- 更新日 : 2025年2月20日
関連当事者とは?主な範囲からわかりやすく解説
業績を伸ばすために、取引先を拡大したいと考える会社は多いでしょう。しかし、取引先を選ぶ際は、相手が「関連当事者」ではないかを確認する必要があります。
今回は、会社の業績や利益に大きな影響を及ぼす可能性がある関連当事者について解説します。また、関連当事者取引とは何か、関係会社などの類似用語についても押さえておきましょう。
関連当事者とは
関連当事者とは、会計基準等で定められた会社の役員や主要株主およびそれらの近親者、そして関連会社などのことです。
ちなみに、会社と関連当事者が取引を行った場合、財務諸表の注記でその取引を記載するという定めがあります。関連当事者の場合は一般の会社との取引とは異なり、特別な条件で取引を行う場合があるためです。そのため、財務諸表を閲覧した人が関係性や経営に及ぼす影響を正確に確認できるようにしているのです。
関連当事者の主な範囲
「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 」第8条17項で、関連当事者は以下のように定められています。
- 財務諸表提出会社の親会社
- 財務諸表提出会社の子会社
- 財務諸表提出会社と同一の親会社をもつ会社等
- 財務諸表提出会社のその他の関係会社並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社
- 財務諸表提出会社の関連会社及び当該関連会社の子会社
- 財務諸表提出会社の主要株主およびその近親者
- 財務諸表提出会社の役員およびその近親者
- 財務諸表提出会社の主要株主およびその近親者、役員およびその近親者が議決権の過半数を所有している会社等およびその子会社
- 重要な子会社の役員及びその近親者
- 6から9に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
- 従業員のための企業年金(企業年金と会社との間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る。)
これらの中から「主要株主」「会社役員と近親者」「関連会社」について解説します。
主要株主
財務諸表提出会社の主要株主とは、会社の議決権のある株式を10%以上保有している株主のことです。なお、信託財産として株式を保有する信託業を営む会社は主要株主とはみなされません。
会社役員と近親者
会社役員とは、「取締役」「監査役」「会計参与」「執行役」およびそれらに準ずる人のことです。会社の経営に多大な影響を及ぼす子会社の役員なども関連当事者に該当します。
近親者とは二親等内の親族のことです。役員や主要株主の近親者も関連当事者に該当します。
関連会社
関連会社とは、会社の経営に多大な影響を与える他会社のことです。一般的には、議決権を20%以上保有している会社を指します。ただし、議決権15%以上でも以下のいずれかに該当する場合は関連会社として扱われます。
- 親会社の社員が役員等に就任
- 重要な融資を実施
- 重要な技術を提供
- 重要な販売・仕入などがある
- その他、財務・事業の方針決定に対して重要な影響があると推測される事実がある
関連当事者と似たような用語
関連当事者に似た用語に「関係会社」「特別利害関係者」があります。これらの意味も確認しておきましょう。
関係会社
関係会社とは、「親会社」「子会社」「関連会社」等を含む会社のことです。関連会社の場合、議決権保有比率で区分されているわけではありません。
特別利害関係者
特別利害関係者とは、以下のような立場にある人を言います。
- 会社の役員や監査役、執行役
- 役員等の配偶者や二親等内の血族
- 役員が自己または他人の名義で所有する株式、または出資に係る議決権の50%超を保有している会社
- 会社の関係会社
- 関係会社の役員
なお、「特別利害関係者」は主にIPO(新規公開株式)関連で使われる用語です。
関連当事者取引とは
関連当事者取引とは、会社と関連当事者で行われる取引のことです。取引とみなされるのは、以下のやり取りです。
- 資源や債務を移すこと
- 役務を提供すること
物品のやり取りではありませんが、不動産の賃貸借、債務保証、金銭貸借なども取引として扱われるので気をつけましょう。
