- 作成日 : 2026年10月28日
防衛特別法人税の仕訳はどうする?計算方法や経理処理を解説
防衛特別法人税の仕訳は、法人税・地方法人税と同じく「法人税、住民税及び事業税」で処理します。
- 税額は基準法人税額から500万円控除後に4%
- 2026年4月1日以後開始の事業年度から適用
- 税額0円でも対象法人には申告義務あり
Q. 防衛特別法人税の決算時の仕訳は?
A. 借方「法人税、住民税及び事業税」/貸方「未払法人税等」で計上し、納付時に未払法人税等を取り崩します。
2026年4月1日以後に開始する事業年度から、新たに「防衛特別法人税」が適用されています。防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除した残額に4%を乗じて計算する税金です。
この記事では、防衛特別法人税の仕訳例から税額計算、申告・納付などについて解説します。
防衛特別法人税の仕訳はどうする?
防衛特別法人税は、原則として法人税や地方法人税と同じ区分で会計処理します。 決算で税額を計上するときは「法人税、住民税及び事業税」を借方、「未払法人税等」を貸方とし、納付時には未払法人税等を取り崩します。
企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した実務対応報告第48号では、防衛特別法人税について地方法人税と同様に処理し、法人税等に関する会計基準に従う取扱いが示されています。
【決算時】「法人税、住民税及び事業税」で計上する
決算時に防衛特別法人税を計上する場合、一般的には「法人税、住民税及び事業税」を使用します。たとえば、決算時に確定した防衛特別法人税が12万円である場合、仕訳例は次のとおりです。
【仕訳例】
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 120,000円 | 未払法人税等 | 120,000円 | 防衛特別法人税の計上 |
防衛特別法人税だけを独立した費用科目として処理するというより、法人税や地方法人税などと合わせて法人税等として処理する考え方です。
ASBJの実務対応報告第48号では、防衛特別法人税は法人税額から基礎控除額を差し引いた額を課税標準とする「法人税に対する付加税」であるため、地方法人税と共通する性質を持つと整理されています。
参考:防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い|企業会計基準委員会
【納付時】「未払法人税等」を取り崩す
申告後に防衛特別法人税を納付するときは、決算時に計上した「未払法人税等」を減額します。防衛特別法人税12万円を普通預金から納付した場合は、次のように仕訳します。
【仕訳例】
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 未払法人税等 | 120,000円 | 普通預金 | 120,000円 | 防衛特別法人税の納付 |
この仕訳では、納付時に新たな費用は発生しません。すでに決算時点で税金費用を計上しているため、納付によって未払債務と普通預金が同時に減少する処理となります。
防衛特別法人税は法人税・地方法人税とは別の税目ですが、会計処理上はこれらと近い性質の税金として扱います。
税額が0円でも仕訳と申告は別に考える
防衛特別法人税額が0円であれば、通常は税額に関する仕訳は発生しませんが、対象法人には申告が必要です。2026年4月1日以後に始まる事業年度から、各事業年度の所得について法人税が課される法人は、防衛特別法人税を納める義務を負います。 防衛特別法人税額が0円となる場合でも、対象法人は確定申告書を提出する扱いです。
たとえば、基準法人税額が500万円以下で基礎控除額の範囲内に収まり、防衛特別法人税額が0円になった場合、計上すべき税額がないため次のような仕訳は行いません。
【仕訳例】
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 仕訳なし | ― | 仕訳なし | ― | 防衛特別法人税額が0円の場合 |
したがって、「500万円の基礎控除によって税額が発生しなかったため、何もしなくてよい」という扱いではありません。会計上の仕訳が発生しないことと、税務上の申告が不要であることは別です。
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※当資料は、専門家なしでの決算書作成を推奨している趣旨ではありません。ご自身での決算書作成が不安な場合は、専門家にご相談ください。
防衛特別法人税はいくらかかる?
