• 作成日 : 2025年3月21日

建築基準法とは?主な内容や改正をわかりやすく解説

建築基準法は、建物の安全性や周辺環境との調和を確保するための法律で、国土交通省が所管し、都市の発展と住環境の保護を両立させることを目的としています。

例えば、住宅地に工場を建てることが制限されるのも、この法律によるものです。また、建築確認や完了検査の手続きが義務化されており、基準を満たさない建物の建築は禁止されています。この記事では、建築基準法の主な内容や改正点についてわかりやすく解説します。

建築基準法とは?

建築基準法は、日本国内の建物やその周辺環境を安全かつ快適に保つための法律です。国土交通省が所管しており、建物の構造や配置などについて最低限守るべき基準を定めています。この法律の目的は、災害時の被害を減らし、住民が安全で快適に暮らせる環境を維持することにあります。

例えば、住宅地に工場を建設することが制限されているのは、騒音や大気汚染から住環境を守るためです。建築基準法は単なる建物の基準を定めるだけでなく、地域全体の暮らしやすさを考慮した法律です。

建築物には「建築確認」と「検査」が必要

建築基準法では、建物を新築・増築・改築する際には「建築確認」という事前審査を受ける必要があります。これは、設計図や建築計画が法律に適合しているかどうかを確認する手続きです。

特に耐震性能や防火性能、建ぺい率などの基準は厳しくチェックされます。また、一人親方として小規模な工事を行う場合でも、建築確認が必要なケースがあるため注意が必要です。

【建築確認の流れ】

  1. 建築確認申請:設計図書を提出し、法律の基準を満たしているかを確認
  2. 中間検査:工事の途中段階で、主要構造部が計画どおりに進んでいるかを確認
  3. 完了検査:工事終了後に最終検査を実施し、建築物が基準に適合しているか確認

この検査を通じて、災害リスクを抑え、安全性の高い建物が建設される体制が整えられます。

建築基準法は単体規定と集団規定から成り立つ

建築基準法は、大きく分けて「単体規定」と「集団規定」の2つのルールで構成されています。単体規定は建物そのものの基準を定め、集団規定は周辺環境との調和を図るものです。

単体規定(建物の基準)

建築基準法の単体規定とは、建物自体の安全性や快適性を確保するための基準です。建物の構造や設備、敷地の使い方などが規定されています。

単体規定には以下のような基準が含まれます。

  • 耐震性能:地震に耐えられる建物の強度を確保します。
  • 防火性能:火災の延焼を防ぐため、耐火構造や防火構造の基準を定めています。
  • 採光と換気:建物内の快適さを保つため、居室には十分な採光や換気が必要です。

これらの基準に適合していない場合、建築確認が下りないため、工事を始めることはできません。例えば、木造の一戸建て住宅を建てる場合でも、一定規模以上であれば構造計算が義務付けられ、耐震基準を満たす必要があります。

単体規定の具体例

  • 地震に備えた住宅の耐震設計
  • 床面積が広いビルでの防火壁の設置
  • 換気扇の設置による室内の換気確保 など

集団規定(周辺環境の基準)

建築基準法の集団規定は、建築物の配置や用途、高さ制限などを通じて、地域全体の調和を保ち、安全性を確保するための基準です。

地域の景観や防災対策のため、集団規定には以下のような規制があります。

  • 用途地域:建築可能な建物の用途が、都市計画法に基づく用途地域ごとに制限されます。
    例:第一種低層住居専用地域では住宅は建築可能ですが、工場や大型商業施設の建設は制限されます。
  • 建ぺい率と容積率:敷地面積に対する建築面積の割合(建ぺい率)や、建物の延べ床面積の割合(容積率)を制限し、地域の安全性や住環境を確保します。
  • 道路と接道義務:建築物の敷地は、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません。これにより、緊急時の避難経路や消防車の進入路を確保します。

例えば、都心部の住宅地では、建ぺい率が50%に設定されることが多く、敷地面積の半分以上を建物で覆うことができません。また、建築物の高さ制限や日影規制が設定されることもあり、これにより街並みや住環境が維持されます。

集団規定が適用される具体例

  • 周辺住宅地との調和を考えた低層住宅の建設
  • 商業地域での高層ビルの建設計画
  • 道路幅員に基づいた建物高さの制限

建築基準法の主な用語と意味

建築基準法では、建物や敷地、工事に関わる専門用語が多く使用されます。以下では、初心者にも理解しやすいように主な建築基準法の用語の意味を解説します。

1. 建築物・特殊建築物

建築物は、建築基準法において「土地に定着する建造物」を指します。住宅やビル、工場などが該当します。

特殊建築物は、多くの人が利用する建物や危険物を扱う施設を指します。劇場、学校、病院、デパート、老人ホームなどが含まれます。

特殊建築物の例

  • 劇場や映画館(不特定多数が利用する施設)
  • 老人ホームや病院(特定の人々の安全確保が必要な施設)
  • 倉庫や工場(用途に応じて防火性能が求められる施設)

