• 作成日 : 2026年10月28日

時価とは?意味や調べ方、会計・税務での扱いを解説

Point時価とは何を指す価格?

時価とは、ある時点で市場参加者間の通常の取引が行われると想定した場合に成立する価額です。

  • 時価=市場価格とは限らない
  • 会計・税務で定義や算定方法が異なる
  • 簿価・取得原価・正味売却価額とは別概念

Q. 時価と簿価の違いは?
A. 時価は評価時点の市場価額、簿価は帳簿に計上されている金額で、減価償却などにより両者は異なります。

「時価」とは、一般的には、ある時点で資産などを取引するとした場合に成立すると考えられる価格を指します。会計や税務では、単に「現在の販売価格」を意味するとは限りません。株式などの金融商品、商品・製品、不動産など、対象となる資産や制度によって算定方法が異なります。

この記事では、時価とは何か、市場価格や取得原価、簿価との違い、税務上の考え方などを解説します。

時価とは?

時価とは、ある時点において資産や負債を市場で取引すると仮定した場合に成立すると考えられる価額です。 日常的には「今売ったらいくらになるか」という意味で使われますが、会計・税務では対象となる制度に応じた定義や評価方法があります。

上場株式のように市場価格が明確な資産であれば時価を把握しやすい一方、不動産や非上場株式などは単純に取引所の価格を確認できません。そのため、合理的な評価方法を用いて価額を求めるケースがあります。

時価は「現在の価値」を表す価格

時価は、資産を購入したときの金額ではなく、評価する時点における価値を示す考え方です。

たとえば、100万円で購入した株式が現在120万円で取引されている場合、取得時の100万円ではなく、現在の市場価格である120万円が時価を考える際の基礎になります。

企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」では、時価を、算定日に市場参加者間で秩序ある取引が行われると仮定した場合に、資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格としています。

したがって、時価は「自分ならこの金額で売りたい」という主観的な希望価格ではなく、市場参加者による通常の取引を前提とした価額として考えるのが基本です。

参考:時価の算定に関する会計基準|企業会計基準委員会

時価と市場価格は必ずしも同じではない

市場価格が存在する場合は市場価格が時価の有力な基礎になりますが、「時価=市場価格」とは限りません。

株式市場で活発に取引されている上場株式であれば、取引所の価格を利用しやすいため、時価と市場価格は近い関係になります。一方、市場で直接観察できる価格が存在しない金融商品などでは、観察可能な市場データや合理的な仮定を使って価額を算定することがあります。

会計基準では、時価算定に使用する情報について、活発な市場の相場価格を利用するレベル1、観察可能な情報を用いるレベル2、重要な観察できない情報を用いるレベル3という区分も設けられています。

市場価格は時価を求めるための代表的な情報ですが、市場価格が存在しないからといって時価を算定できないとは限りません。

時価と取得原価・簿価・正味売却価額は何が違う?

時価・取得原価・簿価・正味売却価額は、それぞれ基準となる時点や算定方法が異なります。 取得時の金額を見るのが取得原価、帳簿上の現在額が簿価、市場で取引する場合の価額が時価です。正味売却価額は、売価から販売などに必要な費用を差し引いた価額を指します。

【時価】評価時点で市場取引を想定した価額

時価とは、評価する時点で市場参加者間の通常の取引が行われると想定した場合に成立する価額です。

企業会計基準第30号では、時価を、算定日に市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合に、資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格としています。

100万円で購入した上場株式が決算日に120万円で取引されていれば、取得原価は100万円でも、評価時点の市場価格を基礎とした時価は120万円となります。

【取得原価】資産を取得したときの金額

取得原価とは、資産を購入・取得した際に要した金額を基礎とする価額です。

棚卸資産の場合は、購入代価や製造原価に引取費用などの付随費用を加えて取得原価を算定します。 時価がその後変動しても、取得原価そのものが変わるわけではありません。

取得原価は「いくらで取得したか」、時価は「現在の市場ではいくらと評価されるか」という違いがあります。

【簿価】現在帳簿に計上されている金額

簿価(帳簿価額)とは、決算書や帳簿に現在計上されている資産の金額です。

取得時には取得原価と簿価が一致することがありますが、その後に減価償却や評価損、簿価の切下げなどが行われれば両者は異なります。

たとえば、500万円で購入した固定資産について減価償却が200万円進んでいれば、単純化すると簿価は300万円です。このとき、市場で400万円の価値があったとしても、簿価が自動的に400万円になるわけではありません。

【正味売却価額】売価から販売などに必要な費用を差し引いた価額

正味売却価額とは、売価から見積追加製造原価と見積販売直接経費を差し引いた金額であり、簿価そのものを意味する言葉ではありません。

企業会計基準第9号では、通常の販売目的で保有する棚卸資産について、期末の正味売却価額が取得原価を下回る場合、その正味売却価額まで帳簿価額を切り下げます。

たとえば、取得原価10万円の商品について、売価が8万円、販売直接経費が1万円なら、正味売却価額は7万円です。一定の前提のもとでは7万円まで簿価を切り下げるため、切下げ後には結果として「正味売却価額=簿価」となる場合がありますが、両者は本来別の概念です。

時価はどのように調べる?

