- 作成日 : 2025年11月6日
連結会計システムとは?種類の比較やサービス例10選など紹介
連結会計システムの導入は、複雑化するグループ経営において、迅速かつ正確な意思決定の基盤となります。この記事では、連結会計システムとは何か、その主な機能から種類、そして自社に最適なシステムの選び方までを網羅的に解説します。ERPや一般の会計ソフトとの違いも明確にし、連結決算システムの導入を検討している経理担当者や経営層の方が、具体的な導入イメージを持てるよう、分かりやすく解説していきます。
目次
連結会計システムとは?
連結会計システムとは、親会社と子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の財務状況を統合し、連結財務諸表を作成するための専門的な会計システムです。これにより、グループ全体の経営成績や財政状態を正確に把握することが可能になります。
個々の会社は独立した会計処理を行っていますが、グループ全体としては一つの経済的な単位と見なされます。そのため、特に上場企業は、外部の利害関係者(投資家や金融機関など)に対して、グループ全体の経営状況を連結財務諸表で報告する義務があります。この報告の根拠となるのが「連結財務諸表」です。
しかし、各社の財務諸表を単純に合算するだけでは、グループ内の取引(例えば、親会社が子会社に商品を販売するなど)が財務諸表に残ってしまい、企業集団の規模を過大に表示してしまうこととなります。連結会計システムは、こうしたグループ内取引の相殺消去や、投資と資本の相殺消去といった複雑な計算を自動化し、正確な連結財務諸表を効率的に作成する役割を担います。
なぜ今、連結会計システムが必要とされるのか?
企業のグローバル化やM&Aの活発化に伴い、グループ経営が複雑化しているためです。手作業や表計算ソフト(Excelなど)での管理には限界があり、決算の遅延やミスの原因となるため、専門システムの必要性が高まっています。
近年、多くの企業が海外進出や事業の多角化を進めてきました。その結果、国内外に多数の子会社や関連会社を持つグループ経営は、一般的な事業形態の一つとなっています。その結果、以下のような課題に直面しています。
これらの課題を解決し、経営の透明性を高め、ガバナンスを強化する上で、連結会計システムの導入は有効な選択肢の一つです。その一方で、企業の規模や子会社の数といった要件によっては、ExcelやERPの機能で対応することも可能です。
連結会計システムとERP、会計ソフトの違いは?
連結会計システムとERPや会計ソフトとの最も大きな違いは「複数企業の財務情報を統合し、連結処理を行う機能に特化しているかどうか」です。
それぞれのシステムの位置づけは以下の表のように整理できます。
| システムの種類 | 主な目的 | 対象範囲 |
|---|---|---|
| 会計ソフト | 個別企業の会計処理(仕訳入力、試算表作成など) | 一企業 |
| ERP | 企業の基幹業務(会計、販売、購買、生産など)を一元管理 | 一企業(または複数企業) |
| 連結会計システム | グループ全体の財務情報を統合し、連結財務諸表を作成 | 企業グループ全体 |
ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の経営資源を統合的に管理するシステムであり、会計機能も内包しています。製品によっては連結会計機能を持つものもありますが、連結会計システムは、より複雑な資本連結や成果連結、多段階のグループ構造への対応など、連結決算特有の高度な処理に特化している点が特徴です。
【一覧】連結会計システムにはどのような機能がある?