2. 建築面積

建築面積とは、建築物の外壁(または柱)の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を指します。

例えば、1階部分が60㎡の住宅であれば、建築面積は60㎡です。ただし、庇やバルコニー、屋根付きの車庫・玄関ポーチの一部は、建築面積に算入される場合があります。

建築面積の計算ポイント

  • バルコニーや庇(ひさし)は一部を除き、建築面積に含まれません。
  • 車庫や玄関ポーチも条件により含まれることがあります。

3. 延べ床面積(建物面積)

延べ床面積は、建築物の各階の床面積の合計を指します。2階建ての住宅で1階が50㎡、2階が50㎡であれば、延べ床面積は100㎡になります。延べ床面積は容積率の計算に用いられますが、駐車場・地下室など一部の用途については算入されない場合があります。

4. 敷地面積(土地面積)

敷地面積は、建物を建てる土地全体の広さのことです。この敷地面積に基づいて、建ぺい率や容積率が計算されます。一戸建て住宅であれば、庭や駐車場を含む土地の広さが敷地面積になります。

5. 居室

居室は、建築基準法において「居住、作業、集会、娯楽などのために使用する部屋」と定義されている空間です。例えば、住宅のリビングルームや寝室がこれに該当します。廊下やトイレは居室に含まれません。居室には、以下の基準が設けられています。

  • 採光:居室には、床面積の1/7以上の採光窓が必要です。
  • 換気:自然換気が可能な窓や換気設備の設置が義務付けられています。

6. 主要構造部

主要構造部は、建物の骨組みを支える重要な部分のことです。柱、梁(はり)、壁、床、屋根などが含まれます。主要構造部は耐震性や防火性能を左右するため、建築基準法で厳しい基準が設けられています。

7. 耐火構造・準耐火構造

耐火性能は、火災時の安全性に関わる基準です。

  • 耐火構造:火災に一定時間耐える構造。
  • 準耐火構造:耐火構造より耐久時間が短いが、一定の安全性を持つ構造。

8. 防火構造

防火構造は、火災の拡大を防ぐための建物の構造です。延焼を防ぎ、周辺建物への被害を軽減する目的で使用されます。

9. 耐火建築物・準耐火建築物

これらは、火災時に特定の耐久時間を持つ建物のことです。

  • 耐火建築物:耐火性能が最も高い建物。
  • 準耐火建築物:耐火建築物より耐久時間は短いが一定の性能を持つ。

10. 容積率

容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合を指し、用途地域によって制限されます。例えば、敷地面積150㎡で容積率200%の場合、建築できる延べ床面積は300㎡(150㎡×200%)です。ただし、「斜線制限」や「日影規制」などのルールがあり、最大限の延べ床面積を確保できるとは限りません。また、最低敷地面積の制限があり、一般的な住宅では100㎡以上と定められることが多いです。

11. 建ぺい率(建蔽率)

建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た際の面積)の割合を指します。例えば、敷地面積165㎡で建ぺい率60%の場合、建築面積は最大99㎡となります。
用途地域ごとに制限があり、一般的に住宅地では50%~60%、商業地域では80%など高密度な地域では建ぺい率が高くなります。また、角地や防火地域では、10%の緩和措置が適用されることもあります。

12. 建築主事

建築主事とは、都道府県知事または市町村長が任命する公務員で、建築確認の審査や工事完了後の検査など、建築行政事務を行う権限を持つ職員です。建築基準法に基づき、建築計画が適正かどうかを審査し、違反がないかを確認します。

13. 特定行政庁

特定行政庁とは、建築基準法に基づいて建築確認や規制を行う地方自治体のことで、都道府県知事または指定された市町村の長がその権限を持ちます。国土交通省の管轄のもと、それぞれの自治体が地域に適した運用を行っています。

建築基準法の単体規定の主な内容

建築基準法の単体規定は、建物そのものに関する基準を定めたものです。耐震性や防火性能、敷地の条件など、安全で快適な建築物を実現するためのルールが含まれています。

敷地

建物を建てる際には、敷地に関するさまざまな条件が定められています。その中でも、「最低敷地面積」という規定があり、用途地域ごとに建築可能な最小の敷地面積が決められています。例えば、住宅などの第一種低層住居専用地域では「100㎡以上」といった制限が設けられることがあります。この場合、敷地面積が100㎡未満の土地には、原則として建物を建てることはできません。

