• 作成日 : 2026年10月29日

損益分岐点比率とは?計算式や目安・改善方法を解説

Point損益分岐点比率とは何を示す指標?

損益分岐点比率とは、実際の売上高に対して損益分岐点売上高が何%を占めるかを示す経営指標で、低いほど売上減少への耐性が高いです。

  • 計算式は「損益分岐点売上高÷売上高×100」
  • 100%超は現在の売上が採算ラインに未達
  • 小規模企業の平均は96.7%(2026年版白書)

Q. 損益分岐点比率を下げるにはどうすればよいですか?
A. 固定費の削減・変動費率の引き下げ・売上高の増加の3つが主な改善方法です。

損益分岐点比率とは、実際の売上高に対して、利益がゼロになる「損益分岐点売上高」がどの程度を占めているかを示す経営指標です。数値が低いほど売上が減少しても赤字になりにくく、経営に余裕があると判断できます。

損益分岐点比率を計算するには、固定費や変動費、変動費率などの意味も理解しておかなければなりません。

本記事では、損益分岐点比率の意味や計算式、目安などを解説します。

損益分岐点比率とは?

損益分岐点比率とは、現在の売上高に対して、赤字にならないために最低限必要な売上高が何%を占めているかを表す指標です。 数値が低いほど売上減少に耐えやすく、100%に近づくほど少しの売上減少でも赤字になりやすくなります。経営の収益性や安全性を確認するときに利用できます。

損益分岐点比率は売上減少への耐性を表す

損益分岐点比率を見ると、現在の売上がどこまで下がると赤字になるのかを把握できます。たとえば、年間売上高が1,000万円、損益分岐点売上高が800万円であれば、損益分岐点比率は80%です。売上高が現在の80%程度まで下がると利益がゼロになり、さらに下がれば赤字になります。

一方、損益分岐点比率が98%なら、売上がわずか2%程度落ちただけでも損益分岐点に達します。同じ売上規模の会社でも、損益分岐点比率が低い会社ほど経営上の余裕が大きいと考えられます。日本政策金融公庫も、100%より低ければ一定の売上低下があっても採算を維持できる一方、100%に近ければ売上低下によって赤字になりやすい指標として説明しています。

参考:主な財務指標項目の説明|日本政策金融公庫

損益分岐点売上高とは意味が異なる

損益分岐点売上高は「金額」、損益分岐点比率は「割合」を示す点が違います。損益分岐点売上高とは、売上高と費用がちょうど一致し、利益がゼロになる売上高です。たとえば年間の損益分岐点売上高が800万円なら、800万円を超える売上を確保すれば利益が生じ、800万円を下回れば損失が生じます。

これに対して損益分岐点比率は、その800万円が現在の実際の売上高に対して何%なのかを示します。

指標 表すもの 例
損益分岐点売上高 利益がゼロになる売上金額 800万円
実際の売上高 現在の売上 1,000万円
損益分岐点比率 損益分岐点売上高÷実際の売上高 80%

両方を確認すると、「いくらまで売上が下がると赤字になるのか」と「現在の売上にどの程度余裕があるのか」を把握しやすくなります。

損益分岐点比率の計算式は?

損益分岐点比率は「損益分岐点売上高÷実際の売上高×100」で計算します。損益分岐点売上高を求めるためには、費用を固定費と変動費に分け、変動費率を計算する作業が先に必要です。

固定費と変動費を分ける

最初に、事業で発生する費用を固定費と変動費に分類します。固定費とは、売上の増減にかかわらず一定程度発生する費用です。代表例として店舗や事務所の家賃、正社員の給与、システム利用料などがあります。

変動費は売上や販売数量の増減に伴って変化する費用で、商品仕入高や材料費、販売数量に連動する外注費などが該当します。

実際の費用には固定費と変動費の両方の性質を持つものがあります。2026年版小規模企業白書でも、統計上は販売費及び一般管理費を固定費、売上原価を変動費として計算しているものの、実際には販売費及び一般管理費の中に変動費、売上原価の中に固定費が含まれる場合があると注意を示しています。

参考:2026年版小規模企業白書|中小企業庁

損益分岐点売上高を計算する

損益分岐点売上高は「固定費÷(1-変動費率)」で求められます。

変動費率は、次の式で計算します。

変動費率=変動費÷売上高

たとえば、売上高1,000万円、変動費600万円、固定費300万円の場合、変動費率は60%です。

この場合の損益分岐点売上高は、

300万円÷(1-60%)=750万円

となります。

つまり、この会社は年間750万円を売り上げると収益と費用が一致し、それを超えた分から利益が発生する構造になっています。

なお、「1-変動費率」は限界利益率とも呼ばれます。「固定費÷限界利益率」として計算しても結果は同じです。

損益分岐点比率を計算する

損益分岐点売上高が分かれば、実際の売上高で割ることで損益分岐点比率を算出できます。

計算式は次のとおりです。

損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100

先ほどの例では、損益分岐点売上高が750万円、実際の売上高が1,000万円なので、

750万円÷1,000万円×100=75%

となります。

この会社の場合、現在の売上高の75%が損益分岐点です。単純化すれば、現在の売上から24%程度減少するまでは黒字を維持できる計算になります。

損益分岐点比率の目安はどのくらい?

