• 作成日 : 2025年6月24日

鉄筋かごとは?用途・構造・製作手順をわかりやすく解説

鉄筋かごは、鉄筋コンクリート構造物の内部に配置される鉄筋を、あらかじめ立体的に組み立てたものです。建物の基礎や柱、場所打ち杭などに使われ、構造の強度と耐久性を支える役割を果たします。正確な製作と施工が求められ、加工方法や品質管理も重要です。

この記事では、鉄筋かごの基本から製作の流れ、施工時の注意点まで、現場で役立つ知識をやさしく解説します。

鉄筋かごとは?

鉄筋かごは、コンクリート構造の骨組みとして使われる鉄筋を、事前に組み立てて一体化したものです。鉄筋コンクリートの中で、引張力や曲げに耐えるために設けられ、構造体全体の強度と安定性を高めます。

コンクリートは、圧縮には強い反面、引張には弱いという特徴があります。そこで、鉄筋かごが引張部分を補う形で内部に配置されます。これにより、コンクリートと鉄筋が一体となって力を分担し、丈夫で長持ちする構造をつくることができます。

現場では、主に柱や梁、壁、床、基礎部分などの構造部材に使われます。特に基礎杭(場所打ち杭)では、掘削した穴の中に鉄筋かごを挿入し、コンクリートを流し込むことで杭を形成します。このとき、鉄筋かごの形状や精度は構造全体の品質に直接影響するため、施工の初期段階でとても重要な工程とされています。

近年では、鉄筋を現場で一本ずつ組むのではなく、鉄筋かごというユニットとして計画的に扱うことで、作業の効率化や品質の均一化が進められています。

鉄筋かごの構成要素

鉄筋かごは、複数の種類の鉄筋部材で構成されており、それぞれが異なる役割を持っています。構造の強度や安全性を保つためには、これらを正しく設計し、施工することが不可欠です。

主筋(しゅきん)は軸としての役割

主筋は、鉄筋かごの中で最も大きな力を受ける部材です。柱や杭などの縦方向、梁であれば横方向に配置され、引張力や圧縮力に直接耐えます。主筋の本数や太さ、配置間隔は、構造物の大きさや用途によって決まります。設計通りに配置されることで、建物の荷重をしっかりと支える骨組みになります。

帯筋・あばら筋は補強と変形防止

帯筋(フープ)やあばら筋(スターラップ)は、主筋を囲むように取り付けられます。柱では円形や四角形の帯筋、梁ではロの字型のあばら筋が使われます。これらはせん断力(ねじれや切断に近い力)に耐える働きを持ち、地震時の倒壊を防ぐ補強としても重要です。

また、主筋が座屈(折れ曲がるように変形)するのを防ぐ効果もあります。帯筋やあばら筋の末端には、コンクリートとの付着を強くするために、180度や135度のフックをつけて曲げる加工が施されています。

スペーサーは「かぶり厚さ」を保つための部材

スペーサーは、鉄筋かごと型枠や地面との間に設置され、鉄筋の周囲を覆うコンクリートの厚み(かぶり厚さ)を確保するために使われます。かぶり厚さが不足すると、鉄筋が錆びたり、火災に弱くなったりするため、適切な厚みを保つことが耐久性に直結します。

スペーサーの材質には、コンクリート製、プラスチック製、鉄製などがあります。使用する場所や部材に応じて選定され、型枠側と接する鋼製スペーサーには防錆処理が求められることもあります。

補強リングで形を安定させる

場所打ち杭のように長さがある鉄筋かごは、搬入や吊り上げ時に変形しやすくなります。その変形を防ぐために使われるのが補強リングです。かごの途中に取り付けて、全体の剛性を高め、形を安定させる役割を果たします。

これらの部材が組み合わさることで、鉄筋かごはただの鉄筋の集まりではなく、構造的にしっかり設計された部材としての性能を発揮します。

鉄筋かごの製作工程

鉄筋かごの製作は、使用する材料の選定から始まり、切断・曲げ加工、組立までいくつかの工程に分かれます。それぞれの段階でミスがあると、構造物全体に影響を及ぼすため、正確な作業が求められます。