【最低敷地面積の具体例】

用途地域最低敷地面積の例
第一種低層住居専用地域100㎡~200㎡
第一種・第二種中高層住居専用地域80㎡~150㎡
商業地域制限なし~60㎡程度

耐震基準

耐震基準は、地震が多い日本で建物の安全性を確保するために設定された構造上のルールです。建築基準法では、地震の揺れに対する建物の強さを定めており、1981年の改正を境に「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分かれます。

現行の耐震基準(1981年改正以降)

現在の耐震基準は1981年に改正され、震度5程度の地震では重大な損傷を受けず、震度6~7の大地震でも人命に危険を及ぼす倒壊が起こらないことを目標としています。これを新耐震基準と呼びます。

  • 旧耐震基準(1981年以前):震度5程度の地震に耐えられる設計
  • 新耐震基準(1981年改正以降):震度6~7でも倒壊しない構造

1981年以前に建てられた建物は、耐震基準を満たしていない可能性があるため、改築や耐震補強が必要になることがあります。特に、旧耐震基準で建てられた住宅については、耐震診断を受けることが推奨されています。

防火

防火基準は、火災の発生や延焼を防ぐために設けられた規制で、建物の用途(住宅・商業施設・工場など)や立地(住宅地・商業地・工業地など)によって求められる防火性能が異なります。

防火地域と準防火地域

建築基準法では、防災対策として「防火地域」と「準防火地域」が指定され、それぞれ建築可能な建物の条件が決められています。

  • 防火地域:都市計画で指定され、火災に強い耐火建築物のみ建築可能
  • 準防火地域:一定の防火性能を持つ準耐火建築物や防火構造の建築が必要。

例えば、防火地域は火災リスクの高い商業地域や建物が密集するエリアに指定されることが多く、鉄筋コンクリート造の耐火建築物のみが認められます。一方、準防火地域では木造住宅の建築も可能ですが、防火性能の高い外壁や屋根の使用が義務付けられています。

その他

建築基準法の単体規定には、その他にも以下のような基準が含まれています。

採光と換気の基準

居室には一定の採光(窓の大きさ)と換気設備が必要とされます。例えば、居室の窓の面積は床面積の1/7以上と定められています。これは、健康的な居住環境を維持するためのルールです。

バリアフリー基準

高齢者や障がい者が利用しやすい建物を増やすため、バリアフリー法に基づいた基準が導入されています。例えば、新築の公共施設ではエレベーターの設置や段差の解消が求められます。

建築基準法の集団規定の主な内容

建築基準法の集団規定は、建物が周辺環境と調和し、安全で快適な街づくりができるようにするためのルールです。道路との関係、建ぺい率や容積率の制限、用途地域による建物の用途制限などが含まれています。

道路

建築基準法では、敷地と道路の関係について定められており、都市計画や防災対策に大きく関わる重要な規定となっています。適切な道路条件を満たしていないと、建築確認を受けることができず、工事ができない場合があります。以下に、主要な規定を解説します。

接道義務

建物を建築する敷地は、幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。これを接道義務といいます。この規定は、火災時の避難経路や消防車が進入できる道を確保するために定められています。例えば、狭い路地に面した土地で接道義務を満たしていない場合、建築確認が下りず、工事を行うことができません。

道路後退(セットバック)

敷地が接する道路の幅が4m未満の場合、道路中心線から2m後退したラインまでを道路とみなす必要があります。これをセットバックと呼びます。例えば、道路幅が3mしかない場合、敷地の一部を道路として提供しなければならず、その部分には建築物を建てられません。

ただし、既存の建築物がある場合や特定の条件を満たす場合には、自治体の判断で緩和措置が適用されることもあります。 そのため、事前に自治体へ確認することが重要です。

建物の建ぺい率・容積率

建物の建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物が占める割合)のことです。例えば、敷地面積100㎡で建ぺい率60%の場合、建築面積は最大60㎡までとなります。

建ぺい率の主な目的は、防災対策や採光・通風の確保です。過密な建築を防ぎ、適切な空地を確保するために設定されています。

一方、容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合を示す数値です。例えば、敷地面積150㎡で容積率200%の場合、延べ床面積は最大300㎡(150㎡×200%)まで建築できます。
容積率は、土地の有効利用を図りながら、地域ごとの環境バランスを保つために設定されています。

