- 作成日 : 2024年12月5日
ISO9001に基づいた文書管理を行うためには?文書管理のポイントを解説
文書管理とは、社内にあるさまざまな書類・データを一元管理し、これらを必要なときに活用できる状態にすることです。文書管理を行うことで、業務効率化や書類の紛失リスクの軽減、コンプライアンス強化など、さまざまなメリットを得られます。適切な文書管理は「ISO9001」でも重視されており、ISO9001に基づいた文書管理を行うことで、文書管理の質をより高めることができるでしょう。
本記事では、ISO9001に基づいた文書管理を行うメリットや、文書管理のポイントについて詳しく解説します。
目次
ISO9001に基づいた文書管理とは
はじめに、ISO9001の概要と、文書管理に関する要求事項について解説します。
ISO9001とは
そもそもISO(International Organization for Standardization=国際標準化機構)とは、国際的な取引をスムーズに実施するために必要な標準規格のことです。
ISOは国際規格となっていますが、国内の取引のみ行っている企業に対しても適用されます。「ISO9001」はISOで規定されている規格の一つです。
ISO9001は「品質マネジメントシステム」と呼ばれることもあり、製品・サービスに関する品質を改善して顧客満足度を高めることを目的としています。
企業がISO9001を取得すれば、製品・サービスの品質管理の面で国際的な基準を満たしている企業であることを対外的に証明できます。周囲からの信用力アップにもつながり、企業イメージの向上や、組織の活性化などにつながるでしょう。このISO9001を取得するための評価ポイントの一つとなっているのが「文書管理」です。
文書管理に関する要求事項
ISO9001の「7.5.3 文書化した情報の管理」では、企業が行うべき文書管理について細かく記載されています。記載されている主な内容は以下の通りです。
- 必要なときに必要な文書をすぐに入手できる状態にする
- 文書化した情報が十分に保護されている
- 文書は常に読みやすい状態を保つ
- 検索性の高い保管方法を選択する
企業には、請求書や注文書、契約書など、業務で活用する文書が数多く存在します。また、紙や電子データなど保管方法もさまざまです。
ISO9001の要件に基づいた文書管理を行えば、企業にあるさまざまな文書を安全かつ社員が利用しやすい状態で保管・管理できるようになります。
ISO9001に基づいた文書管理を行うメリット
ISO9001に基づいた文書管理を行うことで、以下のメリットを得られます。
- 業務を効率的に進められるようになる
- 高品質な製品・サービスを提供できる企業として周囲から認知される
- 部門を横断したコミュニケーションを促進できる
それぞれのメリットについて、下記で詳しく解説します。
業務を効率的に進められるようになる
ISO9001に基づいて適切な文書管理を実施できれば、業務で必要な文書がすぐ手に入るようになり、社員一人ひとりが業務を効率的に進められるようになります。組織全体の業務時間が大幅に短縮されることで、社員の負担軽減にもつながるでしょう。
また、社員が持っている知識・経験・ノウハウなどを文書として形に残しておけば、新入社員が入社したときにこれらを活用して適切な教育を実施できます。さらに業務の属人化も防げるでしょう。
ほかにも、文書管理が適切に行われていれば、顧客からの問い合わせがあったり、何らかのトラブルが発生したりした際にも、すぐに顧客が求めている資料を提供できます。文書管理によって、業務の品質向上や顧客の信頼性向上などの効果も期待できるのです。
高品質な製品・サービスを提供できる企業として周囲から認知される
ISO9001を取得すれば、高品質な製品・サービスを提供できる体制が整っていると評価され、周囲からの信頼度の向上につながります。
また、社員の入れ替わりなどがあったときにおいても、業務フローやマニュアルを文書化して管理しておくことで、適切な引き継ぎを行えるようになります。常に顧客に対して高品質の製品・サービスを提供できるようになるため、顧客からの信頼を得続けることが可能になるのです。
部門を横断したコミュニケーションを促進できる
文書管理を適切に行うことによって、部門間で文書を連携したり、情報を共有したりといった取り組みも実施できます。部門間のコミュニケーションが促進されることで、協力し合える体制を構築することが可能です。
部門間の協力体制が構築できれば、企業全体の生産性向上につながるでしょう。
ISO9001要求事項を満たす文書管理のポイント
ISO9001要求事項を満たす文書管理を行うには、以下の2つから始める必要があります。
①文書管理規程を定める
②文書管理を行う方法を決める
それぞれのポイントについて、下記で詳しく解説します。
①文書管理規程を定める
文書管理規程とは、適切な文書管理を行うためのルールをまとめたものです。
自社で保管・管理している文書の取り扱いルールについて定め、社内で周知・遵守することで適切な文書管理を行えます。
文書管理規程を作成する際には、ISO9001に求められる文書管理の要求事項を参考にするのがおすすめです。例えば、以下の項目に関するルールを具体的に規定しましょう。
- 形式
- 付与番号
- 作成部署
- 承認者・保管場所
- 保護方法
- 保管期間
- 更新頻度
- 廃棄方法
ただし、文書の保管期間に関しては業界によってルールが異なります。そのため、企業の実情に沿ったルールを定める必要があります。
②文書管理を行う方法を決める
社内で文書管理を行う方法としてよく活用されているのが「Excel」「文書管理システム」です。
Excelを管理台帳として活用する場合、管理台帳のフォーマットがあらかじめ公開されているため、手間をかけずに始められるというメリットがあります。
しかし、社員・チームごとに閲覧や操作に関する細かな制限を設けるのが難しく、セキュリティレベルが低い点がデメリットです。
文書管理システムの場合、ファイル名や文書の中身などを効率的に検索できるのが特徴であり、文書を探す手間を大幅に削減できる点がメリットになります。
ただし、システムを導入する際の初期費用がかかり、社員に対してツールの使い方などを教育するコストが発生するというデメリットもあります。
ISO9001の要件に基づいた文書管理を行いたい場合、検索性とセキュリティに優れた文書管理システムの導入がおすすめです。
また、社員・チームごとに閲覧・操作などの権限を柔軟に付与したり、ユーザー別・文書別などの細かな制限をかけられたりなど、高いセキュリティ機能を搭載しているかも事前に確認しておきましょう。
まとめ
適切な文書管理を行うためには、まずは文書管理規程の作成から行う必要があります。文書管理規程を作成する際は、ISO9001の要件事項を参考にするのがおすすめです。
ISO9001に基づいた文書管理を行えば、業務効率化や顧客満足度アップ、生産性向上などのさまざまなメリットを得られます。検索性とセキュリティに優れた文書管理システムを利用すれば、高いレベルの文書管理を実現できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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