• 作成日 : 2025年9月9日

アクワイアラとは?仕組みや注意点、よくある質問をわかりやすく解説

キャッシュレス決済の導入や見直しを検討する中で、「アクワイアラって何?」「イシュアとの違いは?」と疑問を持つ方も多いでしょう。

アクワイアラとは、クレジットカード決済において加盟店側の立場で決済処理を支援する存在です。

カード会社や決済代行会社などが該当し、契約から入金処理、本人認証の仕組みまでさまざまな役割を担います。

本記事では、アクワイアラの役割やイシュアとの違い、注意点、よくある質問などを丁寧に解説します。

とくにキャッシュレス導入を検討中の事業者や、社内の仕組みを見直したい方は、実務に役立つ基礎知識を理解しておきましょう。

アクワイアラとは

アクワイアラとは、カード決済を利用できる環境を提供し、加盟店側に立って契約や管理をおこなう事業者のことです。

アクワイアラは、「カード加盟店契約会社」「加盟店管理会社」とも呼ばれ、クレジットカード決済を導入したい店舗が契約をおこないます。

主な役割は審査や契約、決済代金の精算で、加盟店を国際ブランド(VisaやMastercardなど)のネットワークにつなげる役割を果たします。

アクワイアラによって、加盟店は現金だけに依存せず、幅広い決済手段を顧客に提供できる仕組みです。

キャッシュレス化が進む今、アクワイアラの存在は店舗の売上拡大や顧客満足度の向上に直結し、決済インフラの要として重要性を増しています。

アクワイアラの役割3つ

アクワイアラの役割は「営業・審査・売上管理」の3領域に分かれており、加盟店の取引から得られる手数料を収益源としています。

ここでは、アクワイアラの主な役割を3つ紹介し、キャッシュレス決済を支える仕組みをわかりやすく解説していきます。

①加盟店を増やす

アクワイアラの大きな役割のひとつは、クレジットカードを利用できる加盟店を増やす取り組みです。

営業部門が店舗やEC事業者に対してカード決済導入を提案し、契約につなげる活動をおこないます。

また、新規開拓だけでなく、すでに契約している加盟店の継続利用を促進したり、運営をサポートする取り組みも欠かせません。

たとえば、決済端末の導入支援や、利用者を増やすための販促施策の提案といった活動は、新規開拓だけでなく、既存加盟店の継続利用を促進し、運営を支える仕事です。

なお、加盟店の増加はカード利用の利便性を高めるため、消費者にとって大きなメリットです。

結果として、アクワイアラはキャッシュレス化の拡大を支え、利用者と加盟店をつなぐ役割を果たしています。

②加盟店を審査する

アクワイアラの大きな役割のひとつに、加盟店契約を結ぶ前の審査があります。

加盟店の審査は、カードの不正利用や利用者とのトラブルを未然に防ぐために欠かせない工程です。

審査項目としては事業内容や提供サービスの健全性、過去の取引実績、反社会的勢力との関わりがないかなどが挙げられ、多角的にチェックがおこなわれます。

とくに風俗関連や投資商品、情報商材、一部のサブスクリプション業態は「ハイリスク業種」と判断されやすく、審査通過のハードルが高くなります。

厳格な審査は加盟店側にとっては負担である一方で、カード利用者にとっては決済環境を守るための重要な仕組みです。

③加盟店に支払いをする

加盟店で発生した売上はすべてアクワイアラを通じて精算され、定められたサイクルに従って入金されます。

入金サイクルは、月末締め翌月末払いのように月1回のパターンもあれば、週次や数日ごとに区切って入金される方式を選べる場合などさまざまです。

場合によっては複数のサイクルから選べたり、早期入金オプションを利用できたりするケースもあります。

入金サイクルが選べることで、仕入れや人件費など支払いに合わせた資金計画が立てやすくなり、加盟店はより安定したキャッシュフローを確保しやすくなります。

アクワイアラとイシュアの違い

クレジットカードの仕組みを支える存在には、加盟店を担当するアクワイアラと、カード会員を担当するイシュア(カード発行会社)があります。

ここでは、アクワイアラ・イシュアの特徴を整理し、両者がどのようにキャッシュレス決済を支えているのかを解説します。

主な役割|アクワイアラは加盟店側、イシュアはカード会員側

アクワイアラは、クレジットカードが利用できる店舗と契約を結び、加盟店の新規開拓や審査、既存加盟店の管理を担います。

さらに、加盟店で発生した売上データを受け取り、イシュアへ送信する役割も果たします。

イシュアから代金が戻ると、アクワイアラが加盟店へ入金するため、両者をつなぐ存在です。

一方のイシュアは、消費者にクレジットカードを発行する会社です。

イシュアはカード会員の入会審査をおこない、与信枠を設定するほか、日々の利用状況を管理して請求書を発行し、代金を回収します。

また、リボ払いや分割払いといった支払い方法の提供、不正利用を検知・防止するセキュリティ管理も重要な仕事です。

利用者にとって最も身近な存在であり、快適かつ安全にカードを利用できる環境を整える取り組みがイシュアの役割です。

つまり、アクワイアラは店舗を支える立場、イシュアは利用者を支える立場と分担することで、安心・安全な決済の仕組みを成り立たせています。

収益源|アクワイアラは手数料、イシュアは利息や年会費

アクワイアラとイシュアは、役割だけでなく収益源にも明確な違いがあります。

アクワイアラの主な収益源は、加盟店から受け取る決済手数料です。

カードで取引が発生するたびに数%の手数料が発生し、取引量が多いほど安定した継続収益につながります。

一方のイシュアは、主に「インターチェンジフィー」と呼ばれる収入が中心です。

インターチェンジフィーとは、クレジットカードでの決済があった際に、アクワイアラがイシュアに支払う手数料のことを指します。

加えて、リボ払いやキャッシングに伴う利息、年会費や分割払いの手数料などもイシュアの重要な収入源として位置づけられています。年会費や分割払いの手数料なども収益の柱です。

