- 更新日 : 2026年9月15日
電子記録債権とは?仕訳からでんさいネットの利用方法までわかりやすく解説
電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録によって発生・譲渡するデジタルの金銭債権です。
- 紙の手形より管理・譲渡が容易
- 印紙税不要で事務負担を削減できる
- でんさいネットで取引先と利用可能
Q. 手形と電子記録債権の最大の違いは?
A. 電子記録債権はオンラインで発生・譲渡でき、印紙税不要・自動決済・分割譲渡が可能な点が手形と大きく異なります。
電子記録債権とは、従来の手形や売掛金に代わる電子化されたデジタルの金銭債権です。債権の発生や譲渡がオンラインで行えるため、企業間決済が効率化するとともに、円滑な資金調達や回収リスクの低減を通じた資金繰り改善にも役立ちます。
本記事では、電子記録債権の意味や仕訳処理のポイント、でんさいネットの利用方法を詳しく解説します。
電子記録債権(でんさい)とは?
電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿へ電子記録を行うことで発生・譲渡する金銭債権です。代表的な仕組みとして「でんさい」があり、紙の手形に代わる企業間決済手段として利用されています。
でんさいは電子記録によって成立する金銭債権
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワークが運営する「でんさいネット」を利用した電子記録債権です。支払企業が金融機関を通じて発生記録を行うと、金額や支払期日、債権者などが記録原簿に登録され、債権が成立します。
紙の証書を作成・交付する必要がなく、支払期日には原則として支払企業の口座から受取企業の口座へ自動送金されます。
譲渡や期日前の資金化にも利用できる
でんさいを受け取った企業は、譲渡記録によって取引先へ債権を譲渡できます。紙の手形と異なり、債権の一部だけを分けて譲渡することも可能です。また、金融機関の審査を受ければ、支払期日前に資金化できる場合があります。
紙の手形に伴う印紙税、郵送・保管、紛失・盗難、取立作業の負担を減らせる一方、利用には金融機関を通じた契約が必要です。取引先がでんさいに対応しているか、手数料や社内の承認手続きも確認しましょう。
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電子記録債権の読み方は?
電子記録債権は、「でんさい」と呼ばれることがあります。
ただし厳密にいえば、電子記録債権とでんさいは、それぞれ意味が異なるため注意が必要です。
- 電子記録債権:電子的に発生・譲渡される金銭債権の総称で、商取引における決済手段そのものを指します。電子記録債権は、2008年12月に施行された電子記録債権法により創設されました。
- でんさい:でんさいとは、株式会社全銀電子債権ネットワークが商標登録した、電子記録債権を指します。全国銀行協会(全銀協)が設立した全銀電子債権ネットワークは、電子債権記録機関の1つで、電子記録債権(でんさい)を記録・管理する決済インフラ「でんさいネット」を提供しています。
電子記録債権と手形の違いは?
手形とは、約束された金額を指定の期日に支払うことを証明する有価証券です。手形は物理的な証券であり、従来おもに取引先との資金決済や信用取引の手段として用いられてきました。
電子記録債権と手形のおもな違いを以下に紹介します。
<電子記録債権と手形の違い>
| 電子記録債権 | 手形 | |
|---|---|---|
| 管理方法 | 電子的に専用システムでリアルタイムに記録・管理 | 紙媒体で発行し、物理的に管理 |
| 発行方法 | オンライン上で手続き可能 | 紙の発行や押印が必要 |
| 譲渡の手続き | オンライン上で譲渡が可能なため迅速かつ簡単 | 紙の裏書譲渡が必要なため煩雑 |
| 流動性 | 高い
(デジタルで管理されるため) |
低い
(物理的な譲渡が必要) |
| 信用力の管理 | 金融機関を通じて信用管理が行われる | 発行元の信用力が重要 |
| 回収リスク | 支払期日に原則として自動決済されるため、取立手続などの事務負担を軽減できるが、債務者の資金不足等による支払不能リスクはある。 | 不渡り発生のリスクがある |
| 信頼性 | 二重譲渡や偽造のリスクが低い | 二重譲渡や偽造のリスクがある |
| 資金調達 | 金融機関への譲渡・割引や担保利用などによって、支払期日前に資金化できる場合がある。また、分割譲渡にも対応している | 手形を金融機関で割り引いてもらうことで、現金化が可能 |
| 事務負担と管理コスト | ペーパーレスのため発行や管理の手間が低減され、印紙税も課税されない | 物理的な発行・管理・保管が必要なため、印紙代や書類の管理コストが発生 |
電子記録債権と売掛金の違いは?
