- 作成日 : 2024年11月19日
電子帳簿保存法でフォルダ構成はどのように分類すべき?具体例も紹介
2024年1月1日以降、電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存が完全義務化されました。専用システムを導入しない場合は、法令に則って、自社でデータを管理することが特に重要になります。しかし、「フォルダ構成をどのように分類すればよいのか」と迷っている担当者は少なくないはずです。
本記事では、具体的なフォルダ構成の分類方法や、法令に則ったファイル名の付け方について解説します。自社に最適なファイル構成が分かり、必要なデータを探しやすくなることで、業務効率化にもつながるでしょう。
関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
目次
電子帳簿保存法でフォルダ構成はどのように分類すべき?
電子帳簿保存法において、電子取引のデータ保存のフォルダ構成に関する具体的な要件はありません。
国税庁は「電子データの格納先や保存方法について、取引データの授受の方法等に応じて複数に分かれても問題ない」としています。ただし、「提示を求められた場合に速やかに出力できるよう管理しておくこと」としており、データを整理しておく必要があります。
フォルダの階層が多すぎたり、細かく分けすぎたりしていると、保存作業が煩雑になるため、3階層程度に留めるのがおすすめです。以下に利用しやすいフォルダ構成の例を示します。
大分類 | 中分類 | 小分類 | |
---|---|---|---|
① | 年度 | 取引先名 | 書類の種類 |
② | 年度 | 年月 | 書類の種類 |
③ | 年度 | 業務の種類 | 取引先名 |
④ | 部門 | 書類の種類 | 年月 |
自社に合ったフォルダ構成にすることで、必要なデータを見つけやすくなり、業務効率化にもつながります。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問28)
電子帳簿保存法に対応したファイル名の付け方は?ルールと具体例を解説
電子取引データを保存する際は、検索機能により必要なデータを取り出せるよう、保存要件が定められています。最低限、取引の「日付・金額・取引先」で検索できる必要があり、分かりやすいファイル名を付けておくことが重要です。
たとえば、2024年11月2日にA株式会社から2024年11月1日付で100万円の請求書を受け取ったと仮定しましょう。この場合、以下のようなファイル名を付けるとデータの検索がスムーズにできます。
- 241101_A株式会社_1000000_請求書.pdf
- 241101_A株式会社_1000000.pdf
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問16)
ファイル名の付け方を統一し、社内で一貫したルールに沿って運用しましょう。
電子帳簿保存法でフォルダ構成の整理が必要な理由
電子帳簿保存法においてフォルダ構成の整理が必要な理由は、データに速やかにアクセスできる状態にするためです。
そもそも電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿・書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律のことです。電子保存の形式は3つの区分に分かれており、それぞれ保存要件が異なります。
引用:電子取引・電子帳簿保存法なら マネーフォワード クラウド
特に、電子取引のデータ保存は2024年1月1日以降、完全義務化されたため対応が必須です。保存するデータについては、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たさなければなりません。
フォルダ構成やファイル名の付け方は、主に「可視性の確保」に関連しています。
可視性の確保とは、保存した電子データをいつでも検索・表示できる状態にするための要件であり、以下のすべてを満たす必要があります。
①取引の「日付・金額・取引先」で検索できる ②日付または金額の範囲を指定して検索できる ③「日付・金額・取引先」のうち2つ以上の項目を組み合わせて検索できる |
ただし、税務職員によるデータの提示・提出に応じられる場合は、「検索機能の確保」における②・③の要件を満たさなくても問題ありません。
フォルダ構成を整理し、適切なファイル名を付けることで、効率よくデータを管理しましょう。
参考:電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
電子帳簿保存法に則った書類保存には専用システムの導入がおすすめ
電子取引データは、自社サーバーやクラウド上にフォルダを整備して保存する方法で問題ありません。しかし、下記の理由から電子帳簿保存システムの導入がおすすめです。
- フォルダ構成やファイル名を細かく整理する必要がなくなる
- 電子データ保存にかかる業務が簡略化できる
- 誤ってデータを削除するリスクが低くなる
1. フォルダ構成やファイル名を細かく整理する必要がなくなる
電子帳簿保存システムには、データをアップロードすると、自動的にフォルダに分類する機能を持つものがあります。また、適切なファイル名を自動で付与する機能などもあります。
専用システムを活用すると、フォルダ構成を考えたり、毎回ファイル名を付ける手間が省けます。また、データを複数の部署で扱う場合でも、保存方法を統一しやすくなります。
2. 電子データ保存にかかる業務が簡略化できる
電子帳簿保存システムには、一般的に次のような機能を兼ね備えています。
- 検索機能を用いて書類を簡単に検索できる
- データをアップロードすると、保存要件を満たした状態で自動的に保存される
- タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残り、データの改ざんを防止できる
データの保存業務が取り出しにかかる手間が減り、業務を簡略化できます。また、データの改ざんを防止でき、内部統制の強化にもつながるでしょう。
3. 誤ってデータを削除するリスクが低くなる
データはシステム内に保存されるため、誤ってデータを消してしまうリスクの軽減が可能です。システムによってはデータのバックアップ機能があるため、万が一データを削除しても復元できる可能性が高くなります。
データ削除の際に確認メッセージが表示されるなどの安全機能を備えたシステムもあり、人的ミスを防ぐ仕組みが整っています。
電子帳簿保存法のフォルダ構成に関するよくある質問
最後に、電子帳簿保存法のフォルダ構成に関するよくある質問を紹介します。
電子データの保存期間は?
法人は原則7年間(欠損金の繰越控除を受ける場合は最長10年間)の保存が必要です。個人事業主の場合は、白色申告者か青色申告者かによって、保存期間が異なります。
保存期間 | 青色申告者 | 白色申告者 |
---|---|---|
7年間 | 法定帳簿(収入金額や必要経費を記載した帳簿) | |
5年間 | 上記以外の書類(請求書、見積書、納品書など) |
|
ただし、適格請求書(インボイス)に該当する場合は、一律7年間の保存が必要です。
参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁、記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁
一つの取引において複数の書類がある場合は、すべて保存が必要?
電子取引データに該当する場合は、原則として、すべての書類を保存する必要があります。
電子データの保存先はGoogleドライブなどのクラウド上でも問題ない?
電子データの保存先は、Googleドライブなどのクラウドストレージでも問題ありません。
ただし、セキュリティ対策として、以下のような対応を行うのがおすすめです。
- アカウントへの不正アクセスを防ぐため、2段階認証を設定する
- 関係者のみがファイルにアクセスできるように、適切なアクセス制限を設ける
このような対策を取ることで、電子帳簿保存法の要件を満たしつつ、クラウド上で安全にデータを保存できます。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問25)
フォルダ構成を整理して電子帳簿保存法に対応しよう
電子取引データ保存の完全義務化に伴い、適切なフォルダ分類やファイル管理が重要になります。分かりやすいフォルダ構成とファイル名を設定することで、必要なデータを検索しやすくなります。
さらに、電子帳簿保存システムを導入することで、フォルダ構成を考える必要がなくなり、より安全なデータ保存が可能です。自社に最適なフォルダ構成を検討し、業務を効率化しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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