• 更新日 : 2026年11月6日

経理業務にAIを導入するとどう変わる?AI経理の事例・生成AIの活用法・導入手順と注意点を解説

Point経理へのAI導入で何が変わる?

経理業務にAIを導入すると、入力・照合・チェックの反復作業が自動化され、作業時間とミスを大幅に削減できます。

  • OCR・自動仕訳で入力作業を削減
  • 生成AIで文書作成・問い合わせ対応
  • 導入は小規模試行から段階的に

Q. 経理の仕事はAIで完全自動化できる?

A. 仕訳案の作成は自動化できますが、例外処理や最終確認は人が行う運用が基本です。

経理業務の負荷が高まるなか、請求書処理や仕訳、経費精算にAIを取り入れる企業が増えています。この記事では、企業の導入事例を含むAI経理の事例を中心に、経理業務の自動化で何が変わるのか、生成AI(ChatGPTなど)の使い方、ツールの選び方、導入手順、注意点を整理します。バックオフィスで経理AI活用を検討する担当者が、自社に合う進め方を判断できるようにまとめました。

経理業務におけるAIとは?

経理業務におけるAIとは、AI技術で仕訳や請求書処理、集計といった会計プロセスを自動化し、判断を支援する取り組みです。「AI経理」「経理AI活用」「経理DX」といった言葉で語られることもあります。

経理は、ルールに沿った反復作業が多く、入力ミスや確認漏れが起きやすい領域です。AIは反復作業を高速かつ一定の品質で処理できるため、経理部門で導入が進んでいます。

OCR・機械学習・自然言語処理の3つが中心的な技術である

経理で使われるAI技術は、OCR、機械学習、自然言語処理が中心です。

  • OCR(光学文字認識):紙やPDFの請求書・領収書から取引先名や金額を読み取り、データ化します。
  • 機械学習:取引内容をもとに勘定科目や仕訳を自動で分類します。過去の仕訳から学習し、通常と異なる処理を見つけることにも使われます。
  • 自然言語処理:取引明細やレポートの要約を自動で作成します。

たとえばAIを搭載した請求書処理ツールは、取引先名や金額を読み取り、発注書と照合して仕訳案を作ります。会計ソフトと連携すれば、手入力の手間も減らせます。

従来型AIは読取・分類、生成AIは文章や案の作成が得意である

従来型AIは読取・分類・検知を担い、ChatGPTなどの生成AIは質問に自然な文章で答える点が特徴です。規程文書の下書きや関数の作成支援にも使えます。

ただし生成AIには、もっともらしい誤情報を出す「ハルシネーション」のリスクがあります。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」でも、生成AIで顕在化したリスクの例として挙げられています。

参考:令和6年版情報通信白書 第Ⅰ部第4章(生成AIが抱える課題)|総務省

経理業務にAIを導入するとどう変わる?

AIを導入すると、入力・照合・チェックといった反復作業が自動化され、作業時間とミスが減ります。担当者は確認と判断に集中できるようになります。

入力・請求書処理・経費処理・エラー検出の4つで変化が大きい

変化が大きいのは、データ入力、請求書処理、経費処理、エラー検出の4つです。月次決算や監査準備の早期化にもつながります。

業務 従来のやり方 AI導入後の変化
データ入力 領収書・請求書を目視で入力 OCRで読み取り、仕訳案まで自動作成
請求書処理 発注書と手作業で照合し、承認を回す 自動で照合し、不一致を検出。承認フローもルール化
経費処理 紙やExcelで申請 アプリで領収書を撮影し、社内規程に沿って自動分類
エラー検出 目視でのチェック 重複や異常な金額をパターン認識でフラグ表示
月次決算・財務レポート 集計と編集を手作業で実施 帳簿データから損益計算書・貸借対照表・キャッシュフローを生成
監査準備 証憑や取引データを手作業で収集 対象期間の仕訳・帳票を自動で分類・抽出
財務予測 過去実績を手作業で分析 売上・コストの履歴から収支を予測し、シナリオ分析も可能

参考:経営・コーポレート業務(令和8年版情報通信白書)|総務省

メリットは効率化とミスの減少、デメリットは初期の手間と確認作業の継続である

両面を理解したうえで導入を判断しましょう。

区分 内容
メリット 反復作業の時間を削減できる。入力ミスや確認漏れを減らせる。月次報告などを早期化できる。属人化した作業を標準化できる。
デメリット ツールの選定・設定や業務フローの見直しに手間がかかる。費用が発生する。AIの出力は人が確認する必要がある。情報管理のルール整備が必須になる。

AIは人の確認を不要にするものではありません。出力を確認する運用を前提に、効果を見込みましょう。

経理業務で生成AI(ChatGPTなど)はどう使える?

