- 作成日 : 2025年9月9日
債務超過で融資を受けるには?経営立て直し・再建のための具体的な方法も解説
「債務超過でも融資を受ける方法は?」
「融資に応じてくれる金融機関や公的制度はあるのか」
「経営立て直し・再建のための具体的な方法を知りたい」
上記のように、債務超過や融資についてお悩みの方もいるでしょう。
本記事では、経営者の方のために、実践的な融資獲得のコツや利用できる公的支援までわかりやすく解説します。
再建のための具体策についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
債務超過とは
債務超過とは、会社の総資産よりも総負債が多くなっている状態です。
具体的に言うと、会社が保有するすべての財産を売却しても、借入金や未払いの義務をすべて返済しきれない状況を指します。
- 現金
- 在庫
- 不動産 など
たとえば、資産が100万円で負債が150万円の場合、50万円分の債務超過となります。
債務超過は、会社の経営状態が悪化している深刻なサインです。債務超過の状況が続くと、資金繰りが難しくなり、最終的には倒産するリスクが高まります。
できるだけ早く経営改善の対策をとることが大切です。
債務超過について、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
赤字との違い
債務超過と赤字は混同されがちですが、これらは全く異なる状態です。
赤字は、ある一定期間の収支がマイナスになることを指し収入よりも支出が多い状態を意味します。
一方、債務超過とは、会社がすべての資産を売却しても負債を完済できないことを指し、資産の合計額が負債の合計額より少ない状態を意味します。
赤字が続くと、会社の財産が徐々に減少し、結果として債務超過に陥る可能性が高まります。
たとえば、赤字は単なる一時的な収益の悪化を指しますが、債務超過は過去の損失が積み重なった結果、会社の財政基盤そのものが崩れている状態を示します。
したがって、両者は区別して考える必要があります。
赤字決算のメリット・デメリットについて詳しく解説していますので、下記の記事もご参考ください。
債務超過になる原因
債務超過に陥る主な原因は、以下の3つです。
- 収益の悪化
- 過剰な投資
- 突発的な損失
なかでも、継続的な赤字経営が最も一般的な原因です。売上が伸びず、支出が収入を上回る状態が続くと、利益剰余金が減少し、最終的には自己資本が枯渇してしまいます。
また、設備投資や事業拡大のために多額の借入れを行ったものの、計画通りに利益が出ない場合も注意が必要です。このような場合、負債だけが増えて資産が十分に増えず、債務超過に陥るリスクが高まります。
さらに、株価や不動産価格の急落、災害や訴訟による大規模な特別損失など、予期せぬ出来事によって短期間で自己資本が大きく減少することも、債務超過の原因となります。
債務超過が長期化するリスク
債務超過が長期化すると、会社の経営は非常に危険な状態に陥ります。
第一に、金融機関からの融資が困難になります。債務超過の状態だと、金融機関から返済能力に問題があると判断され、新たな融資や借入れの審査に通りにくくなる可能性が高くなります。
次に、取引先からの信用を失うリスクが高まります。
自社が債務超過であることが知られると、取引先は「支払いが遅れるのではないか」と不安を感じ、掛け売り(後払い)での取引を断られる可能性が高いです。
債務超過が続くと、資金繰りが悪化し、最終的には手元の現金がなくなって資金ショートを起こし、倒産のリスクが高まります。
債務超過になったからといって、すぐに倒産するわけではありませんが、何の対策もせずに放置すると、会社の存続が危うくなります。
債務超過でも融資を受けるには
債務超過の状態でも融資を受けるためには、経営改善に向けた具体的な計画を提示し、返済できる能力があることを金融機関に示す必要があります。
債務超過の内容を説明する
債務超過の状態を適切に説明するには、その原因が一過性か慢性かを明確に伝えることが重要です。大規模な設備投資や突発的な損失など、一時的な理由で債務超過になった場合、今後の改善が見込まれる点を具体的に示しましょう。
また、決算書に記載された数字だけでなく、会社の実際の財政状況を把握することも重要です。たとえば、実態貸借対照表を作成し、含み損益なども考慮して説明することで、会社の本当の価値をより客観的に示せます。
