- 作成日 : 2025年11月12日
リース契約と賃貸借契約の違いは?メリット・デメリットも徹底比較
リースと賃貸借は、どちらもモノを借りるという点で似ていますが、契約内容は大きく異なります。この二つの違いを理解しないまま契約すると、会計処理、コスト、法的な責任範囲で思わぬトラブルにつながる可能性があります。
この記事では、リースと賃貸借の違いからどちらを選ぶべきかの判断基準まで、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
リース契約と賃貸借契約の違い
| 比較項目 | リース契約 | 賃貸借契約 |
|---|---|---|
| 契約の目的 | 設備投資の代替(金融取引) | モノや空間の利用 |
| 対象物件 | 借主が指定した新品の物件 | 貸主が所有する物件(中古品も含む) |
| 所有権 | リース会社(契約終了後、移転の場合あり) | 貸主(移転しない) |
| 契約期間 | 中〜長期(例:3年〜7年)で固定的 | 短期〜長期まで様々で比較的柔軟 |
| 中途解約 | 原則不可(高額な違約金が発生) | 原則可能(予告期間が必要) |
| 修繕義務 | 借主(ユーザー) | 原則として貸主 |
| 会計処理 | 資産計上(ファイナンス・リース)または費用計上 | 費用計上 |
契約の目的の違い
リースは「設備投資の代替」という金融取引の色合いが濃く、賃貸借は「モノや空間を利用すること」そのものを目的とします。
この目的の違いが、他のすべての違いの根源となっています。リースは実質的に「分割払いで資産を購入する」のに近い一方、賃貸借は純粋な「レンタルサービス」です。
- リース契約:企業が多額の初期投資をせずに最新の機械や設備を導入するための手段です。リース会社が代わりに物件を購入し、その購入代金と金利・手数料をリース料として分割で回収する、という金融的な側面を持ちます。
- 賃貸借契約:オフィスの賃貸やレンタカーのように、特定の期間、そのモノや空間の機能(使用収益)を得ることが目的です。金融取引の要素はありません。
対象物件の違い
リースは借主が希望する特定の物件をリース会社が購入して貸与するのに対し、賃貸借は貸主がすでに所有している物件の中から選びます。
このため、物件選択の自由度はリースの方が比較的高いと言えます。
- リース契約:借主はメーカーや機種、スペックなどを自由に選定でき、リース会社はその指定に基づいて市場から調達します。そのため、最新設備を導入したいというニーズに応えやすくなります。ただし、新品に限らず中古リースも利用可能です。
- 賃貸借契約:借主は、貸主が所有・管理している物件のラインナップ(在庫)の中から選ぶ必要があります。そのため、必ずしも希望通りのスペックの物件が見つかるとは限りません。
所有権の違い
契約期間中の所有権は、リースでは「リース会社」に、賃貸借では「貸主」にあります。ただし、リースの一部契約では契約満了後に所有権が借主へ移転する場合があります。
所有権の所在は、固定資産税の納税義務者や、資産としての計上の可否に関わる重要なポイントです。
- リース契約:所有権はリース会社にありますが、固定資産税や保険料の負担者は契約条件や税務上の判断によって異なり、借主が負担するケースが多くあります。契約の種類によっては、契約終了時に物件を買い取ったり、無償で譲渡されたりして、所有権が借手に移ることがあります。
- 賃貸借契約:契約期間の開始から終了まで、所有権は一貫して貸主にあります。借主に所有権が移転することは一切ありません。
契約期間の違い
リースは中〜長期の固定的な契約が基本ですが、賃貸借は数時間単位の短期から数年単位の長期まで、柔軟な期間設定が可能です。
リースは物件の購入代金を分割で回収するビジネスモデルのため、契約期間は物件の法定耐用年数を基準に設定され、短縮することは困難です。
- リース契約:物件の法定耐用年数をもとに、3年、5年、7年といった中〜長期の契約を結びます。この期間は、リース会社が投資を回収するために必要な期間であり、変更はできません。
