1日の属する課税期間中に届出を行うことで、その課税期間から課税事業者となれる特例が予定されています。
通常、課税事業者を選択するには原則として課税期間が始まる前までの手続きが関係しますが、今回の税率引下げでは届出時期について特例が設けられます。
飲食料品の売上税率が1%になる一方で、仕入れなどに10%の消費税が発生する事業では、売上税額より仕入税額のほうが大きくなる可能性があります。ただし、免税事業者のままでは原則として消費税の還付を受けられません。課税事業者を選択するかどうかは、その後の納税義務も含めて判断する必要があります。
簡易課税制度にも計算方法の特例が設けられる
税率1%の飲食料品の売上げについては、簡易課税制度を利用する事業者にも特例的な計算方法が設けられる予定です。改正案では、簡易課税を適用する場合、税率1%の対象となる飲食料品の譲渡について、業種区分にかかわらず、その売上税額と同額を仕入税額として計上する仕組みとされています。
また、飲食料品を扱う簡易課税事業者が一般課税へ切り替えるための届出についても特例が設けられる予定です。税率1%への変更によって、一般課税と簡易課税のどちらが有利になるかが従来とは変わる可能性があります。
値札などの総額表示にも一時的な特例が設けられる
税率変更に伴う値札や価格表示の変更については、2027年2月1日から5月31日まで総額表示の特例が予定されています。税率引下げに対応した価格表示へ直ちに切り替えることが難しい事情がある場合、消費者が実際の支払額を誤認しないための掲示などを行うことを条件として、1%または8%の表示や、新旧税率の表示が混在する状態も一定期間認められる予定です。
ただし、これは価格表示についての一時的な特例です。実際の売上げに適用する税率を自由に選択できる制度ではありません。
インボイス制度の「経過措置」は食料品減税の経過措置と違う?
「消費税の経過措置」という言葉には複数の制度があるため、何についての経過措置なのかを区別して理解する必要があります。食料品の税率引下げに伴う8%の経過的な取扱いとは別に、インボイス制度では、免税事業者などからの仕入れについて一定割合を仕入税額控除できる経過措置があります。
免税事業者などからの仕入れには7割・5割・3割控除の経過措置がある
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについては、2026年度税制改正により経過措置が延長・見直しされ、控除可能割合が段階的に下がる仕組みとなっています。2026年9月30日までは従来の80%控除が適用され、その後は70%、50%、30%と段階的に縮小される制度です。
| 期間 | 控除可能割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日~2028年9月30日 |
70% |
| 2028年10月1日~2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日~2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 原則0% |
この制度は、飲食料品の税率を8%から1%へ引き下げる際の経過措置とは別制度です。
請求書や会計処理を確認するときは、「税率変更に伴う経過措置」なのか、「インボイス未登録事業者からの仕入れに関する経過措置」なのかを切り分けると理解しやすくなります。
消費税の経過措置を確認して税率変更前に請求書・会計処理を整えよう
食料品の消費税率は、法案が成立した場合、2027年4月1日から2029年3月31日まで1%へ引き下げられます。一定の定期供給契約や通信販売では経過措置により8%が残ります。
税率変更直後には1%・8%・10%の取引が同じ請求書に混在するケースや、8%で販売した商品を1%への変更後に返品するケースも生じます。インボイスは税率ごとに対価と消費税額等を区分し、返品時には元の取引税率で処理します。
食料品減税に伴う経過措置と、免税事業者等からの仕入れに関するインボイス制度の経過措置を混同せず、契約日、取引日、適用税率、請求書の記載内容をそれぞれ確認すると整理しやすくなります。
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