- 更新日 : 2025年2月20日
中小企業向けの会計ルールは2種類!中小会計要領と中小指針について解説!
中小企業の場合、決算は法人税の申告や会社法の規定で仕方なく行うことが多いものですが、経営管理や対外的な信用の面からも、一定のルールに則った決算を行うことは大切です。
この記事では、中小企業に向けた会計ルールである「中小会計要領」と「中小指針」について、その内容を簡単にご紹介します。
目次
中小企業向けの会計ルールは2種類ある
中小企業に向けた会計ルールとしては、次の2種類があります。
・中小会計要領(中小企業の会計に関する基本要領)
・中小指針(中小企業の会計に関する指針)
これらのどちらを適用してもかまいませんが、会社の実態に見合った会計ルールを選択することが大切です。
中小会計要領と中小指針の比較
中小会計要領 | 中小指針 | |
---|---|---|
制定 | 2012年2月 | 2005年8月 |
適している企業 | 中小企業のなかでもより規模の小さい企業に適している。 | 会計専門家が役員に入っている会計参与設置会社等、中規模以上の企業に適している。 |
会計処理の水準 | 中小指針より簡便な会計処理。 | 要領よりも詳細な、一定の水準を保った会計処理。 |
税効果会計・組織再編の会計・資産除去債務についての定めはない。 | 税効果会計・組織再編の会計・資産除去債務についても定めている。 |
中小企業の実態に適した中小会計要領
中小会計要領(中小企業の会計に関する基本要領)は、中小企業の実態を考慮して、中小企業がより簡単に利用できる会計ルールとして2012年に定められました。
中小企業では、次のような事情から、大企業向けの会計ルールを適用することはふさわしくないのが実情です。
・決算の開示先が、同族株主、取引先、金融機関、税務署などに限られている。
・会計の目的が法人税の納税である。
大企業向けの会計ルールは、国際会計基準とのすり合わせにより、内容が複雑かつ高度になっています。そこで、中小企業に向けた会計ルールが必要になりました。
中小企業に向けた会計ルールとしては、先に「中小指針」が定められていましたが、より簡便なものが求められ、「中小会計要領」が定められました。
中小会計要領の特徴
中小会計要領は、中小企業の経営者が自社の経営状況を把握でき、利害関係者への情報提供に役立つ会計ができることを目的としています。
中小会計要領では、資産は原則として取得価額で計上することとしており、時価評価は行いません(売買目的の有価証券がある場合は除きます)。
また、中小会計要領は法人税法で定められた会計処理との調和が図られており、会計と税務の会計処理の差異を調整する税効果会計についての規定はありません。
大企業向けの会計ルールや中小指針は、国際会計基準とのすり合わせのために、たびたび改正が行われています。一方、中小会計要領は国際会計基準の影響を受けず、改正の対応に追われる心配はありません。
中小会計要領についてさらに詳しく知りたい場合は、次のサイトから情報を得ることができます。
中小会計要領を適用すると資金調達が有利に
中小会計要領に基づいた会計を行うことで対外的な信用が増し、資金調達が有利になります。
日本政策金融公庫や全国の信用保証協会では、中小会計要領を適用している中小企業に対して、金利の優遇や信用保証料の引き下げを行っています。
そのほか、民間の金融機関でも中小会計要領を適用している中小企業に対する優遇を行っているところがあります。
中小会計要領より厳密な中小指針
中小企業の会計に関する指針(中小指針)は、中小会計要領よりも早い2005年に制定されました。
中小指針は、大企業向けの会計ルールよりは簡便であるものの、中小会計要領よりは厳密な基準になっています。中小会計要領にはない、税効果会計、組織再編の会計、資産除去債務についての規定があります。
また、国際会計基準とのすり合わせのためにたびたび改正されるのが、中小会計要領にはない特徴です。
このような点から、中小指針を適用する会社は、ある程度企業会計についての専門的な知識がある人が社内にいるか、税理士や公認会計士など専門家のアドバイスが受けられる体制になっていることが必要です。
中小指針では、会計の専門家が役員になっている会計参与設置会社は当指針を適用することが望ましいとされています。
中小会計要領を適用した場合と同じように、中小指針を適用した場合にも資金調達でさまざまな優遇が受けられます。
中小指針についてさらに詳しく知りたい場合は、次のサイトから情報を得ることができます。
・中小企業庁:中小企業の会計に関する基本要領 「中小指針」について
まとめ
中小企業向けの会計ルールには、中小会計要領と中小指針があり、それぞれに特長があります。
簡便な処理で決算を行うか、より厳密な処理で決算を行うか、会社の実態に即した会計ルールを選択することで、決算を経営に役立てたいものです。
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