- 作成日 : 2026年10月28日
防衛特別法人税とは?対象法人・4%の税率・500万円控除・計算方法を解説
防衛特別法人税とは、2026年4月1日以後開始の事業年度から、基準法人税額に年500万円の控除後4%を課す新たな付加税です。
- 適用開始は事業年度の開始日で判定
- 基礎控除500万円超の部分に4%課税
- 税額0円でも原則として申告が必要
Q. 中小企業も防衛特別法人税の対象になる?
A. 法人税の納税義務がある法人は原則対象ですが、財務省試算では全法人の約94%が基礎控除により実質非課税となる見込みです。
防衛特別法人税とは、防衛力強化の財源を確保するため、法人税に追加して課される国税として新設されました。適用対象は、2026年4月1日以後に始まる事業年度です。
本記事では、防衛特別法人税の対象企業や適用開始時期、基準法人税額と500万円の基礎控除、計算例、申告・納付についてを解説します。
防衛特別法人税とは?
防衛特別法人税とは、法人税額を基礎として計算する新たな付加税で、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される税金です。基準法人税額から年間500万円の基礎控除額を差し引いたうえで、その残額に4%を掛けて算出します。
法人税に4%を上乗せする形で創設された税金
防衛特別法人税は、法人税に対する付加税として設けられた国税です。制度は2025年3月31日に公布された改正法により創設されました。対象法人は、通常の法人税とは別に防衛特別法人税を計算し、申告・納付します。税率は4%ですが、「法人の所得に4%を掛ける税金」ではありません。法人税額をもとに算定した「基準法人税額」が計算の出発点となります。
したがって、「法人税率が一律4ポイント上がる」と理解するのも正確ではありません。500万円の基礎控除があるため、基準法人税額が一定額以下であれば防衛特別法人税額は0円となります。
2026年4月1日以後に「開始する事業年度」から適用される
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から課税されます。 2026年4月1日に一斉にすべての法人へ課税が始まるわけではなく、各社の事業年度によって初年度が異なります。
たとえば、3月決算の法人の場合、初めて課税対象となるのは、2026年4月1日から2027年3月31日までの事業年度です。 一方、12月決算法人の2026年1月1日から12月31日までの事業年度は開始日が2026年4月1日より前なので対象外となり、2027年1月1日開始の次の事業年度から対象になります。
「2026年4月以降の利益や取引だけに課税される」と考えるのではなく、事業年度の開始日で判定するのがポイントです。
防衛特別法人税の対象となる法人は?
原則として、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が防衛特別法人税の納税義務者となります。 ただし、年500万円の基礎控除が設けられているため、納税義務者に該当しても実際の税額が0円となる法人は少なくありません。
法人税を課される法人が原則として対象になる
株式会社や合同会社など、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は原則として対象です。制度上は「大企業だけを対象とする税金」ではありません。中小企業であっても法人税の納税義務があれば、防衛特別法人税の制度そのものの対象となります。
収益事業を行っていない公益法人等や人格のない社団等など、各事業年度の所得に対する法人税の納税義務がない法人については、防衛特別法人税の確定申告書を提出する対象とはなりません。
「500万円超」は所得ではなく基準法人税額で判定する
防衛特別法人税の500万円という基準は、会社の利益や課税所得が500万円を超えるかどうかを意味するものではありません。
500万円は「基礎控除額」であり、原則として基準法人税額から差し引きます。そのため、課税所得が500万円を超えている会社であっても、基準法人税額が500万円以下なら防衛特別法人税額は0円です。
財務省は制度創設時の試算として、中小企業については所得がおおむね2,400万円程度まで課税されず、全法人の約94%が対象外となる見込みを示しています。ただし、これは制度説明時の目安であり、「所得2,400万円以下なら必ず非課税」という法定基準ではありません。実際の判定は基準法人税額を使って行います。
防衛特別法人税はいくらかかる?
