• 更新日 : 2026年9月16日

IFRS第16号「リース」と日本基準の違いをわかりやすく解説

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PointIFRS16号と日本基準の違いは?

IFRS第16号は借手の全リースを原則オンバランス化する点で、現行日本基準と大きく異なります。

  • 日本基準はオペレーティング・リースを費用処理できる
  • IFRS適用で総資産・負債が増加し財務指標が変動する
  • 新日本基準は2027年4月以降に同様の影響が生じる

Q. IFRS第16号を適用すると財務諸表はどう変わる?

A. 使用権資産とリース負債が計上され、自己資本比率やROAが低下する一方、EBITDAは改善して見える傾向があります。

IFRS第16号と現行の日本の会計基準との大きな違いは、企業のリース契約をどのように財務諸表に反映するかという点です。この記事では、IFRS第16号の概要や強制適用の有無、リース判定や仕訳例などをわかりやすく解説します。

IFRS第16号「リース」とは?

IFRS第16号「リース」とは、国際会計基準審議会(IASB)が定めたリース会計の基準です。借手側のリースについて、原則として貸借対照表に資産と負債を計上する点が大きな特徴です。日本基準とは異なる点もあるため、IFRSを採用する企業では内容を正しく理解する必要があります。

IFRS第16号は借手側のリースを原則オンバランス化する基準

IFRS第16号では、借手側がリース契約によって資産を使用する権利を得ている場合、原則として「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上します。従来のように、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分け、オペレーティング・リースを費用処理する考え方とは異なります。リース料を支払う契約であっても、実態として一定期間資産を使用する権利を得ている場合には、財務諸表上に資産と負債として反映する必要があります。

IFRS第16号は日本では任意適用の企業に関係する

IFRS第16号は、海外では2019年1月1日以後に開始する事業年度から適用されています。日本ではIFRSそのものが任意適用であるため、すべての企業にIFRS第16号が強制されるわけではありません。主にIFRSを採用している上場企業、海外投資家向けに財務情報を開示する企業、グローバル展開している企業などで対応が必要になります。IFRSを採用する場合は、IFRS第16号だけでなく、IFRS全体の基準に沿って連結財務諸表を作成します。

日本基準との違いを踏まえて契約の洗い出しが必要

IFRS第16号を適用する場合、日本基準で賃貸借処理していた契約についても、リースに該当するか再判定する必要があります。事務所、店舗、車両、機械設備、IT機器など、契約書上は賃貸借やサービス契約に見えるものでも、特定の資産を一定期間使用する権利が含まれていれば、使用権資産とリース負債の計上対象になる可能性があります。

また、日本では2027年4月1日以後開始する事業年度から企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の適用が予定されているため、IFRS適用企業以外でも、リース契約の管理体制を見直すことが重要です。

参考:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会

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IFRS第16号と日本基準の違いは?

IFRS第16号と日本基準(リース取引に関する会計基準)では、リース判定のプロセスや貸借対照表・損益計算書への計上方法などが異なります。主な違いを詳しく見ていきましょう。

リース判定

IFRS第16号では、企業が「資産を使用する権利」を実質的に支配しているかどうかに着目し、リースか否かを判定します。使用権を得ている期間中、どの程度意思決定権を持つのか、あるいは経済的便益を享受できるかが重要な基準となります。

企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」では、リース取引が「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」かを判定し、ファイナンス・リースであれば原則として資産計上を行います。資産の特定、使用を支配、経済的便益のほとんどすべて、使用を指図する権利が移転しているかどうかに加え、リース料総額を基に区分するなど、IFRSより細かい分類基準が存在します。

貸借対照表(財政状態計算書)

IFRS第16号において借手側は、原則としてすべてのリース(短期リースや少額資産リースを除く)について使用権資産とリース負債を計上します。使用権資産は減価償却資産のように減価償却を行い、リース負債は金利によって増加し、リース料支払いによって減少します。

一方、日本基準ではファイナンス・リース取引においては資産計上を行いますが、実質的所有権移転型かどうかで処理が異なります。オペレーティング・リースの場合は原則、資産計上を行わず、賃貸借取引として扱われます。

損益計算書(包括利益計算書)

IFRS第16号では、リース契約に基づく費用は、「使用権財産の減価償却費」と「利息費用(リース負債)」に分けて認識されます。

日本基準では、ファイナンス・リース取引については原則としてリース資産とリース債務を計上し、減価償却費を計上します。また、利息相当額を区分して処理する方法があります。一方、オペレーティング・リース取引は、原則として賃貸借処理を行います。実質的所有権移転型かどうかで会計処理が異なるため、IFRSと比べると複雑な区分が存在します。

キャッシュ・フロー計算書への影響

IFRS第16号では、リース料支払いによるキャッシュ・フローは、リース負債の元本返済部分は「財務活動」として扱い、利息部分は「営業活動」または「財務活動」として区分するなど、企業の選択が認められています。これによって、純粋な営業キャッシュ・フローが増える傾向があります。

日本基準の場合、元本返済額部分は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、利息相当額については、企業が採用した支払利息の表示区分に従って記載するよう定められています。また、利息相当額部分を区分計算していない場合は、支払リース料を「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する必要があります。

IFRS第16号を適用した場合の会計処理の変更点は?