損益分岐点比率は低いほど売上減少に対する余裕が大きく、100%を超えると損益分岐点売上高を実際の売上が下回っている状態です。 ただし、「80%以下なら優良」などの数値をすべての企業に共通する絶対的な基準として扱うのは適切ではありません。

100%未満なら損益分岐点を上回っている

損益分岐点比率が100%未満であれば、実際の売上高が損益分岐点売上高を上回っている状態です。たとえば、比率が70%なら、損益分岐点は現在の売上の70%に位置しています。これに対して95%なら、売上が5%程度減少すると損益分岐点に達する計算です。

したがって、同じ条件で比較するのであれば、70%の会社の方が95%の会社より売上減少への耐性が高いと判断できます。ただし、何%以下なら必ず経営状態が良いと決められるものではありません。製造業のように設備や人員などの固定費が大きい業種と、固定費が比較的小さい事業では、適正な水準も異なります。

100%を超えると現在の売上では採算が取れていない

損益分岐点比率が100%を超えている場合、現在の売上高が損益分岐点売上高を下回っています。たとえば、実際の売上高が1,000万円、損益分岐点売上高が1,100万円なら、損益分岐点比率は110%です。

1,100万円÷1,000万円×100=110%

この場合、現在の費用構造を前提にすると、少なくともあと100万円程度の売上を増やさなければ損益分岐点に届きません。

売上増加だけが対策ではありません。固定費を削減したり、仕入価格を見直して変動費率を下げたりすれば、損益分岐点売上高そのものを引き下げる方法もあります。

2026年版小規模企業白書では小規模企業が96.7%

2026年版小規模企業白書では、小規模企業の損益分岐点比率は96.7%とされています。

同白書では、財務省「法人企業統計調査年報」の令和6年度決算実績を基に企業規模別の損益分岐点を分析しており、企業規模が小さいほど損益分岐点比率が高い傾向が示されています。小規模企業では96.7%となっており、売上減少に対する余裕が比較的小さい状況です。

96.7%を自社の適正値としてそのまま採用するのではなく、同業他社との比較や自社の過去数年の推移を見るための参考値として扱う方が適しています。

損益分岐点比率が高くなる原因は?

損益分岐点比率が高くなる主な要因は、固定費の増加、変動費率の上昇、売上高の減少です。 「売上が足りない」と考えるのではなく、損益分岐点売上高を構成する固定費と変動費率まで分解すると、どこを改善すべきなのか判断しやすくなります。

固定費が大きくなっている

家賃や人件費などの固定費が増えると、損益分岐点売上高も上昇します。

限界利益率が40%の場合、固定費が300万円なら損益分岐点売上高は750万円ですが、固定費が400万円に増えると1,000万円まで上昇します。事業拡大に伴って社員を増やしたり、広い店舗へ移転したりした場合、売上が増えなければ損益分岐点比率が上昇する可能性があります。

固定費は売上が減っても短期間では減らしにくいため、将来の売上見通しと合わせて管理することが重要です。

変動費率が高くなっている

仕入価格や原材料費などが上昇し、変動費率が高くなると損益分岐点も上がります。たとえば売上高1,000万円に対して変動費500万円なら変動費率は50%ですが、仕入価格の上昇によって変動費が600万円になれば60%になります。

固定費が同じでも、限界利益率は50%から40%へ低下するため、固定費を回収するために必要な売上高は増加します。仕入価格が上昇したにもかかわらず販売価格を据え置いている企業では、売上高が変わっていなくても損益分岐点比率が悪化するケースがあります。

売上高が減少している

損益分岐点売上高が変わらなくても、実際の売上高が減れば損益分岐点比率は上昇します。損益分岐点売上高が800万円の会社で、売上高が1,000万円なら比率は80%です。しかし売上高が850万円まで減少すると約94.1%に上昇します。

つまり、コスト構造に変化がなくても、顧客数や販売数量の減少によって経営上の余裕は小さくなります。損益分岐点比率を見る際は、固定費や変動費だけでなく、売上高そのものの変化も合わせて確認すると原因を把握しやすくなります。

損益分岐点比率を下げるには?

