• 作成日 : 2025年8月5日

ユンボで吊り上げられる重さは?運転に必要な資格なども解説

ユンボは掘削だけでなく、アームを利用して資材等を吊り上げるクレーン作業にも活用されます。しかし、正しい知識や安全意識が不足すると重大な事故につながる可能性があります。特に一人親方の場合、安全管理は作業効率や信頼性に直結するため、ユンボの吊り上げ能力、関連法規、安全対策の深い理解が不可欠です。この記事では、吊り上げ可能な重さの目安から、影響要因、資格、事故事例と備えまでわかりやすく解説します。

ユンボで吊り上げられる重さは?

ユンボが吊り上げられるおおよその重さと、その上限が法律でどのように定められているかについて解説します。

ユンボの吊り上げ能力は機種により大きく異なります。簡易的な目安として、

バケット平積容量(㎥)×1.8トン未満かつ1トン未満

という計算式があります。例えば0.1㎥のユンボなら約180kg未満です。

重要なのは法律上の制限で、油圧ショベルをクレーンとして使用する場合、吊り上げられる最大荷重は原則として1トン未満と定められています。これを超える場合は移動式クレーンを使用するのが原則です。この制限は、ユンボが吊り上げ専用機ではないため、安定性や強度が移動式クレーンに劣ることに起因します。安全を最優先し、上限値を必ず守りましょう。

ユンボの吊り上げ能力を左右するポイント

ユンボが安全に吊り上げられる重さは、機械の大きさだけでなく、作業状況によって大きく変動します。これらの要因を正しく理解し、常に安全マージンを確保することが事故防止の鍵です。

機種のクラスと構造(メーカー・型式による違い)

ユンボの吊り上げ能力は、まずクラス(大きさ)や構造で基本性能が決まります。一般的に、機体重量やカウンターウェイトが大きい機種は安定性が高い傾向にありますが、吊り上げ能力はその他の要因(ブーム長さや作業条件)も影響します。

メーカー(コマツ、日立建機、コベルコなど)や型式(コマツ「PC」、コベルコ「SK」など)によりアーム長、ブーム形状、油圧能力が異なり、吊り上げ能力に影響します。旋回半径の違いは作業スペースに影響し、場合によっては吊り上げ作業の効率や安定性に影響を与えることがあります。クレーン仕様の機種は、吊り荷用フックや強化された安全装置を備えています。

作業半径(吊り荷までの水平距離)

「作業半径」とは、ユンボの旋回中心から吊り荷フック直下までの水平距離です。作業半径が大きくなると転倒モーメントが増し、吊り上げ能力は低下します。低下の度合いは機種や条件によります。てこの原理と同様で、吊り荷を機体に近づけ、作業半径を小さくすることが安全な吊り上げの基本です。

アウトリガーの有無と設置状態

一部のホイール式油圧ショベルなどには、安定性を高めるアウトリガーが装備されています。適切に張り出し、堅固な地盤に設置することで安定性が大幅に向上し、より重いものを安全に吊り上げられます。アウトリガー未使用時や不適切な設置は、能力を発揮できないばかりか、転倒リスクを高めます。

ブームの角度と長さ

ブームの角度や伸縮ブームの長さも吊り上げ能力に影響します。ブーム角度を高く保つ(立てる)ほど作業半径が小さくなり、吊り上げ能力は向上します。伸縮ブームは短く縮めた方が構造的強度が高まり、安定します。

吊り荷の状態(形状、重心、安定性)

吊り荷の形状、重心位置、安定性も重要です。重心が偏った荷物や不安定な形状の荷物は、予期せぬ揺れや回転を生じさせ、機体のバランスを崩す原因となります。玉掛け時は荷物の重心を正確に把握し、安定した状態で吊り上げられるよう工夫が必要です。

定格荷重表の正しい見方と活用法

ユンボで安全に吊り上げ作業を行うには、機械の能力限界を知るための「定格荷重表」の確認が不可欠です。

定格荷重表とは?

定格荷重表とは、ユンボ(クレーン仕様の場合)が特定の条件下(ブーム長、作業半径、アウトリガー使用状況など)で安全に吊り上げられる最大の荷重(質量)を示した表です。この定格荷重にはフックや吊り具の質量も含まれます。メーカーは機種ごとに作成し、運転席や取扱説明書に記載しています。定格荷重を超える吊り上げは禁止されており、作業計画時にこれを守ることが義務付けられています。

定格荷重表の主な記載項目

  • 作業半径(m)
    旋回中心からフック直下までの水平距離
  • 定格荷重(t)
    各作業半径での最大吊り上げ質量
  • ブーム長さ(m)/ブーム角度(°)
    ブームの状態
  • アウトリガーの状態
    「最大張り出し」「未使用」など
  • 走行時の吊り上げ能力
    一部機種で記載(定置吊りより大幅に低下)
  • 吊り上げ高さ(m)
    地面からフックまでの高さ
    表記例:「1.70/1.42m」は「定格荷重1.70トン/作業半径1.42メートル」を意味します

