- 更新日 : 2026年9月16日
手形売却損とは?仕訳例からわかりやすく解説
手形売却損とは、受取手形を満期日前に金融機関で割り引いた際に生じる額面金額と受取額の差額を処理する勘定科目です。
- 営業外費用として計上するのが原則
- 割引料は消費税非課税で損金算入可能
- 不渡り時は手形の買戻しを求められる場合あり
Q. 手形売却損の仕訳はどう行う?
A. 借方に「普通預金(受取額)」と「手形売却損(差額)」、貸方に「受取手形(額面)」を記帳します。
お金の代わりとして使えるのが手形です。手形は金融機関に売却することで、早期に現金化できます。ただし、満期日前に現金化すると割り引かれてしまうため注意が必要です。この割引料を「手形売却損」といいます。
手形売却損は売却時の内容によって仕訳を行う必要があり、この部分に難しさを感じる方も多いでしょう。そこで本記事では、手形売却損の概要や仕訳例、手形が不渡りになった場合などについて解説します。
※政府は、約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
手形売却損とは?
手形売却損とは、受取手形を満期日前に金融機関へ譲渡して現金化する「手形割引」を行った際に、手形の額面金額と実際の受取額との差額を処理する勘定科目です。主に支払期日までの期間に応じた割引料が該当します。
手形売却損は手形を期日前に資金化した際の差額
受取手形は通常、満期日に額面金額を受け取りますが、資金が早く必要な場合は、満期日前に銀行などで割り引くことができます。
たとえば額面100万円の受取手形を銀行で割り引き、割引料2万円が差し引かれて98万円を受け取った場合、2万円が手形売却損となります。割引料は、手形金額や割引率、満期日までの日数などによって決まります。
原則として営業外費用に計上する
会計上、手形割引によって生じた差額は、一般的に「手形売却損」として営業外費用に計上します。
上記の例では、借方に「普通預金98万円」「手形売却損2万円」、貸方に「受取手形100万円」と仕訳します。
なお、手形の割引料は利子に類する金融取引として、消費税は非課税です。ただし、割引料とは別に金融機関へ支払う取立手数料などは課税対象となる場合があるため、区別して処理する必要があります。
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手形売却損と支払利息・支払手数料の違いは?
手形売却損・支払利息・支払手数料はいずれも費用として処理されますが、発生する取引が異なります。手形売却損は受取手形の割引、支払利息は借入金などの利息、支払手数料は金融機関等のサービス利用に対する手数料を処理する勘定科目です。
手形売却損は受取手形を割り引いた際の差額
手形売却損は、受取手形を満期日前に銀行へ譲渡して資金化した際、額面金額から差し引かれる割引料などを処理する勘定科目です。前述のとおり、たとえば100万円の手形を割り引いて98万円を受け取った場合、差額2万円を手形売却損として処理します。
支払利息は借入金などに対して支払う利息
支払利息は、銀行からの借入金などについて発生する利息を処理する勘定科目です。手形売却損と同じく一般的に営業外費用に分類されますが、借入れによって発生した費用か、受取手形の売却によって発生した費用かという点が異なります。
支払手数料は金融機関等へのサービス利用料
支払手数料は、振込手数料や各種事務手数料など、サービスの提供を受けた対価を処理する勘定科目です。手形割引時にも割引料とは別に手数料が発生する場合があるため、内容を確認し、手形売却損と区別して仕訳することが重要です。
手形売却損の仕訳例は?