つまり、アクワイアラは加盟店の売上規模に依存し、イシュアはカード会員の利用状況や返済方法に左右される点で違いがあります。

アクワイアラとイシュアは、異なる収益モデルを持つことで相互に補完しながら、市場全体の拡大を実現しています。

アクワイアラ契約時の注意点

アクワイアラとの契約は、スムーズな決済運用をおこなうための土台です。

一方で、入金タイミングや手数料の条件、業種による審査の可否など注意すべき点も多く、内容を理解せずに契約すると想定外のコストやトラブルにつながりかねません。

ここでは契約前に押さえておきたい代表的な注意点を整理します。

入金タイミング・決済手数料の確認をする

アクワイアラと契約する際には、売上の入金タイミングと決済手数料の条件を必ず確認しておく必要があります。

前提として、入金サイクルには複数のパターンがあり、同じ売上規模でも契約内容によって着金スピードが変わります。

入金までの日数はキャッシュフローに直結するため、自社にとって無理のないスケジュールかどうかを確認しておきましょう。

また、加盟店手数料は一律ではなく、業種や平均単価、リスクレベルに応じて個別に決められるのが一般的です。

さらに決済代行会社(PSP)を経由する場合は、アクワイアラ手数料に加えてPSP手数料が上乗せされるケースもあります。

内訳が不透明だと想定以上のコストが発生しかねないため、契約前に「いつ入金されるのか」「手数料の内訳はどうなっているのか」を明確にしておきましょう。

ハイリスク業種は審査が厳しいため通らないこともある

アクワイアラと契約する際、業種によっては審査が非常に厳しく、場合によっては契約自体ができないことがあります。

とくに情報商材やギャンブル、暗号資産、出会い系サービスなどは「ハイリスク業種」とされる典型例です。

ハイリスク業種は、利用者が支払いに異議を申し立て、代金を取り戻す手続きが多発しやすいとされています。

実際、「高額請求に対して返金を求めたい」「支払い内容が不当」といった声が寄せられ、決済を仲介したカード会社や代行業者が巻き込まれるケースもあります。

アクワイアラ手続きに関するよくある質問4選

アクワイアラとの契約を検討する際は、申し込み方法や手数料の相場、セキュリティ対策など、事前に確認しておきたい疑問点が少なくありません。

ここでは、加盟店からとくによく寄せられる質問を4つ取り上げ、契約や運用にあたって押さえておくべきポイントを解説します。

①アクワイアラ契約の登録方法・問い合わせ先の探し方は?

アクワイアラと契約する際の主な登録方法は、決済代行会社(PSP)を通じて手続きを進める方法です。

決済代行会社が複数のアクワイアラと提携している場合、自社の業種や取引規模に合った契約先を選定してくれるため、初めて導入する事業者にとって効率的です。

一方、アクワイアラと直接契約を結ぶ場合は、各社の公式サイトに設けられている「法人加盟店募集」ページなどから申し込みます。

選定の際は、すでに同業種で導入している店舗やサービスの事例を参考にすると、自社に合ったアクワイアラを見つけやすいでしょう。

②加盟店手数料の内訳や相場は?

クレジットカード決済で発生する加盟店手数料は、単なる一律料金ではなく複数の要素から構成されています。

主な内訳は、加盟店と契約するアクワイアラに支払う「アクワイアラ手数料」、国際ブランドに支払う「国際ブランド手数料」、そしてイシュアに支払う「インターチェンジフィー」です。

料率は業種や取引形態によって変動しており、返品要求のリスクが多い業態は高めに設定される傾向です。

さらに月商規模でも条件が変わるため、契約前に内訳を確認しておく必要があります。

③3Dセキュアの導入は必須?

3Dセキュアは近年多くのアクワイアラが導入を推奨または必須としています。

前提として、3Dセキュアを導入すると、決済時にカード番号だけでなく追加の本人認証(ワンタイムパスワードや端末認証など)がおこなわれます。

第三者による不正利用を防ぎやすくなることで、利用者が「身に覚えがない」と返金を求める声を大幅に減らせるのはメリットのひとつです。

また、従来のパスワード入力に代わり、現在は「3Dセキュア2.0」が主流となり、よりスムーズかつ安全な認証が可能になっています。

さらにMastercardやVisaといった国際ブランドでは順次義務化が進められています。

加えて、国内のEC販売においては割賦販売法により法令上も3Dセキュア導入が義務化されており、加盟店には法的対応が求められます。

④アクワイアラ・イシュアが同じ会社だとお得に利用できる?

アクワイアラとイシュアが同じ会社で処理されるケースはオンアス取引と呼ばれ、通常よりもコストや処理スピードで有利になることがあります。

たとえば、三井住友カードが加盟店契約を結んでいる店舗で、利用者も三井住友カードを使った場合、国際ブランドのネットワークを経由せずに処理可能です。

結果として、決済コストが抑えられたり、入金が早くなるといったメリットが期待できます。

ただし、必ずしも大幅な優遇があるわけではなく、業界や契約条件によって効果が異なる点には注意が必要です。

自社の顧客層や利用カードの傾向を踏まえて、どの程度メリットがあるかを判断する意識が重要です。


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