建ぺい率・容積率の一般的な設定

用途地域ごとに建ぺい率・容積率の上限が定められており、都市計画に応じた制限が課されています。

用途地域建ぺい率の目安容積率の目安
第一種・第二種低層住居専用地域30%~60%50%~200%
第一種・第二種中高層住居専用地域40%~60%100%~300%
近隣商業地域60%~80%200%~400%
商業地域80%300%~1,300%
工業地域50%~70%100%~500%

例えば、第一種低層住居専用地域では、住宅が過密にならないように、建ぺい率50%、容積率100%といった制限が設けられることが一般的です。

建物の用途に制限がある地域(用途地域)

用途地域とは、都市計画法に基づき、建築可能な用途を制限する区域のことです。これにより、住宅地には工場を建てられないなど、快適な街づくりが進められています。

用途地域の種類

用途地域は、住居系・商業系・工業系の3つの大分類に分けられ、全部で13種類あります。

用途地域の種類建築できる主な建物
第一種低層住居専用地域一戸建て住宅・小規模な店舗など
第二種低層住居専用地域一戸建て住宅・小規模な飲食店など
第一種中高層住居専用地域マンション・病院・大学など
第二種中高層住居専用地域商業施設・オフィスビルなど
近隣商業地域スーパー・飲食店・マンションなど
商業地域デパート・ホテル・オフィスビルなど
準工業地域住宅・小規模工場など
工業地域工場・倉庫など
工業専用地域大規模な工場のみ

例えば、第一種低層住居専用地域では、工場や大規模な商業施設は建設できません。一方、商業地域では高層ビルやホテルの建築が可能となります。

建築基準法では工事前に「建築確認」が必要

建築基準法では、建物を新築・増築・改築する際には、工事を始める前に「建築確認」を受ける必要があります。これは、建築計画が法律の基準に適合しているかどうかを事前に審査する制度です。建築確認を取得せずに工事を行うと、罰則や是正命令の対象となるため注意が必要です。

建築確認の対象となる建築物

建築確認が必要な建築物は、用途や規模によって決められています。以下に該当する場合は、建築確認を取得しなければなりません。

1. 新築・増築・改築する建築物

  • 原則として、床面積が10㎡を超える建物(例えば、小規模な倉庫や物置も該当)。ただし、都市計画区域内では、用途によっては10㎡以下でも建築確認が必要となる場合がある。
  • 都市計画区域内、準都市計画区域内に建つ建物。

ただし、2025年4月の建築基準法改正により、「4号特例」が縮小され、一定の木造建築物にも建築確認の義務が適用される予定です。これにより、従来は確認申請が不要だった建築物の一部に、新たに申請義務が生じる可能性があります。詳細は最新の法令を確認してください。

2. 特殊建築物や大規模建築物

  • 劇場、ホテル、学校などの特殊建築物。
  • 延べ床面積500㎡以上、または高さ13mを超える建物。

商業施設やマンションなどの大規模建築物も対象となり、建築確認では耐震性能や防火性能が厳しくチェックされます。

3. その他の構造物

  • 高さが一定以上の塀や看板など、周囲に影響を与える構造物。

「建築確認」が必要な建築物の手続き方法

建築確認の手続きは、以下の流れで進められます。

1. 設計図書の作成と提出

設計者が建物の設計図を作成し、必要な書類を添えて提出します。提出先は、自治体または国土交通大臣の指定を受けた指定確認検査機関です。どちらが審査を行うかは、建築主が選択できます。

2. 書類審査

提出された設計図や書類が、建築基準法や関連法令に適合しているか確認されます。例えば、以下の点がチェックされます:

  • 建ぺい率や容積率が基準内か。
  • 耐震性能や防火性能が適切か。
  • 敷地が接道義務を満たしているか。

3. 建築確認済証の交付

審査を通過すると、「建築確認済証」が発行されます。この証明書が発行されて初めて工事を開始できます。

4. 工事中の中間検査と完了検査

建物の安全性を確認するため、工事中に中間検査が行われる場合があります。また、工事が完了した際には、建物が設計通りに建てられているか確認する完了検査が必要です。完了検査に合格すると、検査済証が交付されます。

建築基準法に違反した建築物の罰則(ペナルティ)

建築基準法に違反した建築物には、罰則や是正措置が科されます。建築確認を取得せずに工事を進めたり、基準を超えた建物を建てた場合には罰金や取り壊し命令が発生する場合もあります。

