- 更新日 : 2026年2月19日
請求書支払いの効率化はどう進める?手順と自動化のポイントを解説
請求書支払いの効率化は、業務フローの標準化とシステムによる自動化の組み合わせで実現できます。
- 受領形式をPDF等の電子データに統一
- AI-OCRと銀行API連携で手入力を排除
- クラウド承認で場所を問わず処理完結
紙の請求書しか届かない場合は?
無理に電子化を依頼せず、受領後に即時スキャンして共有フォルダ等で一元管理するようにします。
請求書支払いの効率化は、業務フローの標準化と、システムによる自動化を組み合わせることで実現できます。この2つを徹底することで、経理担当者の作業時間は大幅に削減され、計算ミスや支払い漏れといったリスクも解消されるでしょう。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が定着したものの、依然として月初や月末に残業が発生している企業は少なくありません。本記事では、中小企業の経営者や経理担当者が今すぐ取り組める、実践的な支払処理の改善策について解説します。
目次
請求書支払いの業務が非効率になる主な原因とは?
請求書支払いの業務が停滞する要因として、紙媒体を中心とした確認作業と、属人化した承認プロセスにあります。
これらの要因が重なることで、情報の転記ミスや承認待ちの時間が発生し、全体の処理時間がかかります。
紙の請求書をシステムへ転記する
紙で受領した請求書は、会計システムやインターネットバンキングへ手入力で転記する必要があるため、多大な労力がかかります。
手入力には常にヒューマンエラーのリスクがつきまとうため、入力者だけでなく承認者による「読み合わせ」や「ダブルチェック」が必要となり、作業工数が2倍になります。
2023年10月1日から開始されたインボイス制度以降、適格請求書発行事業者の登録番号確認や、税率ごとの区分記載のチェックといった新たな確認項目が増加しました。これを目視で行うことは、精神的な負担も大きく、業務効率を著しく低下させる要因となっています。
押印のための出社など承認フローの複雑さ
支払処理における承認フローが複雑であることや、物理的な押印が必要なルールも業務を遅延させます。
「担当者→課長→部長→経理→社長」といった多段階の承認ルートが設定されている場合、誰か一人が不在であるだけで処理がストップします。
また、電子データで受け取った請求書をわざわざ印刷して回覧印を押すといったフローが残っている場合もあります。このようなフローでは、テレワークの阻害要因になるだけでなく、支払期限直前の駆け込み処理を誘発してしまうでしょう。
支払情報の消込と振込データ作成に手間がかかる
会計ソフト上の買掛金や未払金のデータと、実際の振込データ(全銀データ)が連動していない場合、二重入力の手間が発生します。
多くの企業では、会計システムに入力した後、同じ内容を銀行のインターネットバンキング画面で再度入力しています。この工程は単なる二度手間であるだけでなく、金額や振込先口座の入力ミスを招く危険なポイントです。
支払完了後の「消込作業」においても、通帳の記帳内容と請求書を照らし合わせる作業を手動で行っている場合、件数が増えるほどに処理時間は指数関数的に増加します。
請求書支払いを効率化するための具体的な方法とは?