生成AI(ChatGPTなど)は、文章の下書き、翻訳、分析の壁打ち、問い合わせ対応などに使えます。以下は、プロンプト(指示文)の例です。人名・金額・日付などは説明用の仮の例です。

勘定科目の説明や注記事項のドラフトを短時間で作れる

勘定科目の説明文や決算書の注記事項は、下書きを生成AIに任せられます。

「未払費用」という勘定科目の説明を200字程度で書いてください。会計初心者にもわかりやすく。

出力は、社内ルールや会計基準に合わせて修正し、必ず人が最終確認してください。

英文決算書・資料をビジネス英語に翻訳できる

海外の親会社や取引先向けの決算資料も、生成AIで翻訳できます。

以下の日本語の決算書要約を、会計英語に翻訳してください:「2026年度第1四半期は、売上高が前年同期比12%増加しました」

専門用語や微妙なニュアンスは誤訳が起こりやすいため、英語に堪能な担当者のチェックを前提にしましょう。

財務データの傾向を読み取り、改善案を壁打ちできる

生成AIは、改善の糸口を探る「壁打ち」相手として使えます。

以下の売上と利益率の推移を分析し、改善点を3つ提案してください。

この改善点は50点くらいに感じます。100点になるように提案をブラッシュアップしてください。

請求書の文面テンプレートを作り、条件も調整できる

テンプレートの作成から、支払条件の微調整まで対応できます。

以下の取引内容をもとに、請求書の文章テンプレートを作成してください。支払先は○○株式会社、金額は10万円、支払期限は2026年12月31日です。

この請求書文面の支払条件を30日から45日に変更してください。

会計用語や経費精算のFAQに自動で対応できる

社内から寄せられる定型の質問は、自動応答で負荷を減らせます。回答内容を整備してチャットボット化すれば、24時間の対応も可能です。

「交通費の精算方法」について社員向けに簡潔に説明してください。

経理ソフト○○の仕訳入力手順を初心者向けに説明してください。

経理のAI活用事例にはどんなものがある?

実際にAI会計ツールを経理業務に取り入れている企業の成功事例をいくつか見てみましょう。

OCRで月5,000枚の領収書処理を効率化、ほぼ自動入力

全国に約200店舗を展開する株式会社B&Vは、マネーフォワード クラウド経費のOCR機能を導入し、紙ベースで運用していた経費精算業務の効率化に成功しました。従来は月5,000枚におよぶ領収書を本部スタッフが手作業で確認・入力していましたが、OCRによる自動読取により入力作業を大幅に削減。

不備の差し戻し件数も激減し、精算業務の担当人数が8名から3名にまで圧縮されました。電子帳簿保存法への対応とともに、業務負担の軽減と精度の向上を同時に実現しています。

仕訳の自動化で経費精算業務を大幅削減

消費税対応と経営方針によるクラウド化をきっかけに、マネーフォワード クラウド会計・経費を導入した企業では、仕訳の自動化によって経理業務が劇的に効率化しました。

従来はExcel申請書をもとに、経理担当が一件ずつ勘定科目を検討していましたが、現在は申請者が経費項目を選ぶだけで、自動的に適切な勘定科目が紐付けされ、会計側へ仕訳データがそのまま連携される仕組みです。

結果として、仕訳作業や検算の負担が大幅に軽減され、担当者の実感として、経理部門の業務量は約3分の1にまで削減されました。

自動仕訳で1社分の作業時間で4社対応

エネルギー分野で複数のグループ会社を抱えるelDesign株式会社では、事業拡大に伴い複雑化した経理業務を見直すため、マネーフォワード クラウドを導入。

銀行口座やカード明細と連携した「自動仕訳機能」により、これまで1社に月10日かかっていた経理処理が、同じ時間で4社分完了するように。従来の手入力・ダブルチェック作業は不要となり、ミスの削減と生産性向上を同時に実現しました。

複数の拠点間のデータ共有もクラウドで一元管理され、働く場所に関係なくスムーズな経理業務が可能になっています。

経理のAIツールはどう選ぶ?

