- 作成日 : 2025年5月1日
労災の現認者とは?一人親方の場合は誰になる?手続きも解説
労災(労働災害)の現認者とは、労災事故が発生した際に事故の現場に居合わせた人や、事故を最初に報告を受けた人を指します。労災保険の申請では、「事故が業務中または通勤時に発生したこと」を証明するために、現認者の記載が求められます。この記事では、労災における現認者の役割や、一人親方の場合の現認者、該当者がいない場合の対応、必要な書類や手続きについて詳しく解説します。
目次
労災の現認者とは?
現認者とは、労災事故の現場にいた、または事故を最初に知った第三者のことです。事故が業務中や通勤時に発生したことを証明するために必要な存在であり、労災申請の際に現認者の記名が求められます。
労災の現認者に該当する人
労災の現認者は、事故の発生を目撃した同僚や上司、元請会社の責任者や担当者などが該当します。
主に労災事故の現認者となるのは、次のような人々です。
- 事故を直接目撃した同僚や上司
- 事故を目撃していなくても、同じ現場にいた人
- 事故の報告を最初に受けた担当者や元請け会社
- 通勤途中の事故であれば、事故の報告を最初に受けた人 など
例えば、工事現場で作業員が転落した場合、目撃した同僚や、事故の報告を受けた現場監督が現認者となります。
現認者の記入が必要とされる理由
労災申請では「業務中や通勤時の事故」であることが重要です。そのため、誰かが「仕事や通勤以外の原因ではない」ことを確認している必要があります。現認者がいなければ、審査が厳しくなり、場合によっては申請が認められない可能性もあります。
労災申請を行う際には、申請書類に現認者を記入し、労働基準監督署に提出する必要があります。
厚生労働省のサイトから、現認証明書をダウンロードできます:現認証明書ダウンロード
一人親方の場合の現認者は誰になる?
一人親方の場合、現認者となるのは事故の報告を受けた元請会社の担当者や責任者であることが一般的です。また、同じ現場で作業していた職人や協力会社の人が、事故を目撃していた場合、その人が現認者となることもあります。
現認者に該当する人がいない場合
一人で作業していた場合、事故を目撃した人がいないこともあります。その場合は、労災の申請時に「現認者なし」として申請することも可能です。
ただし、現認者がいない場合、労災が業務中の事故であることを証明するために、追加の書類や事故の状況説明が求められることがあります。
現認者の記載が必要な労災の関係書類
労災申請を行う際には、労災保険の関係請求書の様式に沿って書類を記入し、療養を受けた病院、または労働基準監督署に提出する必要があります。現認者の記入が求められる書類として、療養給付の請求書(「様式第5号」「様式第16号の3」)と療養の費用の請求書(「様式第7号」「様式第16号の5」)があります。一人親方の場合も、特別加入団体を通じて必要な書類に適切に記入することが求められます。
労災様式第5号、様式第16号の3
労災様式第5号および16号の3は、労災指定病院で療養給付を受けるために必要な書類であり、事故の詳細や関係者の情報を記載します。
書類を病院に提出することにより、労災保険によって診療を受けることができます。
【記載項目(一部)】
- 事故の発生日時と事故現場の住所
- 負傷者の氏名・住所・職種
- 事故の発生状況(どのように負傷したか)
- 現認者の氏名・職名(該当者がいる場合)
- 事業主または事業主の代理となる担当者の証明
労災様式第7号、様式第16号の5
労災様式第7号および16号の5は、労災指定病院以外で診療を受けた場合に、療養費用の請求を行うための書類です。労働基準監督署に提出することで、労災保険を利用した療養を受けることができます。
記載項目としては、様式5号・16号の3の事項に加えて、医師の証明や振込口座などを記載する必要があります。
書類名 | 内容 | 提出先 |
---|---|---|
療養(補償)給付たる療養の給付請求書(様式第5号、様式第16号の3) | 労災の療養給付を受けるための請求書 | 診療を受けた病院 |
療養(補償)給付たる療養の費用請求書(様式第7号、様式第16号の5) | 労災による療養にかかった費用の請求書 | 労働基準監督署 |
参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
一人親方の場合、特別加入団体が用意する書類
一人親方が労災申請を行う際は、労災保険に加入している特別加入団体を通じて、必要な書類を提出するのが一般的です。特別加入団体は労災事故の報告や給付申請のサポートを行う団体で、労災事故の際には事故報告や給付申請の手続きを支援しています。
一人親方が労災申請を行う際の基本的な流れとしては、以下の通りとなります。
- 特別加入団体に労災事故報告書を提出する
- 特別加入団体から、労災申請の必要書類が送られてくる
- 必要書類を記入して、労働基準監督署等に提出する
特別加入団体ごとに書類の形式が異なるため、所属する団体の指示に従い、適切に提出しましょう。
一人親方が仕事中に事故を起こした場合、元請け会社の労災保険を利用できるのではと考えがちですが、労災保険は雇用されている人のみに適用されるため、一人親方は対象外です。ただし、一人親方として働く際、仕事中の安全確保は自身の責任ですが、現場全体の安全管理については元請け会社にも一定の責任があります。
元請け会社との契約内容や現場の管理状況によっては、安全に配慮しなければならない義務に違反したとされることもあります。
一人親方の仕事中に傷病が発生して労災申請をする流れ
一人親方が業務中の傷病について労災申請の手続きを行う流れを説明します。適切な手続きを行うことで、労災保険の給付をスムーズに受けられます。
病院で労災保険の利用を申告する
傷病が発生した際は、スムーズに労災の給付を受けるためにできるだけ労災指定病院で受診をしましょう。労災指定病院であれば「業務中の傷病のため健康保険は使用せずに労災保険を使用する」と申し出ることで、基本的に自己負担なしで治療を受けられます。
事故を労災の特別加入団体へ報告する
一人親方が労災保険に加入している場合、特別加入団体に事故報告を行います。事故報告書には以下の事項等を記入します。
- 事故発生日時
- 事故現場の住所
- 負傷者の所属や職種
- 事故の詳細な状況
- 現認者の有無
特別加入団体から必要書類を受け取る
特別加入団体に事故を報告すると、労災申請に必要な書類が交付されるため、書類に必要事項を正確に記入します。
書類を提出し給付を申請する
書類の準備ができたら、労働基準監督署または療養を受ける病院に提出し、必要な給付の給付申請を行います。労働基準監督署で審査が行われ、問題がなければ労災保険の給付が確定します。
労災申請を円滑に進めるために
労災申請では、給付の内容によって現認者の記入が必要な場合があります。一人親方の場合は特別加入団体を通じて申請することが多く、事故発生時には速やかに報告し、手続きを進めることが大切です。労災事故後は、まずは特別加入団体に正確な情報を伝えましょう。また、必要書類を揃えて労働基準監督署等に提出することで、スムーズに給付を受けることができます。事故が発生した場合は、慌てずに対応し、スムーズな申請を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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