売掛金とは、商品やサービスの売上時に、顧客から受け取るべき金額を示す伝統的な債権です。売掛金は、管理のコストが低い反面、譲渡性や担保価値が限定的です。
以下に電子記録債権と売掛金のそれぞれの違いを解説します。
<電子記録債権と売掛金の違い>
| 電子記録債権 | 売掛金 | |
|---|---|---|
| 債権の発生 | 債権者と債務者の合意に基づき電子記録で発生 | 商品やサービスの提供に基づき発生 |
| 管理方法 | 電子的に記録し、専用システムで管理 | 自社の会計システムで管理 |
| 譲渡の手続き | 電子システム上での譲渡が容易 | 譲渡可能だが、通常の債権譲渡では契約締結や対抗要件の具備などの手続きが必要 |
| 流動性 | 高い (デジタルで管理される) |
低い (基本的に自社内で管理される) |
| 信用力の管理 | 金融機関を通じて信用管理が行われる | 自社で債務者の信用力を評価・管理する |
| 回収リスク | 自動的に決済が執行されるため回収リスクは低い | 債権回収リスクに加え、二重譲渡や人的抗弁によるリスクがある |
| 資金調達 | 資金調達の手段として利用可能 | 売掛債権ファクタリング等で資金化が可能 |
電子記録債権とファクタリングの違いは?
ファクタリングは、「債権買取り」を意味する資金調達方法の1つです。企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することで、早期に現金化するサービスを指します。そのおもな目的は、資金繰りの改善や未回収リスクの軽減といったものです。
以下に、電子記録債権とファクタリングのそれぞれの違いを解説します。
<電子記録債権とファクタリングの違い>
| 電子記録債権 | ファクタリング | |
|---|---|---|
| 定義 | 取引によって発生した債権を電子的に管理する仕組み | 売掛金を早期に資金化するための金融サービス |
| 利用目的 | 債権管理の効率化や取引の透明性向上、資金調達の手段として利用 | 資金繰りの改善や回収リスクの分散をおもな目的として活用 |
| 資金調達の方法 | 債権を譲渡して資金を調達可能 | 売掛金をファクタリング会社に譲渡し資金調達 |
| 譲渡の手続き | 専用システムで電子的に譲渡手続きを実施 | 売掛金の譲渡契約を締結し、ファクタリング会社へ通知 |
| リスク管理 | 金融機関や専用システムで信用リスクを管理 | ファクタリング会社が債権回収のリスクを負担 |
| コスト | 利用手数料が発生 | 手数料は高め (債権金額の一定割合) |
電子記録債権のスキームは?
ここでは、「でんさいネット」を用いた電子記録債権の仕組みについて、解説していきましょう。
- 電子記録債権が発生する際、取引先各社の指定金融機関を通じて、でんさいネット上の記録原簿に「発生記録」が登録されます。
- 債権の譲渡は、金融機関経由で記録原簿に「譲渡記録」を登録することで実行されます。
- 支払期日になると、自動的に支払企業の口座から資金が引き落とされ、債権者の口座に送金されます。
- 決済完了後、でんさいネットは「支払等記録」としてこれを反映します。納入企業は支払当日に資金を利用できるため、手形取引とは異なるメリットがあります。
詳しい取引イメージは、下図を参照してください。

電子記録債権の仕訳・勘定科目は?
電子記録債権は、会計上、資産の部の勘定科目として扱われます。詳しい処理方法を以下で解説していきましょう。
電子記録債権発生時
電子記録債権の発行時には、貸借対照表上の資産科目である、「電子記録債権」勘定を使用します。
仕訳上の処理方法は、売上時には借方へ「売掛金」勘定を計上し、電子記録債権の発行時に「電子記録債権」勘定へ振り替えます。
<商品売上時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 売掛金 | 250,000円 | 売上 | 250,000円 | A商品売上 |
<電子記録債権発生時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 電子記録債権 | 250,000円 | 売掛金 | 250,000円 | 電子記録債権発生にともなう振替 |
電子記録債権譲渡時
電子記録債権の譲渡とは、取引先への支払いに利用する方法や、金融機関への譲渡によって期日前に資金化する方法などがあります。手形取引における裏書譲渡や割引に類似した機能を持っています。手形と異なるのは、電子記録債権の場合、全額譲渡だけでなく分割譲渡も可能な点です。
なお、電子記録債権を譲渡記録請求により譲渡し、債権金額よりも少ない金額で資金化した場合は、その差額を「電子記録債権売却損」勘定で処理します。
<仕入れ代金等決済時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 買掛金 | 250,000円 | 電子記録債権 | 250,000円 | 買掛金支払い(電子記録債権より振替) |
<割引譲渡時>
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 240,000円 | 電子記録債権 | 250,000円 | 電子記録債権割引決済による入金 |
| 電子記録債権売却損 | 10,000円 | |||
電子記録債権決済時
電子記録債権は、支払期限到来時に自動的に決済が執行されます。入金と同時に、資産計上している「電子記録債権」勘定を取り崩します。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 250,000円 | 電子記録債権 | 250,000円 | 電子記録債権決済による入金 |
電子記録債権のメリットは?