建築基準法違反のケース

建築基準法違反には、主に以下のようなケースがあります。

  1. 無許可での建築工事
    • 建築確認を受けずに工事を開始した場合
    • 建物の床面積や建ぺい率が規定を超えている場合
  2. 設計や施工の不備
    • 設計図通りに建築されていない場合
    • 耐震基準や防火性能を満たしていない建物
  3. 用途地域の違反
    • 住宅専用地域に工場や商業施設を建設するなど、用途地域の制限に違反した場合
    • 違反が確認されると、特定行政庁(自治体)から工事の中止命令が出される
    • 従わない場合は、是正命令や使用禁止命令、除却命令(違反建築物の撤去命令)が発令されることがある
    • 重大な違反が是正されない場合、建物の全部または一部の撤去命令が下されることがある
    • 建築基準法第99条に基づき、100万円以下の罰金または3年以下の懲役が科される場合がある
    • 命令に従わない場合、行政代執行(自治体が強制的に違反部分を撤去し、費用を所有者に請求)されることもある

建築基準法違反を避けるために

建築基準法違反を避けるためには、事前の確認が欠かせません。まず、設計段階で建ぺい率や容積率、用途地域の条件を正確に把握し、建築士や施工業者と連携しながら、建築基準法に適合した計画を立てることが大切です。

また、自治体や建築主事に相談し、計画が基準を満たしているか確認することで、違反を未然に防ぐことができます。

【令和7年4月~】建築基準法の改定

令和7年4月から、建築基準法の一部が改正されます。この改正では、4号特例の縮小、省エネ基準の適合義務化、木造建築物の防火規制の強化などが主な変更点となります。特に、小規模工務店や一人親方に影響する改正が含まれるため、事前の確認が重要です。

耐震基準の強化

令和7年4月の改正では、木造建築物の構造計算基準が変更されます。

  • 構造計算が必要となる木造建築物の範囲が拡大
    これまで構造計算が不要だった一部の木造建築物(2階建て以下、高さ16m以下、延べ面積300m²以下)にも、構造計算の義務が適用される予定です。
  • 木造の中高層建築物(3階建て以上)の耐震基準の見直し
    中高層の木造建築物について、耐震性能の強化が求められる新たな基準が設けられます。
  • 既存建築物の耐震診断の義務化
    特定の用途地域にある建築物の耐震診断が義務化される可能性があり、老朽化した建物の耐震改修が促進されることが期待されています。

防火基準の見直し

都市部での火災リスクを軽減するため、防火性能の基準も強化されます。

  • 準防火地域における木造建築の規制強化
    住宅密集地での火災拡大を防ぐため、準防火地域における木造建築物の外壁・屋根材の防火性能が強化されます。
  • 特殊建築物の防火対策の強化
    劇場やホテルなどの不特定多数が利用する建築物について、スプリンクラーの設置義務が拡大される見込みです。

省エネルギー基準の強化

脱炭素社会の実現に向けて、建築物の省エネルギー基準が強化されます。

  • すべての新築建築物に省エネ基準適合義務が生じる
    これまで小規模な住宅では努力義務だった省エネ基準適合が、すべての新築建築物で義務化されます。建築確認手続きの際に、省エネ基準への適合性審査が実施され、基準を満たさなければ着工できません。
  • 再生可能エネルギー設備の導入促進
    特定の用途や地域において、新築建築物には太陽光発電設備の設置が義務化される場合があります。これにより、エネルギー消費量の削減が図られます。

建築確認の手続き簡素化

建築確認手続きの簡素化が進む一方で、「4号特例の縮小」により、これまで建築確認申請が不要だった一部の建築物でも申請が必要になります。

  • 4号特例の縮小
    従来は建築確認申請が不要だった一部の小規模建築物についても、新たに確認申請が必要になります。これにより、設計や施工の安全性が向上するとされています。
  • 新2号建築物の創設
    木造2階建て、または延べ面積200㎡超の木造平屋建てが「新2号建築物」として分類され、新築・大規模な修繕・大規模な模様替えの際に、すべての地域で 建築確認申請が必要となります。
  • 建築確認手続きのデジタル化・簡素化
    オンライン申請の拡充により、建築確認の手続きが効率化され、審査期間が短縮される見込みです。特に、低リスクな建築物については審査が迅速化される予定です。

建築基準法を知り法改正に対応しよう

建築基準法は、建築物の安全性を確保し、周辺環境と調和させるために制定された法律で、耐震・防火・用途制限などの基準が定められています。

令和7年4月の改正では、4号特例の縮小、省エネルギー基準適合の義務化、大規模木造建築物の防火規定変更が主な改正点となります。特に、小規模な木造建築物でも構造計算が必要になるケースが増えるため、建築確認申請の手続きが変更される可能性があります。

新たな基準に対応するためには、建築計画の段階で最新の法改正を確認し、必要な手続きを適切に行うことが重要です。小規模な工事でも改正の影響を受ける可能性があるため、自治体や専門家に相談しながら進めましょう。


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