• 作成日 : 2025年9月9日

税務調査は何年前までが対象?法人・個人・相続税別の調査範囲と対策を解説

税務調査が入ると聞くと、「いったい何年分まで遡って調べられるのか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

税務調査の対象期間は原則3〜5年ですが、場合によっては7年、相続税などでは10年以上前までになるケースもあります。

この記事では、法人・個人・相続税それぞれの場合における調査範囲や準備すべき書類、そして税務署から連絡が来たときの対応方法までわかりやすく解説します。

税務調査の一般的な流れ

税務調査で過去に遡って確認される年数は、調査の進み方によって変わります。大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 事前通知
  2. 実地調査
  3. 調査結果の通知

事前通知

一般的には「事前通知」の段階で調査年数が伝えられます。調査が決まると、まずは税務署から電話や書面で連絡があり、実施の旨や日程、訪問先や対象期間といった内容が伝えられます。

事前に知らされるのが一般的なため、必要な資料を準備する時間が確保しやすいです。顧問税理士がいる場合は、この段階で早めに情報を共有しておくと安心でしょう。

ただし、不正の疑いが強いと判断されたケースでは、事前の連絡なしに突然訪問されることもあります。

税務調査

つぎに税務調査です。これはあくまで、申告内容の正確さを確認するための手続きです。「税務調査が入る=違反」ではない点を抑えておきましょう。

実際の税務調査は、事務所や店舗といった事業所で行われます。期間はおおむね2〜3日程度が一般的ですが、調査内容によっては延長するケースも少なくありません。

当日は、帳簿・領収書・通帳・契約書など、申告内容と実際の取引がきちんと一致しているかが確認されます。税務調査の目的を理解しておくことで、過度な不安を抱かず対応できます。

調査結果の通知

調査が終わると、数日から数週間以内に結果の説明があります。内容は大きくわけて、以下の3つです。

  • 是認通知(問題なし)
  • 指摘ありによる修正申告を促されるケース
  • 更正処分(強制的な修正)

修正が必要になった場合は、加算税や延滞税が課されることもあります。もし結果に納得できない場合には、不服申立てや再調査の請求も可能です。

税務調査の調査期間は何年前までが対象なのか

税務調査が入る際には、税務署から事前通知があり、「何年分を確認するのか」が伝えられます。一般的には直近3年分が対象です。しかし、調査の途中で誤りや不審な点が見つかると、5年もしくは7年分まで調査対象が広がることもあります。

そのため、もし税務調査の対象となった場合は、伝えられた年数だけでなく、追加で確認される可能性も考慮しておくと安心です。

次章より、「3年」「5年」「7年」の違いについて具体的に解説します。

通常は3年分が調査対象になるケースが多い

税務調査では、まず直近3年分の申告内容を重点的に確認されるのが一般的です。そのため帳簿と領収書を直近3年分の売上や経費とそろえておく必要があります。

ただし、この期間はあくまで目安であり、事前に通知された年数だけで終わるとは限りません。当日のやり取りや、調査官の質問の内容によって、確認される期間が伸びる可能性もあります。

また、調査対象が3年分だったとしても、帳簿や領収書等は原則7年間の保存が義務づけられています。

そのため、調査の場では柔軟に対応できるよう準備しておくことが重要です。書類を月ごとにまとめたり、取引先ごとにわけておくなどし、提示を求められた際はスムーズに対応できるようにしておきましょう。