防衛特別法人税は、原則として「(基準法人税額-基礎控除額500万円)×4%」で計算します。 基準法人税額が500万円以下なら課税標準法人税額は0円となり、防衛特別法人税額も0円です。
基準法人税額は最終的な法人税の納付額とは異なる
計算の基礎になる「基準法人税額」は、実際に納める法人税額をそのまま使うとは限りません。
内国法人の場合、各事業年度の所得に対する法人税額をベースとしますが、所得税額控除、外国税額控除など一定の税額控除を適用しない状態で基準法人税額を計算します。
次のように単純化して考えるのは避けたほうがよいでしょう。
「法人税の最終納付額 × 4% = 防衛特別法人税」
法人税申告書上で基準法人税額を確認し、その金額から基礎控除額を差し引いて課税標準法人税額を算出します。
年500万円を控除した残額に4%を掛ける
1年間の通常の事業年度であれば、基礎控除額は500万円です。
基本的な計算式は次のとおりです。
| 項目 | 計算方法 |
|---|---|
| 基準法人税額 | 法人税額を基礎に一定の税額控除を適用せず算定 |
| 基礎控除額 | 原則として年500万円 |
| 課税標準法人税額 | 基準法人税額-500万円 |
| 防衛特別法人税額 | 課税標準法人税額×4% |
たとえば基準法人税額が800万円の場合、「800万円-500万円=300万円」が課税標準法人税額となり、「300万円×4%=12万円」が防衛特別法人税額となります。
1年未満の事業年度では500万円を月数按分する
課税事業年度が1年未満の場合、基礎控除額を一律500万円とはせず、事業年度の月数に応じて計算します。計算は「500万円÷12×課税事業年度の月数」が基本です。この月数について1か月未満の端数がある場合は切り上げます。
設立初年度や決算期変更などによって事業年度が12か月に満たない法人では、このルールを踏まえて判定する必要があります。単純に500万円を差し引くと税額を誤る可能性があります。
決算月によって防衛特別法人税はいつから始まる?
最初に防衛特別法人税がかかる事業年度は、各社の決算月によって異なります。 判断基準は「2026年4月1日以後に開始する事業年度かどうか」です。
3月決算法人は2026年4月1日開始年度から対象になる
3月決算法人では、2026年4月1日から2027年3月31日までの事業年度が最初の課税事業年度になります。
代表的な決算月で整理すると次のようになります。
| 決算月 | 最初に対象となる事業年度の開始日 |
|---|---|
| 3月決算 | 2026年4月1日 |
| 6月決算 | 2026年7月1日 |
| 9月決算 | 2026年10月1日 |
| 12月決算 | 2027年1月1日 |
たとえば12月決算法人では2026年中に制度そのものは施行されていますが、2026年12月期は対象ではありません。2027年1月1日に開始する事業年度から防衛特別法人税を計算します。
防衛特別法人税の経理処理はどうする?
防衛特別法人税の会計処理は、地方法人税と同様に扱うこととされています。 企業会計基準委員会(ASBJ)は2026年2月に実務対応報告第48号を公表し、会計処理・表示・税効果会計の取扱いを整理しています。
地方法人税と同様に法人税等として会計処理する
防衛特別法人税は、法人税に対する付加税という性質から、会計上は地方法人税と同様の考え方で処理します。ASBJの実務対応報告第48号では、防衛特別法人税の会計処理について、地方法人税と同じく法人税等会計基準に従うとされています。
決算で10万円の防衛特別法人税を見積計上するケースであれば、一般的には法人税等の税金費用として認識し、未払額を「未払法人税等」などで処理する考え方になります。使用する勘定科目や補助科目は企業の会計方針や会計システムによって異なるため、「防衛特別法人税」という補助科目を新設して管理する方法も考えられます。
参考:実務対応報告第48号 防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い|ASBJ
税効果会計では防衛特別法人税率も考慮する
防衛特別法人税は税効果会計の対象となり、法定実効税率の算定でも防衛特別法人税率を考慮します。
ASBJは、防衛特別法人税について繰延税金資産・繰延税金負債の計算に用いる税率を地方法人税と同様に取り扱い、法定実効税率にも防衛特別法人税率を反映するとしています。
税効果会計を適用している企業では、当期の納付税額を増やすだけでは対応が終わりません。繰延税金資産・負債の測定や税率差異の分析などにも影響し得るため、決算システムや税効果計算シートの設定を確認しておく必要があります。
防衛特別法人税の申告・納付はどうする?
