- 作成日 : 2025年3月21日
工事写真台帳とは?写真の撮り方や順番、まとめ方の例を解説
工事写真台帳は、工事の進行状況や品質、安全対策を写真で記録し、発注者や関係者とのスムーズな情報共有やトラブル防止に役立ちます。保存期間は工事完成後5年間で、効率的な作成にはエクセルやテンプレート、専用アプリの活用がおすすめです。この記事では、台帳の作り方と便利なアプリを紹介します。
目次
工事写真台帳とは?
工事写真台帳とは、工事中に撮影した写真を記録し、工事の進み具合や作業の品質、安全対策を確認できるようにまとめたものです。工事がどのように進行したのか、決められたルールに沿って作業が行われたかを写真でわかりやすく残します。
工事写真台帳には、以下のような目的があります。
- 工事内容の証明:発注者や第三者に対し、実際の作業内容を証明する。
- 品質の保証:施工が規定通り行われたことを写真で確認できる。
- トラブル防止:工事中や完成後のトラブルに備え証拠として残す。
工事写真台帳は5年間保存
工事写真台帳の保存期間は工事完成後5年間と定められており、この期間中は工事内容の確認や紛争時の証拠として活用されます。たとえば、土木工事において、完成後の道路や橋梁の点検で不具合が見つかった場合でも、台帳の写真記録を参照することで施工時の状況を振り返ることができます。ただし、新築住宅を新築する建設工事に関しては10年間の保存が必要です。
工事写真台帳に必要な写真の種類
工事写真台帳には、工事の進み具合や品質、安全対策を記録するための写真を適切な順序でまとめる必要があります。それぞれの写真には役割があり、全体として工事内容をしっかり伝えることが目的です。
着手前・完成写真
工事写真は、工事を始める前の状態と、工事が終わった後の状態を撮影します。完成写真は、設計通りに仕上がっているか確認するために必要です。たとえば、道路工事では、施工前後の路面の状態を同じ角度から撮影し、ひび割れの補修や舗装の仕上がりを明確に記録することが求められます。撮影前に撮影場所やアングルを決めておくことで、完成後の写真と比較しやすくなります。
施工状況写真
施工状況写真は、工事中の作業を記録するための写真です。土木工事では、掘削、基礎工事、舗装工事など、作業の工程に合わせて撮影します。
また、日ごとに施工状況の写真を撮影することもあります。たとえば、コンクリート打設時には、打設前、打設中、打設後の写真を撮影し、適切に施工が行われた証拠として記録します。作業の進み具合を確認し、適切に人員が確保されたか、作業計画通りに進んだかの見直しに役立ちます。
安全管理写真
安全対策がしっかり行われているかを記録する写真です。たとえば、高所作業の際には、安全帯(ハーネス)の適切な装着や足場の固定状況を撮影します。また、安全標識の設置状況や、作業員がヘルメットや保護具を正しく着用しているかを撮影します。
使用材料写真
工事で使用する資材の写真です。これには、資材の種類や数量が確認できるような撮影が求められます。たとえば、コンクリート工事では、生コンクリートの納品伝票を一緒に撮影することで、使用した材料の品質を証明できます。また、土木工事では、アスファルトや鉄筋などの記録が含まれます。
品質管理写真
施工の品質を記録するための写真です。たとえば、コンクリート打設後のひび割れの有無や、塗装工事における塗膜の均一性を撮影することで、施工品質を可視化できます。また、測量機器を使って計測している場面を撮影します。
出来形管理写真
完成した箇所が設計通りか確認するための写真です。たとえば、道路工事では、舗装の厚みや勾配を計測した様子を撮影し、設計基準を満たしていることを証明します。また、道路や橋の幅、高さ、勾配などが適切かを撮影します。
災害・事故写真
工事中に災害や事故が発生した場合、その状況を記録するための写真です。たとえば、崩落事故が発生した場合、崩落範囲や影響を受けた設備の写真を撮影し、原因分析や安全対策の検討に活用します。これにより、原因の特定や再発防止のための資料として活用できます。
その他(公害、環境、補償等)
環境対策や周辺住民への配慮を記録するための写真です。たとえば、工事現場の防音シートや粉塵対策として設置された散水設備の写真を撮影することで、公害防止対策の実施状況を示せます。また、公害防止の設備や周辺地域への補償内容が確認できるものを撮影します。
