- 作成日 : 2025年11月6日
バックオフィス業務を効率化するSaaSとは?導入メリットから選び方、サービス例一覧など紹介
人手不足や働き方の多様化が進む中、煩雑な手作業や紙ベースの管理に限界を感じている担当者も多いのではないでしょうか。その解決策となるのがバックオフィス向けSaaSです。
この記事ではバックオフィス向けSaaSについて、基本からメリット、自社に合ったサービスの選び方やサービス例までを網羅的に解説します。
目次
バックオフィス向けSaaSとは?
バックオフィス向けSaaSとは、経理、人事、総務といった企業の管理部門(バックオフィス)の業務を効率化するために、インターネット経由で提供されるソフトウェア(クラウドサービス)のことです。
従来のPCインストール型ソフトウェアとは異なり、自社でサーバーを調達・構築する必要はありません。一方で、初期設定や既存データの移行、従業員への教育といった導入作業は伴うため、計画的な準備が重要です。
SaaSの基本的な仕組み
SaaS(サース)とは、「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の略で、ソフトウェアをサービスとして提供する形態を指します。つまり、ソフトウェアを「モノ」として購入するのではなく「サービス」として利用期間に応じて料金を支払うモデルを指します。
- 提供形態:クラウド上のサーバーでソフトウェアが稼働し、ユーザーはインターネットブラウザや専用アプリを通じてアクセスします。
- 料金体系:多くは月額または年額のサブスクリプション方式で、利用するユーザー数や機能に応じて料金が変動します。
- アクセシビリティ:インターネット環境があれば、PCやスマートフォンなど様々なデバイスからサービスにアクセス可能です(※ただし、組織のセキュリティ設定や通信障害などにより、利用が一時的に制限される場合があります)。
なぜ今、バックオフィスでSaaSが注目されるのか?
バックオフィスでSaaSが注目される背景には「働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の潮流」「複雑化する法改正への迅速な対応」「深刻化する人手不足」という3つの大きな要因があります。
デジタルの力を活用して生産性を向上させることは、現代企業にとって喫緊の課題です。特にバックオフィス業務は定型的な作業が多く、業務効率化ツールによる自動化の効果が出やすい領域です。
さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度といった法改正が頻繁に行われる中、SaaSであればベンダー側で迅速にアップデートが行われるため、企業は法対応の負担を大幅に軽減できます。人手不足が叫ばれる中で、限られたリソースをより付加価値の高いコア業務に集中させるためにも、SaaS導入は極めて有効な戦略と言えるでしょう。
バックオフィス向けSaaSにはどのような種類がある?
バックオフィス向けSaaSは、会計、人事労務、経費精算、法務など、各専門領域に特化した多種多様なツールが存在します。
それぞれの業務課題を解決するために、単体で導入することも、複数のサービスを連携させて利用することも可能です。ここでは、代表的なSaaSの分野と機能を紹介します。
| 分野 | 主な機能 | こんな課題におすすめ |
|---|---|---|
| 会計ソフト | 仕訳入力の自動化、請求書発行・管理、決算書作成、売掛・買掛管理、経営状況の可視化 | 経理業務を効率化したい、リアルタイムで経営状況を把握したい |
| 人事労務ソフト | 勤怠管理、給与計算、年末調整、社会保険・労働保険の手続き、入退社管理、従業員情報の一元管理 | 給与計算や社会保険手続きのミスをなくしたい、従業員情報を一元管理したい |
| 経費精算システム | 経費申請・承認ワークフロー、交通費精算(ICカード連携)、法人カード連携、領収書の電子保存 | 経費精算の手間と時間を削減したい、ペーパーレス化を進めたい |
| 電子契約サービス | 契約書の作成、送信、オンラインでの締結、契約書の保管・管理 | 契約業務のスピードを上げたい、印紙代や郵送費を削減したい |
| ワークフローシステム | 稟議書、各種申請書の電子化、承認ルートの可視化・自動化 | 社内の申請・承認プロセスを効率化・透明化したい |
| 情報共有・コミュニケーションツール | ビジネスチャット、Web会議、ファイル共有、タスク管理 | チーム内のコミュニケーションを円滑にし、情報共有をスムーズにしたい |