また、会社と関連当事者が直接取引をしていなくても、以下の場合は関連当事者取引とされます。
- 関連当事者が他の者のために会社と行う取引
- 会社と他の者の取引だが、関連当事者がその取引に対して大きな影響を及ぼしている場合
関連当事者との取引は決算操作や利益相反取引につながるおそれがあり、会社の経営に影響を及ぼすことも考えられます。よって、早いうちに解消するのが最善で、財務諸表に掲載する必要があります。
ただし、関連当事者取引であっても財務諸表に開示する必要はありません。財務諸表に開示する必要のない取引としては次のものがあるでしょう
- 連結財務諸表を作成する際に相殺消去した取引
- 一般競争入札による取引や預金利息および配当の受取りなど、条件が一般の取引と同様の取引
- 役員への報酬・賞与・退職慰労金の支払い
- 会社が直接関わらない関連当事者間の取引
関連当事者取引とは何かをしっかり理解しておこう
関連当事者とは会社の役員や主要株主のことですが、これらの近親者も対象となりますので把握が困難な場合もあり、その際には判断が必要です。
関連当事者と取引を行うことを「関連当事者取引」と呼びます。関連当事者取引は利益相反などの原因にもなりますので、早いうちに解消しましょう。
また、関連当事者取引の事実がある場合は会社の経営に影響を及ぼすこともあるため、財務諸表に掲載してください。ただし、役員に対する報酬の支払いや連結財務諸表を作成する際に相殺消去した取引などは、掲載する必要はありません。
関連当事者取引は会社の通常の経営判断の中で行われるとは限らず、取引条件が恣意的なものとなる場合もあり得ます。また、決算においても関連当事者との取引が使われ、決算がゆがめられるリスクも考えられます。適正な関連当事者取引であることを担保するために根拠をしっかり残し、ルールに従って財務諸表に開示することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
IFRSにおける損益計算書とは?日本基準との違いや改正内容を解説
IFRSの損益計算書は、日本基準と異なり包括利益を重視することから、包括利益計算書ともいわれます。IFRSの損益計算書を作成するには、日本基準との違いを理解しておくことが重要です。IFRSと日本基準の損益計算書の主な相違点や作成方法などにつ…
詳しくみる【はじめての経理担当者必見】経理・会計・財務の違いを比較して解説!
経理と会計、財務は会社のお金に携わるポジションという共通の業務ではありますが、具体的にどうちがうのかが分かりにくいという人も多いでしょう。 本記事では、経理・会計・財務のそれぞれの違いを目的、役割、主な業務内容まで解説します。 さらに、よく…
詳しくみる経理の電子化とは?システム導入のメリット・手順・注意点を徹底解説
近年、企業の業務効率化が求められる中で、「経理の電子化」が注目を集めています。従来の経理業務は、紙の請求書や領収書を管理し、手作業で帳簿をつけるなど、多くの時間と労力を必要としていました。しかし、デジタル技術の発展により、これらの業務を電子…
詳しくみる預り証とは?記載項目や書き方をテンプレート付きで解説
物品や金銭を預かった際、その証拠書類として預り証を発行します。預り証の書き方には明確なルールはないため、記載内容や書き方で迷う人も多いでしょう。本記事では、預り証に記載すべき項目や書き方を解説します。金銭を預かった場合に活用できる預り証のテ…
詳しくみる消化仕入れとは?具体例や会計処理、仕訳をわかりやすく解説
消化仕入れとは、主に百貨店や大型ショッピングセンターで採用される仕入形態の1つです。この記事では消化仕入れの基本事項および具体例やメリット・デメリット、仕訳例をわかりやすく解説します。消化仕入れによる取引を検討している方や、消化仕入れの仕訳…
詳しくみる創業期の事業を「早く」「大きく」する『財務』のチカラ 6.資金調達力の育て方
起業家は、「財務」を知ることで、もっと事業を発展させることができます。この連載では、起業家が創業からもつべき「財務」の視点・考え方について、シリーズでお伝えしていきます。 第4回、第5回で、事業投資の大切さ、事業投資をすることで事業が「早く…
詳しくみる