- 作成日 : 2024年12月27日
工事管理と工事監理の違いは?目的や担当者、業務内容をわかりやすく解説
建設業界では、「工事管理」と「工事監理」が重要な役割を果たします。この記事では目的や業務内容などを比較し、工事管理者と工事監理者を分けることの重要性についても説明します。建設プロジェクトの円滑な遂行に役立ててください。
目次
工事管理とは
工事管理は、建設プロジェクトの円滑な遂行を目的として施工者側が主体となって行うものです。工程、品質、安全、原価などの様々な側面を管理し、計画通りに工事を完了させることを目指します。
工期短縮による工事費用の削減や労働災害の防止と安全な作業環境の確保に努めることで、クライアントや地域社会との良好な関係構築に役立ちます。
工事管理の主な領域
工事管理には以下のように幅広い業務領域があります。
業務領域 | 具体的な業務内容 |
---|---|
工程管理 | 工事全体のスケジュール調整と進捗管理 |
品質管理 | 施工品質の確保と検査 |
安全管理 | 作業員の安全確保と事故防止 |
原価管理 | 予算内での工事完了を目指すコスト管理 |
資材管理 | 必要な資材の調達と在庫管理 |
労務管理 | 作業員の配置と労働環境の整備 |
工事監理とは
工事監理とは、建築主の利益を守るために、設計図書と照合しながら工事が適切に行われているかを確認し、必要に応じて指示を行う業務です。
主に建築士が担当し、建築基準法で定められた重要な役割を果たします。
工事監理の主な領域
工事監理の主な領域は以下のとおりです。
建築主の利益を保護し、高品質な建築物の完成を目指しています。
- 設計意図の正確な実現
- 建築物の品質確保
- 安全性の確保
- 法令遵守の確認
- 工期と予算の管理
工事監理の法的根拠
工事監理は建築基準法で定められており、一定規模以上の建築物には工事監理者の選任が義務付けられています。具体的には以下の法律が関係しています。
- 建築基準法第5条の6(工事監理者の選任)
- 建築士法第2条(建築士の業務)
- 建設業法第24条の8(発注者に対する情報提供)
これらの法律に基づき、工事監理者は適切に業務を遂行する義務があります。
工事管理と工事監理の違い
役割
工事管理は主に施工者側の視点から、工事の円滑な進行と品質確保を目指します。工程管理、原価管理、安全管理、品質管理を通じて、工期内に予算内で安全かつ高品質な建物を完成させることを目指します。
工事監理は発注者側の立場から、設計図書通りに工事が行われているかを確認し、適切な品質管理を行うことを目的としています。施工者が設計図書に従って適切に工事を進めているかを確認し、必要に応じて指示や助言を行います。
発注者の利益を守るため、コストや工期の管理も重要な目的の一つとなります。
担当者に必要な資格
工事管理の担当者には、原則として必要な資格はありません。
工事監理者に必要な主な資格は以下のとおりです。
- 一級建築士(建築工事の場合は法的に必須)
- 建築設備士
- 建築積算資格者
- 技術士(建設部門)
現場への常駐
工事管理者は通常、工事期間中ほぼ常時現場に常駐します。これは、日々の施工管理、安全管理、品質管理などを直接行う必要があるためです。大規模なプロジェクトでは、複数の工事管理者が交代で常駐することもあります。
工事監理者は必ずしも常駐する必要はありません。法律上も常駐は義務付けられていません。ただし、重要な工程や検査時には現場に赴き、必要な確認や指示を行います。一般的には、工事の進捗状況や重要度に応じて、週に1〜3回程度の頻度で現場を訪れることが多いです。
業務内容
工事管理が主に施工の実務的な側面を担当するのに対し、工事監理は監督や確認を中心とした業務を行います。
工事管理の業務内容 | 工事監理の業務内容 |
---|---|
工程表の作成と管理 | 設計図書と施工内容の照合 |
資材や労務の調達・管理 | 工事材料の検査 |
施工計画の立案と実行 | 施工図の確認 |
安全対策の実施 | 設計変更の検討と提案 |
適切に行うメリット
工事管理と工事監理を適切に行うことで、建設プロジェクトに多くのメリットがもたらされます。
工事管理のメリット | 工事監理のメリット |
---|---|
工期の遵守と短縮 | 設計意図の正確な反映 |
円滑な施工プロセスの実現 | 品質の確保と向上 |
施工効率の向上 | 不適切な施工の早期発見と修正 |
コストの削減と予算内での完工 | 発注者の利益保護 |
工事管理者と工事監理者は分けたほうがよい
工事管理者と工事監理者は異なる企業に委託したほうが望ましいです。その理由を見ていきましょう。
利害関係の独立性確保
工事管理者と工事監理者を分けることで、それぞれの立場からの客観的な視点を確保できます。工事管理者は施工会社の立場で工事を進行させる一方、工事監理者は発注者の利益を代表して品質や工程をチェックします。
二つの役割を別々の人物が担うことで、相互チェック機能が働き、より公正で透明性の高い工事進行が可能となります。
責任の明確化
工事管理者と工事監理者の役割を明確に区分することで、問題発生時の責任所在が明らかになります。これは、トラブルの迅速な解決や、将来的な改善策の立案に役立ちます。
コスト管理の適正化
工事監理者が独立した立場で工事の進行をチェックすることで、不必要なコスト増加を防ぐことができます。工事管理者だけでは見落としがちな部分も、異なる視点から指摘することが可能となり、結果的にプロジェクト全体のコスト最適化につながります。
品質保証の強化
工事監理者が独立した立場で品質をチェックすることで、より厳格な品質管理が可能となります。これは、長期的に見た場合の建築物の耐久性や安全性の向上につながり、結果的に建築主や利用者の利益を守ることになります。
発注者の利益保護
工事監理者は発注者の代理人として、工事が設計図書通りに行われているかを確認します。工事管理者と分けることで、発注者の意図や要望をより確実に工事に反映させることができ、発注者の利益を守ることができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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