- 賃貸借契約:「1日だけ」「1ヶ月間」「2年間」など、当事者間の合意によって期間を自由に設定できます。契約の更新も比較的容易です。
中途解約の違い
リース契約は原則として中途解約ができませんが、賃貸借契約は契約内容や適用法令に応じて解約が可能です。
- リース契約:中途解約不能が基本原則です。リース会社は借主のために物件を購入しているため、期間満了前に解約されると投資を回収できません。万が一解約する場合は、残りのリース料総額に相当する高額な違約金(規定損害金)を一括で支払う必要があります。
- 賃貸借契約:建物賃貸借では借地借家法に基づく制限がある一方、動産賃貸借では民法に基づき比較的柔軟に解約が可能です。
修繕義務の違い
リース物件の修繕義務は契約形態によって異なり、賃貸借物件では原則として貸主が修繕を負担します。故障時の費用負担や対応の責任者が異なるため、契約内容をよく確認することが必要です。
- リース契約:借主は、自らが選定した物件を善良な管理者として維持・管理する義務(ユーザー保守義務)を負います。そのため、故障時の修理費用や定期的なメンテナンス費用はすべて借主の負担となります。通常、別途メーカーなどと保守契約を結びます。
- 賃貸借契約:貸主は、借主がその物件を問題なく使用できる状態に保つ義務を負っています(民法第606条)。経年劣化による故障や自然発生的な不具合の修繕は、貸主の責任と費用で行われます。ただし、借主の過失による破損は借主の負担です。
会計処理の違い
会計処理はリース契約と賃貸借契約の大きな相違点の一つです。
リース契約と賃貸借契約のメリット・デメリットを比較
自社の状況や対象物件の性質によって、どちらの契約形態が最適かは異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、総合的に判断することが重要です。
リース契約のメリットとデメリット
リースの最大のメリットは初期投資を抑えつつ最新設備を導入できる点ですが、総支払額が割高になり、中途解約ができない点がデメリットです。
- 初期投資の抑制:多額の購入資金を用意する必要がなく、月々の支払いで設備を導入できるため、資金繰りを圧迫しません。
- 費用の平準化:固定資産税や保険加入などはリース会社が対応する場合があります。ただし、ファイナンス・リースでは資産計上と減価償却は借主が行う必要があります。
- 技術革新への対応:陳腐化の早いIT機器などを、契約期間満了と同時に最新機種へ入れ替えやすいです。
- 総支払額の割高感:リース料には物件価格に加え、金利や手数料などが含まれるため、購入する場合に比べて総支払額は高くなります。
- 中途解約が不可能:原則として契約期間中の解約ができないため、事業計画の変更などに柔軟に対応しにくいです。
- 所有権がない:契約終了後は、基本的に物件を返却または再リースする必要があり、自社の資産にはなりません(所有権移転オプションを除く)。
賃貸借契約のメリットとデメリット
賃貸借のメリットは一定の柔軟性がある点ですが、契約形態によって制約があり、必ずしも自由度が高いとは限りません。
- 契約の柔軟性:必要な期間だけ借りることができ、比較的容易に解約できるため、短期的なプロジェクトや需要の変動に対応しやすいです。
- 修繕義務の原則は貸主:故障時の修繕費用は貸主負担となるため、借主にとって安心感があります。ただし、契約で修繕義務を借主に転嫁する場合もあります。
- シンプルな会計処理:支払った賃料を経費として計上するだけなので、経理の手間がかかりません。
- 物件の選択肢が限定的:貸主が所有する在庫の中から選ぶため、希望通りの仕様や新品の物件が見つかるとは限りません。
- 長期利用では割高になる可能性:短期利用を前提とした料金設定の場合、長期間借り続けると購入やリースよりもコストが高くなることがあります。
リース契約と賃貸借契約のどちらを選ぶべきかの判断基準