仕訳事例1
受取手形100万円を銀行で割引し、割引料5万円が差し引かれた残額が普通預金へ入金された場合の仕訳例は、以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 950,000円 | 受取手形 | 1,000,000円 |
| 手形売却損 | 50,000円 | ||
仕訳事例2
取引先より取得した受取手形100万円を銀行で割引し、割引料10万円を差し引かれた残額が当座預金に入金された場合の仕訳例は、以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 900,000円 | 受取手形 | 1,000,000円 |
| 手形売却損 | 100,000円 | ||
仕訳事例3
受取手形50万円を取引銀行で割引し、手取金は当座預金へ入金。割引料は年利3%、割引日数は90日で設定された場合の仕訳例は、以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 496,302円 | 受取手形 | 500,000円 |
| 手形売却損 | 3,698円 | ||
手形売却損の計算式は、次の通りです。
今回の事例では、以下のように計算しました。
(受取手形500,000円)×(年利0.03×割引日数90日÷365)= 手形売却損3,698円
受取手形を裏書譲渡する場合、手形を取引銀行などに裏書譲渡し、満期日前に買い取りしてもらうのが手形の割引です。この場合、割引日から満期日までにかかる利息の支払いが発生し、この利息を割引料として手形売却損勘定の借方に記帳します。
仕訳事例4
受取手形50万円を取引銀行で割引し、割引料5,000円を差し引かれた残額は当座預金へ入金。偶発債務に関しては対照勘定法で記帳する。保証債務の時価は1%と評価した場合の仕訳例は、以下の通りです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 495,000円 | 受取手形 | 500,000円 |
| 手形売却損 | 5,000円 | ||
| 保証債務費用 | 5,000円 | 保証債務 | 5,000円 |
手形割引をした受取手形は、発行者が手形期日までに支払えない場合、割引譲渡した側が代わりに銀行に対して手形金額を支払う必要があります。この保証義務には、時価評価を行い「保証債務費用」として費用勘定と「保証債務」として負債勘定で記帳します。
手形の不渡りとは?
手形の不渡りとは、支払期日に手形が支払銀行へ呈示されたものの、振出人の資金不足などの理由で決済されないことです。不渡りが発生すると、手形を受け取った企業は代金を回収できず、振出人側も信用や資金調達に大きな影響を受ける可能性があります。
手形の不渡りは支払期日に決済できない状態
約束手形では、振出人が満期日に額面金額を支払うことを約束しています。受取人が取引銀行へ取立を依頼し、支払期日に振出人の口座から決済できれば問題ありません。
しかし、当座預金の残高不足や取引なしなどによって支払いができない場合、手形は不渡りとなります。また、契約上の争いや偽造・変造など、資金不足以外の理由で支払いが拒絶されるケースもあります。
不渡りが続くと銀行取引が制限される場合がある
現在の電子交換所の制度では、資金不足など一定の不渡りが発生すると不渡情報が金融機関へ提供されます。さらに、原則として6か月以内に2回の不渡りを起こすと、2年間の取引停止処分を受け、参加金融機関との当座預金取引や貸出取引が制限されます。
ただし、1回不渡りを起こしただけで直ちに倒産するわけではありません。不渡りが発生した場合は原因を確認し、債権回収や資金繰りへの対応を速やかに進める必要があります。
割引に出した手形が支払期日に支払われなかった場合はどうなる?
銀行で割り引いた手形が支払期日に決済されなかった場合、振出人に代わって銀行がその損失を負担して終わるとは限りません。割引を依頼した企業は、契約内容に応じて銀行から手形の買戻しや支払いを求められる可能性があります。
銀行から手形の買戻しや支払いを求められる場合がある
手形割引は、受取手形を支払期日前に銀行へ譲渡して資金化する取引です。ただし、振出人が資金不足などで支払えず手形が不渡りになると、銀行は割引を依頼した企業に対して、割引手形の買戻しや手形代金相当額の支払いを求めることがあります。
そのため、手形を割り引いた時点で不渡りリスクが完全になくなるわけではありません。具体的な責任範囲は、金融機関との手形割引契約などで確認する必要があります。
買い戻した後は振出人や裏書人への請求を検討する
割引依頼人が銀行へ支払い、手形を買い戻した場合は、振出人に対して手形金額を請求します。また、途中に裏書人がいる場合は、一定の要件を満たせば裏書人への遡及請求も検討できます。
会計上は、不渡りとなって回収が必要な債権を「不渡手形」などへ振り替え、最終的に回収不能が確定した場合は貸倒損失などとして処理します。
手形売却損は法人税の計算で損金にできる?
