- 更新日 : 2024年8月8日
デポジット金の仕訳に使う勘定科目とは
業務上の移動にはSuicaなどの交通系ICカードを使う企業も多いでしょう。ただし、利用し始める際には、デポジットとしてチャージされないお金を預けなくてはなりません。
本記事では、デポジット金を預け金という勘定科目を用いてどのように仕訳するか、また預け金と似た性質の取引の具体例を解説します。
デポジット金の仕訳に使える勘定科目
デポジット金は預り金または保証金とも呼ばれます。例えば、交通系ICカードを発行するとき、チャージする金額とは別に数百円程度支払わなくてはなりませんが、このお金はサービスの利用のため、解約するまで預けたまま保管されるお金です。このお金がデポジット金に該当します。
デポジット金は、サービスの提供者と利用者の間で何らかのトラブルが発生した場合に、料金の未払いによる損失を防ぐための仕組みです。
日本ではあまりなじみはありませんが、海外ではさまざまなサービスへ取り入れられています。レンタカーやホテルなどの利用の際、デポジット金を拒否するとサービスを受けられなくなることもあるほどです。
デポジット金の仕訳では、資産勘定に属する預け金という勘定科目を用います。
・交通系ICカードの利用開始に伴い、デポジット金として500円を預け入れた
・交通系ICカードの利用を終了するため、デポジット金500円の返還を受けた
預け入れているデポジット金の返還を受けるときは、カードの返還や名義人であることを証明するために、身分証明書の提示を求められる場合があります。
預け金とは
預け金は、預けた金額がそのまま戻ってくる性質を持つお金です。デポジット金の他にも、預け金と同じような仕訳が必要なケースは他にもあります。
預け金の定義など、預け金に関する詳しい内容は下記記事をご覧ください。
しかし、預けたお金の場合でも、すべて同じ勘定科目「預け金」を用いるわけではありません。勘定科目が異なる理由は、預けるお金の性質によって、個別に取り扱う必要があるためです。
- 委託した資産運用資金:資産運用を委託した場合の資金
- 保証金:不動産の賃貸や取引において発生する可能性のある債務を担保するお金
- 担保:取引の相手に不利益を与えないため、発生した不利益の補償を約束するお金
1つずつ実際の仕訳の例を見ていきましょう。
デポジット・委託した資産運用資金は預け金勘定
交通系ICカードや委託した資産運用資金を仕訳するとき用いる勘定科目は預け金です。
・信託会社に資産運用資金と2して300,000円を委託した
資産運用では、運用手数料が発生する場合もありますが、これは預け金とは別に費用として計上します。預け金は、後で全額が戻ってくる場合にのみ、用いることが可能な勘定科目です。運用手数料は費用に該当するため、別の勘定科目として仕訳しましょう。
保証金は差入保証金勘定
事業として不動産を賃貸するときや、取引相手との正常な取引を約束するための保証金も、預け金と同様の性質を持つお金です。ただし、仕訳をするときは、差入保証金という勘定科目を用います。
ただし、名称が保証金であっても、全額は戻らないこともあるため注意が必要です。たとえば、不動産の賃貸契約における保証金は、一定の割合が差し引かれて変換される場合があります。このような場合は、保証金全額を差入保証金として仕訳はできません。
保証金は、フランチャイズ契約などでもよく見られます。保証金を仕訳するときは、契約書を確認し適切な金額を把握することが大切です。
・不動産賃貸契約の保証金として300,000円を預け入れた
担保は担保差入金勘定
有価証券の信用取引をする場合、証券会社に預ける担保金は、担保差入金勘定を用います。
・有価証券の信用取引をするため担保300,000円を差し入れた
デポジット金は決算ごとに内訳を確認しよう
デポジット金は資産勘定にあたる預け金を用いて、帳簿において適切に記録する必要があります。デポジット金を利用しているサービスが多い場合、サービスごとのデポジット金額の把握は難しくなります。
委託された資産運用資金や保証金、担保にも預り金と似た性質がありますが、それぞれ仕訳には異なる処理が必要なため個別に把握しておくことが大切です。
いざというとき慌てずに済むよう、少なくとも決算では内訳を確認し、返還漏れなどないよう適切な処理に努めましょう。
よくある質問
デポジット金の仕訳はどうやる?
資産勘定である預け金として仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
預け金とは?
預け金とは契約や取引などのために、一時的に外部へ預けるお金です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
当座資産の解説と当座比率の求め方や流動資産との違い
当座資産とは、会社の貸借対照表から「当座比率」を算出する際に必要です。当座比率を求めることで、企業の短期債務の支払能力を示す指標にすることができます。つまり、企業の安全性分析のために利用できる指標となりえるのです。 そんな重要度の高い当座資…
詳しくみる生命保険料の勘定科目は?個人事業主と法人で異なる?保険金や解約返戻金についても解説!
生命保険とは、人の生死や病気のリスクに関わる保険を指します。生命保険は個人で契約できるほか、法人も契約することができます。では、個人事業主や法人が生命保険料を支払った場合や保険金を受け取った場合は、どのように処理するべきなのでしょうか。この…
詳しくみる個人事業主が国民年金を支払った際の勘定科目は?仕訳方法を解説
個人事業主の場合、国民年金の保険料を経費に計上はできませんが、社会保険料控除の対象となりますので、所得から控除はできます。また、国民年金保険料を事業用口座から支払っている場合、その際に使用する勘定科目は「事業主貸」です。 今回は個人事業主が…
詳しくみる入金伝票とは?書き方や仕訳方法をわかりやすく解説
経理経験がある人でも、初めて入金伝票を手にすると戸惑うことがあるかもしれません。この記事では、初めて入金伝票を取り扱う人向けに入金伝票の書き方や仕訳方法を解説します。入金伝票は仕訳業務の効率化のために有効な方法であるとともに、取扱方法がとて…
詳しくみる本や書籍を経費にするときの仕訳に使う勘定科目まとめ
書籍を購入したときは、事業の用途に使用する場合であれば経費として計上できます。例えば、従業員が事業にかかわる知識を得るために書籍を購入した場合であれば、「新聞図書費」の勘定科目を用いて経費計上し、適切に仕訳をすることが可能です。その他にも、…
詳しくみる引当金の会計処理はどう考えればいいのか?
「引当金」についてご存知でしょうか? 引当金とは、将来に発生するであろう特定の費用又は損失に備えてあらかじめ準備しておく見積金額のことをいいます。 なお、発生する可能性が低い場合は、その金額を引当金として計上できません。会計上は、役員引当金…
詳しくみる