- 更新日 : 2025年10月22日
一人親方に主任技術者は必要?特定専門工事の条件、安全書類の書き方まで徹底解説
原則として、建設工事の現場には主任技術者の配置が必要です。ただし一人親方の場合は原則不要です。しかし、一定の条件下では、下請の一人親方が主任技術者を配置することが必要となる場合があります。
この記事では、「どのような場合に主任技術者が必要になるのか?」という一人親方の疑問に答えます。また、「特定専門工事」において、主任技術者が必要な場合や不要な場合、グリーンサイトをはじめとする安全書類の正しい書き方、そして混同しがちな「現場代理人」などの役割との違いについて、専門家がわかりやすく解説します。
目次
そもそも主任技術者とは?一人親方でも必要か?
まず、主任技術者の基本的な役割と、一人親方との関係について正しく理解しておくことが重要です。
原則として、一人親方であれば主任技術者の配置は「不要」
主任技術者は、建設業法第26条に基づき、建設工事現場への配置が義務付けられている役職です。その目的は、工事現場における施工の技術的な管理・指導監督を行い、工事の品質を確保することにあります。
一人親方の場合、主任技術者の設置は原則「不要」ですが、建設業許可を取得している一人親方は設置が必要となります。
建設業法第26条には「建設業者は(中略)主任技術者を置かなければならない」とありますが、ここでいう「建設業者」は同法2条3項に「建設業の許可を受けて建設業を営む者」と定義されているため、建設業許可を取得している一人親方「のみ」主任技術者の設置が必要となるわけです。
軽微な建設工事であれば主任技術者は不要請負金額が500万円未満の「軽微な建設工事」のみを請け負う場合、建設業許可は不要です。よって、法律上は「主任技術者の配置が不要」ということになりますが、あくまで工事の品質を担保する技術上の責任者として、一人親方自身がその役割を担っている、という位置づけになります。
主任技術者の設置が不要になる唯一の例外「特定専門工事」とは?
建設業許可業者は原則として主任技術者の設置が必要ですが、下請業者に限っては、配置が不要になる唯一の例外制度があります。それが「特定専門工事」です。
「不要」となるための具体的な条件
特定専門工事とは、元請負人が配置する主任技術者(または監理技術者)が、下請負人が担当する工事の技術管理も併せて行うことで、下請負人の主任技術者配置を不要とする制度です。この制度を適用するには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 元請負人と下請負人の間で書面による合意があること。
- 元請負人が発注者(施主)から書面による承諾を得ていること。
- 土木一式工事又は建設一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要のある工事(現在政令上は「型枠工事」と「鉄筋工事」が定められています)
- 下請負契約の請負代金の額が4,500万円未満であること。
これらの条件を満たした場合に限り、建設業許可を取得している一人親方であっても自ら主任技術者として現場に専任で立つ必要がなくなります。
「不要」の本当の意味を理解する
ここで重要なのは、「不要」とは、技術管理の責任がなくなるわけではないという点です。あくまで、元請の主任技術者がその責任を包括的に担うという形になるだけで、一人親方自身も元請の指導監督のもと、適切な施工管理を行う義務があります。
安全書類やグリーンサイトの主任技術者欄はどう書くか?
「特定専門工事」に該当する場合や、建設業許可なしの場合、安全書類の主任技術者欄の書き方に迷うことがあります。ケース別に正しく記載する方法を解説します。
「特定専門工事」に該当する場合
この制度が適用される現場では、主任技術者欄を空欄にするのではなく、適用対象であることを明記します。
- 記載例:
- 特定専門工事に該当するため、配置不要
- 上位の主任技術者が管理(元請会社名:〇〇建設)
このように記載することで、自社(自分)の主任技術者配置義務が免除されていることを明確に示します。
建設業許可なし・軽微な工事の場合
請負金額500万円未満の軽微な工事を請け負う一人親方は、主任技術者としての記載は不要です。
「現場代理人」や「安全衛生責任者」との違いは?
現場では主任技術者の他にも様々な役割が存在します。特に一人親方が兼任することの多い「現場代理人」と「安全衛生責任者」との違いを明確にしておきましょう。
主任技術者 vs 現場代理人
| 役割 | 主任技術者 | 現場代理人 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 建設業法 | (法律上の定めなし) |
| 主な職務 | 技術的な管理、品質・工程・安全の確保 | 契約関係の処理、現場の運営、取締り |
| 位置づけ | 技術的な責任者 | 契約上の責任者 |
現場代理人は、請負人の代理として現場の運営や契約に関する事項を処理する役割です。法律で配置が義務付けられているわけではありませんが、請負契約書で定められることが一般的です。一人親方の場合、主任技術者と現場代理人を兼任することがほとんどです。
主任技術者 vs 安全衛生責任者
| 役割 | 主任技術者 | 安全衛生責任者 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 建設業法 | 労働安全衛生法 |
| 主な職務 | 工事の品質に関する技術的管理 | 作業員の安全に関する衛生管理 |
| 位置づけ | 技術的な責任者 | 安全衛生の責任者 |
安全衛生責任者は、労働安全衛生法に基づき、特定元方事業者(元請)のもとで関係請負人(下請)が選任する、現場の安全衛生を管理する責任者です。職長などが選任されることが多く、一人親方も安全衛生責任者を兼任するケースが一般的です。
原則は「必要」、例外を正しく理解しよう
一人親方と主任技術者の関係について、最後に重要なポイントをまとめます。
- 建設業許可を取得している一人親方は、自身が主任技術者となり、現場の技術管理責任を負います。
- 建設業許可を取得していても、下請工事において、「特定専門工事」の条件をすべて満たす場合のみ、主任技術者の配置が不要になります。
- 安全書類には、状況に応じて「特定専門工事のため不要」と記載するか、「自身の名前」を記載します。
主任技術者制度は、建設工事の品質と安全を守るための重要なルールです。例外となる条件や関連する役割を正しく理解し、元請ともしっかり連携することで、一人親方として信頼されるパートナーシップを築き、スムーズな事業運営を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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