これらのSaaSは、API連携によって相互にデータをやり取りできるものが増えています。例えば、人事労務ソフトの従業員情報を会計ソフトと連携させたり、経費精算システムのデータを会計ソフトに自動で仕訳として取り込んだりすることで、さらなる業務の自動化と効率化が実現します。
【分野別】バックオフィス向けSaaSのサービス例一覧
バックオフィス業務を効率化する代表的なSaaSを分野ごとにご紹介します。自社の課題に合った領域からご覧ください。
会計ソフト
日々の記帳から月次・年次決算、請求書発行まで、経理業務全般をカバーします。
- マネーフォワード クラウド会計
- freee会計
- 弥生会計 オンライン
人事労務・勤怠管理
入退社手続き、給与計算、勤怠管理、年末調整など、人事・労務に関わる業務を効率化します。
- マネーフォワード クラウド(人事管理・給与・勤怠・年末調整など)
- SmartHR
- freee人事労務
- KING OF TIME
- ジョブカン勤怠管理
経費精算
従業員の経費申請から承認、そして経理の仕訳処理までを自動化・効率化します。
- マネーフォワード クラウド経費
- 楽楽精算
- Concur Expense (コンカー・エクスペンス)
請求書受領
取引先から受け取った請求書をデータ化し、支払処理や保管を自動化します。
- マネーフォワード クラウドインボイス
- Bill One
- TOKIUMインボイス
- バクラク請求書受取
請求書発行・管理
請求書や見積書、納品書などの作成・送付・管理をオンラインで完結させます。
- マネーフォワード クラウド請求書(Plus含む)
- Misoca (ミソカ)
- MakeLeaps (メイクリープス)
- 請求書発行システム board
電子契約・法務
契約書の作成から締結、保管までをクラウド上で完結させ、印紙代や郵送費を削減します。
- マネーフォワード クラウド契約(AI契約書レビュー含む)
- クラウドサイン
- GMOサイン
- DocuSign (ドキュサイン)
コミュニケーション・情報共有
社内の円滑な連携を促進し、生産性を向上させるためのツールです。
- Slack
- Microsoft Teams
- Notion
- Google Workspace
バックオフィスにSaaSを導入するメリットは?
バックオフィスにSaaSを導入する主なメリットは「コスト最適化」「生産性向上」「多様な働き方への対応」「セキュリティとコンプライアンス強化」の4点です。
これらのメリットは相互に関連し合っており、管理部門のシステム化は単なる業務効率化に留まらず、企業全体の競争力強化にも繋がります。
初期投資を抑え、コストを計画的に管理できる
SaaSは自社でサーバーを構築・運用する必要がないため、従来のシステム導入で必要だった高額な設備投資を大幅に抑制できます。 料金体系は、利用するID数や機能に応じた月額・年額のサブスクリプションが主流です。これにより、データ移行や教育といった導入時の費用も含めて全体のコストを見通しやすく、計画的な予算管理が可能になります。
煩雑な業務を自動化し、生産性を向上させる
バックオフィス向けSaaSは、データ入力や書類作成、申請・承認フローといった定型業務を自動化し、従業員を単純作業から解放します。
例えば、経費精算SaaSは交通系ICカードの履歴やクレジットカードの明細を自動で取り込み、申請の手間を大幅に削減します。これにより、従業員はより戦略性や創造性が求められる中核業務に専念でき、結果として企業全体の生産性向上につながります。
- ヒューマンエラーの削減:手作業による入力ミスや計算間違いがなくなり、データの正確性が向上します。
- 業務スピードの向上:申請から承認までのプロセスがシステム上で完結するため、リードタイムが大幅に短縮されます。
- ペーパーレス化の促進:紙の書類の印刷、保管、管理、検索にかかっていたコストと時間を削減できます。
テレワークなど多様な働き方に対応できる
インターネット環境さえあれば場所や時間を選ばずに業務を行えるSaaSは、テレワークやリモートワークといった柔軟な働き方を強力にサポートします。
オフィスにいなければできなかった申請・承認業務や情報確認が、自宅や外出先からでも可能になります。これにより、企業は従業員のワークライフバランスを向上させるとともに、災害時やパンデミック発生時にも事業を継続できる体制(BCP対策)を構築できます。
- 情報共有の円滑化:複数拠点やチーム間での情報共有がリアルタイムで行え、スムーズな連携が可能になります。
- 人材確保の優位性:多様な働き方を提供できる企業は、優秀な人材にとって魅力的であり、採用競争において有利になります。