連結会計システムの主要な機能は「データ収集」「連結処理」「レポート出力」の3つに大別されます。これらが連携し、煩雑な連結決算業務を自動化します。
| 機能分類 | 主な機能内容 |
|---|---|
| データ収集・変換機能 | グループ各社の財務データを自動連携またはインポート。勘定科目のマッピング、外貨換算などを実行。 |
| 連結処理機能 | 資本連結、成果連結(グループ内取引の相殺消去など)を自動で計算し、連結精算表を作成。 |
| 帳票・レポート出力機能 | 連結B/S、P/L、C/Fなどの各種帳票や、監査・経営管理用のレポートを多様な形式で出力。 |
| 高度な機能 | 内部統制を強化するワークフロー・監査証跡機能、IFRS(国際財務報告基準)への対応、経営分析機能など。 |
連結会計システムにはどのような種類がある?特徴を比較
連結会計システムは、提供形態(クラウド/パッケージ)とシステムの成り立ち(専門システム/ERP搭載型)から分類できます。ここで紹介する特徴はあくまで一般的な傾向であり、実際の製品や導入要件によって詳細は大きく異なるため、自社に合うシステムを選ぶ上での参考情報としてご活用ください。
提供形態による比較:クラウド型とパッケージ型
システムの提供形態による最も大きな違いは、自社でサーバーを管理するか、インターネット経由でサービスを利用するかです。
| 比較項目 | クラウド型 | パッケージ(オンプレミス)型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低い(サーバー購入不要) | 高い(サーバー・ライセンス購入費) |
| 導入期間 | 短い | 長い |
| カスタマイズ性 | 限定的 | 高い |
| メンテナンス | ベンダーが実施(自動更新) | 自社で実施 |
| アクセス場所 | インターネット環境があればどこでも | 社内ネットワークなど限定的 |
上記の比較は一般的な傾向です。製品や導入プロジェクトの要件によって、期間や費用、カスタマイズの範囲は大きく変動します。
システムの成り立ちによる比較:専門システムとERP搭載型
連結会計機能が独立した製品か、基幹システム(ERP)の一部として提供されるかの違いです。
| 種類 | 特徴 | メリット/デメリット |
|---|---|---|
| 連結会計専門システム | 連結決算業務に特化 | 【メリット】複雑な制度会計(IFRS等)に強く、高機能。法改正への継続的な対応が期待できる。 【デメリット】既存の会計システムとのデータ連携が別途必要。 |
| ERP搭載型 | ERPの一機能として提供 | 【メリット】個別会計から連結会計までデータがシームレスに連携し、二重入力の手間がない。 【デメリット】導入に時間とコストがかかる傾向。複雑な資本連結や多基準での管理など、高度な要件に対しては専門システムに比べ機能が限定的な場合がある。 |
自社に合った連結会計システムを選ぶポイントは?
自社に最適な連結会計ソフトを選ぶには「目的の明確化」「自社規模の確認」「機能のチェック」「サポート体制の評価」「コスト比較」という5つのステップで検討を進めることが重要です。
1. 導入目的と課題を明確にする
最初に「なぜシステムを導入するのか」「現状のどんな課題を解決したいのか」を具体的に定義します。これが選定の軸となり、後の判断基準がぶれなくなります。
例えば、以下のように課題を整理します。
- 課題:Excelでの連結作業に時間がかかりすぎ、決算が遅延している。
- 目的:決算業務を効率化し、5営業日早期化する。
- 課題:グループ各社の会計基準が異なり、データ収集と変換に手間がかかる。
- 目的:データ収集を自動化し、IFRSに対応できる体制を構築する。
目的が「決算早期化」なのか「内部統制強化」なのか、あるいは「経営情報の可視化」なのかによって、重視すべき機能は変わってきます。
2. 自社の企業規模やグループ構成を確認する
子会社の数、海外拠点の有無、資本関係の複雑さなど、自社のグループ構成を正確に把握します。これにより、システムに求められる要件(多言語対応、多段階連結など)が明確になります。
小規模で国内子会社のみのグループであればシンプルな機能のシステムで十分かもしれません。しかし、海外子会社が多い、資本関係が複雑、持分法適用会社が多数あるといった場合は、高度な処理能力や多通貨・多言語対応が必須となります。
3. 必要な機能と操作性をチェックする
ステップ1,2で明確にした要件に基づき、必要な機能が過不足なく搭載されているかを確認します。また、実際に業務を行う担当者が直感的に使えるか、デモやトライアルで操作性を確認することも重要です。
機能チェックリストの例
- 既存の会計システムと自動連携できるか?