誤りが見つかると5年分まで遡って調査されることもある

直近3年分の調査で申告漏れや経費の計上ミスが見つかると、「ほかの年度でも同じような誤りがあるのでは」と疑われ、確認の範囲が5年分まで延長される可能性があります。

たとえば、以下のようなケースでは、対象期間が広がりやすくなります。

  • 外注費や交際費役員報酬などの処理に不自然さがある
  • 証憑が十分にそろっていない
  • 同じ種類のミスが複数年度にわたって繰り返されている

こうしたリスクを避けるためには、日頃から証憑を整理して保管しておき、必要なときにすぐ提示できる状態を保つことが大切です。

あわせて、数字的根拠をきちんと示しておくことで、範囲拡大のリスクを抑えられます。

悪質な申告漏れがあると7年まで遡られる

「売上をあえて計上しない」「実際には存在しない経費を記録する」といった行為は、偽装や隠ぺいと判断される可能性があります。

このようなケースに該当すると、重加算税の対象となり、調査期間が最長7年まで延長されることもあります。

重加算税とは、通常よりも高い負荷税率のことを指し、経営への大きな負担になりかねません。

不安がある場合は早めに税理士へ相談し、必要に応じて修正申告を検討しましょう。

【法人・個人・相続税別】税務調査の対象範囲

税務調査といっても、法人・個人事業主・相続税では対象期間や見られるポイントが少しずつ異なります。ここでは、それぞれの特徴をケースごとに紹介します。ぜひ、参考にしてください。

法人の場合

法人に対する税務調査で確認される対象期間は、一般的に3年分です。ただし、内容によっては5年分に広がり、悪質と判断された場合は最大で7年分まで遡ることもあります。

調査が実施される周期に明確な決まりはありませんが、一般的には3年から10年の間隔で行われるケースが多いとされています。

また、調査の対象は法人税消費税などが中心で、必要に応じて印紙税や地方税にまでおよびます。なお法人の税務調査においては、以下のような点が重点的に確認されます。

  • 売上の計上漏れはないか
  • 経費の私的利用や不自然な支出がないか
  • 立替金や貸付金の処理が正しいか
  • 消費税の課税・非課税の区分に誤りがないか
  • 役員報酬が適正かどうか

円滑に調査を進めるためには、あらかじめ必要な書類を整理しておくことも大切です。以下の資料を用意しておきましょう。

保存義務のある書類を日頃から整理しておくことで、税務調査が入った際でも調査官からの質問にもすぐに対応できます。

個人事業主の場合

個人事業主の場合も、税務調査の対象期間は3年から5年が基本です。法人と同様に、帳簿の不備や意図的な隠ぺいが疑われるケースでは、最長7年分まで遡ることがあります。

調査対象となる税目は、所得税や消費税が中心です。あわせて、青色申告特別控除の適用状況や、減価償却が正しく処理されているかも確認されます。

また、個人事業主の場合は、経費の私的流用に関する項目を重点的に確認されるケースが多いです。以下の点に注意しましょう。

  • 現金商売における売上計上漏れ
  • 経費の私的流用、不自然な出費
  • 通帳やクレジットカード明細にある用途不明金
  • 自宅兼事務所や車両などの家事按分の根拠

そろえておくべき主な書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書
  • 現金出納帳や仕訳帳などの帳簿類
  • 領収書・レシート
  • 銀行通帳、クレジットカード明細、レジ日報
  • 契約書や請求書の控え

これらを普段から整理・保存しておけば、調査官から求められた際にも落ち着いて対応できます。結果的に調査全体をスムーズに進めることにもつながるのです。

相続税の場合

相続税の税務調査では、申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌月から10ヶ月以内)から原則5年以内が対象期間です。

ただし、重加算税の対象となるようなケースでは7年まで遡る可能性があります。また、贈与や預金の移動については、死亡前10年程度まで遡って確認されるケースもあります。

調査範囲は相続税全般におよび、生前贈与や名義預金、タンス預金や生命保険など多岐にわたる財産が対象です。

相続税の税務調査でよく確認される項目は、以下のとおりです。

  • 名義預金や名義株が実質的に被相続人の財産だったかどうか
  • 死亡直前の大きな出金や資産移動
  • 配偶者控除や小規模宅地特例などの適用状況

くわえて、税務調査をスムーズに進めるための準備も重要です。以下の資料を用意しておきましょう。

  • 相続税申告書の作成に使った全資料(メモや下書きも含む)
  • 故人・相続人の銀行通帳
  • 生命保険の証書
  • 生前贈与の契約書や贈与税の納付書
  • 株の取引報告書
  • 不動産の権利証
  • 葬儀費用の明細や香典帳
  • 印鑑や貸金庫の鍵