定格荷重表の読み取り方と注意点

クレーン作業で最も重要な定格荷重表は、安全な作業のために正確に読み解く必要があります。

まず、実際の作業条件に合った表のセクションを選びます。次に、吊り荷を吊る際の作業半径を正確に測定または推定し、その半径に対応する定格荷重を読み取ります。もし中間値の場合は、安全のため、より大きい作業半径(つまり小さい定格荷重)の値を採用しましょう。

さらに、吊り荷の重さに吊り具の質量を加えた総重量を、定格荷重と比較してください。

特に注意すべきは、必ず実機に備え付けの定格荷重表を確認することです。中古機などでは表示と実機が異なる場合があるため、自身の目で正しい情報を見極めましょう。また、クレーン本体の老朽化や整備不良は性能低下に直結します。日頃からの点検整備を怠らないことが、安全な作業には不可欠です。

ユンボ吊り上げ作業に必要な資格は?

ユンボの吊り上げ作業は移動式クレーン作業と見なされ、労働安全衛生法に基づき適切な資格が必要です。資格はユンボの最大吊り上げ荷重と玉掛け作業の有無で異なります。

移動式クレーン運転資格

ユンボで荷物を吊り上げる際には、その能力に応じた資格が必要です。

吊り上げ荷重1トン未満の場合、移動式クレーン運転の業務に係る特別教育の修了で操作できます。これは約13時間の講習のみで試験はありません。費用は1~2万円程度です。

吊り上げ荷重1トン以上5トン未満の場合、小型移動式クレーン運転技能講習の修了が必要です。約20時間の講習後に修了試験があり、費用は3~5万円程度です(保有資格による短縮もあります)。

吊り上げ荷重5トン以上になると、国家資格である移動式クレーン運転士免許が必要ですが、ユンボでこの能力の作業を行うことは稀です。

注意点として、公道を走行するには別途自動車運転免許が必要で、資格区分は機械の最大吊り上げ能力が基準となります。

玉掛け資格

クレーンで荷物を吊る際に、荷物にワイヤーなどを掛け外しする「玉掛け作業」には専用の資格が必要です。クレーンの運転者がこの作業も兼任する場合は、両方の資格が必要になります。

吊り上げ荷重1トン未満の場合、玉掛け業務の特別教育の修了で作業できます。これは約9~10時間の講習のみで試験はありません。費用は1万円台程度です。

吊り上げ荷重1トン以上の場合、玉掛け技能講習の修了が必要です。約19時間の講習後に修了試験があり、費用は2万円台程度です(保有資格による短縮もあります)。

現場では1トン以上の荷を扱う可能性が高いため、「玉掛け技能講習」の取得が推奨されます。

ユンボ吊り上げ作業の事故事例と対策

実際に発生したユンボによる吊り上げ作業中の事故事例を挙げ、その原因と再発防止のための具体的な対策について考察します。過去の事故事例から学ぶことは、同様の事故防止に非常に重要です。

事例1:敷鉄板の吊り上げ作業中の落下・激突事故

敷鉄板をユンボで移動中にワイヤーロープが緩み、フックが外れるという事故が発生しました。これにより敷鉄板が落下し、誘導作業中の作業員に激突、負傷させるに至りました。

この事故の主な原因は以下の3点です。

  • 危険予測の怠慢: 作業開始前の危険予測が不十分であったこと。
  • 不適切な玉掛け: ワイヤーロープの取り付け(玉掛け)が適切に行われていなかったこと。
  • 吊り荷直近での作業: 吊り荷のすぐ近くで作業員が誘導を行っていたこと。

再発防止のため、以下の対策を徹底しましょう。

  • 適切な玉掛け: 玉掛け作業は手順通り確実に行い、ワイヤーの張りを十分に確認すること。
  • 作業員の安全距離確保: 吊り荷の移動中は、作業員は必ず安全な距離を確保すること。
  • 介錯ロープの使用: 吊り荷の揺れや回転を抑制するために、介錯ロープを積極的に使用すること。
  • 危険予測の徹底: 作業前のミーティングで危険箇所や作業手順を十分に確認し、危険予測を徹底すること。