- IFRSに対応しているか?
- セグメント情報の管理はどこまで可能か?
- 予算管理やシミュレーション機能はあるか?
- ワークフロー機能で承認プロセスを電子化できるか?
高機能なシステムでも、操作が複雑で使いこなせなければ意味がありません。日々の業務でストレスなく利用できるかという視点は非常に大切です。
4. サポート体制とセキュリティを評価する
導入時の支援や、導入後の問い合わせ対応といったサポート体制が充実しているかを確認します。特にクラウド型を利用する場合は、ベンダーのセキュリティ対策が信頼できるかも重要な評価ポイントです。
- サポート体制:決算期など緊急時の問い合わせに迅速に対応してくれるか、法改正時のアップデートはスムーズかなどを確認します。
- セキュリティ:クラウドサービスの場合、データの暗号化、不正アクセス防止策、データセンターの安全性(ISO27001などの認証取得状況)などを確認しましょう。
5. 導入コストと運用費用を比較検討する
初期費用だけでなく、月額利用料や保守費用を含めたトータルコスト(TCO)で比較検討します。費用対効果を考え、自社の予算内で最適なシステムを選びましょう。
初期費用が安くても、月額費用が高かったり、機能追加に都度オプション料金がかかったりする場合があります。長期的な視点でコストを算出し、複数のベンダーから見積もりを取って比較することが推奨されます。
連結会計システムのサービス例10選
ここでは、国内で多くの企業に利用されている代表的な連結会計システムを紹介します。
多くの連結会計システムは、企業の規模、子会社数、利用する機能、ユーザー数などによって料金が変動する価格体系を採用しています。そのため、導入を検討する際は必ず公式サイトから問い合わせを行い、自社の要件に合わせた正確な見積もりを取得してください。
1. マネーフォワード クラウド連結会計
マネーフォワードが提供するクラウド型の連結会計システムです。会計システムとのAPI連携やExcelファイルのインポートにより、グループ各社のデータを効率的に収集します。特に「マネーフォワード クラウド会計Plus」などの対応システムとは、ワンクリックでのデータ連携が可能です。
収集したデータは連結用の勘定科目に自動で変換・マッピングされ、連結精算表や連結キャッシュ・フロー計算書が自動作成されます。シンプルで分かりやすい画面デザインが特徴で、作業単位での履歴管理やファイル取得も行えるため、業務の進捗管理がしやすい設計になっています。
特長や料金などは、下記ページに詳しく記載していますので、ぜひ参考にしてください。
2. DivaSystem LCA
ディーバが提供する連結会計システムで、代表的な製品の一つとして、多くの企業で利用されています。データ収集から連結処理、レポーティング、開示まで一連の業務をカバーします。各種会計システムやERPとの連携、Excelファイルの取り込みなど多様なデータ収集方式に対応しており、グループ各社で異なるシステムを利用していても柔軟に対応可能です。IFRS(国際財務報告基準)や多言語・多通貨にも標準対応しており、グローバル企業の複雑な要件にも応えます。オンプレミス、クラウドのいずれの形態でも導入できます。
3. STRAVIS
電通総研が提供する連結会計システムです。制度連結から管理会計、事業ポートフォリオ管理まで、グループ経営管理を幅広く支援します。大量データの効率的な処理を実現している点が特徴です。これにより、決算早期化はもちろん、IFRS適用やM&Aなど様々な経営環境の変化に応じたシミュレーションを迅速に行うことが可能です。大手企業を中心に豊富な導入実績があり、複雑な連結業務に対応できる拡張性の高さを持っています。
4. BizForecast FC
プライマルが提供するグループ経営管理システム「BizForecast」シリーズの連結会計モジュールです。Excelの操作性を活かしたインターフェースが特徴で、データ収集用の入力フォーマットなどを使い慣れたExcel上で自由に設計できます。これにより、現場担当者が抵抗なくシステムを利用できる環境を構築します。制度連結、管理連結、IFRS対応などをワンシステムで実現し、予算管理モジュールと連携させることで、連結予算管理までカバー範囲を広げることが可能です。
