- 更新日 : 2024年8月8日
家賃保証料の仕訳と会計処理まとめ
法人が事業用の物件を借りる場合、連帯保証人を立てずに家賃保証会社と契約を交わすことがあります。保証会社に支払う家賃保証料は経費に計上できます。ただし金額に応じて、使用する勘定科目や仕訳が異なるので注意が必要です。今回は家賃保証料で必要となる会計処理を解説します。
保証委託料は家賃の保証会社に対して支払う委託金
保証委託料は物件を賃貸する場合、何らかの事情で賃料が不払いになるケースに備えて支払う委託金です。
借主は保証委託料を払うことで家賃を払えなくなった際に、保証会社が家賃相当額を立て替えてくれます。保証会社は家賃の立て替え払いのみならず、後の督促手続きまで代行します。
家賃保証というと連帯保証人を想定する方はいるかもしれませんが、近年は連帯保証人の代わりに、家賃保証会社を使うケースが一般化してきました。なぜなら事業用物件を申し込む場合、その法人の代表者が連帯保証人になる場合があるため、貸主側のリスクが高いからです。
借主が負担する保証委託料の金額や支払頻度は、保証会社や契約内容に応じて異なります。
家賃保証料が20万円未満の場合の会計処理
家賃保証料が20万円未満の場合、拠出したタイミングで一括損金処理が可能です。なぜなら契約期間中に借主が物件を退去しても、保証料は返金が行われないためです。
契約期間が1年以上だとしても、返金されない規定があるならば、当初から費用計上して差し支えありません。
20万円未満の家賃保証料は税務上、繰延資産に該当すると考えられます。繰延資産とはサービスを受けるための費用を全額拠出し、翌年度以降も長期的な効果が見込めるものです。
法人税法では20万円に満たない繰延資産は、一括損金に計上できるとの規定があります。勘定科目は「支払手数料」または「保証料」を使用するのが一般的です。
▼仕訳例
保証会社との間で賃貸保証契約を締結して、2年分の保証委託料15万円を支払った
家賃保証料が20万円以上の場合の会計処理
家賃保証料が20万円以上の場合も繰延資産として処理しますが、20万円未満と比較して、勘定科目や処理方法が異なります。
契約期間内で按分し、経過期間分だけ費用を計上するという減価償却の処理が必要です。例えば、2年分の保証委託料30万円で契約を締結した場合、1ヵ月当たりの償却額は30万円/24ヵ月=12,500円です。
会計処理としては、まず契約時に家賃保証料の総額を「長期前払費用」という資産科目を用いて計上します。その後、決算時に経過期間分だけ減価償却する必要があります。
▼仕訳例
保証会社との間で賃貸保証契約を締結して、2年分の保証委託料30万円を支払った
決算時に経過した1年分の保証委託料を費用化した
前払費用と繰延資産の違い
家賃保証料の扱いについては、前払費用と繰延資産のどちらに該当するのか争いが生じています。両者は費用の支払いが済んでいる点で共通し、役務の提供が行われているかどうかという点が異なります。
前払費用は契約に基づき一定期間役務の提供を受けるもののうち、いまだサービスの提供が行われていない分に対する支出分です。例えば、前払い家賃や保険料が該当します。
一方、繰延資産はすでに役務の提供が始まっているもののうち、支出の効果が1年以上にわたって及ぶものです。例えば開業費は事業開始から1年以上経過していれば、拠出した費用が1年以上効果を継続しているといえるので、繰延資産とみなします。
家賃保証料は期間に応じて費用化するため前払費用とみなす考え方と、契約後に返金できないケースもあるため繰延資産だとする考え方に分かれます。家賃保証料は一概に前払費用、繰延資産のどちらに該当するか判断できるものではありません。
ただし、仕訳時にも紹介した通り、繰延資産として処理するのが一般的です。20万円未満の支出の場合は、少額繰延資産として拠出のタイミングで一括費用計上できます。
保証委託料の会計処理は金額によって違う
保証委託料は家賃の滞納に備えて、借主が保証会社に対して支払う費用です。保証委託料の会計処理は、金額が20万円以上かそうでないかで方法が異なるのは特徴です。
20万円未満の場合、拠出時に「支払手数料」の勘定科目を使用して一括で処理します。対して20万円以上の保証委託料は「長期前払費用」として全額計上した後、決算時に経過期間分の減価償却を行います。
よくある質問
家賃保証料が20万円未満の会計処理はどうやる?
拠出時に「支払手数料」勘定を用いて一括して経費処理をします。詳しくはこちらをご覧ください。
家賃保証料が20万円以上の会計処理はどうやる?
拠出時に「長期前払費用」で全額計上し、決算のタイミングで経過した期間分だけ費用計上する減価償却が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
引当金の会計処理はどう考えればいいのか?
「引当金」についてご存知でしょうか? 引当金とは、将来に発生するであろう特定の費用又は損失に備えてあらかじめ準備しておく見積金額のことをいいます。 なお、発生する可能性が低い場合は、その金額を引当金として計上できません。会計上は、役員引当金…
詳しくみる電子記録債権の会計処理とは?仕訳の解説
新しい金銭債権である「電子記録債権」は、発生時と譲渡時、決済時にそれぞれ会計処理をする必要があります。どのような勘定科目が使えるのか、具体的な仕訳例も紹介しつつ解説するので、ぜひ参考にしてください。 電子記録債権とは 電子記録債権とは、電子…
詳しくみる両替手数料を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
銀行等で通貨同士を交換するときに徴収される両替手数料は、経費にすることも可能です。仕訳には「支払手数料」もしくは「雑費」の勘定科目が使えます。 本記事では、両替手数料を経費に計上する際の勘定科目や実際の仕訳方法について説明します。雑費で仕訳…
詳しくみる会議費とは?接待交際費との違いは?損金算入の特例や上限、仕訳方法も紹介
法人の経費の中には、勘定科目の取り扱いを間違えると、法人税に大きな影響を与えかねないものがいくつかあります。そのひとつが「会議費」です。会議費は、接待交際費などのほかの経費と性格が似ている部分も多く、会計処理をする際、その支払いが会議費に該…
詳しくみる求人広告費の仕訳に使える勘定科目
求人広告にかかった費用は経費として計上することが可能です。仕訳をする際には採用教育費や広告宣伝費の勘定科目が使えるでしょう。本記事では、具体的にどのような費用を求人広告費として経費にできるのか解説しつつ、仕訳例も紹介します。 求人広告費の仕…
詳しくみる退職給付会計の過去勤務費用とは?算出方法をわかりやすく解説
過去勤務費用は、退職にともない支給する退職給付に関連するものです。過去勤務費用は退職給付においてどのような性質の費用を表すのでしょうか。この記事では、過去勤務費用の概要と算出方法、過去勤務費用に関連する未認識過去勤務費用について解説していき…
詳しくみる