単なる数字だけでなく、その背景にある状況を正確に伝えることが、外部からの信頼を得るための第一歩となります。
経営改善計画の策定と提示
債務超過を解消し、金融機関からの信頼を取り戻すためには、実現可能な経営改善計画を策定し、金融機関に提示することが不可欠です。融資担当者は、「今後どのように利益を出し、債務超過を解消していくか」という具体的な道筋を最も重視しています。
そのため、以下のような具体的な数値目標を盛り込んだ計画を示すことが重要です。
- 売上を増やすためのマーケティング戦略
- コスト削減策
- 不採算事業からの撤退 など
また、資金繰り表を作成して現状と将来の資金状況を可視化し、融資で得た資金の使い道や返済計画を明確に伝えることで、金融機関に安心感を与えられます。
説得力のある経営改善計画を提示できれば、資金調達の可能性が高まるでしょう。
専門家からのアドバイスを受ける
債務超過の状態を改善し、事業を立て直すためには、税理士やコンサルタントといった専門家への相談が非常に重要です。
専門家は、債務超過の状態でも融資を受けられるように、金融機関の立場を考慮した資料作成をサポートしてくれます。また、金融機関の融資担当者とのコミュニケーションを円滑に進めるためにも、専門家の助言は役立ちます。
第三者である専門家の視点を取り入れることで、自社の課題を客観的に把握し、説得力のある事業改善計画を作成できるからです。専門家からアドバイスを受けることで、経営改善や資金調達に向けた、より具体的な道筋が見えてくるでしょう。
政府系金融機関や公的制度の活用
債務超過の状況であっても、政府系金融機関や公的な制度を利用することで、融資を受けられる場合があります。
日本政策金融公庫や信用保証協会などといった政府系金融機関は、中小企業の支援を目的としているためです。
日本政策金融公庫を活用する
債務超過の状態であっても、資金調達の方法として日本政策金融公庫の利用を検討する価値があります。
民間の金融機関が融資に消極的な場合でも、日本政策金融公庫は中小企業の支援を目的としているため、事業の将来性や返済計画を重視して審査してくれる可能性があります。
たとえば、新しい事業計画が明確で、今後の収益改善が見込める場合、民間では難しい融資が受けられるかもしれません。
日本政策金融公庫は企業の再生をサポートする役割を担っています。債務超過だからといって諦めず、専門家と相談しながら公庫への融資を申し込むことで、事業再建の可能性が広がります。
信用保証協会の活用
債務超過の企業が融資を受ける際には、信用保証協会を活用することが有効です。信用保証協会とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、公的な保証人となる機関です。
保証が付くことで、金融機関は貸し倒れリスクを抑えられるため、債務超過の企業に対しても融資を前向きに検討する可能性が高まります。信用保証協会を利用することで、民間の金融機関のプロパー融資を断られる企業も、事業再建に必要な資金を得られる可能性が広がります。
資金繰りに困った際は、経営改善計画をしっかりと策定した上で、保証協会への相談も視野に入れるべきでしょう。
地方自治体の制度融資の活用
地方自治体が設けている制度融資も有効な選択肢です。各都道府県や市区町村は、中小企業の支援を目的とした独自の融資制度を設けています。
これらの制度では、企業ごとの状況に合わせて柔軟に審査されることが多く、特定の条件を満たしていれば、たとえ債務超過の状態であっても融資を受けられる場合があります。
具体的な制度内容や要件は自治体によって異なるため、まずは地域の商工会や商工会議所、自治体の窓口に相談してみるのが良いでしょう。民間の金融機関で融資が難しい場合でも、地方自治体の制度を利用することで、事業再建のきっかけが得られる可能性があります。
経営立て直し・再建のための具体的な方法
債務超過を立て直すには、増資や資産売却といった財務的な改善と、本業での収益力向上が不可欠です。
財務改善と同時に本業の収益性を向上させることが、再建のポイントとなります。
また、資金繰りを改善して資金ショートを防ぐための方法・考え方について、下記の記事もご参考ください。
資本金の増加