事例2:ユンボ本体の転倒事故

吊り荷を吊り上げ旋回しようとした際にユンボが横転し、運転者が挟まれ死亡するという痛ましい事故が発生しました。

この事故の主な原因は以下の点が考えられます。

  • 定格荷重または作業半径の超過: ユンボの定格荷重を超えた荷を吊り上げていた、あるいは作業半径の限界を超えて操作していた可能性があります。
  • 地盤不良: 作業場所の地盤が軟弱であったにもかかわらず、適切な対策が講じられていなかったこと。
  • アウトリガーの不適切使用: ユンボの安定性を保つためのアウトリガーが適切に設置または使用されていなかったこと。
  • 急旋回: 吊り荷を吊り上げた状態で急な旋回操作を行ったこと。

再発防止のため、以下の対策を徹底しましょう。

  • 定格荷重表の確認: 作業前には必ずユンボの定格荷重表を確認し、それを遵守した上で作業計画を立て、実行してください。
  • 地盤確認と養生: 作業を行う際は、事前に地盤の状況を十分に確認し、必要に応じて敷板や鉄板などで養生を行い、地盤の安定を確保してください。
  • アウトリガーの適切な使用: ユンボのアウトリガーは、最大限に張り出し、確実に設置してください。
  • 慎重な操作: 吊り荷を吊り上げている最中や旋回時には、急な操作を避け、常に慎重にユンボを操作してください。

事例3:合図不徹底による挟まれ事故

ユンボで鉄板を移動させていた際、玉掛けを外そうとしていた作業員が、別の作業員のジェスチャーをオペレーターが合図と誤認し、ブームを操作してしまいました。その結果、作業員が指を挟まれ負傷するという事故が発生しました。

今回の事故の主な原因は以下の通りです。

  • 正規合図者以外からの指示による誤認: 定められた合図者ではない別の作業員のジェスチャーを、オペレーターが作業開始の合図と誤って認識してしまったこと。
  • コミュニケーション不足: 作業員間での意思疎通が不十分であり、誤解が生じる余地があったこと。
  • 合図不確認: オペレーターが明確な合図の確認を怠ったまま、操作を開始してしまったこと。

同様の事故を防止するため、以下の対策を徹底しましょう。

  • 合図は定められた一人の合図者からのみ: ユンボの操作に関する合図は、事前に定められた一人の合図者からのみ行うことを徹底します。他の作業員は、合図と誤解されるような行動を避けてください。
  • 運転者は明確な合図を確認後操作: ユンボの運転者は、明確な合図を確実に確認するまで、いかなる操作も開始しないでください。
  • 作業員は死角や可動範囲に近づかない: 作業員は、ユンボの死角に入ったり、ブームやその他可動部の範囲内に不必要に近づいたりしないよう注意を徹底してください。
  • 作業前の手順・合図方法の再確認: 作業を開始する前には、必ず全員で作業手順と合図の方法を再確認し、共通認識を持つようにしてください。

事例4:土のう吊り上げ中の転落事故

ユンボで1トンの土のうを吊り上げ、法面補強作業を行っていた際に、ユンボが法面下に転落し、オペレーターが死亡するという痛ましい事故が発生しました。

今回の事故の主な原因は以下の点が考えられます。

  • 不安定な法面での作業: 作業を行っていた法面が不安定な地盤であったにもかかわらず、十分な安全対策が講じられていなかったこと。
  • 地盤崩壊: 不安定な地盤での作業中、ユンボの重みや振動により地盤が崩壊し、ユンボが転落したこと。
  • 吊り荷による機体バランス悪化: 1トンの土のうという吊り荷の重量が、ユンボの機体バランスを悪化させ、転落を誘発した可能性。
  • 安全な作業範囲からの逸脱: 事前に定められた安全な作業範囲を逸脱して作業を行ったこと。

二度と同様の事故を繰り返さないため、以下の対策を徹底しましょう。

  • 法面や傾斜地での作業を行う際は、事前に地盤の安定性を詳細に調査し、必要に応じて地盤改良や足場の設置などの対策を講じてください。
  • 吊り荷を吊り上げた状態でのユンボの移動は、極力最小限に留めてください。やむを得ず移動させる場合は、最も安定した姿勢で、ゆっくりと慎重に行ってください。
  • 作業を行う際は、事前に作成された作業計画で定められた安全な作業範囲を厳守し、その範囲外での作業は絶対に避けてください。

これらの事故事例は一部です。日本クレーン協会や建設業労働災害防止協会などの災害事例も参考に、常に危険予知活動を行い、安全対策を徹底しましょう。

ユンボの吊り上げ作業は安全第一で行おう

この記事では、ユンボの吊り上げ能力、関連法規、資格などについて解説しました。

ユンボの吊り上げ作業は効率的ですが、一歩間違えれば重大事故の危険があります。吊り上げ可能重量は機種能力だけでなく、作業半径、地盤、玉掛け方法など多くの要因に左右されます。作業前の定格荷重表確認と作業計画に基づく慎重な作業が不可欠です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事