防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除した残額に4%を乗じて計算します。 「所得金額が500万円を超える法人に4%課税される」という制度ではありません。
税額を見積もる際には、会計上の税引前利益ではなく、防衛特別法人税制度上の「基準法人税額」を出発点とする点を押さえておくと理解しやすくなります。
「基準法人税額-500万円」に4%を乗じる
基本的な計算式は「(基準法人税額-基礎控除額500万円)×4%」です。
たとえば基準法人税額が800万円の場合、課税標準法人税額は300万円となり、防衛特別法人税額は12万円です。
| 基準法人税額 | 基礎控除額 | 課税標準法人税額 | 4%を乗じた税額 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 500万円 | 0円 | 0円 |
| 500万円 | 500万円 | 0円 | 0円 |
| 800万円 | 500万円 | 300万円 | 12万円 |
| 1,500万円 | 500万円 | 1,000万円 | 40万円 |
実際の納付額については、法人税本体の計算段階で外国税額控除などの税額控除が適用される場合、その減額後の法人税額(基準法人税額)をベースとして防衛特別法人税を計算するため、それらの控除影響が反映されます。
500万円は「所得の基礎控除」ではない
500万円の基礎控除は、会社の所得から500万円を差し引く制度ではありません。防衛特別法人税では、法人税計算の過程で算出される「基準法人税額」から500万円を控除します。「利益が500万円を超えたら防衛特別法人税が発生する」「所得500万円以下なら対象外」と理解すると誤りです。
財務省によると、中小企業は所得が2,400万円程度までであれば防衛特別法人税は課されず、全法人の約94%が課税対象外となる見通しです。 ただし、これは制度による全体的な見込みであり、各社の税額は法人税計算や適用制度によって変わります。
事業年度が1年未満なら500万円を月割りする
課税事業年度が1年に満たない場合、基礎控除額500万円は月数に応じて調整されます。計算上は500万円を12で割り、課税事業年度の月数を乗じて基礎控除額を算定します。そのため、設立初年度や決算期変更などによって事業年度が1年未満となる法人では、常に500万円をそのまま差し引けるわけではありません。
たとえば課税事業年度が6か月であれば、基本的には500万円の12分の6に相当する250万円が基礎控除額となります。
防衛特別法人税はいつから仕訳・経理処理が必要?
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。 「2026年4月1日以後に終了する事業年度」ではないため、会社の決算期によって最初の対象年度が異なります。
3月決算法人と12月決算法人などでは適用開始のタイミングが異なるため、自社の事業年度の開始日から判定します。
3月決算法人は2026年4月1日開始年度から対象になる
3月決算法人であれば、2026年4月1日から2027年3月31日までの事業年度が最初の対象年度となります。12月決算法人の2026年1月1日から12月31日までの事業年度は、2026年4月1日より前に開始しているため対象ではありません。次の2027年1月1日開始事業年度から対象となります。
判定基準はあくまで「事業年度の開始日」です。経理担当者は、法人税申告書の年度だけで判断せず、対象事業年度の開始日を確認するとよいでしょう。
初年度は防衛特別法人税の中間申告が原則発生しない
防衛特別法人税の中間申告書は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から提出対象となります。2026年4月1日から防衛特別法人税が始まる一方で、中間申告については適用開始時期が1年ずれています。2026年4月1日開始事業年度を処理する際には、この違いを混同しないようにします。
なお、中間申告制度が適用される年度では、中間納付額を踏まえて決算時の確定税額を処理するため、会計ソフト側の税区分や補助科目の設定も事前に確認しておくと処理しやすくなります。
防衛特別法人税の会計処理にはどの基準を使う?
2026年9月時点では、防衛特別法人税についてASBJの実務対応報告第48号が公表されており、地方法人税と同様に処理する考え方が示されています。
加えて、企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」についても、2026年7月に内容が見直されています。 原則適用時期との関係も含め、自社がどの基準を適用しているか確認して処理します。
防衛特別法人税は地方法人税と同様に扱う
実務対応報告第48号では、防衛特別法人税の会計処理と表示を地方法人税と同様に行うとされています。
防衛特別法人税は法人税額を基礎として課税される付加税であり、法人税その他の利益に関連する金額を課税標準とする税金として扱われます。この考え方から、決算時には法人税等として損益に計上し、未納額は未払法人税等として処理するのが基本となります。
経理実務では防衛特別法人税専用の補助科目を設けて管理する方法も考えられますが、財務諸表上で必ず独立科目として表示するという意味ではありません。
税効果会計では法定実効税率に影響する
防衛特別法人税は税効果会計の対象に含まれ、法定実効税率を計算する際にも反映します。
ASBJの実務対応報告第48号では、繰延税金資産・繰延税金負債の計算に用いる税率について地方法人税と同様に扱い、法定実効税率についても防衛特別法人税率を考慮するとされています。
防衛特別法人税の導入は当期の納税額だけの問題ではありません。税効果会計を適用する企業では、将来解消する一時差異に対応する繰延税金資産・負債の計算にも影響する可能性があります。
2026年改正の法人税等会計基準との関係も確認する
2026年7月7日に改正された企業会計基準第27号は、原則として2028年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。
公表日以後に開始する事業年度から早期適用することも可能です。2026年改正会計基準を適用した場合、実務対応報告第48号の適用は終了します。
たとえば2026年4月1日にすでに開始している3月決算法人の初年度については、2026年7月7日の改正基準公表より前に事業年度が始まっています。防衛特別法人税の初年度処理では実務対応報告第48号が実務上の大きな基準となります。
防衛特別法人税は税務上の損金にできる?
