- 更新日 : 2025年2月19日
労務費の意味や人件費との違い、計算方法や内訳、労務費率まで解説
労務費は製品の製造と密接な関わりがあり、利益にも大きな影響を与える費用です。そのため、きちんと把握・管理した上で適切な値とする必要があります。
この記事では労務費について人件費との違い、計算方法、内訳、労務費率の解説を行います。正しく理解して経営に活かせるようになりましょう。
労務費とは?
「労務費」とは、人件費のうち製品を生産するためにかかった部分の費用を指します。製品製造に欠かせないコストです。
製造部門の従業員に支払う賃金・給料などが労務費に該当し、製造原価に算入されます。同じ賃金・給料であっても営業や管理部門の従業員分は、販売費及び一般管理費に算入されます。
労務費には、「直接労務費」と「間接労務費」の2種類があります。
「特定の製品を生産するためにかかった費用」ということがはっきりしているものが「直接労務費」、はっきりしていないものが「間接労務費」に分類されます。
ここでは、「直接労務費」と「間接労務費」のそれぞれがどのような意味を持つ費用であるか?についてお伝えします。
直接労務費とは?
直接工(直接的に製品を生産した人)が製品の生産に直接関わる作業を行なった際に発生する賃金が、直接労務費にあたります。
間接労務費とは?
間接労務費は製品の製造に間接的に関わって発生する費用で、以下に挙げるものを指します。
- 間接作業賃金:直接工が機械の修繕のような製品の生産に、直接関わらない作業を行なった際に発生する賃金
- 間接工賃金:間接工が受け取る賃金
- 手待賃金:工具の手配不良や停電などにより、作業を行うことが出来ない時間に支払われる賃金
- 休業賃金:従業員の休業に対し、支払われる賃金
- 給料:工場の監督者、事務職員などへ支払われる給与
- 従業員賞与手当:賞与、住宅手当、通勤手当など
- 退職給与引当金繰入額:工場の従業員へ支払う退職給与引当金の繰入額
- 福利費:厚生年金、健康保険料、労働保険の会社負担分のような法定福利費
労務費のうち、間接労務費以外のものが直接労務費だということができます。
労務費と人件費の違い
従業員にかかる費用は労務費と人件費に分類されます。
労務費は、製品の製造に関わる「製造部門」の従業員にかかる費用です。工員の労働力を消費することで発生するコストと捉えられ、材料などを消費して製品を製造するのと同じ意味で製造原価に算入されます。
営業部門や販売部門、管理部門の従業員にかかる費用で、販売費及び一般管理費に計上されるのが人件費です。
労務費は製造原価として、人件費とは異なる方法で管理されます。
以上の違いを理解した上で、それぞれについての正確な計算・把握が求められます。
労務費の内訳
次は労務費の内訳についてご紹介します。
労務費の内訳は以下の通りです。
- 賃金
- 雑給
- 従業員賞与手当
- 退職給付費用(退職給付手当)
- 法定福利費
製造部門の従業員の給与
残業や休日出勤に対して支払われる割増分も含まれる
製造部門の、時給で働くパートタイマーやアルバイトなどの給与
製造部門の従業員の賞与や、扶養手当や通勤費などのと言った各種手当
製造部門の従業員の退職に備えて計上する費用
社会保険料の会社負担分
このように製造部門で働く人にかかるコストを、労務費と言います。
労務費の計算方法
労務費がどのような費用であるかどうかおわかりいただけけたところで、今度は労務費の計算方法について説明します。
労務費は直接労務費と間接労務費に分けて計算されます。それぞれの計算方法は以下のとおりです。
直接労務費の計算方法
直接工に対して支払う賃金のうち、製品の製造に直接関わっているあいだの発生分が直接労務費になります。
一般的に従業員は同時に複数製品の製造に関わっているため、賃金を直接作業時間で割った賃率を求めて計算します。
計算式は以下の通りです。
賃率=直接工の賃金÷製品製造の直接作業時間
直接労務費=賃率×製品製造にかかる時間
間接労務費の計算方法
間接労務費は直接労務費ほど計算は難しくなく、対象となる項目の金額を加算していくことで求められます。
なお、間接労務費は労務費のうち直接労務費ではない部分の金額であることから、労務費から直接労務費を差し引くことでも計算できます。
この場合を計算式に示すと、以下のようになります。
間接労務費=労務費ー直接労務費
労務費率とは?
労務費率とはなにか?についても説明します。
請負金額に対する賃金総額の割合を示す数値を、労務比率と言います。請負工事で労災保険料の算定に用いられます。
労災保険料は一般的に会社単位で加入し、給与に労災保険料率をかけて計算します。しかし労災の未加入が発生しないよう、建設業などでは現場ごとの加入が求められます。
労務費率はこういった場合の労災保険料算定に用いられる数値として法律で定められています。その点についてもよく理解しておく必要があります。
労務費を正しく理解して労務管理に活かそう
労務費は製造原価に算入される重要な費用です。製品製造にかかるコストとしてきちんと把握・管理する必要があります。
その範囲や計算方法をしっかりと理解した上で、労務管理に活かせるようになりましょう。とくに直接労務費は内訳も求め方も複雑です。繰り返して学習してマスターしましょう。
よくある質問
労務費とは?
人件費のうち製品を生産するためにかかった部分の費用を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
労務費の内訳は?
賃金、雑給、従業員賞与手当、退職給付費用(退職給付手当)、法定福利費があります。詳しくはこちらをご覧ください。
労務費の計算方法は?
直接労務費と間接労務費とで異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
年会費や入会費を払った時の勘定科目と仕訳の解説
年会費や入会費を払った時によく使う勘定科目として「諸会費」があります。しかし、諸会費と同じような意味合いのほかの勘定科目もあり、どの勘定科目を使えば良いか、迷うこともあります。そこで、ここでは諸会費とそれ以外の勘定科目や消費税の処理などを詳…
詳しくみる商品評価損の仕訳とは?計算方法や会計処理を具体例でわかりやすく解説
在庫は、企業にとって大切な資産です。しかし、商品の価値は常に一定ではありません。例えば、流行の変化や商品の劣化によって、仕入れたときよりも価値が下がることがあります。このようなケースでは「商品評価損」の計上が必要になります。 この記事では、…
詳しくみるオフィス備品を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
応接セット・家具・パソコンのようなオフィス備品の仕訳に適している勘定科目には、どのようなものがあるのでしょう。オフィス備品の勘定科目は、その物品の取得費用に応じて異なります。端的にいうと、取得価額が10万円以上の場合は「備品」、10万円未満…
詳しくみる生命保険料の勘定科目は?個人事業主と法人で異なる?保険金や解約返戻金についても解説!
生命保険とは、人の生死や病気のリスクに関わる保険を指します。生命保険は個人で契約できるほか、法人も契約することができます。では、個人事業主や法人が生命保険料を支払った場合や保険金を受け取った場合は、どのように処理するべきなのでしょうか。この…
詳しくみる洗剤を経費計上する際の勘定科目は?仕訳例も紹介
事業のために洗剤や芳香剤を購入した際の代金は、目的によって仕訳時の勘定科目が異なります。例えば、クリーニング店が洗濯洗剤を購入したときであれば、消耗品費として経費計上することが可能です。他にもどのような勘定科目を使用できるのか、具体的な仕訳…
詳しくみる賃貸の更新料を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
賃貸物件の契約を更新する際、更新料の支払いを求められることがあります。更新料を経費として処理する場合、どのような勘定科目を使い、どのような仕訳をすることになるのでしょうか。更新料を支払ったときの仕訳について取り上げます。 更新料の仕訳に使え…
詳しくみる