時価の調べ方は、対象となる資産によって異なります。 市場価格が公開されている資産なら確認しやすい一方、市場価格がない場合には、類似取引や評価モデル、制度上定められた評価方法などを利用します。

市場価格がある資産は市場データを確認する

上場株式など、活発な市場で取引されている資産では、市場で観察できる価格が時価算定の中心になります。会計上の時価では、市場参加者が通常の条件で取引すると仮定して価格を考えます。強制的な処分や投げ売りのような特殊な取引価格をそのまま時価とする考え方ではありません。

企業会計基準第30号でも、強制された清算取引や投売りではなく、「秩序ある取引」を前提としています。

たまたま発生した特殊な取引価格だけを見るのではなく、通常の市場環境において成立すると考えられる価格を確認します。

市場価格がない資産は合理的な方法で算定する

直接観察できる市場価格がない場合でも、利用可能な市場情報や合理的な評価方法を使って時価を算定する場合があります。会計上の時価算定では、可能な限り観察可能な市場情報を利用します。一方、十分な市場データが存在しない場合には、入手可能な情報や一定の仮定を使った評価が必要になることがあります。

不動産のように同じものが市場で継続的に取引されない資産では、立地、面積、利用状況、周辺の取引事例などによって評価額が変わります。

「インターネットで見つけた似た商品の価格」が直ちに会計・税務上の時価になるわけではありません。

会計ではどのような場面で時価を使う?

会計では、金融商品や一部の棚卸資産などについて時価を用いる場面がありますが、すべての資産を時価評価するわけではありません。企業会計基準第30号の時価算定ルールは、金融商品やトレーディング目的で保有する棚卸資産などを対象としています。

金融商品では時価が使われることがある

株式や債券などの金融商品では、保有目的などに応じて時価を反映した会計処理が行われます。金融商品の価格は市場環境によって変動するため、取得時の金額だけでは決算時点の経済的な価値を適切に表せない場合があります。

金融商品については、その種類や保有目的などに応じて時価評価が行われ、評価差額が損益や純資産に反映されることがあります。一方、金融商品だからすべて同じ会計処理になるわけではありません。保有目的や商品の性質によって取扱いが異なる点には注意が必要です。

棚卸資産では正味売却価額との比較が行われる

通常の販売目的で保有する商品や製品では、取得原価と正味売却価額を比較する処理があります。企業会計上、通常の販売目的で保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とします。ただし、期末の正味売却価額が取得原価より下落している場合には、その正味売却価額まで帳簿価額を切り下げ、その差額を当期の費用として処理します。

たとえば、8万円で仕入れた商品が値下がりし、販売関連費用を差し引いた正味売却価額が6万円になった場合には、その下落を決算に反映する可能性があります。

参考:棚卸資産の評価に関する会計基準|企業会計基準委員会

税務上の時価とは?

税務上の時価は、税目や取引内容によって意味や算定方法が異なるため、「会計上の時価をそのまま使えばよい」とは限りません。所得税、法人税、消費税、相続税・贈与税では、それぞれ異なる制度目的があります。同じ財産についても、どの税金の計算をしているかによって確認すべき時価の考え方が変わることがあります。

法人が役員へ安く資産を売る場合は時価が問題になる

法人が役員などに資産を時価より著しく安く譲渡した場合、実際の売却価格だけではなく時価との差額が税務上問題になることがあります。法人が役員に資産を贈与した場合にはその資産の時価、時価より低い価額で譲渡した場合には時価と譲渡価額との差額が、役員に対する経済的利益として扱われる場合があります。

たとえば、会社が保有する資産を市場で通常500万円程度で売却できるにもかかわらず、役員へ100万円で譲渡した場合には、「実際に100万円しか受け取っていないから100万円だけを考えればよい」とは限りません。

関連当事者との取引では、取引金額が通常の取引価格と大きく離れていないかを確認しておくことがポイントになります。

消費税では原則として実際の取引価額を使う

通常の商品販売では、時価より安く販売したという理由だけで、必ず時価まで売上を引き上げて消費税を計算するわけではありません。消費税では、原則として課税資産の譲渡等の対価の額を課税標準とします。そのため、一般的な値引販売では、通常価額より安く販売していても実際の取引価額を基礎にします。

法人が役員に資産を著しく低い価額で譲渡する場合など、一定の「みなし譲渡」では例外があります。法人から役員への低額譲渡では、譲渡時の通常の販売価額のおおむね50%に満たない場合が「著しく低い対価」の基準として示されています。

個人事業主の自家消費でも時価が関係する

個人事業者が事業用の商品などを自分や家族のために消費した場合にも、時価を基礎とする取扱いがあります。消費税では、個人事業者が棚卸資産などを家事のために消費または使用した場合、その資産を消費・使用した時点の時価に相当する金額を課税標準とするのが基本です。

ただし棚卸資産については、仕入価額以上で、かつ通常の販売価額のおおむね50%以上の金額を対価として申告した場合に認められる取扱いもあります。

飲食店が販売用の食品を事業主の家庭で消費するケースなどでは、自家消費の会計・税務処理を確認しておくとよいでしょう。

相続税・贈与税では時価をどう考える?