自社の事業計画、財務状況、そして対象物件の特性を考慮して、最適な契約形態を選択することが重要です。
リース契約が適しているケース
- 長期間(3年以上)にわたり、特定の最新設備を使用したい場合:技術革新の早いPCや複合機、高価な工作機械などを、初期費用を抑えて計画的に導入・更新したい企業に適しています。
- 月々の支払いコストを平準化し、予算管理を簡素化したい場合:毎月の支払額が固定されるため、資金計画が立てやすくなります。
- 固定資産の管理や税務申告などの事務負担を軽減したい場合:煩雑な管理業務をアウトソースしたいと考える企業にとってメリットがあります。
賃貸借契約が適しているケース
- 短期間だけ特定の機材やスペースが必要な場合:建設プロジェクトで使う重機、イベント用の機材、繁忙期の臨時オフィスなど、一時的な利用に最適です。
- 需要の変動が激しく、将来的に不要になる可能性がある場合:中途解約のしやすさがリスクヘッジになります。
- メンテナンスや修繕の手間・コストを自社で負いたくない場合:故障時の対応を貸主に任せたい場合に適しています。
事業計画と財務状況に合わせて最適な契約を
本記事では、リースと賃貸借の違いを7つの比較ポイントやメリット・デメリット、ケース別の選び方など、多角的に解説しました。
リースと賃貸借には、それぞれ特徴的なメリット・デメリットがあり、自社の事業計画や財務状況に応じて最適な契約形態を選ぶことが重要です。自社の事業計画、財務状況、対象物件の利用期間や特性などを総合的に考慮し、最も合理的で経済的な選択を行うことが、健全な企業経営につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電話加入権は償却できる?会計処理や仕訳の解説
固定電話を使用している場合に発生するのが、電話加入権です。電話加入権は、簡単にいうと、電話回線を引くための負担金のことです。では、電話加入権が発生した場合の会計処理はどうなるのでしょうか。 ここでは、電話加入権の会計処理や具体的な仕訳、法人…
詳しくみる新車・中古車を経費に!耐用年数と減価償却費計算を解説
新車や中古車を購入した場合は、法定耐用年数に応じて減価償却する必要があります。本記事では、車両の減価償却費の計算方法や仕訳例を詳しく解説します。法定耐用年数についても解説しているので、併せてチェックしていきましょう。 新車・中古車は減価償却…
詳しくみる固定資産の減損に係る会計基準とは?金融庁の最新情報をわかりやすく解説
固定資産の減損に係る会計基準とは、固定資産の減損損失を計上するときのプロセスを定めた会計基準のことです。財務諸表の正確性を保つため、基準が設けられています。対象となるのは、有形固定資産、無形固定資産です。 本記事では、固定資産の減損に係る基…
詳しくみる圧縮記帳を積立金方式にした際の税効果会計とは?仕訳方法を解説
「圧縮記帳」は、資金繰り改善のため、税負担額を繰り延べる制度です。国や地方公共団体から交付される補助金や保険金は、設備投資や資産の再取得に役立つでしょう。 しかし、補助金・助成金による収益は課税対象です。税負担増加による資金繰りの圧迫を防ぐ…
詳しくみる保険金の圧縮記帳の仕方とは?圧縮するメリット・デメリットや注意すべきポイントを解説
車両事故や機械の故障により保険金を受け取った際は、益金となるため税負担の増加に注意が必要です。税負担が増えると、資金繰りが悪化して経営に支障をおよぼす可能性があります。 保険金を受け取った年度に検討したいのが圧縮記帳です。圧縮記帳をすれば、…
詳しくみる中古トラックの減価償却はどうする?耐用年数や仕訳を解説
中古トラックを購入したときは、法定耐用年数に従って減価償却します。国税庁で紹介されている法定耐用年数と中古資産の計算方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。また、実際に減価償却する場合の仕訳例も紹介します。ぜひ正しい会計処理に活用してく…
詳しくみる