- 更新日 : 2025年2月19日
当座資産の解説と当座比率の求め方や流動資産との違い
当座資産とは、会社の貸借対照表から「当座比率」を算出する際に必要です。当座比率を求めることで、企業の短期債務の支払能力を示す指標にすることができます。つまり、企業の安全性分析のために利用できる指標となりえるのです。
そんな重要度の高い当座資産について、当記事ではその基本知識や含まれる勘定科目の一覧、当座比率の求め方、流動資産の違いなどを解説します。
目次
当座資産とは?
当座資産とは、流動資産の中でも「現金」もしくは「短期間で容易に現金化できる資産」のことです。この当座資産は企業の支払能力を測るための指標としても活用されます。当座資産に含まれる勘定科目なども確認していきましょう。
当座資産は貸借対照表の資産の部に含まれる
当座資産が貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)のどこに含まれるかについても、確認しておきましょう。当座資産は、貸借対照表(B/S)における「資産の部」の流動資産の一部として構成されます。
当座資産に含まれる勘定科目一覧
「当座資産に含まれる勘定科目」には、次のようなものがあります。
有価証券でも長期保有を前提とした有価証券や大量保有によって短期売買できない有価証券などは、「短期間で容易に現金化できる資産」には含まれません。
当座資産と流動資産の違い
現金もしくは短期間で容易に現金化できる資産を当座資産と呼ぶのに対し、流動資産は1年以内に現金化する可能性がある「棚卸資産」を含みます。
棚卸資産は「在庫」と同じ意味であり、製品や原材料、仕掛品などが該当します。なお、この当座資産を流動負債で割ることで「当座比率」が求められます。次項で詳しく見ていきましょう。
当座資産から当座比率がわかる
当座資産を用いて、貸借対照表から「当座比率」を算出できます。ここでは当座比率の概要と、その求め方について見ていきましょう。
当座比率とは?
当座比率は当座資産を流動負債で割ることで算出できます。算出された値から、企業の安全性を測ることが可能です。
現金化しやすい当座資産を確認することで、短期的な支払い能力を判断することができます。また、当座比率を見ることで、よりシビアな判断ができるため、企業の支払能力を見るための重要な指標といえるでしょう。
当座比率の求め方
当座比率は、流動負債に対して当座資産がどのくらい保有されているかを示します。貸借対照表の流動資産と同様に、貸借対照表の「流動負債」で割り出すことが可能です。なお、当座比率は次の式で求めることができます。
当座資比率は企業における短期の債務返済能力を示し、財務の安全性を測る指標です。
一般的にその値が「100%以上」となれば、短期的な債務返済能力については問題ないと判断することが多いです。
一方、「100%未満」の場合は、短期的な債務返済能力に問題があると判断されるため、「財務安全性が低い」ことになるのです。
流動比率との違いは?
支払い能力や企業の安全性を測る視点から会社の安全性を見たい場合には、当座比率だけでなく「流動比率」からも確認できます。当座比率との違いは、当座資産以外の棚卸資産やその他の流動資産なども含める点です。
流動比率は、貸借対照表の流動資産を貸借対照表の流動負債で割ることで算出されます。
棚卸資産は、販売されなければ現金化されません。つまり、これらを含めて算出するということは、不確実性が高まることも意味するのです。一方、当座比率は確実に現金化される当座資産のみが含まれているため、流動比率よりも財務安全性を見るうえで信頼性の高い指標だといえます。
当座比率は棚卸資産を含めずに計算するため、不良在庫による影響を心配する必要がありません。しかし、売上債権は含める必要があります。売上債権とは売掛金や受取手形のことで、これらが回収できない場合は、当座比率の数字だけでは財務安全性を測れないことも認識しておきましょう。詳しい内容は、以下の記事をご参考ください。
当座資産をきちんと管理しよう
ここまで当座資産についての基本知識や含まれる勘定科目の一覧、当座比率の求め方、流動資産との違いなどを解説しました。決算書を分析するうえで、安全性を判断する「当座比率」はとても重要な指標といえます。
その当座比率を割り出す基になるのが「当座資産」です。当座資産をきちんと管理することで、より正確な分析ができるようになります。
企業における現在の課題や強みなども見えてくるでしょう。見つかった課題に対して対策を講じて、より透明性の高い経営へつなげていくことが大切です。
よくある質問
当座資産とは?
流動資産の中でも「現金」もしくは「短期間で容易に現金化できる資産」のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
当座資産から当座比率を算出できる?
できます。詳しくはこちらをご覧ください。
当座比率と流動比率との違いは?
当座比率との違いは、流動比率は当座資産以外の棚卸資産やその他の流動資産なども含める点です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
返品調整引当金は法改正により廃止!仕訳方法や変更点を解説
「収益認識会計基準」の創設によって、返品調整引当金が廃止されました。法人税においても、平成30年度税制改正によって返品調整引当金が廃止されることとなり、現在は経過措置期間を通じて段階的に縮小されています。 「返品権付き販売」を行う業界では、…
詳しくみる外注費と給与の判定は契約書があれば大丈夫?税務調査のポイントを解説
外注費と給与は、契約書が違うから大丈夫、と思っていませんか?契約書で「業務委託」と書かれていても、働き方の実態によっては「給与」と判断される場合があります。税務調査では外注費と給与の区別が重要なチェックポイントです。判断を誤ると追徴課税など…
詳しくみるその他資本剰余金の配当にかかる会計処理・税務処理を解説!
事業の元手となる財産は財務諸表上で「株主資本」とされます。株主資本は「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」に分けられますが、その中の「資本剰余金」は「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分けることができます。 利益がそれほど出ず、配当を出す…
詳しくみる期末商品棚卸高とは?計算方法や仕訳例を解説
期末商品棚卸高は、期末時点での商品の在庫の額を表します。棚卸資産として決算書にも記載される価額です。では、期末商品棚卸高はどのように算出するものでしょうか。この記事では、期末商品棚卸高の概要と、貸借対照表や損益計算書との関係、計算方法や決算…
詳しくみる軽油にかかる税金の仕訳方法は?ガソリンとの違いをわかりやすく解説
ディーゼルエンジンの車に使われる「軽油」には、ガソリンとは異なる種類の税金がかかっています。経理では、軽油を購入したときの勘定科目や消費税の扱いをどうすればよいか、迷うことが少なくありません。免税制度が適用されることもあるため、会計処理には…
詳しくみるPCR検査費用を経費計上するなら?勘定科目や仕訳の具体例を紹介
企業の経理担当者の中には、PCR検査にかかった費用を経費計上する際の勘定科目を知りたいと考えている方もいるでしょう。 本記事では、PCR検査の勘定科目や仕訳例について解説していきます。計上先を福利厚生費と給与(役員報酬)に区分する基準につい…
詳しくみる