電子記録債権には、紙の手形に伴う保管・郵送・取立の負担を減らし、債権の管理や譲渡を効率化できるメリットがあります。
債権者は回収手続きと資金調達を効率化できる
債権者にとってのメリットは、紙の証書を保管せずに債権を管理できることです。電子債権記録機関の記録原簿で管理されるため、紙の手形に比べて紛失・盗難・偽造や二重譲渡のリスクを抑えられます。
支払期日には原則として口座間で自動決済されるため、銀行へ手形を持ち込んで取立を依頼する必要もありません。また、電子記録債権は譲渡や金融機関での期日前資金化が可能です。債権を分割して必要な金額だけ譲渡できるため、資金繰りに合わせて活用しやすい点もメリットです。
債務者は支払管理と事務処理を効率化できる
債務者は、支払金額や期日、債権者などの情報を電子的に確認できるため、支払予定を一元管理しやすくなります。紙の手形用紙の作成、押印、郵送、保管などが不要となり、発行や管理にかかる事務負担も軽減できます。
さらに、電子記録による発生には印紙税がかからず、手形用紙代や郵送料も削減できます。ただし、電子記録債権を利用しただけで企業の信用力が自動的に高まるわけではありません。期日どおりに支払いを継続することが、取引先や金融機関からの信用維持につながります。
電子記録債権のデメリットは?
電子記録債権は紙の手形より管理しやすい一方、利用開始には金融機関との契約や社内体制の整備が必要です。債権者・債務者の双方に手数料やシステム上の制約が生じるため、導入前に取引先の対応状況も確認しましょう。
債権者は取引先が対応していないと利用できない
債権者にとっての主なデメリットは、債務者が同じ電子記録債権の仕組みに対応していなければ利用できないことです。取引先ごとに利用状況が異なる場合、電子記録債権と銀行振込などを併用する必要があり、かえって管理が複雑になることがあります。
また、譲渡や期日前の資金化には金融機関の審査や手数料がかかります。支払期日に債務者の口座残高が不足すれば支払不能となるため、電子化しても回収不能のリスクがなくなるわけではありません。
債務者は導入・運用コストと支払不能リスクを負う
債務者は、利用開始にあたって金融機関との契約や審査、インターネットバンキングの設定、社内承認フローの整備が必要です。発生記録や変更記録などに手数料がかかる場合もあり、取引件数によっては負担が大きくなります。
さらに、支払期日に必要な資金を用意できなければ支払不能となり、取引先や金融機関からの信用に影響します。誤入力や不正操作、システム障害にも備え、権限管理や二重承認、操作履歴の確認を徹底する必要があります。
でんさいネットを利用した電子債権取引の方法・流れは?
でんさいネットとは、株式会社全銀電子債権ネットワークが運営する電子記録債権の取引サービスです。
でんさいネットには、数多くの金融機関が加盟しているため初めての利用にも安心です。以下では、でんさいネットを利用した場合の電子記録債権取引の流れを解説します。
1.でんさいネットの利用を申し込む
でんさいネットを利用するには、参加金融機関を通じて申し込みを行います。
参加金融機関については、でんさいネット公式ページから確認しましょう。
窓口金融機関へ申し込み後、所定の審査を通過すると、利用契約が締結されます。その後、窓口金融機関から「利用者番号」が通知され、でんさいネットの利用が開始される流れです。
2.でんさいが発生する
窓口金融機関を通じて、でんさいネットの記録原簿上に発生記録を請求します。発生記録を請求する方法は、以下の2つです。
- 債務者請求方式
支払人である債務者が電子記録債権(でんさい)の発生記録請求を行います。
- 債権者請求方式
受取人である債権者が電子記録債権(でんさい)の発生記録請求を行います。
3.でんさいを譲渡する
電子記録債権(でんさい)を他の支払い等を目的として譲渡するには、窓口金融機関を通じてでんさいネットの記録原簿への譲渡記録請求を行います。この際、全額譲渡以外にも債権の分割譲渡も可能です。
4.でんさいの支払いをする
支払期日が到来すると、自動的に債務者の口座から資金が引き落とされ、債権者の口座へ支払いが実行されます。そのため、債務者による振り込み手続きや債権者の取り立て手続きは不要です。
この一連の取引を、でんさいネットが「支払等記録」として記録します。
手形の廃止に向けた取り組みにより電子記録債権はどう変わる?