- 従業員満足度の向上:通勤時間の削減や働き方の自由度向上は、従業員の満足度やエンゲージメントを高める効果が期待できます。
法改正への迅速な対応とセキュリティの強化
SaaSを利用することで、企業は自社で対応するには専門知識とコストが必要な法改正やセキュリティ対策を、サービス提供事業者に任せることができます。
SaaSベンダーは、専門家チームを擁して常に最新の法規制に対応したアップデートを提供します。また、データはISMS(ISO/IEC 27001)認証の取得やSOC報告書など、第三者機関の監査を受けたセキュリティ体制で管理されるため、自社でサーバーを運用するよりも安全性が高いケースがほとんどです。
- 法改正対応の自動化:インボイス制度など、複雑な法改正に伴うシステムの根本的なアップデートは、ベンダー側で迅速に行われます。利用企業は、更新された内容に合わせて自社の設定を確認・調整するだけで、法対応の負担を大幅に軽減できます。
- 高度なセキュリティ:通信の暗号化、不正アクセス検知、定期的な脆弱性診断など、自社で実現するには難しい高水準のセキュリティ対策が施されています。
- データの保全:サービスは専門のデータセンターで運用されており、複数拠点でのバックアップなど、事業継続を考慮した設計がされています。多くのサービスではSLA(サービス品質保証)によって高い稼働率が保証されており、自社でサーバーを管理するより遥かに高いレベルでのデータ保全が期待できます。
バックオフィスSaaSのデメリットや注意点は?
SaaSは多くのメリットがある一方、デメリットとして「長期的なコスト」「カスタマイズの制限」「外部環境への依存」が挙げられます。これらを事前に把握し、対策を検討することが導入成功の鍵となります。
ランニングコストが発生し、長期的に割高になる可能性がある
SaaSは初期費用を抑えられる反面、利用を続ける限り月額・年額の費用(ランニングコスト)が発生し続けます。
そのため、利用期間やユーザー数によっては、自社でシステムを構築する(オンプレミス型)よりも総支払額(TCO: Total Cost of Ownership)が高くなる可能性があります。
- 費用対効果の継続的な検証:利用していない機能やIDがないか定期的に見直し、プランが自社の規模に合っているかを検証する必要があります。
- 価格改定のリスク:ベンダーの方針により、将来的に料金プランが変更・値上げされる可能性も考慮しておく必要があります。
- 他サービスへの移行が困難に:解約前にデータをエクスポートできる場合が多いものの、移行先のシステムで使えるようにデータを加工する必要があるなど、乗り換えには相応の手間とコストが発生します。
カスタマイズ性が低く、業務プロセス変更が必要な場合がある
多くのSaaSは、様々な企業で利用できるよう標準化された機能を提供しており、自社独自の特殊な業務フローに合わせた大幅なカスタマイズは困難です。
そのため、従来の業務プロセスをそのまま新しいシステムに移行するのではなく、SaaSの仕様に合わせて社内の業務フローを見直す必要が出てくる場合があります。
- 独自の帳票や複雑な承認フローへの対応:企業独自のフォーマットの書類出力や、複雑な条件分岐のある承認ルートに対応できない場合があります。
- 機能の追加・改善はベンダー次第:「こういう機能が欲しい」と思っても、自社だけのために機能が追加・改修されることは稀で、ベンダーのアップデートを待つ必要があります。
- 現場への丁寧な説明:業務のやり方が変わることに対して、現場の従業員から抵抗感を示される可能性もあるため、導入目的やメリットを丁寧に説明し、理解を得るプロセスが重要です。
外部環境への依存によるセキュリティ・事業継続リスクがある
SaaSはインターネット経由で利用するため、自社でコントロールできない外部の要因に業務が影響される可能性があります。
サービス提供元のセキュリティレベルや、インターネット回線の安定性が、自社のセキュリティや事業の継続性に直結します。
- インターネット接続への依存:自社のインターネット回線に障害が発生すると、業務が完全に停止してしまうリスクがあります。
- サービス障害・メンテナンスの影響:ベンダー側のサーバーで障害が発生した場合や、定期メンテナンスの時間帯は、サービスを利用できなくなる可能性があります。
- 情報漏洩のリスクとベンダー選定:データを外部のサーバーに預けるため、信頼できるセキュリティ対策を講じているベンダーを慎重に選定することが極めて重要です。
自社に合ったバックオフィス向けSaaSはどのように選ぶ?