工事写真の撮り方(国土交通省による指導)
工事写真の撮り方には、国土交通省の基準が定められており、写真台帳を適切に作成するための基本的なルールが示されています。
写真のアングルを統一する
写真は同じアングルで撮影することが大切です。同じ場所を異なる時期に撮影する場合、アングルを統一すると工事の進み具合が比較しやすくなります。たとえば、着手前と完成後の写真を同じ位置、角度、高さから撮影すると、工事の成果が一目でわかります。
工事内容を記載した小黒板と共に撮影する
工事写真には、小黒板を写し込むようにします。小黒板には工事名、工事種目、撮影部位、寸法・規格・表示マーク、撮影時期、施工状況、立会者名・受注者名などを記載します。これにより、写真の内容が何を記録したものかがすぐにわかります。
スマホやタブレット用のアプリを利用することで、電子小黒板として黒板の内容をデジタルで挿入できる便利な機能もあります。
撮影対象・文字が鮮明にわかる
撮影する写真は、対象物と小黒板の文字が鮮明に見えるようにします。特に、小黒板の文字が読めない場合、後から確認できず問題になることがあります。光の向きやカメラの設定を工夫して、文字がはっきり見えるように撮影しましょう。
類似の写真は番号をつけるなど区別する
同じような写真が複数必要な場合は、番号やラベルをつけて整理します。これにより、写真台帳を作成するときに、どの写真がどの作業を記録したものかがわかりやすくなります。
写真の改ざん・編集は禁止
工事写真の改ざんや編集は厳しく禁止されています。これは、工事の信頼性を確保するためです。撮影した写真はそのままの状態で台帳に使用し、加工は行わないよう注意が必要です。
写真はカラーで画素数は100万画素以上
工事写真は、カラーで撮影し、画素数は100万画素から300万画素程度が求められます。画素数が低いと、写真がぼやけて詳細がわかりにくくなるため、適切なカメラやスマートフォンを使って撮影します。
工事写真台帳の作り方の流れ
工事写真台帳は、時系列に沿って写真を整理し、工事内容が一目でわかる形にまとめることが大切です。以下に、具体的な手順を流れに沿って説明します。
1. 写真の用意
まず、工事現場で撮影した写真を準備します。撮影は工事の進行に合わせて行い、上記で解説したように、着手前、施工中、完成後の写真をそろえるのが基本です。写真は鮮明で、小黒板を写し込むことで、内容がよりわかりやすくなります。
写真をフォルダ内にまとめて入れる際には、名前のルールを決めておくことが大切です。たとえば、以下のようなルールを設定すると、写真の管理がスムーズになります。
- ファイル:現場_工程_日付(例:道路改良_基礎工事_20250121)
- フォルダ:工程別(例:着手前写真、施工状況写真、完成写真)
このように整理しておくと、台帳作成時に写真を簡単に見つけられるだけでなく、後から確認する際にも役立ちます。
2. 表紙の作成
工事写真台帳の表紙を作ります。表紙には以下の情報を入れると、台帳の内容が一目で伝わります。
- 工事名(例:○○道路改良工事)
- 工事箇所(現場名や住所)
- 工事期間(開始日と終了日を記載)
- 工事責任者(発注者名と施工業者名)
3. 写真の張り付け(アルバム形式)
工事写真をアルバム形式で台帳に貼り付けます。各写真に含まれる小黒板には、以下の情報が記載されているか確認します。
写真が不鮮明な場合は、台帳内に補足説明を加えるとわかりやすくなります。
また、専用アプリを使えば、黒板の内容をデジタルで挿入できるテンプレート機能を利用することもできます。
【小黒板の内容】
- 工事件名
- 工事場所
- 撮影日
- 工事内容の簡単な説明
- 会社名
- 工程名(例:掘削工事、基礎工事、仕上げ工事)
4. 工事情報を追記
工事に関する追加情報を追記します。これには次の内容を含めるとよいでしょう。
- 使用した材料(種類や数量、メーカー名)
- 作業員の人数や配置(例:当日の作業員10名、役割分担)
- 特記事項(例:工事スケジュールの調整、現場で発生した課題)
- 天候や気温(例:晴天・25℃、雨天・15℃など)
これらの情報を追記することで、後から見直しや確認をする際に役立ちます。
工事写真台帳の作成方法
工事写真台帳は、エクセルやスプレッドシート、テンプレート、専用アプリを使うことで効率的に作成できます。