日本企業がIFRS第16号を導入すると、借手側・貸手側双方でリース取引の扱いが大きく変わります。以下で主な変更点をご説明します。

借手側の会計処理の変更点

リース資産を計上する場合は、原則として使用権資産を貸借対照表に計上し、減価償却します。リース負債を計上する場合は、同時にリース負債を認識し、支払予定リース料を現在価値に割り引いて計上します。それ以降は利息費用の発生とリース料の支払いによって負債残高を減らします。

なお、契約期間が12か月以下のリース契約や、使用権資産の金額が明らかに小さい場合は、使用権資産・リース負債を計上せず、賃借料として費用計上が認められます。

貸手側の会計処理の変更点

貸手側(リース会社など)は、IFRS第16号においても「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の分類を維持します。ファイナンス・リースはリース債権(受取リース料の現在価値)を認識し、元利金の返済を通じて債権を回収していきます。オペレーティング・リースの場合はリース資産を貸手の資産として計上し、減価償却費を認識しながらリース料収益を認識します。

IFRS第16号を適用した場合の仕訳例は?

ここからは、日本企業がIFRS第16号を採用する際の仕訳例を紹介します。実際の運用では、契約内容や延長オプションなどの有無を踏まえ、個別でしっかりと検討しましょう。

リース開始時の仕訳例

リース契約期間は5年、リース開始日に使用権資産とリース負債をそれぞれ1,000万円、うち貸手に支払う合計金利相当額は200万円と想定します。
なお、前払リース料、初期直接コスト、リース・インセンティブ、原状回復義務等がないものと仮定します。

仕訳例(借手側)

借方 貸方
使用権資産 1,000万円 リース負債 1,000万円

ここで、使用権資産は有形固定資産などの区分科目として計上し、リース負債は金融負債に分類します。

リース負債の利息と減価償却の仕訳例

利息費用の発生時

例えば、利息が33,333円発生した場合、決算時に以下のように仕訳をします。

借方 貸方
支払利息 33,333円 未払利息 33,333円

※リース負債の残高に対して一定の金利をかけた金額を計上。

リース料支払い時

月額20万円を支払う際、33,333円をリース利息費用として認識し、残りの166,667円をリース負債の元本返済として計上します。

借方 貸方
リース負債 166,667円 現金預金 200,000円
未払利息 33,333円

減価償却費の計上時

IFRS第16号では、借手はリース契約に基づく使用権資産を認識し、その資産をリース期間にわたって減価償却します。

例えば、前提条件であるリース料総額の現在価値1,000万円を使用権資産として計上し、リース期間が5年(60か月)の場合、定額法で減価償却すると、月次の減価償却費は下記のようになります。

借方 貸方
減価償却費 166,667円 使用権資産 166,667円

この仕訳により、使用権資産の帳簿価額が毎月166,667円ずつ減少し、減価償却費として損益計算書に反映されます。なお、実際の会計処理では、残存価値やリース契約の変更なども考慮されるため、状況に応じた調整が必要です。

リース契約の変更・再評価時の仕訳例

契約期間の変更やリース料の再交渉など、リース条件が大きく変わる場合は、リース負債および使用権資産の再評価が必要です。

例えば、前述の例でリース期間が延び、追加のリース料総額の現在価値が200万円増加した場合を想定してみましょう。

借方 貸方
使用権資産 200万円 リース負債 200万円

この仕訳では、リース契約の変更により、使用権資産およびリース負債が増加したことを反映しています。延長オプションの行使などにより、企業が追加的に支払う義務が生じた分、既存の数値に加算されます。

リース資産の減損処理と簿価調整の仕訳例

仮に使用権資産の帳簿価額が1,000万円で、減損テストの結果、回収可能価額が900万円と判断された場合、100万円の減損損失を認識する例を示します。

借方 貸方
減損損失 100万円 使用権資産 100万円

減損テストにより、使用権資産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、その差額を減損損失として計上します。ここでは、1,000万円-900万円=100万円の減損損失を計上しています。

同時に、使用権資産の帳簿価額を減額し、減損後の価額(900万円)とするため、減損損失分を使用権資産から控除します。IFRSでは、将来的に回収可能価額が改善した場合、減損損失の戻し入れ(リバーサル)が認められる場合があります。ただし、のれんに対する戻し入れは認められていません。

IFRS第16号と新日本リース会計基準の違いは?