請求書支払いを効率化するには、請求書の受領から支払実行までをデジタルデータで一気通貫させる「デジタルインボイス」の考え方を取り入れるのが近道でしょう。
部分的なツール導入ではなく、プロセス全体を見直すことで、根本的な業務改善につながります。
請求書の受領形式を電子データ(PDF等)に統一する
取引先に対して、請求書をPDFなどの電子データで送付してもらうよう依頼し、受領形式をデジタルに一本化します。
受領形式が紙と電子で混在している状態は、管理が煩雑になり最も非効率です。電子データであれば、紛失のリスクがなくなり、ファイリングの手間も不要になります。
多くの会計システムや請求書受領サービスが、メール添付された請求書を自動で取り込む機能を備えています。また、郵送で届いた紙の請求書についても、受領代行サービスを利用してスキャンし、データ化するアウトソーシング(BPO)を活用するのも一つの手段です。
AI-OCR搭載のシステムで入力業務を自動化する
受領した請求書データを、AI-OCR(光学文字認識)機能を持つシステムで読み取り、日付・金額・取引先名・インボイス番号などを自動でテキスト化します。
最新のAI-OCRは学習機能を持ち、読み取り精度が飛躍的に向上しています。
AI-OCRシステムを活用すれば、入力せずとも、AIが読み取った結果を確認するだけで済みます。これにより、入力での工数を削減できるだけでなく、適格請求書の要件を満たしているかどうかの判定もシステム側で補助してくれるため、法対応の負荷も軽減されます。
ワークフローシステムで承認プロセスを完結させる
クラウド型のワークフローシステムを導入し、請求書の確認から支払承認までを画面上で完結できるようにします。
システム上で承認依頼が飛ぶため、承認者は外出先や自宅からでもスマートフォンなどで内容を確認し、承認ボタンを押すだけで済みます。
また、金額や勘定科目に応じて承認ルートを自動で分岐させる設定を行えば、「誰に回せばいいか分からない」という迷いもなくなります。履歴が確実に残るため、内部統制の観点からも透明性が高まります。
インターネットバンキングとのAPI連携(FBデータ活用)
会計システムや請求書処理システムで作成した「総合振込データ(全銀フォーマット)」を、インターネットバンキングに取り込んで一括振込を行います。
さらに進んで、銀行APIと直接連携できるシステムであれば、ファイルのエクスポート・インポート操作さえ不要になり、システム上の「振込実行」ボタン一つで銀行への送信が完了します。
この仕組みを構築することで、銀行画面での手入力を完全に排除でき、金額相違や口座番号相違といった初歩的なミスをゼロにできます。
請求書支払いの効率化を進める3つのステップ
請求書の支払いフローを効率化させるためには、現状の業務フローを整理したうえで段階的にシステム移行することが大切です。
以下の3ステップで進めることで、現場の混乱を避けつつ確実な効果を得られます。
STEP1:現状の業務フローと課題の可視化
まず、請求書が会社に届いてから振込が完了するまでの全工程を書き出し、どこに時間がかかっているかを特定します。
「誰が」「いつ」「何を使って」作業しているかを洗い出しましょう。
| 工程 | 現状の作業内容 | かかっている時間 | 課題 |
|---|---|---|---|
| 受領 | 郵便物の開封、仕分け | 月5時間 | 紙の紛失リスク、担当者不在時の遅れ |
| 入力 | 会計ソフトへの手入力 | 月15時間 | 入力ミス、インボイス確認の手間 |
| 承認 | 紙にハンコを押して回覧 | 月3時間(待機含まず) | 上長不在でストップ、進捗不明 |
| 支払い | IBへの手入力 | 月4時間 | 二重入力、金額ミスの不安 |
このように可視化することで、「入力作業を減らしたいのか」「承認を早くしたいのか」、優先すべき課題が明確になります。
STEP2:最適なシステムの選定とルールの策定
自社の課題解決にマッチした請求書受領システムや会計システムを選定し、それに合わせた新しい業務ルールを決めます。
システムは機能だけでなく、「現場のスタッフが使いこなせるか」という操作性や、既存の会計ソフトとの連携可否を重視して選んでください。
また、システム導入に合わせて社内ルールも見直します。
- 請求書の締め切り日:
例)「毎月5営業日までにシステムへアップロード」と明確化する - ファイル形式の指定:
例)「原則PDFで受領し、紙の場合はスキャン担当を決める」 - 承認ルートの簡素化:
例)「10万円未満は課長承認のみでOK」とする
ルールを曖昧にしたままツールだけ導入すると、かえって現場が混乱する原因になります。
STEP3:スモールスタートでの試験運用と全社展開
最初から全取引先・全社で切り替えるのではなく、特定の部署や特定の取引先に限定して試験運用(スモールスタート)を行います。