ツールは、自動化したい業務から逆算して選びます。AI-OCR、自動仕訳、経費精算、生成AIなど、種類ごとに得意な業務が違うためです。

AI-OCR・自動仕訳・経費精算・生成AI・RPAなど、種類ごとに得意な業務が違う

ツールの種類 主な機能 向いている業務
AI-OCR・請求書処理ツール 書類の読取、発注書との照合、仕訳案の作成 請求書・領収書の入力、支払処理
クラウド会計の自動仕訳 銀行・カード明細の取り込みと仕訳の自動化 日々の仕訳、月次決算
経費精算システム(AI機能付き) 領収書の読取、規程チェック、勘定科目の自動入力 経費精算、立替精算の承認
生成AI(ChatGPTなど) 文章作成、翻訳、分析の壁打ち、FAQ対応 注記のドラフト、社内問い合わせ
RPA 定型のPC操作を自動で実行 システム間のデータ転記

参考:経営・コーポレート業務(令和8年版情報通信白書)|総務省

確認すべきポイントは、連携・法令対応・セキュリティ・精度・費用・サポートの6つである

  • 既存システムとの連携:現在の会計ソフトや経費精算システムとデータをつなげられるか。
  • 法令対応:電子帳簿保存法やインボイス制度に対応し、法改正に追随してくれるか。
  • セキュリティ:入力データが機械学習に使われないか、権限管理はどうなっているか。
  • 精度と修正のしやすさ:誤りを担当者が簡単に直せる画面になっているか。
  • 費用:初期費用、月額費用、件数に応じた従量課金を含めて試算できるか。
  • サポート:設定支援や、制度変更時の案内があるか。

中小企業は、デジタル化・AI導入補助金で導入費用の一部を補える場合がある

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、AIを含むITツールの導入を支援する制度です。令和7年度補正予算の事業から名称が変わりました。

通常枠の補助額は最大450万円と案内されています。申請にはIT導入支援事業者との連携、GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの自己宣言などが必要です。公募回ごとに要件や締切が変わるため、最新の公募要領を確認してください。

参考:デジタル化・AI導入補助金2026(令和8年3月)|中小企業庁、デジタル化・AI導入補助金2026|J-Net21(中小機構)

経理にAIを導入する手順は?

導入は、対象業務の洗い出し、KPI設定、小規模な試行、展開と教育の4ステップで進めます。いきなり全社で始めず、効果を確かめながら広げるのが失敗しにくい進め方です。

STEP1:時間のかかる業務・ミスの多い業務を洗い出し、手段を当てはめる

業務を一覧にし、使えそうな手段を当てはめます。

  • 領収書の読取:OCRによる自動入力
  • 仕訳業務:銀行明細・カード明細の自動仕訳
  • 請求書作成:テンプレートの自動生成、フォーマット統一
  • 会計用語の説明・社内問い合わせ:生成AIによる下書きやFAQ対応

STEP2:現状の処理時間や件数を測り、改善後の目標(KPI)を決める

目標があれば、導入後に効果を判断できます。KPIの設定例は次のとおりです。数値は説明用の仮の例で、自社の実測値に置き換えてください。

対象業務 評価指標の例
経費精算書の作成 1件あたりの処理時間を短縮する(例:30分→10分)
仕訳登録 手入力の件数を減らす(例:月200件→50件)
社内問い合わせ対応 回答までの時間を短縮する(例:平均1日→即時)
決算注記のドラフト作成 作成時間を短縮する(例:4時間→1時間)

STEP3:特定の部署・業務で試行し、AIの誤りの傾向を把握する

試行では、AIの出力と人の処理を並行して比べます。誤りが多い取引パターンは、ルールや運用で補います。

STEP4:効果を確認して対象を広げ、教育と運用ルールで定着させる

操作マニュアルの整備、導入初期の説明会やハンズオン、トラブル時の対処フローを準備すると、定着しやすくなります。「AIの出力は必ず確認する」「入力してよい情報はここまで」といった運用ルールも周知しましょう。

経理業務にAIツール・生成AIを導入する際の注意点は?

