- 更新日 : 2026年3月19日
月次決算書とは?年次決算との違いやメリット・デメリットなどを解説
月次決算書とは、1か月ごとの経営成績や財務状態をまとめた会計書類で、スピーディーな経営判断を行うための羅針盤となる資料です。
- 経営の可視化:月単位で損益を把握することで、予算との乖離や業績の変化に即座に対応できます。
- 融資の信頼性:最新の試算表を提示できる体制は、金融機関からの信用力向上に直結します。
- 年次業務の効率化:毎月の処理を積み上げることで、年度末の決算作業負担を大幅に軽減できます。
法的な作成義務はありませんが、変化の激しい現代では翌月10日までの完成が理想とされています。正確な月割計上や棚卸を行い、自社の現状に即した戦略立案に役立てましょう。
企業の経営状況をスピーディーに把握するには「月次決算書」の作成が大切です。しかし、月次決算書を作成したほうがよいのか、判断に悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、月次決算書とはどのようなものかから、作成することにより得られるメリットや注意点、実際の作成手順まで網羅的に解説します。
年に一度作成される年次決算との違いや月次決算を行う目的、実施のタイミング、作成義務の有無などもまとめているので、どのように進めればいいのか理解する手助けとなります。
目次
月次決算書とは?
月次決算とは、企業が毎月の取引や経費などの会計情報を締め、決算処理を行う業務を指します。基本的な流れは年次決算と同じですが、1か月ごとに繰り返して実施する点が特徴です。
年次決算では1年分の経営結果しか確認できず、迅速な経営判断が難しいのが課題です。そこで月次決算を取り入れることで、月ごとの損益や財務状況を可視化できます。
また、月ごとの短いスパンで処理するため、年次決算時の作業を効率化できるという利点もあります。この点で月次決算は、経営管理(管理会計)として業績管理や資金管理のために行われることも多いです。
月次決算処理はいつまでに実施する?
月次決算は、月末で取引を締めた後、翌月初に行う決算処理です。一般的な月次決算のスケジュールと作業内容について、以下の表にまとめました。
| 日程 | 実施する業務 |
|---|---|
| 当月(1日〜月末) |
|
| 翌月初(1〜3営業日頃) |
|
| 3〜7営業日頃 |
|
| 7〜10営業日(※) |
|
| 10営業日以降 |
|
多くの企業では、月初の3〜10日間で、記帳確認や仕訳入力、試算表の作成などを行います。ただし、上場企業や上場準備企業などでは月初から5営業日以内で完了としていることが多いです。
月次決算と年次決算の違い
年次決算とは、企業が毎年事業年度の末に実施する、会計の締め作業のことです。会社法により、上場・非上場を問わず、すべての会社に実施が義務づけられています。
年次決算では会社法に基づき計算書類を作成し、株主への報告や税務申告を行います。
| 項目 | 月次決算 | 年次決算 |
|---|---|---|
| 頻度 | 1か月に1回 | 1年に1回 |
| 義務 | なし | 原則あり |
| 作成書類 | とくに決められていない | 規定あり
主に、計算書類を作成する |
| 目的 |
|
|
年次決算の目的は、1年間の業績や財政状況を明らかにし、法人税をはじめとする税務申告・納付を行うことです。また、株主総会などでの報告資料としても活用されます。
月次決算書を作成するメリットとは?
ここでは、月次決算書を作成することによって得られるメリットについて解説します。月次決算書を作成するメリットを知ることで、自社で実施すべきかどうかの判断がしやすくなります。
1. 年次決算の負担を減らせる
月次決算を実施することで、年次決算をスムーズに実施しやすくなるメリットがあります。
年に一度の年次決算だけに頼ると、記帳や決算作業が年度末に集中し、大きな負担となります。さらに、過去数か月分の取引を振り返る必要があり、確認作業に時間がかかるのも難点です。
一方、月次決算を導入すれば、毎月の会計内容を翌月すぐに確認できるため、作業が分散されて効率的です。記憶が新しいうちに内容をチェックできることで、入力ミスや仕訳の誤りも早期に発見しやすくなる効果もあります。
2. 会社の経営状況をチェックできる
毎月決算することで、会社の経営状態を細かく把握できます。経営状況がわかれば、年間の売上や損益の予測が立てやすくなり、経営の見通しが明確になります。
当初は予想していなかった売上や損益が発生した場合でも、月次決算を通じてリアルタイムな状況判断が可能です。
経営方針について、定期的に見直す機会を得られるのもメリットです。年初に立てた事業計画や予算に対して、毎月の進捗状況を確認できます。予算と実績の差異を把握できるため、経営管理にも役立ちます。
計画から遅れが出ている場合は、すぐに戦略の見直しや軌道修正を行うことができます。
3. 金融機関からの融資が受けやすい
融資を受ける際、年次決算だけでなく月次決算の資料も提出すると、金融機関は会社の最新の経営状況を把握しやすくなります。
そのため、審査がスムーズに進む可能性が高くなります。月次決算で継続的に財務を管理している場合、企業としての信頼につながり、結果として融資が受けやすくなるでしょう。
4. 事業戦略を立てやすい
月次決算を活用することで、年間の業績予想をタイムリーに把握できます。そのため、経営戦略や営業方針をスピーディーに見直すことが可能です。
とくに利益が見込まれる場合は、節税対策などの対応も早期に検討できます。経営層は月次決算の結果をもとに、自社の現状に合った経営方針を決めることが重要です。
月次決算書を作成する際の注意点は?