材料はJIS規格に適合したものを使用

鉄筋はJIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)などの規格に適合したものを使用します。種類としては、SD295A、SD345、SD390などが一般的です。使用前には、鋼材検査証明書(ミルシート)や表面の圧延マークを確認し、設計図書との整合性をチェックします。

また、結束に使うなまし鉄線は、通常0.8mm以上の太さが求められます。これも、加工中やコンクリート打設時に鉄筋が動かないようにするためです。

加工は冷間で、加熱加工は禁止

鉄筋は所定の長さに切断し、設計図に従って曲げ加工を行います。このときに大事なのが、常温(冷間)加工であることです。鉄筋を加熱すると、強度や延性が変わり、設計通りの性能が発揮できなくなるおそれがあります。特に構造物では、材質の変化は大きなリスクとなるため、加熱加工は禁止されています。

フックの角度(180°、135°など)や曲げ半径は、鉄筋の太さによって最低限の規定値があります。高強度鉄筋や小さな曲げ半径が必要な場合には、事前に試験や確認を行うことが求められます。

組立は正確な配置と強固な結束が基本

加工された鉄筋は、立体的に組み上げていきます。主筋と帯筋・あばら筋が交差する部分などは、結束線でしっかりと固定します。打設時に動いたりズレたりしないよう、組立時点で安定した状態にしておくことが大切です。

また、点付け溶接(仮付け)は、鉄筋の材質が局所的に変化するリスクがあるため、原則として使用できません。必要な箇所には補強リングや専用の支持具を用いて補強します。

同じ形状の鉄筋かごを複数作るときは、組立架台(治具)を使うことで、作業効率と寸法精度を高めることができます。

スペーサーの取り付けと養生

組立後、かぶり厚さを正しく保つために、スペーサーを適切な位置・間隔で取り付けます。種類や材質は使用環境に応じて選定します。

最後に、運搬や吊り上げの際に鉄筋かごが変形しないよう、必要に応じて補強材を入れたり、養生措置を講じたりして仕上げます。

鉄筋かごの配筋と検査

鉄筋かごは、設計図に示された位置へ正確に設置しなければ、その後に打設されるコンクリートと一体となって正しく機能しません。施工精度と検査体制は、構造物の安全性と耐久性に直結します。

配筋は設計図通りに正確に行う

鉄筋かごの設置位置は、構造計算に基づいて決められています。施工時には、設計図通りの位置、高さ、方向に正しく配置しなければなりません。杭などの場合は、掘削した孔の中心に鉄筋かごを垂直に建て込むことが求められます。

また、コンクリートを流し込む際の圧力や振動によって、かごが動かないように、スペーサーや結束線で型枠や他の構造部材にしっかり固定しておきます。

かぶり厚さの確保が長寿命のカギ

かぶり厚さとは、鉄筋表面からコンクリート表面までの最短距離のことです。この厚さが不足していると、鉄筋が水分や塩分にさらされやすくなり、腐食の原因となります。

かぶり厚さには以下のような意味があります。

  • 耐久性:鉄筋が錆びるのを防ぐ
  • 耐火性:火災時に鉄筋を高温から守る
  • 付着性:鉄筋とコンクリートの一体性を保つ

最小かぶり厚さは、構造の種類や環境によって異なり、建築基準法や公共建築工事標準仕様書で定められています。設計図通りの数値を守るだけでなく、施工誤差を見越して10mm程度の余裕を持たせるのが一般的です。

配筋検査でチェックされる項目

コンクリート打設前には、必ず配筋検査を行います。監理者や施工管理者の立会いのもと、以下のような項目が確認されます。

  • 鉄筋の種類、径、グレード、本数
  • 鉄筋かごの寸法、形状、組立の精度
  • 配置位置のズレ(通り芯からの誤差)
  • 鉄筋相互の間隔(あき)
  • かぶり厚さの確保状況
  • 継手の種類、長さ、配置
  • 定着長さの確認
  • 結束線の締め具合
  • スペーサーの数と取り付け状況
  • 鉄筋表面の状態(サビ、油汚れ)

これらの確認に使うのは、スケール、メジャー、ノギスなどの基本的な測定工具です。ひとつでも基準に合っていない箇所が見つかれば、打設前に必ず修正しなければなりません。

なお、コンクリート打設後には内部の確認が難しくなるため、最近では非破壊試験を用いて、内部の鉄筋配置やかぶり厚さを確認する技術も活用されています。

プレハブ鉄筋(ユニット鉄筋)の導入と現場効率化

現場作業の省力化や品質の安定を図る方法として、あらかじめ工場で製作された「プレハブ鉄筋(ユニット鉄筋)」の活用が広がっています。特に鉄筋かごのような立体構造では、この工法の効果が大きく、施工のスピードアップにもつながります。

プレハブ鉄筋とは?

