- 更新日 : 2024年8月8日
通勤手当の非課税限度額の引き上げを解説
平成26年や平成28年度の税制改正により、交通用具に関する通勤費の非課税限度額が改正されました。平成26年改正は2014年4月より既に支給した通勤手当に対しても、遡って適用されることとなっています。
この、非課税限度額が引き上げられることによって、該当する社員の所得税の負担が軽くなることが考えられます。また、経営者にとっては改正後の通勤費の非課税限度額はどのような影響が出てくるのでしょうか。税法上の変更点や実務において行なうべきことをまとめました。
目次
通勤手当の非課税限度額
そもそもどんな制度なのか?
通勤手当とは通勤にかかる費用を会社が負担するもので、ほとんどの企業は就業規則で取り決められています。
また、通勤にかかる時間は労働時間ではなく私的時間であることや、労働の対価ではなく報酬であるとの解釈によって、税法上と社会保険上において通勤手当を含めて計算するかどうかが変わってきます。
今回この時期に通勤手当の非課税限度額が引き上げられたのは、2014年8月の人事院勧告で職員の給与に関する報告があったことがきっかけです。
それまでの国家公務員の給与は、国内の厳しい財政状況や東日本大震災を鑑みて減額措置がとられていましたが、民間賃金が国家公務員の給与を上回ったことから、その較差(かくさ)を是正するために、2014年8月の人事院勧告により完全実施されることになりました。勧告内容の一部に通勤手当の引き上げに関する内容が含まれていたことから、税法上もそれに合わせる形で改正されることとなったのです。
人事院勧告とは
人事院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、(中略)公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています。
参考:人事院
改正で非課税限度額が引き上げられた部分
改正によって限度額が引き上げられた部分は、自動車や自転車などの交通用具を使用した場合で、通勤距離による区分ごとによって額が異なります。
| 区分 | 改正前 | 改正後 | 増減額 |
|---|---|---|---|
| 片道2km以上10km未満 | 4,100円 | 4,200円 | 100円増 |
| 片道10km以上15km未満 | 6,500円 | 7,100円 | 600円増 |
| 片道15km以上25km未満 | 11,300円 | 12,900円 | 1,600円増 |
| 片道25km以上35km未満 | 16,100円 | 18,700円 | 2,600円増 |
| 片道35km以上45km未満 | 20,900円 | 24,400円 | 3,500円増 |
| 片道45km以上55km未満 | 24,500円 | 28,000円 | 3,500円増 |
| 片道55km以上 | 24,500円 | 31,600円 | 7,100円増 |
なお、平成28年度改正により、平成28年1月1日以降に支払われるべき通勤手当の非課税限度額は、下記の区分のように変更されています。
1.交通機関又は有料道路を利用する場合における最高限度額15万円
2.交通機関を利用する場合の通勤用定期乗車券における最高限度額15万円
3.交通機関や有料道路以外に交通用具も併用する場合の通勤用定期乗車券における最高限度15万円
改正前後で変化のなかった部分
通勤手当の非課税限度額が改正前後で変化のなかった区分は1つあります。
1.交通用具を使用し、通勤距離が片道2km未満の場合の全額課税
改正で非課税限度額が引き下げられた部分
今回の改正により、引き下げられた区分はありません。
非課税限度額が引き下げられた場合、課税範囲が拡大し納税額が増額することになりますが、今回は非課税限度額が据え置きもしくは引き上がっているため、課税範囲が縮小し所得税負担額が低くなっています。
適用開始時期
2014年10月や2016年4月に施行された法令であるにも関わらず、2014年4月1日や2016年1月1日に遡って適用されます。つまり既に支給済みの通勤手当に対して、精算する必要が出てくるのです。
また、2014年の改正に当てはめてると、次の通勤手当については、改正後の非課税限度額は適用されず、改正前の非課税限度額で計算することになります。
1.平成26年3月31日以前に支払われた通勤手当
2.平成26年3月31日以前に支払われるべき通勤手当を同年4月1日以降に支払われるもの
3.1または2の差額として追加支給されるもの
例えば、当月20日締め25日支払で給与が支給されている場合、2014年の課税内容のスケジュールは以下のとおりとなります。
| 給与支給月日 | 適用内容 |
|---|---|
| 1月25日 | 改正前の非課税限度額を適用 ※改正前期間に該当するため精算不要 |
| 2月25日 | |
| 3月25日 | |
| 4月25日 | 改正後の非課税限度額を適用 ※既に支払い済みのため精算が必要な期間 |
| 5月25日 | |
| 6月25日 | |
| 7月25日 | |
| 8月25日 | |
| 9月25日 | |
| 10月25日 | |
| 11月25日 | 改正後の非課税限度額を適用 ※これから支給する期間であるため精算不要 |
| 12月25日 |
交通手段が複数種類ある場合
たとえば自宅最寄り駅までは自転車を利用し、電車に乗って会社まで通勤している場合で考えてみましょう。
所得税法では非課税限度額が定められているだけにすぎず、具体的にどのように支給するかまでは規定されていません。労働基準法においても、通勤手当に関して義務付けたり規定したりしていません。実際には就業規則による社内規定で定めることになります。
そのため、自転車通勤者はコストゼロとして支給なしと定めてもいいですし、駐輪場代を申請してもらうことで支給する方法をとることもできます。
電車などの交通機関の定期券代を1か月単位としても6か月単位としても問題ありません。6か月分を支給する場合における中途退職者の精算に関してあらかじめ定めておくことで、トラブルを回避することができます。
これらのことを踏まえて、
2.電車通勤区間は通勤用定期乗車券
を支払うこととした場合、
交通機関を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券という区分に該当するため、1の駐輪場代と2の通勤用定期乗車券の合算金額が、最高限度額である15万円までであれば非課税になります。また、15万円を超える部分に関しては所得税の課税対象として計算されることになります。