注意点は、情報管理、法令対応、社内ルールの3つです。これらを押さえれば、安全に効果を出しやすくなります。

機密情報・個人情報は、原則として生成AIに入力しない

次のような情報は、入力禁止の対象として社内で明文化しておくと安心です。

  • 顧客・取引先情報:顧客名、取引金額、契約単価、口座番号、請求書番号など
  • 社員・個人情報:氏名、住所、給与金額、マイナンバー、家族構成など
  • 認証情報:ログインID・パスワード、APIキーなど
  • 未公開の経営・会計情報:月次・四半期決算データ、予算計画、内部監査結果など
  • 契約・法務情報:契約書の内容、支払条件、与信評価など

個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があると注意喚起しています。入力する場合は、提供事業者が入力データを機械学習に利用しないことなどを確認する必要があります。

参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日)|個人情報保護委員会(内閣府資料)

最新の法令・会計基準は、AIの回答に頼らず公的情報で確認する

AIの回答は学習時点の知識に基づくため、最新の税制改正や会計基準を反映していない可能性があります。ツールの法改正対応のアップデート状況を確認し、重要な処理は最新の公的情報と照らし合わせるチェック体制を設けましょう。

OCRで領収書などを電子化する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件も確認が必要です。国税庁の一問一答に、対象書類や要件が整理されています。

参考:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(令和8年7月)|国税庁

利用範囲と禁止事項は、全社的なガイドラインとして定める

総務省の令和8年版情報通信白書では、日本企業が生成AIで懸念するリスクとして、社内情報の漏洩が最も多く、次いで出力精度、著作権侵害の可能性が挙げられました。リスク対策では「全社的な指針やガイドラインを整備している」が41.1%で最も高い回答でした。

国の動きとしては、「AI事業者ガイドライン」が2024年4月に第1.0版、2025年3月に第1.1版として更新されています。2025年5月には「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が制定され、同年9月に全面施行されました。社内指針を作る際の参考にするとよいでしょう。

参考:懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況(令和8年版情報通信白書)|総務省、令和7年版情報通信白書 第Ⅱ部第2章(AI事業者ガイドラインの更新)|総務省

経理の仕事はAIでなくなる?

AIは経理の仕事を丸ごと置き換えるのではなく、担当者の作業の比重を入力から確認・分析・判断へ移していきます。仕事がなくなるというより、仕事の中身が変わると捉えるのが現実的です。

企業は、生成AIに作業時間の短縮による業務の効率化を最も期待している

総務省の令和8年版情報通信白書では、企業が生成AIの活用で見込む影響として、日本では「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も高い回答でした。「人員不足の解消」は26.8%です。多くの企業が、人の置き換えより、作業時間の短縮や人手不足への対応を期待していることがわかります。

参考:生成AIの活用により生じうる影響(令和8年版情報通信白書)|総務省

経理担当者の役割は、AIの出力の確認、例外の判断、経営への情報提供へ移る

具体的には、AIの出力や異常検知の結果をレビューして最終判断をすること、取引の背景を踏まえて例外的な処理を判断することです。あわせて、内部統制や情報管理のルールを整備して運用すること、集計結果を分析して経営判断に役立つ情報として提供することも重要になります。

経理のAI活用でよくある質問

経理のAI活用でよくある質問をまとめました。

AIで経理の仕訳は完全に自動化できる?

仕訳案の自動作成はできますが、最終確認は人が行うのが基本です。定型の取引は自動化しやすい一方、例外的な取引や新しい取引は人の判断が必要になります。

中小企業でも経理にAIを導入できる?

中小企業でも導入できます。総務省の令和8年版情報通信白書では、中小企業の58.1%が生成AIの活用方針を定めています。費用面は、デジタル化・AI導入補助金などの活用も検討できます。

参考:生成AIの活用方針等(令和8年版情報通信白書)|総務省

請求書や取引データをそのままChatGPTなどに入力してもよい?

社内ルールで許可された範囲に限って入力します。個人情報や取引先情報を含むデータは、入力前に利用規約とデータの取り扱い条件を確認してください。迷う場合は、氏名や金額をダミーに置き換えるか、情報を入力しない使い方を選びましょう。

経理にAIを導入するなら、目的の明確化と人の確認が成功の鍵

経理業務にAIや生成AIを導入すると、入力・照合・チェックといった反復作業が自動化され、作業時間とミスの削減が期待できます。AI経理の事例では、経費精算でのOCRや自動仕訳が代表的で、少人数での運用や複数社の経理処理の効率化につなげた企業もあります。成果を出すには、業務に合うツールを選び、対象業務とKPIを決め、機密情報の取り扱いルールを整え、AIの出力を人が確認する運用が欠かせません。

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