5. SuperStream-NX 連結管理
スーパーストリームが提供するERP「SuperStream-NX」内の連結管理ソリューションです。同社の統合会計システムとシームレスに連携し、個別会計データから連結処理までをスムーズに行います。グループ会社間取引データの収集や照合、残高調整などを効率化する機能も備えています。会計システムと同一のプラットフォームで連結管理を行うため、データ連携の整合性が高く、グループ全体の決算早期化と経営の可視化に貢献します。
6. Conglue
2009年にリリースされた、プライマルが提供する連結会計システムです。直感的なユーザーインターフェースと高速な処理性能を両立しています。データ収集から連結処理、レポート作成までをワンストップで提供し、IFRSとのコンバージェンスに伴う会計制度の変更にも迅速に対応します。特に開示組替機能を標準で搭載しており、決算短信や有価証券報告書などの開示書類作成に必要なデータの粒度変換や表示組替を効率的に行える点が特徴です。
7. iCAS
インプレスが提供する連結決算システムです。Excelライクな操作性を重視しており、Excelアドイン機能を使って自由な形式のレポートを作成できる点が特徴です。データ収集においては600項目以上のエラーチェック機能を備え、子会社側でデータの精度を高めることが可能です。これにより、親会社の担当者が行うチェック作業の手間を大幅に削減します。提供形態はオンプレミスとクラウドから選択でき、企業のセキュリティポリシーや運用方針に合わせて導入できます。
8. Oracle NetSuite
日本オラクルが提供するクラウドERPスイートです。その一機能として高度な連結会計機能を標準で搭載しています。多言語、多通貨、各国の税制・法制度に標準対応しており、グローバルに展開する企業のグループ経営管理基盤として強みを発揮します。グループ全体のデータを単一のプラットフォームでリアルタイムに把握できるため、連結決算のプロセスを大幅に迅速化します。ERP一体型であるため、個別会計から連結会計までデータがシームレスに連携し二重入力やデータ連携の手間を削減します。
9. BlackLine
ブラックラインが提供する、決算クローズ周辺業務の自動化を支援するプラットフォームです。特に、グループ会社間の勘定照合やタスク管理に強みを持ち、各社の決算業務の進捗状況をリアルタイムで可視化します。連結決算のモジュール自体は含まず、既存の会計システムやERP、他の連結会計システムと連携して利用されるのが一般的で、決算プロセスの効率化と内部統制の強化に貢献します。
10. BTrex連結会計
ビジネストラストが提供する連結会計システムです。Excelのような使い慣れた操作性が特徴で、多様な会計システムからデータを柔軟に収集できます。収集したデータをもとに、資本連結や成果連結といった複雑な処理を自動化し、連結精算表やキャッシュ・フロー計算書を効率的に作成することで、グループ経営の可視化と決算業務の早期化を支援します。
連結会計システムの活用が、複雑な決算業務の解決策に
本記事では、連結会計システムの基本的な役割から機能、種類、そして自社に最適なシステムの選び方までを解説しました。
グループ経営が複雑化する現代において、Excelや手作業による連結決算は限界を迎えています。連結会計ソフトを導入することで、決算業務の属人化を防ぎ、業務を大幅に効率化できるだけでなく、収集・統合された正確なデータを基にした迅速な経営判断が可能になります。さらに、導入して終わりではなく、定期的に運用方法を見直し、業務プロセスの改善を続けることで、システムの導入効果を最大限に高めることができます。
この記事で紹介した選び方のポイントを参考に、自社の課題を解決し、グループ全体の成長を加速させる最適なパートナーとなるシステムを見つけてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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