損益分岐点比率を下げる方法は、大きく分けると「固定費を減らす」「限界利益率を高める」「売上高を伸ばす」の3方向です。 

固定費を見直して損益分岐点を下げる

固定費を削減すると、必要な売上高が小さくなり、損益分岐点比率を下げられます。家賃、通信費、保守契約、システム利用料などの固定費について、現在の事業規模に見合っているかを確認します。

ただし、人件費や広告費などを単純に削減すると、販売力やサービス品質が落ちて売上高まで減少する可能性があります。「金額が大きいから削る」のではなく、支出によって得られている売上や利益との関係を確認して判断する方法が適しています。

変動費の削減や販売価格の見直しで限界利益率を高める

1件の販売から残る限界利益を増やせば、同じ固定費でも損益分岐点売上高を下げられます。仕入先の見直し、原材料の使用量削減、物流効率化などによって変動費率を下げる方法があります。また、原材料費や人件費が上昇している場合には、販売価格の見直しによって限界利益率を維持する方法もあります。

単純な売上高だけを見るのではなく、「売上から変動費を差し引いた後にいくら残るのか」を確認すると、価格や商品構成の改善につなげやすくなります。

売上高を増やして比率を下げる

損益分岐点売上高が同じなら、実際の売上高を増やすことでも損益分岐点比率は下がります。損益分岐点売上高800万円、売上高1,000万円なら比率は80%ですが、売上が1,200万円になれば約66.7%です。

ただし、売上増加と同時に追加の人件費や広告費、設備費が発生すれば、損益分岐点売上高も変わります。「売上をいくら増やすか」だけではなく、「その売上増加によって限界利益がいくら増えるか」まで試算すると、より精度の高い経営判断ができます。

損益分岐点比率と安全余裕率はどう違う?

損益分岐点比率と安全余裕率は、同じ状況を反対側から見る指標です。 損益分岐点比率が「売上の何%まで下がると損益分岐点に達するか」を示すのに対し、安全余裕率は「現在の売上が何%減っても損益分岐点を下回らないか」を示します。

安全余裕率は売上が減少できる余裕を表す

安全余裕率は「(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高×100」で計算します。

たとえば売上高1,000万円、損益分岐点売上高800万円なら、

(1,000万円-800万円)÷1,000万円×100=20%

となります。

この場合、損益分岐点比率は80%、安全余裕率は20%です。

両者には原則として、

安全余裕率=100%-損益分岐点比率

という関係があります。

安全余裕率は高い方が売上低下への余裕が大きく、損益分岐点比率は低い方が余裕が大きいという違いがあります。

2つを使い分けると経営状態を理解しやすい

損益分岐点比率と安全余裕率は計算上ほぼ表裏の関係にあるため、目的に応じて分かりやすい方を利用できます。損益分岐点比率が80%なら、「現在の売上の80%まで下がると損益分岐点になる」と捉えられます。

同じ状態を安全余裕率20%で表せば、「現在の売上から20%程度までの減少なら利益が残る」と考えられます。

社内で経営リスクを説明する場合には、安全余裕率の方が直感的に理解しやすいケースもあります。一方、業界平均や企業規模別の数値と比較するときには損益分岐点比率が使いやすい場合があります。

損益分岐点比率を経営分析で使う際の注意点は?

損益分岐点比率は便利な経営指標ですが、1回計算した数値だけで経営状態を判断するのは適切ではありません。 固定費と変動費の分類方法によって計算結果が変わるほか、業種や事業モデルによって適正水準も異なります。

固定費と変動費の分け方で結果が変わる

損益分岐点分析では、費用をどう分類するかによって算出結果が変わります。たとえば人件費は一般に固定費として扱われる場合がありますが、販売量に応じて勤務時間が増減するパート・アルバイトの給与などは変動費に近い性質を持つことがあります。

水道光熱費のように基本料金と使用量に応じた料金が混在する費用もあります。

2026年版小規模企業白書の企業規模別データでも、統計上の便宜から販売費及び一般管理費を固定費、売上原価を変動費として算出していますが、実際の企業では異なる可能性がある旨が示されています。

業界平均だけでなく自社の推移も確認する

損益分岐点比率は、他社との比較だけでなく、自社の過去との比較にも利用できます。日本政策金融公庫の財務診断サービスでは、業界平均と自社の財務指標を比較する仕組みが提供され、損益分岐点比率も経営指標の一つとして扱われています。

たとえば前年80%だった比率が85%、90%と上昇している場合、売上減少や固定費増加、原価率上昇などによって収益構造が悪化している可能性があります。反対に比率が継続して低下しているなら、価格改定、原価改善、売上増加などの施策が収益構造の改善につながっている可能性を確認できます。

損益分岐点比率を定期的に確認して収益構造を把握しよう

損益分岐点比率は、現在の売上高に対して、利益がゼロになる売上高がどの程度を占めるかを示す経営指標です。 「損益分岐点売上高÷売上高×100」で計算し、原則として数値が低いほど売上減少への余裕が大きいと判断できます。

100%を超えている場合は、現在の売上が損益分岐点に届いていないため、売上増加だけでなく固定費の削減や変動費率の改善も検討します。

損益分岐点比率には業種や費用分類による差があります。単年度の数値だけを見るのではなく、安全余裕率や業界平均、自社の過去の推移と合わせて分析すると、経営上の課題や改善効果をより把握しやすくなります。

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