プレハブ鉄筋は、鉄筋かごを工場や専用ヤードであらかじめ製作し、現場に搬入して設置する方法です。これにより、現場での組立作業を減らし、効率的に工事を進めることができます。

設計通りに寸法管理された製品を工場で一貫製作するため、品質のバラつきが少なく、作業効率も高まります。天候の影響を受けにくいという点も大きなメリットです。

プレハブ化のメリット

  • 工期短縮:現場での組立時間が短くなり、工程がスムーズになります。
  • 人手不足対策:鉄筋工の高齢化や職人不足への対応として有効です。
  • 品質の安定:作業環境が整った工場内で製作されるため、寸法や組立精度が安定します。
  • 安全性の向上:現場での高所作業や複雑な組立作業が減り、事故のリスクも低減します。

留意点と導入時の注意

プレハブ化は万能ではなく、適用にはいくつかの条件があります。

  • 輸送の問題:大型ユニットは搬送や現場への搬入に制約が出ることがあります。
  • 吊り上げと建て込み:現場での揚重機の選定や、吊り方によっては変形リスクがあります。
  • 接合部の精度:分割ユニットを現場でつなぐ際、継手の精度と強度が重要です。
  • コストバランス:製作費や運搬費も加味し、現場組立と比較してコスト面を検討する必要があります。

ユニット鉄筋は新たな施工の選択肢

プレハブ鉄筋は、i-Constructionの一環としても注目されており、建設現場の省人化や生産性向上を目的とした取り組みのひとつです。設計段階からユニット化を想定しておくことで、より合理的で安定した工事計画が立てられます。

ユニット鉄筋の導入は、単に現場作業を工場に移すというだけでなく、「設計・生産・施工」の一体管理を求められる新しい考え方とも言えます。

鉄筋かご工事のポイント

鉄筋かごは、構造物の中で目に見えなくなる部分ですが、その品質が建物の強さや長持ちに直結します。基本に忠実な施工を行い、設計通りに仕上げることが、結果的に手戻りを防ぎ、信頼性のある工事につながります。

品質管理のため材料と加工を確認する

鉄筋は必ずJIS規格に適合したものを使い、ミルシートや圧延マークで確認します。切断や曲げ加工は常温で行い、指定の形状・寸法を守ります。見落とされがちですが、材料段階での確認と加工精度が、すでに品質を左右しています。

組立では精度と安定性を重視する

組立時には、交差部をしっかりと結束し、寸法ズレや変形が起きないようにします。スペーサーを正しく取り付けて、かぶり厚さを確保することも忘れてはいけません。点付け溶接のような禁止行為は、たとえ効率が良く見えても、長期的なトラブルの原因になります。

配筋検査は細かい点まで丁寧に

鉄筋かごはコンクリートで包まれてしまうため、後から確認や修正ができません。だからこそ、配筋検査は細かい点まで丁寧に行います。特に、継手、定着、間隔、位置、かぶり厚さといった項目は、チェックリストに基づいて一つずつ確認することが基本です。

プレハブ化の導入には準備が不可欠

プレハブ鉄筋を使う場合は、設計段階からの計画が重要です。運搬や揚重の方法、設置スペース、ユニット間の接合設計など、工場製作と現場施工の連携を前提とした段取りが必要になります。

適切な準備をしてプレハブ化を活用すれば、現場の負担を減らしつつ、安定した品質を保つことができます。

鉄筋かごの正しい施工が構造物の信頼性を支える

鉄筋かごは、建物の骨組みとして構造の安全を支える大切な部材です。設計通りの加工、正確な組立、かぶり厚さの確保、適切な検査といった基本を守ることで、長く安心して使える構造物につながります。

プレハブ化の活用も進む中で、品質と効率の両立が求められています。現場ごとの条件に応じた判断と、丁寧な施工管理が信頼性を高めるポイントです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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