手形売却損は、事業上の受取手形を金融機関で割り引いた際に発生する費用であり、通常は法人税の計算上、損金として扱われます。ただし、会計上「手形売却損」として処理すれば無条件に損金になるわけではなく、実際の取引に基づく費用であることが前提です。
通常の手形売却損は損金算入できる
法人税では、各事業年度の所得を計算する際、事業に関連して発生した費用などを損金に算入します。受取手形を割り引いた際の額面金額と受取額との差額についても、国税庁は手形売却損として処理される金利相当額を「支払う負債の利子」に含める取扱いを示しています。
100万円の受取手形を銀行で割り引き、2万円の手形売却損が発生した場合、その2万円は通常、費用として損金算入します。
実際に発生した割引料と証拠書類を確認する
税務上の処理では、銀行の計算書や取引明細などにより、手形割引と割引料の内容を確認できるようにしておくことが重要です。また、割引料とは別に銀行へ支払う取立手数料などがある場合は、性質が異なるため区分して処理します。
なお、消費税では手形の割引料は非課税ですが、別途収受される取立手数料などは課税対象となります。
紙の手形取引の縮小で手形売却損は今後どうなる?
紙の手形取引が縮小すれば、受取手形を銀行で割り引く機会も減るため、紙の手形に伴う「手形売却損」を計上する場面も減少すると考えられます。でんさいなど別の方法で期日前に資金化する取引は引き続き発生します。
紙の手形割引に伴う手形売却損は減少していく
全国銀行協会は、電子交換所における手形・小切手の交換を2027年3月31日に廃止するとしています。これに伴い、企業にはでんさいなどの電子記録債権や銀行振込への切替えが促されています。
そのため、紙の受取手形そのものが減少し、銀行へ手形を持ち込んで割り引く取引や、それに伴う手形売却損も次第に減っていくと考えられます。
参考:電子交換所の交換廃止時期の決定および手形・小切手交換廃止時期の明確化について|一般社団法人全国銀行協会
でんさいでは別の債権として処理する
紙の手形からでんさいへ移行しても、資金繰りのために支払期日前に債権を現金化するニーズ自体がなくなるわけではありません。全国銀行協会も紙の手形からでんさい等への切替えを促しています。
でんさいを金融機関へ譲渡して資金化する場合は、「受取手形」ではなく「電子記録債権」を対象とした取引になります。今後は紙の手形を前提とした会計処理だけでなく、電子記録債権の譲渡・割引に対応した勘定科目や仕訳ルールを整備しておくことが重要です。
手形売却損の仕組みを理解し、適切に会計処理しよう
手形売却損は、受取手形を満期日前に金融機関へ譲渡して資金化する際に生じる、額面金額と受取額との差額を処理する勘定科目です。一般的には営業外費用として計上し、通常の事業上の手形割引で発生したものであれば、法人税の計算でも損金として扱われます。
ただし、支払利息や支払手数料とは発生原因が異なるため、金融機関の明細などを確認して適切に区分することが重要です。また、割引後に手形が不渡りとなれば、銀行から買戻しや支払いを求められる可能性もあります。
紙の手形取引は縮小しているため、今後は手形売却損を計上する機会も減少すると考えられます。でんさいなどへの移行も踏まえ、従来の手形と電子記録債権それぞれの会計処理を整理しておきましょう。
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よくある質問
手形売却損とは?
手形売却損とは、満期日を迎える前に手形を決済し、現金化する際に発生する割引料のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
手形の不渡りとは?
不渡りとは、支払期日を超えても小切手や手形の決済ができない状態のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
手形売却損の会計上の扱いは?
会計上においては営業外費用に計上され、勘定科目においては「手形売却損」として計上されます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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