防衛特別法人税は法人税等とあわせて申告手続きを行いますが、防衛特別法人税額が0円でも原則として申告が必要です。 申告書は法人税・地方法人税の申告書と一体の様式になっています。
税額が0円でも確定申告書を提出する
500万円の基礎控除によって防衛特別法人税額が0円になった法人も、納税義務者であれば原則として申告を行います。
基準法人税額が0円の場合や、基準法人税額が500万円以下で課税標準法人税額が0円となる場合でも、防衛特別法人税の確定申告書には0円と記載して提出します。
確定申告書の提出期限は、原則として課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。法人税確定申告書の提出期限が延長されている場合は、防衛特別法人税についても延長後の提出期限となります。
中間申告は2027年4月1日以後開始事業年度から対象になる
防衛特別法人税の中間申告は、制度開始初年度から直ちに発生するわけではありません。
2026年に更新された案内では、2027年4月1日以後に開始する課税事業年度において法人税の中間申告書を提出すべき法人が、防衛特別法人税についても中間申告を行う扱いとなっています。
3月決算法人であれば、2026年4月1日開始の初年度について確定申告への対応を進めつつ、その翌年度からは中間申告も含めた税務スケジュールを管理する形になります。
防衛特別法人税に向けてするべき準備は?
経理実務では、自社の適用開始年度を確認したうえで、税額試算、会計・申告ソフトの設定、決算時の税金計上、納税資金の見積もりまで一連の流れを見直しておくと対応しやすくなります。
まず基準法人税額が500万円を超えるか試算する
最初に確認したいのは、自社で防衛特別法人税の納付額が発生する可能性があるかどうかです。前期や当期予算の法人税計算をもとに基準法人税額を試算し、500万円を超えるか確認すると税負担の規模を把握できます。
たとえば基準法人税額が1,500万円なら、単純化した計算では「1,500万円-500万円=1,000万円」が課税標準となり、防衛特別法人税は40万円です。利益が伸びている会社では、前期まで対象外だったとしても翌期以降に課税される可能性があります。
会計ソフト・法人税申告ソフトの対応状況を確認する
対象年度に入る法人では、会計ソフトや法人税申告ソフトが防衛特別法人税に対応しているか確認しておくと、決算時の設定漏れを防ぎやすくなります。申告書には防衛特別法人税に関する欄が追加されており、国税庁の案内では「別表一次葉一」「別表一の二次葉一」などが防衛特別法人税に関連する様式として整備されています。
経理側でも、税金費用の集計、未払法人税等の管理、法人税申告データとの連携などを確認しておくと、決算・申告時の修正負担を抑えられます。
法人税だけでなく納税資金の見積もりも更新する
防衛特別法人税が発生する会社では、従来の法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税などに加えて納税額が増えるため、資金繰りの見積もりも更新しておくと安心です。
基準法人税額が大きい法人ほど500万円を超える部分が増えるため、追加負担も大きくなります。「法人税額全体に一律4%が加算される」として予算を組むと、500万円の基礎控除を反映できず、税額を過大に見積もることがあります。
予算作成や決算見込みでは、防衛特別法人税を独立した税額として試算すると管理しやすくなります。
防衛特別法人税の開始に合わせて法人税計算と経理体制を確認しよう
防衛特別法人税とは、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、原則として基準法人税額から年500万円を控除した金額に4%を課す新たな付加税です。 「法人税の納付額にそのまま4%を掛ける」「所得が500万円を超えると課税される」といった制度ではないため、基準法人税額と基礎控除額を区別して理解する必要があります。
経理担当者は、自社の最初の課税事業年度を確認し、税額試算や会計・申告ソフトの設定、決算時の法人税等の計上、税効果会計、納税資金の見積もりへ反映しておくとスムーズです。防衛特別法人税額が0円でも対象法人には原則として申告があるため、税額の有無だけで対応要否を判断しないようにしましょう。
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