防衛特別法人税の本税は、法人税と同様に税務上の損金には算入されません。会計上は「法人税、住民税及び事業税」として費用計上しますが、「会計上の費用になること」と「法人税計算上の損金になること」は同じではありません。
会計上は費用でも法人税計算では損金不算入になる
防衛特別法人税は会計上の税金費用として計上する一方、税務上は損金不算入として扱われます。財務省の令和7年度税制改正資料では、防衛特別法人税について損金不算入となる取扱いが示されています。たとえば決算で12万円の防衛特別法人税を「法人税、住民税及び事業税」として費用計上しても、その12万円によって課税所得を減らし、さらに法人税を減らせるわけではありません。
この点は法人税や地方法人税の本税と同様の考え方です。
還付が発生した場合も法人税と同様の税務調整がある
防衛特別法人税について還付が発生した場合も、法人税との整合を図った税務上の取扱いが設けられています。たとえば、欠損金の繰戻しに伴う防衛特別法人税の還付については、法人税の還付と同様に益金不算入となる仕組みが整備されています。
通常の中小企業ではまず決算時の税額計上と納付処理を理解すれば対応できますが、修正申告、税額控除、欠損金の繰戻し、グループ通算制度などが関係する場合には処理が複雑になります。
防衛特別法人税の経理実務では何に注意する?
防衛特別法人税への対応では、仕訳だけでなく、税額計算、申告書、会計ソフト、納付方法まで一連の業務を見直すと処理ミスを防ぎやすくなります。法人税と連動して計算する税金であるため、単独で4%を掛けるだけでは正しい税額にならない場合があります。
「法人税額×4%」だけで計算しない
防衛特別法人税は、最終的な法人税の納付額に単純に4%を掛ける制度ではありません。計算の起点となる「基準法人税額」は、所得税額控除、外国税額控除など一定の制度を適用しないで計算した法人税額です。その基準法人税額から基礎控除額を差し引いたうえで4%を乗じます。
会計ソフト上に表示された法人税納付予定額へそのまま4%を掛ける処理では、税額が一致しない可能性があります。申告書作成ソフトや税額計算システムが防衛特別法人税に対応しているかも確認します。
申告書は法人税・地方法人税と一体の様式になっている
防衛特別法人税の申告書は、法人税・地方法人税の申告書と一体化した様式で提出します。別表一などでは防衛特別法人税の記載部分が別葉となる場合があります。国税庁も提出漏れへの注意を案内しています。
経理担当者が法人税申告書を自社で作成している場合は、従来使用していた申告書だけで完結すると考えず、防衛特別法人税に対応した2026年度以降の様式や税務ソフトを使用します。
参考:法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁
2027年5月までは納付方法にも留意する
2027年5月までの防衛特別法人税には、e-Taxなどのシステム対応に伴う当面の納付手続があります。ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付などを利用する場合は、納付情報登録依頼を作成・送信したうえで納付する案内が出ています。納付書を使用する場合の税目番号は「030」、グループ通算法人の場合は「032」とされています。
制度開始直後は申告ソフトや納付システムの取扱いが従来の法人税と異なる部分があるため、納期限の直前ではなく早めに納付方法まで確認しておくとスムーズです。
防衛特別法人税の仕訳と税額計算を決算前に確認しておこう
防衛特別法人税の仕訳は、基本的に法人税や地方法人税と同様に処理します。 決算時は「法人税、住民税及び事業税/未払法人税等」、納付時は「未払法人税等/普通預金」などの仕訳となります。制度は2026年4月1日以後開始事業年度から適用され、基準法人税額から年500万円を控除した残額に4%を乗じて税額を計算します。500万円は所得金額から控除するものではない点にも注意しましょう。
また、税額が0円でも対象法人には申告が必要です。防衛特別法人税の仕訳だけでなく、申告書様式や会計ソフト、税効果会計、納付方法まで確認し、新しい法人税実務に対応できる体制を整えておくとよいでしょう。
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