相続税・贈与税では、相続や贈与によって取得した財産について、原則として取得時の時価を基礎に評価します。不動産や非上場株式などについて、毎回実際に第三者へ売却して価格を調べるわけではありません。財産評価基本通達に定められた評価方法などを用いて財産価額を算定します。

相続税の時価は通常成立すると認められる価額

相続税や贈与税で基準となる時価は、課税時点で不特定多数の者の間に自由な売買がなされた際、通常成立すると考えられる価格をベースにします。 財産評価基本通達では、課税時期における財産の現況に応じて時価を考え、その価額を通達に定める方法によって評価する仕組みが示されています。

土地であれば路線価方式や倍率方式など、財産の種類に応じた評価方法があります。不動産会社の広告に掲載されている売出価格を、そのまま相続税の評価額として使うわけではありません。

著しく安い金額で財産を譲り受けると贈与税が生じる場合がある

個人から財産を著しく低い価額で譲り受けた場合、時価と実際に支払った金額との差額について贈与とみなされる場合があります。本来相応の価値がある財産を親族間で極端に安く売買したとしても、必ずしも売買代金だけを基準に贈与税を判断するわけではありません。

なお、「著しく低い価額」に該当するかどうかは個々の事情に基づいて判定されます。個人から個人への低額譲渡について、一律に「時価の50%未満なら贈与」というルールになっているわけではありません。

商品の時価が下がった場合は会計・税務でどう扱う?

商品の市場価値が低下した場合、会計上は正味売却価額への簿価切下げが問題となり、税務上は採用している棚卸資産の評価方法などを確認します。「値下がりしたから自由に在庫の金額を下げられる」という仕組みではありません。決算時点の評価について、会計基準と税務上の評価方法を区別して処理する必要があります。

会計では収益性が低下した棚卸資産を切り下げる

通常の販売目的で保有する棚卸資産について、正味売却価額が取得原価より低下している場合には、原則としてその価額まで帳簿価額を切り下げます。これは、販売によって回収できる金額が低下しているにもかかわらず、従来の取得原価のまま資産計上すると、資産価値や利益を実態より高く表示する可能性があるためです。

一時的にセール価格を設定したというだけではなく、決算時点における販売可能価額や販売費用などを踏まえて判断します。

税務の低価法では期末時価との比較が行われる

法人税の棚卸資産について低価法を適用する場合、期末時点でその棚卸資産を売却するとした場合に通常付される価額が時価の基礎になります。税務上、この期末時価は通常、商品・製品の売却可能価額から見積追加製造原価や見積販売直接経費を控除した正味売却価額によるとされています。

会計上の商品評価損と税務上の損金算入が常に一致するわけではないため、決算で評価損を計上する際は、会計処理だけでなく税務上の要件も確認する必要があります。

時価を確認するときに注意したいことは?

時価を確認するときは、「いつの時点の価額か」「何の制度で使用する価額か」「どの資産を評価するのか」を明確にすることがポイントです。

評価する時点をそろえる

時価は評価時点によって変わるため、いつの価額を求めるのかを明確にします。株価や為替、不動産価格などは日々変動します。決算のための評価なら決算日、相続財産の評価なら原則として相続開始時など、制度ごとに基準となる時点があります。

現在の価格が1,000万円だからといって、過去の取引時点でも時価が1,000万円だったとは限りません。

会計上の時価と税務上の時価を混同しない

同じ資産であっても、会計上の評価額と税務上の評価額が一致するとは限りません。会計は企業の財政状態や経営成績を適切に表示する目的があり、税務は税額を計算するためのルールに基づいて処理します。

また、税務の中でも法人税、所得税、消費税、相続税では時価が使われる場面が異なります。取引の種類や税目を確認したうえで、それぞれの法令・通達に沿って判断することが適切です。

所得税・法人税・相続税などの各通達は個別に改正・更新されています。最新の取引を処理する際には、その時点で適用される制度を確認しましょう。

時価の意味を理解して会計・税務を正しく処理しよう

時価とは、「現在売られている価格」を指すだけではなく、ある時点の市場環境や取引条件を踏まえて算定する価額です。会計上は金融商品などの評価や棚卸資産の評価で用いられ、税務上も低額譲渡、自家消費、相続・贈与などさまざまな場面で登場します。

また、時価、取得原価、簿価、市場価格、正味売却価額は意味が異なります。時価を調べる際には、「何を、いつ、どの制度のために評価するのか」を先に整理すると判断しやすくなります。税務処理では税目ごとに取扱いが異なるため、個別の取引内容に応じて適用されるルールを確認しましょう。

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