資料をまとめて管理しておくことで、万が一にも慌てることなく対応できます。

税務調査が入ったときの対応ポイント

税務調査は突然通知が届きます。そのため、落ち着いて対応できるように全体の流れを把握しておくことが重要です。

ここでは、以下の3つのフェーズごとに各ポイントを解説します。

  • 税務署から事前連絡がきたときの対応
  • 税務調査当日の対応
  • 修正申告・更正通知を受けた場合の対応

税務署から事前連絡がきたときの対応

税務調査が入る前に、まず税務署から事前連絡があります。電話で行われることが一般的で、その際に調査の日程や対象となる期間といった概要が伝えられます。内容をメモに残しておくと安心でしょう。

もし、都合が悪い場合は、日程の相談も可能です。慌てて承諾せず、社内の予定や顧問税理士との調整した上で回答しましょう。

税務調査当日の対応

実際の調査は、2〜3日ほどかけて行われるのが一般的です。時間帯は平日の午前10時から午後4時ごろまでで、調査官が会社や事務所に訪問し、帳簿や証憑の確認を行います。

顧問税理士がいる場合は、通知を受けた段階で必ず相談しておきましょう。当日も立ち会ってもらえれば、調査官とのやり取りをスムーズに進められます。

専門的な質問に対応できる経験豊富な税理士であれば、安心感もいっそう高まります。

修正申告・更正通知を受けた場合の対応

調査の結果、申告内容に誤りが見つかると、税務署から説明を受けます。内容に納得できる場合は、修正申告を行い、追徴税を納める流れです。

一方で、重大な誤りがある、あるいは調査への協力が不十分だと判断された場合は、税務署が一方的に内容を修正する「更正処分」が行われることがあります。

この通知に納得できない場合は、受け取った日の翌日から3ヶ月以内であれば「再調査の請求」や「審査請求」をすることが可能です。いずれの場合も、調査結果は必ず自分で確認し、疑問があればその場で質問するようにしましょう。

税務調査に備えて日頃からできる対策

「もし明日、税務調査の連絡が来たら…」といった不安を和らげるためには、常日頃の準備が重要です。ここでは、日常的に実践できる3つの税務調査対策を紹介します。主なトピックは以下のとおりです。

書類の保管・帳簿の整理を習慣化する

税務調査で最初に確認されるのは、帳簿や書類の保存状況です。必要な資料がそろっていないと、取引の実態を証明できず、追徴課税につながるおそれがあります。

保存期間原則7年
対象書類の例請求書・領収書・契約書・仕訳帳・総勘定元帳など

「あとでまとめてやろう」と放置すると、いざというときに対応が難しくなります。毎週・毎月のルーティン業務にくわえておきましょう。

電子帳簿保存法に対応したデジタル管理

紙の書類だけで管理を続けるのには限界があることから、近年では電子データでの保存がより重要になっています。

そこで押さえておきたいのが、2024年の改正以降に対応が必要となった電子帳簿保存法です。この改正によって、PDF請求書やネットバンキングの取引データといった電子取引は、紙への保存が原則禁止となっています。

一方で、電子保存は法令対応というだけでなく、業務効率の向上につながります。紙よりも管理がしやすく、検索や整理にかかる手間を軽減できるためです。

ただし、電子保存にはいくつかの条件があります。具体的には以下のとおりです。

  • タイムスタンプの付与
  • 検索機能の確保
  • 改ざん防止の仕組みづくり など

これらは、国税庁のガイドラインにも明示されています。事前に確認しておきましょう。

参考:
電子取引関係|国税庁
ご存じですか?電子取引データの保存方法|国税庁
優良な電子帳簿のススメ!|国税庁
請求書等を帳簿に⾃動連携する仕組みに対応した制度が新設されました|国税庁

税理士やクラウド会計ソフトの活用

経理処理を税理士などの専門家にチェックしてもらうことで、処理精度が高まります。たとえば、以下のとおりです。

  • 仕訳の方法や勘定科目の使い分け
  • 経費の妥当性
  • 消費税や源泉税の処理 など

また、クラウド会計ソフトを活用することで、人為的ミスを減らせます。クラウド会計ソフトを導入する際は、「マネーフォワード クラウド会計」がおすすめです。以下のような機能が活用できます。

  • 自動仕訳による経理の効率化
  • 証憑の電子保存(電子帳簿保存法に準拠)
  • 税理士とのデータ共有

税務調査に強い体制を構築できますので、ぜひ導入を検討してみてください。

なお、以下の記事で電子帳簿保存法について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