ここでは、月次決算書を作成する際に押さえておくべきポイントや注意点について解説します。月次決算書を正確に作成するためのポイントを、詳しくみていきましょう。
月末〜月初の業務負担が増える
月次決算は、月末と月初に経理担当が締め作業・決算処理を実施します。とくに月度締め時には、多くの請求書や経費の証憑が集中し、処理が大変です。
月次決算を実施する前に、役割分担や業務フローを明確にし、効率的に進める仕組み作りが欠かせません。経理担当がいない個人事業主や小規模企業は、自身で記帳する必要があるため、より負担が大きくなるでしょう。
各部署との連携が求められる
月次決算を円滑に進めるには、複数の部署間での連携が大切です。しかし、月次決算の導入直後は、締め日の周知不足から混乱やトラブルが起きやすい状況になります。
トラブルや問題を防ぐため、月次決算の重要性やメリットを社内で共有することが大切です。また、書類の提出期限に余裕を持たせたり、リマインドの仕組みを構築するなどの対策も必要になります。
業績の変動に影響されやすい
月次決算で毎月の業績が明確になる反面、短期的な変動に過敏になりすぎるリスクも挙げられます。
利益を急いで追求するあまり、無理なコスト削減により、長期的な視点を失うおそれもあるでしょう。
とくに、売上が季節で大きく変わる小売業や宿泊業、サービス業では注意が必要です。
長期的な経営を考慮し、季節の変動や一時的な影響を踏まえたうえで、月次決算のデータを活用することが大切です。
月次決算を作成する手順・流れは?
ここでは、月次決算の作成手順と流れについて詳しく解説します。主な流れは、下記のとおりです。
月次決算は、正確なデータ処理と迅速な対応が求められるため、効率よく進めるためのポイントもあわせて紹介します。
1. 現金・預金残高を確認する
月次決算の作成は、はじめに会社の金庫現金や通帳、ネットバンキングの入出金明細を確認します。
また、残高が帳簿の現金預金勘定と一致しているかを確認し、もし差異があれば原因を調査します。原因が判明したら、正確な残高になるよう帳簿を修正し、記録を整えることが重要です。
2. 棚卸資産をチェックする
月次棚卸をしている場合、月末時点で社内にある未販売の製品や商品や材料、切手、サンプル品などの在庫を確認します。在庫を確認した後は、帳簿の残高と照合してください。
一方、棚卸が半年や年に一度の場合は、商品の入出庫記録をもとに正確な月末残高を帳簿に反映させる必要があります。実施のタイミングにとらわれず、在庫管理の精度を保つことが重要です。
3. 仮払金・仮受金を整理する
仮払金や仮受金などの仮勘定は、内容を詳しく確認して正しい科目に振り替えることが重要です。また、入金漏れや支払い漏れがないかもあわせてチェックしましょう。
仮勘定のまま放置すると、当月の経営状況が正確に把握できなくなるため、注意が必要です。
4. 経過勘定を計算する
当月に支払いや受取がなく、翌月以降に発生するものは未払費用や未収収益として経過勘定に計上します。とくに、月次決算時に受け取った請求書の未払計上は、漏れやすいため注意が必要です。
経過勘定を活用して、費用や収益を損益計算書に正しく反映させます。これにより、月の経営状況をより正確に把握できます。
5. 減価償却費・退職給付費用を計上する
減価償却費や退職給付費用などの期末確定費用は、年間の見積もり額をもとに、月次で12分の1ずつ計上します。
賞与や固定資産税、各種保険料、労働保険料も同様に、年間費用を見積もったうえで月割しましょう。基本的に毎月の費用として、計上することが求められます。
6. その他年間支払い費用の月割を計上する
年払いまたは数か月ごとに支払う費用は、月次決算で月割して計上します。具体例としては、下記のような費用が挙げられます。
- 生命保険料
- 労働保険料
- 損害保険料
- 固定資産税
費用を適切に分散させて、毎月の経営状況を正確に反映させることが大切です。
7. 月次決算書を作成する
情報の確認が完了したら、月次決算書の作成に進みます。月次決算書には法的な作成義務がないため、会社の状況に合わせて必要な書類を作成し、経営判断に役立てるのが一般的です。
代表的な書類として、下記のようなものが挙げられます。