1. エクセルやスプレッドシートを使用する
エクセルやスプレッドシートは、多くの人が利用しているツールで、工事写真台帳の作成にも適しています。工事写真台帳を自由にカスタマイズして作成できるのが特徴ですが、初めて作る場合は、フォーマット作成に時間がかかることもあります。
2. テンプレートを活用する
テンプレートを利用すれば、フォーマットを一から作る必要がなく、誰でも簡単に工事写真台帳を作成できます。テンプレートはすでに整理された形式になっているため、写真や情報を入力するだけで簡単に作成できます。また、ネット上で無料または低コストで手に入るものが多く、時間の節約にもつながります。
ただし、テンプレートによっては、工事内容に合わない場合があります。その場合、フォーマットを調整する必要があり、多少の編集スキルが必要になることもあります。
3. アプリを使用する
専用のアプリを使えば、写真管理から台帳作成までをスマホやタブレットで簡単に行えます。これらのアプリには電子小黒板の挿入や写真の自動分類、PDF形式での出力など、工事写真台帳に必要な機能が一通りそろっています。現場での操作がしやすく、スピーディーに作成できる点がメリットです。
一方で、アプリには利用料が発生する場合があり、初めて使用する際は機能に慣れるまで少し時間がかかることがあります。
工事写真台帳作成アプリおすすめ【3選】
工事写真台帳を効率的に作成するには、専用アプリの活用が便利です。これらのアプリは、写真管理や黒板情報のデジタル挿入、クラウド共有などの機能を備えており、作業の手間を大幅に削減できます。ここでは、工事現場でよく使われる「ミライ工事」「蔵衛門カメラ」「電子小黒板 PhotoManager」の3つのアプリを紹介します。それぞれの特徴やメリットを理解し、自社の業務に最適なツールを選びましょう。
1.ミライ工事
「ミライ工事」は、スマートフォンやタブレットを活用して工事写真を効率よく管理できるアプリです。電子小黒板の機能が搭載されており、写真を撮影する際に黒板情報をデジタルで挿入できるため、現場での作業負担を軽減します。また、クラウド連携により、撮影した写真をチーム内でリアルタイムに共有可能です。PDF出力機能も備えており、ボタン一つで工事写真台帳の作成が完了します。操作がシンプルで、電波の通じない現場でもオフラインモードで使用できる点が魅力です。
2. 蔵衛門カメラ
「蔵衛門カメラ」は、建設業向けに開発された工事写真管理アプリで、多くの施工現場で活用されています。最大の特徴は、電子小黒板機能が標準搭載されており、撮影した写真はクラウド上に自動保存され、AIが写真情報をもとに「工種」や「場所」「撮影者」で自動仕分けする点です。さらに、クラウド上でデータを管理できるため、パソコンやタブレットと連携しながらスムーズに作業できます。国土交通省認可の改ざん検知機能に対応しており、公的な工事記録の作成にも適しています。
3. 電子小黒板 PhotoManager
「電子小黒板 PhotoManager」は、工事写真の撮影から管理、台帳作成までを一元化できるアプリです。PCで作成した電子小黒板をスマートフォンアプリと連携して使用でき、手書きの黒板を用意する手間が省けます。撮影後の写真は、工種をあらかじめ設定しておくことで自動的に各フォルダに振り分けられ、PDFやExcel形式での出力にも対応。特に、写真データの整理を効率化したい事業者におすすめです。クラウド連携機能を備えており、チーム内での情報共有もスムーズに行えます。
工事写真の撮影と台帳作成をスムーズに進めよう
工事写真台帳を効率よく作成するには、ツール選びと写真撮影の計画が大切です。エクセルやスプレッドシートはカスタマイズがしやすく、テンプレートを使えば初心者でも手軽に始められます。さらに、専用アプリを活用すれば、写真管理やデジタル黒板の挿入、PDF出力などがスムーズに行えます。
また、写真撮影を効率化するためには、担当者や撮影タイミングを事前に決めることが大切です。これにより、現場での混乱を防ぎ、必要な写真を計画通りに記録できます。適切な準備とツールの活用で、正確でわかりやすい工事写真台帳を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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