- 作成日 : 2025年3月3日
ソフトウェアには固定資産税がかからない?償却資産税との違いや二重課税も解説
ソフトウェアや特許権などの無形固定資産は、原則として固定資産税がかかりません。無形固定資産以外にも税金がかからない資産としては、繰延資産や時の経過により価値が減少しない骨董品などが挙げられます。本記事では、固定資産税の税率や償却資産税との違い、固定資産税と償却資産税が二重課税されるケースの有無についてわかりやすく解説します。
目次
ソフトウェアには固定資産税がかからない?
ソフトウェアや特許権といった無形固定資産は、固定資産税の課税対象ではありません。また、無形固定資産以外にも、以下の資産は固定資産税の対象から除外されます。
※大型特殊自動車は固定資産税の申告対象
そもそも固定資産税とは
固定資産税とは、土地や家屋、設備などの固定資産にかかる地方税です。例えば、土地や家屋の場合、その年の1月1日時点での所有者に固定資産税額が記載された納付書が自治体から送付されます。そのため、原則として所有者自身で税額を計算したり、申告したりする必要はありません。
しかし、償却資産については所有者を自治体が把握しているとは限らないため、自発的に申告することが義務付けられています。固定資産の種類と例は、以下をご覧ください。
固定資産の種類 | 例 |
---|---|
土地 | 住宅地・田畑・山林・牧場・原野など |
家屋 | 住宅・店舗・工場・発電所・倉庫など |
償却資産 | 事業者が所有する構築物・飛行機・船舶・車両・運搬具・備品など |
参考:総務省 固定資産税
ソフトウェアは無形固定資産のため固定資産税の対象外
ソフトウェアは無形固定資産に分類されるため、固定資産税の対象外です。なお、無形固定資産とは、物理的な形態を持たず、1年を超えて利用される資産を指します。また、無形固定資産には、特許権や営業権といった法律上の権利も含まれます。
ソフトウェアが固定資産税の対象となるケース
「ソフトウェア」という名前がついたものであっても、以下のいずれかに該当する場合は固定資産税の対象となります。
- 器具や備品をCD-ROMにしたもの
- 機械の作動に不可欠なソフトウェア
器具や備品をCD-ROMにしたものとは、CD-ROM化した辞典などを指します。本来は異なる形状であったものをCDやDVDといった媒体に記録し、形だけを変化している場合には固定資産税の対象です。
また、機械に組み込まれた基本ウェアなどの機械の作動に不可欠なソフトウェアも、固定資産税の対象です。いずれも償却資産のため、所有者が自発的に申告する義務を負います。
固定資産税と償却資産税の違い
事業者が納付する税金の説明で、「償却資産税」といった言葉を耳にすることがあるかもしれません。償却資産税とは何か、固定資産税とは何が異なるのか解説します。
償却資産税は固定資産税の一部
前述のように、固定資産は大きく「土地」「家屋」「償却資産」の3つに分けられます。償却資産にかかる税金を「償却資産税」と呼ぶことがあります。ただし、正確には償却資産に課せられる税金も「固定資産税」のため、実際には「償却資産税」という名称の税金はありません。
固定資産税と償却資産税が二重課税されることはない
償却資産に課せられる税金を償却資産税とするならば、償却資産税は固定資産税の一種となります。そのため、償却資産税と固定資産税の両方が課せられること、つまり、二重課税になることはありません。
ソフトウェアの税金で注意すべきポイント
ソフトウェアは原則として固定資産税の課税対象ではありませんが、器具や備品をCD-ROMにしたもの、もしくは機械の作動に不可欠なソフトウェアの場合は課税対象です。また、課税対象かどうかにかかわらず、事業関連のソフトウェアについては取得時などに会計処理をしなくてはいけません。
ソフトウェアに関連する税金や会計処理において、押さえておきたいポイントを紹介します。
ソフトウェアの分類によっては課税対象となる
ソフトウェアという名前がついても、器具や備品、あるいは資産の一部に組み込まれたものは償却資産と考えられるため、固定資産税の課税対象です。
その年の1月1日時点において償却資産を所有している者は、申告期間内に正しく申告し、固定資産税(償却資産税)を納める必要があります。固定資産税は地方税のため、納める地方自治体が定める期間内に申告・納付しましょう。
ソフトウェアの取得価額によって会計処理の方法が異なる
ソフトウェアの取得価額は、以下の計算式で求めます。
ソフトウェアを購入した場合の取得価額
ソフトウェアを自社で製作した場合の取得価額
ソフトウェアを導入するためにかかった費用も、取得価額に含まれます。例えば、導入時の設定作業や自社の仕様に合わせるための調整作業などは、いずれもソフトウェアの導入のために必要な費用とみなされ、取得価額に加算します。
ただし、次の費用については、取得価額に算入しなくても問題ありません。
- 自社でソフトウェアを製作する場合、製作計画が変更されたなどの事情によって不要になったことが明らかなものに対する費用
- 自社で利用することが明らかなソフトウェアにかかった研究開発費
- ソフトウェア製作などのためにかかった間接費や付随費用などのうち、合計額が少額(製作原価のおおむね3%以内)の費用
自社で利用することが明らかなソフトウェアであっても、そのソフトウェアを利用することで、将来的に収益を獲得する場合や費用削減につながる場合は、ソフトウェアの研究開発費を取得価額に含めることが必要です。
ソフトウェアの取得価額を算出した後で、会計処理に進みます。ソフトウェアの勘定科目は、消耗品費か通信費とすることが一般的です。しかし、取得価額によっては、以下のように勘定科目が変わります。
ソフトウェアの取得価額 | 原則 | 中小企業の特例 |
---|---|---|
20万円未満 | 一括償却資産、もしくは消耗品費か通信費 | 一括償却資産、もしくは消耗品費か通信費 |
20万円以上30万円未満 | ソフトウェア | 消耗品費か通信費、もしくはソフトウェア |
30万円以上 | ソフトウェア | ソフトウェア |
ソフトウェアの耐用年数は利用目的によって変わります。複写して販売するための原本、あるいは研究開発用のものについては3年、それ以外のものについては5年です。
SaaSや自社開発のソフトウェアの取り扱いに注意する
SaaS(サービスとしてのソフトウェア)については、初期導入費用やカスタマイズ費用もすべて取得価額として扱います。
例えば毎月の利用費が5万円、導入時の初期費用が6万円、自社に合わせて仕様を変更してもらう際に3万円の費用がかかった場合なら、以下のように取得価額を計算します。
また、自社開発のソフトウェア製作に要した原材料費や労務費、経費だけでなく、事業に使用するために直接かかった費用もすべて取得価額に含めてください。
ソフトウェアの固定資産税を確認しておこう
ソフトウェアは無形固定資産の1つです。無形固定資産は固定資産税の課税対象ではないため、原則として固定資産税は課せられません。
しかし、ソフトウェアが器具や備品をCD-ROMにしたものであるときや、機械の作動に不可欠なものと判断されるときは、固定資産税の課税対象です。所有するソフトウェアが固定資産税の課税対象か確認し、正しく申告・納税するようにしてください。
また、固定資産税の課税対象かどうかにかかわらず、正しく会計処理をすることも必要です。取得価額を正確に算定し、適切な勘定科目で処理を進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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