例えば、「まずは通信費や光熱費などの定期的な請求書から始める」あるいは「経理部内の支払いから試す」といった形です。
試験運用で挙がった「使いにくい」「ここが分からない」という現場の声を拾い上げ、マニュアルを修正したり設定を見直したりします。運用が軌道に乗ってから対象範囲を広げることで、スムーズな全社展開が可能になります。
請求書の支払業務を外部に委託するという方法も
請求書支払いの効率化には、自社でシステムを運用する方法と、入力やスキャン自体を外部委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を併用する方法があります。
自社のリソースや取引量に応じて、最適な手段を選択しましょう。
自社完結型(SaaSシステム利用)が向いているケース
月間の請求書枚数が比較的少なく(数枚〜100枚程度)、経理担当者が社内に常駐している場合は、クラウドシステム(SaaS)を利用した自社完結型がコストパフォーマンスに優れています。
初期設定さえ済ませれば、月額数千円〜数万円程度のランニングコストで運用可能です。自社内にノウハウが蓄積されるため、イレギュラーな対応にも即座に判断を下せるメリットがあります。
BPO(アウトソーシング)の活用が向いているケース
月間の請求書枚数が数百枚を超える場合や、紙の請求書を減らせない取引先が多い場合は、BPOサービスの活用が効果的です。
BPOサービスでは、請求書の受取先を代行業者に指定することで、開封・スキャン・データ化までを全て任せることができます。
経理担当者は、納品されたデータを確認し、承認・支払いボタンを押すだけの状態になります。コストはかかりますが、繁忙期の残業代削減や、採用・教育コストの削減を考慮すると、トータルでは安価になるケースも多いです。
請求書支払いを効率化する際のよくある疑問
効率化を進めるにあたり、現場から上がりやすい懸念点や疑問について解説します。
Q. 取引先が紙の請求書しか発行してくれない場合は?
無理にデジタル化をせず、自社側で電子化するフローを構築します。
「紙で届いたら即座にスキャンして共有フォルダに入れ、原本は指定の箱に入れる」というルールを徹底しましょう。また、近年はデジタル化に対応する企業が増えているため、「PDFでの送付も可能ですか?」と定期的に打診するだけでも、切り替えが進むことがあります。
2024年以降、郵便料金の値上げも影響し、発行側にとってもペーパーレス化はコスト削減のメリットがあります。双方にメリットがあることを伝えながら交渉してみましょう。
Q. システム導入のコスト対効果はどう判断すればいい?
「削減できる時間単価」と「システム利用料」を比較して判断します。
例えば、時給2,000円の社員が請求書処理に月20時間かかっている場合、コストは40,000円です。システム導入により作業時間が5時間に減れば、30,000円分の効果が出ます。
これに加えて、ミスがなくなったことによる心理的安心感や、振込手数料の削減効果(安価なネットバンク利用など)も含めて総合的に判断してください。
請求書の支払処理の迅速化が経営にもたらすメリット
請求書支払いの効率化は、単なる事務作業の軽減にとどまらず、会社のキャッシュフロー管理や経営判断のスピードアップに寄与します。
経理部門が「処理屋」から「経営管理」へとシフトするための基盤となります。
リアルタイムな月次決算の実現
請求書データが即座にシステムに入力されるようになると、経費の発生状況をリアルタイムで把握できるようになります。
従来のように「翌月にならないと先月の数字が確定しない」というタイムラグが解消され、月次決算の早期化が実現します。これにより、経営者は鮮度の高い数字に基づいて、迅速な投資判断や経費コントロールを行うことができます。
インボイス制度・電子帳簿保存法への確実な対応
デジタルデータを原本として保存するフローを確立することで、電子帳簿保存法の「電子取引データの保存義務」に自然と対応できます。
また、適格請求書発行事業者の登録番号チェックなどをシステムに任せることで、法改正への対応漏れを防ぎ、コンプライアンスリスクを最小化できます。これは対外的な信用力の向上にもつながります。
請求書支払いを効率化し付加価値の高い業務へ
請求書支払いの効率化は、ツールを導入して終わりではなく、業務プロセスそのものを「標準化」し、デジタル技術で「自動化」することに本質があります。紙によるアナログな処理から脱却し、クラウドシステムやAI-OCRを活用することで、入力ミスや承認の遅滞といった課題は劇的に改善されます。
まずは現状のフローを可視化し、自社の規模や課題に合ったシステムを選定することから始めましょう。支払業務がスムーズになれば、経理担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、企業全体の生産性向上につながります。
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