- 更新日 : 2026年4月22日
契約資産とは?仕訳方法や管理のポイントをわかりやすく解説
契約資産は新収益認識基準で登場した概念で、製品・商品やサービスと交換に受け取る対価に対する権利のことです。新しい会計用語のため、いまいちピンとこない方も多いでしょう。この記事では契約資産について具体例を用いて分かりやすく解説します。
契約負債や売掛金との違い、仕訳方法などもご紹介しますので、企業の経理担当者は参考にしてください。
目次
契約資産とは?
契約資産は、新収益認識基準で登場した新しい会計用語です。会計基準において、契約資産とは「企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、顧客との契約から生じた債権を除く。)」と定義されています。
引用:企業会計基準等の訂正について|企業会計基準委員会、企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準
契約から生じた債権を除くとされていますが、これについては「売掛金との違い」で後述します。
契約資産と契約負債との違い
契約負債とは製品・商品やサービスを移転する義務に対して、対価を受け取ったものや対価を受け取る権利が到来しているもののことです。
契約資産と契約負債は、企業からの履行(製品・商品やサービスの提供)と顧客からの履行(対価の支払い)の関係により区別されます。
つまり、製品・商品やサービスが提供され対価の支払いがまだ行われていないものが契約資産であり、製品・商品やサービスが提供されておらず対価の支払いがすでに行われているものが契約負債です。
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売掛金との違い
次に契約資産と売掛金の違いはどこにあるのでしょうか。ここではその違いについて具体例を用いて解説します。
契約資産と売掛金との違い
契約資産は製品・商品やサービスと交換に受け取る対価に対する権利のことですが、先述のとおり、契約から生じた債権を除くとされています。この契約から生じた債権とは、製品・商品やサービスと交換に受け取る対価に対する権利のうち「無条件」のものを言います。
例えば、すでに製品・商品やサービスが提供され、”あとは対価の支払いを待つだけ“の売掛金などは「無条件の権利」のため「契約から生じた債権」に含まれます。一方で、すでに製品・商品やサービスが提供されたものの、”他に条件がある場合“などは契約資産とされます。
契約資産と売掛金の例
契約資産の具体例としては、工事契約やソフトウェアの受注制作などで完成までに計上される債権などがあります。完成・引渡しがまだであれば、無条件の権利とはならないためです。
売掛金は製品・商品やサービスが提供され、対価の支払いを待つだけの債権です。例えば卸売店が小売店に商品を納品して、期日までに代金を支払ってもらうだけという法的な請求権が該当します。
契約資産が勘定科目に追加された背景
ここでは、契約資産が勘定科目に追加された背景と理由を解説します。
新収益認識基準が2021年から適用
2021年4月1日から新収益認識基準が適用され、国際的な会計基準に合わせて契約資産の概念が導入されました。その結果、同基準により契約資産が貸借対照表の科目として表示されることとなりました。
顧客に対する権利の状況を財務諸表に反映する
契約資産が貸借対照表の科目として追加された理由は、契約資産は契約から生じた債権などの無条件の権利とは性質が異なるため、国際的な会計基準と同様に区分して表示(または区分せず注記)する必要があると考えられたからです。
これにより、顧客に対する権利の状況を財務諸表に反映することができることになりました。
契約資産が計上されるケース
ここでは、契約資産が計上される身近な事例をもう少し詳しく見ていきます。
工事契約・ソフトウェアの受注制作
工事契約やソフトウェアの受注制作については、原則として一定期間にわたり収益を認識するとされているため、収益が着手金・中間金を上回る場合、債権が計上されます。しかし、この債権は工事や制作の完成が条件のため、契約資産となります。
条件付き販売契約
条件付き販売契約の例は、企業が顧客に複数の商品を合わせて販売する契約を締結し、契約上、全ての商品の完納後に代金が支払われるとされているようなケースです。これについて、企業は一部の商品を納品した場合、その時点で収益を認識しますが、完納が条件のため、この時点の債権は契約資産となります。
契約資産の仕訳方法
契約資産の仕訳方法について、先ほどの「契約資産が計上されるケース」の事例を利用して解説します。ポイントはどのようなときに契約資産として計上、どのタイミングで売掛金に振り替えるのかという点です。
工事契約
【例】
A社は2022年に顧客の本社建物を建設する契約を請負金額100,000千円で締結した。
A社は工事を2024年中に完成・引渡しし、この工事契約について2022年3月31日に30,000千円、2023年3月31日に30,000千円、2024年3月31日に40,000千円の収益を計上した。
なお、着手金・中間金等については考慮しない。
【仕訳】
・2022年3月31日
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約資産 | 30,000千円 | 工事収益 | 30,000千円 |
2022年3月31日は工事の進捗等による収益を計上します。また、この時点では工事の完成・引渡しが行われていないため契約資産が計上されることになります。
・2023年3月31日
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約資産 | 30,000千円 | 工事収益 | 30,000千円 |
2022年3月31日と同様に収益と契約資産を計上します。
・2024年3月31日
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100,000千円 | 工事収益
契約資産 |
40,000千円
60,000千円 |
2024年3月31日は工事の完成・引渡しにより収益を計上します。このとき、工事の完成・引渡しにより、対価の支払いを待つだけの「無条件の権利」が発生したこととなるため、売掛金を計上します。2022年3月31日、2023年3月31日に計上した契約資産も売掛金に振り替えます。
条件付き販売契約
【例】
甲社は顧客に商品A(600円)と商品B(400円)を合わせて1,000円で販売する契約を締結した。
契約上、商品AとBの両方の納品が条件となっており、完納後に代金が支払われる。
甲社は商品Aを2024年4月1日に、商品Bを2024年6月1日に納品した。
【仕訳】
・2024年4月1日 商品A(600円)の納品時
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 契約資産 | 600円 | 売上高 | 600円 |
2024年4月1日は商品Aの納品による売上高と契約資産を計上します。
・2024年6月1日 商品B(400円)の納品時
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 1,000円 | 売上高
契約資産 |
400円
600円 |
2024年6月1日は商品Bの納品による売上高400円を計上します。また、商品Bの納品により、対価の支払いを待つだけの「無条件の権利」が発生したこととなるため、売掛金を計上します。また、4月1日に計上した契約資産600円も売掛金に振り替えます。
契約資産は財務状況の把握や予測に活用できる
契約資産は新しく導入された概念であり、どのように利用すればよいか分からない方も多いでしょう。ここでは、契約資産を管理するポイントについて解説します。
回転率を指標として利用する
資産の回転率は、資産がどれだけ有効に活用されているかを示す財務指標です。売上高÷資産で求めることができます。
契約資産は売掛金とは異なり無条件の権利ではありませんが、未回収の売上代金であることには変わりがないため、売上債権回転率や総資産回転率などの分母に含めて、資産の効率性の指標として利用します。
資金回収のスケジュールを立てる
契約資産は未履行の義務があるものの債権であることに変わりはないため、資金回収のスケジュールを立てる際に考慮する必要があります。回収予定時期を見積もって、正確な資金繰りの予測に役立てましょう。
契約資産は未履行の義務がある債権
新収益認識基準が適用される前は契約資産に相当するものは売掛金、工事未収入金などとされることが一般的でした。そのため、契約資産を理解するためには、「売掛金との違い」で解説したとおり、無条件の権利か否かに焦点を当てて考えるとよいでしょう。
まずは、売掛金と契約資産についてしっかりと区別して会計処理ができるようにしましょう。
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