紙の手形・小切手の交換廃止に伴い、電子記録債権は企業間の後払いを支える主要な代替手段として、利用がさらに広がると考えられます。ただし、制度そのものが大きく変わるというより、利用企業や取引件数が増え、企業側の対応が重要になります。
電子記録債権の利用がさらに拡大する
電子交換所における紙の手形・小切手の交換は、2027年3月31日に廃止されます。金融庁や全国銀行協会は、紙の手形に代わる手段として、でんさいなどの電子記録債権や銀行振込への切替えを推奨しています。
特にでんさいは、手形と同様に支払期日を設定でき、譲渡や分割譲渡、期日前の資金化も可能です。そのため、手形の後払い機能を残しながら電子化したい企業の利用が増えると見込まれます。
紙の管理から電子的な運用へ切り替わる
電子記録債権では、紙の手形の作成、押印、郵送、保管、銀行への取立持込みが不要になります。債権の発生や譲渡、決済状況は電子的に記録されるため、事務負担や紛失・盗難リスクを軽減できます。
一方、利用には金融機関との契約や社内権限の設定が必要です。企業は取引先の利用状況を確認し、契約書、支払条件、会計システム、承認フローを見直さなければなりません。
電子化しても支払不能リスクは残る
電子記録債権へ移行しても、支払期日に債務者の口座残高が不足すれば支払不能になります。紙の手形に伴う不渡りリスクが完全になくなるわけではありません。
電子化は決済事務を効率化する手段であり、債務者の信用力や資金繰りまで保証するものではありません。債権者は取引先の与信管理を続け、債務者は期日までの資金準備を徹底する必要があります。
電子記録債権の導入の進め方は?
電子記録債権を導入するには、利用目的を整理したうえで、金融機関への申込み、取引先との調整、社内運用の整備を順番に進めます。いきなり全取引を切り替えるのではなく、一部の取引先から試行すると混乱を抑えられます。
1.対象取引と導入目的を整理する
まず、現在利用している紙の手形について、取引先、金額、支払期日、取引件数を整理します。そのうえで、支払側・受取側のどちらで電子記録債権を利用するのか、銀行振込とどのように使い分けるのかを決めます。
手数料や事務負担、資金繰りへの影響も確認し、導入対象を明確にしましょう。
2.取引金融機関へ利用を申し込む
でんさいなどを取り扱う金融機関へ利用を申し込みます。利用には金融機関所定の審査や契約が必要であり、インターネットバンキングの契約、決済口座、利用者権限なども設定します。
発生記録、譲渡記録、決済にかかる手数料は金融機関によって異なるため、事前の比較が必要です。
3.取引先と支払条件を調整する
でんさいネットを利用する場合、自社だけでなく、支払側・受取側の双方がでんさいネットの利用者となる必要があります。取引先にも利用者登録や決済口座の設定等を依頼する必要があります。取引先が対応していない場合は、銀行振込など別の決済方法を用意します。
4.社内ルールを整えて試験運用する
会計システムの勘定科目を「電子記録債権・電子記録債務」に設定し、申請・承認・操作の権限を分けます。誤入力や不正操作を防ぐため、担当者と承認者による二重確認も必要です。
まずは少数の取引先で試験運用し、発生記録から期日決済、仕訳まで確認したうえで、対象を段階的に広げましょう。
電子記録債権は資金調達と取引の安全に効果的な新たな金銭債権
電子記録債権とは、従来の紙の手形や売掛債権に代わるデジタル型の金銭債権です。紙の手形や売掛金は、企業間取引の決済手段として長らく活用されてきましたが、事務手続きの手間やさまざまなリスクが課題となっていました。この課題を解決するために設けられたのが電子記録債権の制度です。
政府や金融界においても紙の手形廃止を進めており、手続きの効率化やリスク軽減を目指しています。まだ電子化に対応していない事業者は、資金調達がしやすく、取引の安全性に効果的な電子記録債権へ移行するよいタイミングといえるでしょう。
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