IFRS第16号と新日本リース会計基準は、どちらも借手側のリースを原則としてオンバランス処理する点で共通しています。新日本リース会計基準は、IFRS第16号との整合性を意識して開発された日本基準ですが、適用対象や細かな実務上の取扱いには違いがあります。

※本記事では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を「新日本リース会計基準」と呼びます。

借手側の基本処理はどちらも使用権資産とリース負債を計上する

IFRS第16号では、借手側は原則として使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上します。新日本リース会計基準でも、借手側のリースについて使用権資産とリース負債を計上する考え方が採用されています。従来の日本基準では、オペレーティング・リースを賃貸借処理できるケースがありましたが、新基準では短期リースや少額リースなどを除き、リース契約を資産・負債として表示する方向に変わります。

項目 IFRS第16号 新日本リース会計基準
借手側の基本処理 原則オンバランス 原則オンバランス
主な勘定科目 使用権資産・リース負債 使用権資産・リース負債
費用処理 減価償却費と利息費用を計上 減価償却費と利息費用を計上
従来のオペレーティング・リース 原則として資産・負債計上 原則として資産・負債計上

適用対象と適用時期に違いがある

IFRS第16号は、IFRSを採用する企業が適用する国際的な会計基準です。2019年1月1日以後開始する年次報告期間から適用されています。新日本リース会計基準は、日本基準を適用する企業向けの国内基準で、2027年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。つまり、両者は会計処理の方向性は近いものの、対象となる企業や適用開始時期が異なります。

項目 IFRS第16号 新日本リース会計基準
基準の位置づけ 国際会計基準 日本の企業会計基準
主な対象企業 IFRS任意適用企業など 日本基準を適用する対象企業
適用開始時期 2019年1月1日以後開始年度 2027年4月1日以後開始年度
日本企業への影響 IFRS採用企業に影響 日本基準適用企業に影響

例外規定や表示・注記は個別確認が必要

新日本リース会計基準はIFRS第16号に近い考え方を採用していますが、完全に同じ基準ではありません。短期リースや少額リースの取扱い、貸手側の処理、表示方法、注記、経過措置などは、それぞれの基準に沿って確認する必要があります。特に日本基準を適用する企業では、「IFRS第16号と同じだから」と考えるのではなく、企業会計基準第34号や適用指針に基づいて、自社の契約管理や会計処理を見直すことが重要です。

確認項目 実務上の注意点
短期リース 例外処理の対象になるか確認する
少額リース 金額基準や適用範囲を確認する
貸手側の処理 借手側ほど大きく変わらない部分もある
表示・注記 使用権資産、リース負債、費用、契約条件の開示を確認する
経過措置 適用初年度の処理方法を確認する

IFRS第16号と日本基準で財務指標への影響はどう違う?

IFRS第16号と日本基準では、リースを貸借対照表に計上する範囲が異なるため、財務指標への影響にも違いがあります。オペレーティング・リースを多く利用している企業では、資産、負債、利益指標、キャッシュ・フロー指標の見え方が変わる点に注意が必要です。

IFRS第16号では総資産と負債が増えやすくなる

IFRS第16号では、借手側のリースについて原則として使用権資産とリース負債を計上します。日本の現行基準でオペレーティング・リースとして賃貸借処理していた契約も、IFRS第16号では貸借対照表に反映される可能性があります。結果として、総資産と負債が増え、自己資本比率やROAなどの財務指標が変動しやすくなります。

財務指標 IFRS第16号適用時の主な影響
自己資本比率 負債と総資産が増え、低下する可能性がある
ROA 総資産が増えるため、低下する可能性がある
有利子負債 リース負債の計上により増加する可能性がある

損益指標ではEBITDAが改善して見えることがある

IFRS第16号では、従来の賃借料に相当する費用が、使用権資産の減価償却費とリース負債に係る利息費用に分かれます。ASBJも、IFRS第16号や米国Topic 842では、オペレーティング・リースを含むすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する考え方が採用されていると説明しています。賃借料が営業費用として一括計上されにくくなるため、減価償却費や利息費用を控除前の利益であるEBITDAは、改善して見えることがあります。

財務指標 影響の例
EBITDA 賃借料が減少し、改善して見える可能性がある
営業利益 減価償却費の計上により、契約内容によって変動する
経常利益・税引前利益 利息費用の計上により影響を受ける

新日本リース会計基準でもIFRS第16号に近い影響が生じる

現行の日本基準では、オペレーティング・リースは原則として賃貸借処理されるため、IFRS第16号ほど貸借対照表への影響が出ないケースがあります。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」では、使用権資産は借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産とされており、新日本リース会計基準の適用後は、日本基準でもIFRS第16号に近い影響が生じます。

したがって、今後はリース契約が多い企業ほど、自己資本比率、ROA、EBITDA、有利子負債などへの影響を事前に試算することが重要です。

IFRS第16号と日本基準の違いを理解してリース契約を見直そう

IFRS第16号は、借手側のリースについて原則として使用権資産とリース負債を計上する会計基準です。現行の日本基準では、ファイナンス・リースは資産計上する一方、オペレーティング・リースは賃貸借処理できるケースがあるため、貸借対照表や損益計算書、キャッシュ・フロー計算書への影響に違いがあります。

IFRS第16号を適用すると、総資産や負債が増え、自己資本比率、ROA、有利子負債、EBITDAなどの財務指標が変動する可能性があります。また、新日本リース会計基準では、日本基準でも借手側のオンバランス処理が原則となるため、IFRS適用企業以外も対応が必要です。リース契約を洗い出し、会計処理、仕訳、表示・注記、財務指標への影響を早めに確認しましょう。

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