たとえば試算表には、勘定科目の貸借それぞれの合計を記入した「合計試算表」と「残高試算表」勘定科目の残高のみ記載したものがあります。どちらも記載してあるものは「合計残高試算表」です。
会社ごとに、どの形式で作成するかを決めて活用しましょう。
参考:計算書類の作成等に関する規定|e-Gov法令検索(会社法)
8. 月次業績報告資料を作成する
月次決算書を作成した後は、経営層に報告するための月次業績報告資料を準備します。前月までとの比較で特異な変動があれば、詳細を報告することが重要です。
たとえば、売上の増減要因や会社の現状を正確に読み解き、経営層と共有します。月次決算書をもとにした報告により、効果的な経営戦略の立案につなげやすくなります。
月次決算書に関するよくある質問は?
ここでは、月次決算書に関してよく寄せられる質問を紹介し、疑問に対する回答をわかりやすく解説します。月次決算書について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
月次決算を実施するには資格が必要ですか?
月次決算の業務の実施には、特別な資格は必要ありません。ただし、仕訳や記帳の基本的な知識は求められます。そのため、簿記2級程度の知識があるとスムーズに対応できるでしょう。
また経理処理を自力で進めるためには、会計知識だけでなく、業種特有の会計ルールや商習慣、会社の業務内容についての理解も重要です。必要な知識を身につけて、正確な月次決算を実施することが求められます。
「月次」の読み方は「つきじ」と「げつじ」のどちらですか?
「月次」の読み方は、一般的に「げつじ」です。
「月次決算」は「げつじけっさん」と読みます。 古くは「つきなみ」と読む場合もありましたが、現代のビジネスシーンや会計実務では「げつじ」と呼ぶのが一般的です。
月次決算にはどれくらいの日数がかかりますか?
月次決算にかかる期間は、企業ごとに異なります。しかし、迅速な経営判断のためには、遅くとも翌月10日以内に終えることが理想的です。早い企業では、3日以内に完了するところもあります。
スピーディーに実施するためには、チェックリストを活用してミスを減らすのがおすすめです。
月次決算の精度を高め、決算時の修正作業を減らそう
月次決算を正確かつスムーズに進めるためには、どのような課題があるのでしょうか。マネーフォワード クラウドが実施した調査によると、決算において確定前の数値に誤りや修正が「時々発生している」「毎決算期、頻繁に発生している」と回答した割合は、合わせて69.4%に上りました。
決算ミスの主な原因と業務への影響
数値の誤りや修正が発生する主な原因として最も多かったのは、「手入力によるミス(入力漏れ、桁間違いなど)」で40.8%でした。次いで、「組織変更や新規事業に伴う複雑な会計処理の増加」が28.3%、「関連部署からの報告漏れ・情報共有の遅延」が26.5%となっています。
また、ミスが発生した際の業務への影響として最も大きかったのは、「修正対応による残業時間の増加・過重労働」で29.3%でした。
日々の手入力の負担や他部署との連携不足が、結果として経理担当者の残業増加につながっています。月次決算を効果的に活用し、年次決算の負担を減らすというメリットを最大化するためにも、会計システムを導入して手作業によるミスを減らす仕組みづくりが重要です。
出典: マネーフォワード クラウド、決算数値の誤りや修正が発生する頻度・原因・影響【決算に関する調査データ】(回答者:決算業務に関与している667名、集計期間:2026年2月実施)
経営の羅針盤として月次決算書を活用しよう
月次決算は、単なる事務作業ではなく、企業の「今」を映し出す重要な経営指標です。年次決算の負担を減らすだけでなく、数字をスピーディーに把握することで、変化の激しい時代でも的確な意思決定が可能になります。
最初はフローの構築に苦労するかもしれませんが、まずはできる範囲から正確な記帳を積み上げていきましょう。月次決算を習慣化し、健全で安定した会社経営の実現を目指しましょう。
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