なお、就業規則を変更するためには、取締役会における議決が必要になります。
限度額以上の通勤手当を支払った場合
たとえば、あなたが片道25km以上35km未満の区分で通勤手当の非課税限度額16,100円を超えて17,000円を会社から支給してもらっていたとします。
通勤手当17,000円のうち、16,100円は非課税となり所得税の課税対象外となりますが、16,100円を超えた900円について所得税の課税計算対象となり、通勤時間は労働時間でもないのに、他の基本給などと合算されて所得税として計算されたものが、給与から控除されてしまっていました。
ところが今回の改正によって片道25km以上35km未満の区分は18,700円までと引き上げられたため、通勤手当17,000円は全額非課税となり、所得税の課税対象ではなくなりました。今まで課税対象となっていた900円が所得税の計算に含まれなくなるため、所得税課税負担額が軽減されることになるのです。
非課税限度額改正によって生じる事務手続き
2014年(平成26年)10月や2016年(平成28年)4月に施行されたにも関わらず、2014年4月1日や2016年1月1日以降に既に支給された通勤手当も遡って適用されるため、精算するための事務手続きが発生します。再計算によって生じた差額は、年末調整で精算することになります。
既に支払い済みの給与データに変更を加えることはできないため、実際には源泉徴収簿上で調整を行ないます。
また、中途退職者に改正前の源泉徴収票を交付している場合、改正後の支払金額に訂正し、摘要欄に再交付と表記したものを、再度交付する必要があります。
まとめ
マイカーで通勤する場合、単純に通勤距離数だけでなく燃費や車種、排気量によって支給する基準が大きく異なります。また、自転車通勤を希望する社員がいた場合、自動車保険のように任意保険の加入を義務付けたり、駐輪スペースを確保したりといったことに関連して、保険料や駐輪場代をどこまで会社が負担するのかも検討する必要です。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料を紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
電子帳簿保存法 徹底解説(2025/10 最新版)
電子帳簿保存法は、1998年の制定以降、これまでに何度も改正を重ねてきました。特に直近数年は大きな改正が続いた上に、現在も国税庁による一問一答の追加・改定が続いており、常に最新情報の把握が必要です。
70P以上にわたるボリュームであることから、ダウンロードいただいた方から大好評をいただいている1冊です。
インボイス制度 徹底解説(2024/10 最新版)
インボイス制度は施行後もさまざまな実務論点が浮上し、国税庁によるQ&Aの追加・改訂が続いています。これを受けて、「結局どうすればいいのか、わからなくなってしまった」という疑問の声も多く聞かれるようになりました。
そこで、インボイス制度を改めて整理し、実務上の落とし穴や対応のヒントまで網羅的に解説した最新資料を作成しました。問題なく制度対応できているかの確認や、新人社員向けの教育用など、様々な用途にご活用いただける充実の資料です。
マネーフォワード クラウド会計Plus サービス資料
マネーフォワード クラウド会計Plusは、データの自動取得、自動仕訳、自動学習の3つの自動化で経理業務が効率化できる会計ソフトです。
仕訳承認フローや業務分担にあわせた詳細な権限設定が可能で、内部統制を強化したい企業におすすめです。
マネーフォワード クラウド経費 サービス資料
マネーフォワード クラウド経費を利用すると、申請者も承認者も経費精算処理の時間が削減でき、ペーパーレスでテレワークも可能に。
経理業務はチェック業務や仕訳連携・振込業務の効率化が実現でき、一連の流れがリモートで運用できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
税務における連結納税のメリットは?グループ通算制度との違いも解説
連結納税は、一つの親会社とその子会社群が、個別に税金を計算・納付するのではなく、グループ全体として統一的に税金を計算し納税する制度です。複数の会社にわたる税務処理を一本化し、税務管理の効率化をもたらします。 本記事では、連結納税の概要やグル…
詳しくみる法人税申告書の別表12とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人が法人税を申告する場合「法人税申告書」を提出します。法人税申告書には必要に応じて別表を添付しますが、業種や申告内容によって提出する別表が異なります。 今回は、別表の一つ「法人税申告書別表12」についてご紹介します。どの業種が使うのか、そ…
詳しくみる法人税は電子申告が義務化!申告のやり方やe-Taxでの納付方法も解説
令和2年度より、大法人で法人税の電子申告が義務化されています。電子申告が可能になることで申告や納付が進めやすくなっていますが、きちんと理解していないと作業が増えた感覚になるでしょう。この記事では、大法人で義務化された法人税の電子申告について…
詳しくみる【解説】2019年度税制改正大綱のポイントは「車と住宅」 仮想通貨にも初めて言及
自民、公明両党が12月14日、2019年度(平成31年度)の税制改正大綱を発表しました。今回の改正は、2019年10月の消費税率10%への引き上げにともなう駆け込み需要と反動減を抑えることが焦点となります。 重点が置かれたのは、増税の影響が…
詳しくみるコロナ支援金の「課税・非課税」 なぜ持続化給付金は課税対象なのか考えてみよう
新型コロナの感染拡大から約半年が経ちました。僕のもとには今もなお、持続化給付金や家賃支援給付金に関する質問が届きます。 すでに申請を済ませ、無事に入金されたという方も多いと思います。大変な中、手続きお疲れ様でした。 ところで、コロナの支援金…
詳しくみる東京都の法人事業税率は?計算方法や納税対象、申告方法について解説
東京都の法人事業税率は、基本的に、ほかの自治体の法人税率と同じように定められています。この記事では、東京都の法人事業税の税率や計算方法、対象となる法人、納付・申告方法について解説していきます。 東京都の法人事業税率 法人事業税率とは、地方税…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引
.png)


