- 作成日 : 2024年11月19日
電子帳簿保存法にエクセルは適用できる!台帳を用いた保存手順を紹介
「どのような使い方ならエクセルで電子帳簿保存法に準拠できるのだろう」と悩んでいませんか?電子帳簿保存法が改正されてからも、エクセルでのデータ保存は可能です。
しかし、感覚で管理すると要件を満たせない可能性もあるので、正しい方法での管理方法を知る必要があります。
そこで本記事では、エクセルを用いた取引データの保存手順を紹介します。記事を最後まで読めば、エクセルで台帳を作成できるようになるでしょう。
目次
エクセルで取引データを保存する際の要件
要件 | |
---|---|
真実性の確保 (①〜④のいずれか1つ) | ①タイムスタンプが付されたあと、取引情報を受け取る |
②取引情報を受け取ったあと、速やかにタイムスタンプを付すとともに、情報を確認できるようにする | |
③記録事項の訂正・削除を行ったとき、その事実や内容を確認できるシステム、または訂正・削除ができないシステムで取引情報を受け取る | |
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関するマニュアルを定め、規程通りに運用する | |
可視性の確保 | ①保存場所にパソコン・プログラム・ディスプレイ・プリンタおよび操作マニュアルを備えつける |
②電子計算処理システムの概要書を備えつける(自社開発のプログラムを使用する場合) | |
③検索機能を確保する |
エクセルで取引データを保存する際は、真実性の確保の④と可視性の確保の①③が対象となります。
このようにエクセルでも電子帳簿保存法に適用したデータ管理ができるので、コストをかけたくない事業者は活用してみてください。
関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
電子帳簿保存法に適した形でエクセルで取引データを保存する手順【サンプルあり】
エクセルでのデータ管理を電子帳簿保存法に適した形で行うために、具体的な保存手順を確認しましょう。
手順通りに作業を進めれば電子帳簿保存法に適用できる形になっているので、手を動かしながらチェックしてみてください。
- 手順① 規則性のあるファイル名で保存する
- 手順② 電子データをまとめるエクセル台帳(索引簿)を作成する
- 手順③ 索引簿のエクセルにフィルターを追加する
手順① 規則性のあるファイル名で保存する
まず請求書などの電子データを受領・送付したら、規則性のあるファイル名で保存しましょう。一定の方法で検索できるファイル名にして、可視性の確保をするためです。
可視性の確保の要件に「検索条件の確保」があり、以下3点の対応が必要とされています。
- 取引年月日・取引金額・取引先の項目で検索できること
- 日付または金額の範囲を指定した検索ができること
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件検索ができること
エクセルで取引データを管理する場合は、取引データのファイル名に通し番号をつけましょう。その後エクセル台帳(索引簿)で各種取引情報と通し番号を対応させることで、上記の3要件を満たせます。
手順② 電子データをまとめるエクセル台帳(索引簿)を作成する
ファイル名に通し番号をつけたら、エクセルでデータをまとめるための台帳を作成しましょう。エクセル台帳の見本は、国税庁が公開している「索引簿の作成例」が役に立ちます。
エクセル台帳を作る際は、連番・日付・金額・取引先を記入できる欄を用意します。また備考欄にファイルの種類を記入する欄を作り、どのようなデータなのか判別できるようにしましょう。
手順③ 索引簿のエクセルにフィルターを追加する
最後に索引簿のエクセルにフィルターを追加しましょう。日付や会社名、データの内容で検索できるようにし、検索条件を確保するためです。
フィルターを追加する際は、以下の手順を踏んでみてください。
- エクセルでフィルターを加えたい部分を範囲選択
- 右クリックをして「フィルター」を選択
- 「選択したセルの値でフィルター」を選択
また、ファイル名に振っている連番とエクセル台帳のNoを合わせると、検索する際に便利です。エクセルで索引簿を作ろうと考えている方は、こちらの手順を参考にしてみてください。
電子帳簿保存法に適用したエクセルファイルを作るときの注意点
エクセルでデータ管理をする際の注意点を2つ解説します。最小限のコストでデータを管理するためにも、注意点を理解したうえで活用してみてください。
- 注意点① ファイルの表記揺れに気をつける
- 注意点② 事業規模が拡大したら使い勝手が悪くなる
注意点① ファイルの表記揺れに気をつける
エクセルで取引データを管理するときは、ファイル名の表記揺れに気をつけましょう。表記が揺れていると、ファイル名で検索をかけても検出されません。
エクセルで取引データを保存する際の表記揺れトラブルは、以下のような事例が考えられます。
- 索引簿とファイル名の表記が一致しない
- ファイル名につけた連番の表記や位置がバラバラ
上記のトラブルを防ぐために、索引簿の一番上に表記の例を記載しておくとよいでしょう。またファイル名のサンプルを用意し、連番の表記や位置を統一させることも有効です。
従業員が感覚でファイル名をつけないよう、表記に関するマニュアルを用意してみてください。
注意点② 事業規模が拡大したら使い勝手が悪くなる
エクセルで取引データを管理するときの注意点は、事業規模が拡大するにつれて使い勝手が悪くなるところです。
ファイル名の作成やデータ保存など、多くを手作業で管理する必要があるため、事業規模が大きくなると管理に手間がかかります。
今よりも事業規模を拡大させる予定なら、システムを導入するのもひとつの手です。業績が好調なときや、従業員がファイルの管理に負担を感じているときなど、システムの導入を考えるときの条件を設定してみてください。
請求書などをエクセルで受領したときはそのまま保存してもOK
請求書や見積書などの取引関係書類をエクセルで受領したときは、PDFに変換せずそのまま保存しても問題ありません。
また受領したエクセルをPDFに変更することも、取引内容が変更されるおそれがなく、合理的な方法により編集したものとして認められると考えられています。
国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、受領したエクセルやワードの保管方法について以下のように回答しています。
エクセルやワードのファイル形式で受領したデータをPDFファイルに変換して保存することや、パスワードが付与されているデータのパスワードを解除してから保存することは、その保存過程において取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集したものと考えられることから、問題ありません。
取引関係書類をエクセルやワードで受領したときに備えて、対応方法のマニュアルを用意しておくと従業員も迷わず対処できるでしょう。
なお、自社が請求書などの取引関係書類を発行する際は、データ改ざん防止のためにも修正できないPDFでの送付がおすすめです。
関連記事:電子請求書の受け取り側がすべきことは?メリット・デメリットや保存方法を解説
エクセルを活用して正しい方法でデータを保存しよう
電子帳簿保存法が改正されてからも、エクセルでのデータ保存は可能です。ただし「真実性の確保」「可視性の確保」を遵守する必要があるため、要件を確認してから台帳を作成してください。
エクセルで管理する場合、事業規模が拡大すると管理に手間を感じるかもしれません。このような状況になった場合は、システムの導入を検討するとよいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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