自社に合ったバックオフィスSaaSを選ぶには、まず自社の課題を明確にし、解決したい業務範囲を特定した上で比較検討することが重要です。
多機能で高価なツールが必ずしも最適とは限りません。「何のために導入するのか」という目的を常に念頭に置き、段階的に選定を進めることが失敗を防ぐ鍵となります。
ステップ1. 現状の課題と導入目的を明確にする
まずは、バックオフィス業務の現状を可視化し「誰が」「どの業務に」「どれくらいの時間を費やしているか」を洗い出しましょう。
- 課題の例
- 「月末の請求書発行と入金確認に経理担当者が3日もかかっている」
- 「紙の稟議書が承認されるまでに1週間以上かかり、意思決定が遅い」
- 「従業員の勤怠管理を表計算ソフト(ExcelやGoogleスプレッドシートなど)で行っており、集計ミスが多い」
- 目的の設定:課題を基に「請求書発行業務を半分の時間で終える」「承認プロセスを2日以内に短縮する」といった具体的な目標(KPI)を設定します。
ステップ2. 必要な機能と対象範囲を洗い出す
設定した目的を達成するために、どのような機能が必要かをリストアップします。
この時、必須機能(Must)とあれば嬉しい機能(Want)に分けて整理すると、ツール選定の優先順位が明確になります。また、特定の部署だけで使うのか、全社的に導入するのかといった利用範囲も定義しておきましょう。
ステップ3. 操作性とサポート体制を確認する
ITツールに不慣れな従業員でも直感的に使えるかどうかは、導入後の定着を左右する非常に重要なポイントです。
- 無料トライアルの活用:多くのSaaSには無料のお試し期間が設けられています。実際に業務を担当するメンバーに操作してもらい、使いやすさを確認しましょう。
- サポート体制の確認:導入時の設定支援や、操作で不明点があった際の問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)、対応時間などを確認しておきます。特に導入初期は手厚いサポートがあると安心です。
ステップ4. セキュリティと料金体系を比較する
バックオフィスでは個人情報や企業の機密情報を扱うため、セキュリティ要件は妥協できません。
- セキュリティ対策の確認:通信の暗号化(SSL/TLS)、IPアドレス制限、二段階認証、データバックアップの有無、情報セキュリティに関する認証(ISO 27001など)の取得状況などをチェックします。
- 料金プランの比較:初期費用、月額料金、ユーザー数やデータ量に応じた従量課金など、料金体系はサービスによって様々です。自社の利用規模に合った、コストパフォーマンスの高いプランを選びましょう。将来の事業拡大も見越して、プランのアップグレードが柔軟にできるかも確認しておくと良いでしょう。
戦略的なSaaS導入で、バックオフィスの未来を変える
本記事では、バックオフィス向けSaaSの基本から選び方までを解説しました。バックオフィス向けSaaSは、定型業務の自動化で生産性を向上させるだけでなく、コスト削減や多様な働き方にも対応する戦略的なツールです。自社の課題を明確にし、最適なSaaSを導入することで、バックオフィスの変革への第一歩を踏み出しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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