債務超過を解消する効果的な方法のひとつに、資本金を増やす「増資」があります。増資は、会社のオーナーや役員が自らの資金を会社に出資するケースが多く、負債を増やさずに純資産を直接増やせる点が特徴です。
増資によって自己資本が増加すると、金融機関からの評価が上がり、新規の融資を受けやすくなったり、借入れ条件が緩和されたりする可能性があります。これにより、資金繰りが改善し、事業の立て直しに向けた具体的な行動が可能です。
また、外部の投資家から出資を募る「第三者割当増資」という方法もあります。新たな資金だけでなく、出資者が持つノウハウや人脈を活用できるというメリットもあります。
ただし、外部の人が経営に関与することになるため、その点には注意が必要です。
資産の売却
土地や不動産といった、帳簿価格よりも高い価値がある資産を売却すると、売却益が発生し、会社の純資産を増やせます。
売却で得た現金を借入金の返済に使えば、負債を減らして財務状況を早く改善できます。また、事業で使っていない機械設備や車両などの不要な資産を売却して資金を調達するのも効果的です。
資産を売却すると、負債を直接減らせるだけでなく、現金も確保できるため、資金繰りが改善し、経営再建への大きな一歩となります。
法的・専門的な再建手続き
債務超過の解消には、法的な再建手続きも選択肢となります。そのひとつが、金融機関と交渉して借入金の返済条件を見直すリスケジュール(リスケ)です。
毎月の返済額を減らしたり、返済期間を延長してもらうことで、資金繰りを一時的に改善し、事業の立て直しに必要な時間的猶予を得ることができます。もし自力での再建が難しい場合は、民事再生法や会社更生法の適用を検討する選択肢もあります。
これらの手続きは、裁判所の管理のもとで法的に債務を圧縮し、事業の立て直しを目指す方法です。手続きを利用しても事業の継続は可能ですが、信用力が大きく低下するおそれがあります。
いずれの方法を選ぶ場合でも、専門的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが大切です。
専門家の活用
債務超過を立て直すためには、税務・会計・法律・経営戦略など、幅広い専門知識が必要です。そのため、専門家の協力を得ることは、事業再建の成功率を高めるうえで非常に重要です。
事業再生の実績が豊富な専門家には、できるだけ早く相談しましょう。
- 税理士
- 公認会計士
- 中小企業診断士
- 弁護士 など
専門家は、以下のような幅広いサポートを行ってくれます。
- 正確な財務分析にもとづく実態貸借対照表の作成
- 金融機関の視点を踏まえた経営改善計画の策定
- 資金調達の支援 など
専門家の知識や経験を活用することで、自分たちだけでは解決が難しい課題を乗り越え、事業再建の確実な一歩を踏み出せるでしょう。
組織・人材の見直し
債務超過からの再建には、組織と人材の見直しが不可欠です。まずは、適材適所の人材配置を行いましょう。従業員のスキルや経験、本人の希望を考慮し、最もパフォーマンスを発揮できる部署や役割に再配置することで、組織全体の生産性が向上します。
また、新しい業務プロセスや必要なスキルを習得してもらうために、社内研修や勉強会を実施することも効果的です。
そして最も重要なのは、経営状況を従業員全員に共有することです。会社の現状や再建の目標を定期的に共有し、透明性の高いコミュニケーションを心がけることで、従業員全員が危機を乗り越える「チーム」としての意識を持てるようになります。
組織と人材の力を最大限に引き出すことが、経営再建を成功させるための重要なポイントです。
まとめ
債務超過とは、会社の資産が負債を下回っている危険な状態を指します。しかし、適切な対策を講じ、専門家の支援を受ければ、会社の再建は十分に目指せます。
日本政策金融公庫や信用保証協会、地方自治体の制度融資など、公的機関の支援を活用できるか検討しましょう。増資や、含み益のある資産を売却して資本を強化する方法も有効です。
経営再建を進めるには、組織体制や人材の見直しが欠かせません。会社の現状や再建の目標を従業員全員と共有し、情報をオープンに伝えるなど、コミュニケーションを心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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