- 更新日 : 2025年5月30日
固定長期適合率とは?計算式と目安、改善方法まで
固定長期適合率は、固定資産と自己資本と固定負債の合計額との割合を示す数値です。固定資産が安定した資金で賄えているかを表し、会社の財務状況が安定しているかどうかの判断に用いることができます。
固定長期適合率は、会社を経営していく上で大切な指標となり、良好の数値となっていない場合は改善が必要です。この記事では固定長期適合率を求める公式、目安となる数値について説明します。業種ごとの平均値や同業他社と比較して、会社の財務状況を把握できるようになりましょう。
目次
固定長期適合率とは
固定長期適合率とは、自己資本と固定負債の合計額に対して、固定資産がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。これは、会社の収益を生み出す固定資産が、安定した長期資金によってどれだけ賄われているかを示しており、財務の健全性を測る上で重要な指標の一つです。一般に、固定長期適合率は低い方が望ましく、高い場合は資本構成の見直しなどによる改善が求められます。
固定長期適合率に似た指標として「固定比率」があります。固定比率は、固定資産が自己資本に対してどのくらいの割合かを示す指標です。両者の違いは、分母に固定負債を含むか否かという点にあります。固定長期適合率は自己資本に固定負債を加えたより大きな数値を分母とするため、通常、固定比率よりも数値は小さくなります。財務状況を評価する際には、この違いを理解した上で使い分けることが重要です。
固定長期適合率の計算方法
固定長期適合率の計算式は以下のとおりです。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
- 固定資産800万円、自己資本500万円、固定負債300万円の場合
8,000,000÷(5,000,000+3,000,000)×100=100
この場合の固定長期適合率は100%になります。
- 固定資産800万円、自己資本440万円、固定負債200万円の場合
8,000,000÷(4,400,000+2,000,000)×100=125
この場合の固定長期適合率は125%になります。
- 固定資産800万円、自己資本600万円、固定負債400万円の場合
8,000,000÷(6,000,000+4,000,000)×100=80
この場合の固定長期適合率は80%になります。
固定長期適合率の目安
固定長期適合率は、100%を基準として、会社の財務状況が健全かどうかを判断する際に用いられます。「固定資産」と「自己資本と固定負債の合計額」が同じである場合、固定長期適合率は100%となります。
固定長期適合率が100%未満であれば、固定資産が自己資本と固定負債の合計額以下に収まっていることを意味し、健全な財務状況と判断されます。
一方で、固定長期適合率が100%を超えると、長期的な安定資金では固定資産を十分に賄えていない状態を示します。一般的に120%程度までは要注意、150%を超えると財務の安全性に問題があるとみなされることがあります。
固定長期適合率が高い場合の改善方法
固定長期適合率は計算式のとおり固定資産、自己資本、固定負債を増減させることによって、改善が図れます。「固定資産の減少」「自己資本と固定負債の増加」が固定長期適合率を低下させることにつながりますが、借入である固定負債を増やすことは、かえって会社の財務状況に悪影響を与えます。自己資本の増加と固定資産の減少に結びつく方法には、以下のようなものがあります。
遊休資産の売却
使用していない、遊んでいる状態の資産は、会社にとって不必要な存在です。固定長期適合率を悪化させているだけでなく管理や手入れ、固定資産税の支払いが必要となるなどのデメリットも有しています。整理して売却することで、固定長期適合率を低くすることができます。
今後の設備投資の見直し
固定長期適合率が高いと言うことは、自己資本と固定負債に対して固定資産を多く保有していることを意味しています。計画している設備投資がある場合には必要性や金額の妥当性を検討し直すことが必要です。
過去に行った設備投資の効率的な回収
すでにある設備の有効な活用は、利益向上につながります。可処分利益が増えて自己資本とすることができ、固定長期適合率を低くする効果が期待できます。
固定長期適合率を活用して経営の健全化を
会社の財務状況を平均や他者との比較によって把握する際には、同業種の平均、同業他社の固定長期適合率と比べる必要があります。会社の安定性を示す固定長期適合率は会社を経営していく上で大切な指標です。100%を目安として、100%よりも高い場合は改善が必要になります。意味や求め方をしっかりと理解し、計算できるようになりましょう。
また固定長期適合率は、業種ごとに差があるという特徴を持っていることも理解しましょう。業種ごとの平均値や同業他社と比較して自社の財務状況を把握し、経営の健全化を図って下さい。
よくある質問
固定長期適合率とは?
自己資本と固定負債の合計額に対して、固定資産がどのぐらいの割合になっているかを示す数値です。詳しくはこちらをご覧ください。
固定長期適合率の目安は?
固定長期適合率が100%未満だと健全な財務状況で、100%を超える場合、120%程度までは要注意、150%程度になると危険と判断されます。詳しくはこちらをご覧ください。
固定長期適合率が高い場合の改善方法は?
固定資産、自己資本、固定負債を増減させること、具体的には遊休資産の売却、今後の設備投資の見直し、過去に行った設備投資の効率的な回収によって、改善が図れます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
売掛金の回収不能を防ぐには?回収方法と仕訳も紹介
売掛金を回収不能にしないためには、すぐに連絡して支払いを催促することが大切です。相殺や分割払いの提案をする方法もあります。回収不能を防ぐためには、与信管理も重要です。 本記事では、売掛金を回収不能にしない方法や回収が難しいときの具体的な対…
詳しくみる電子記録債権とは?仕訳からでんさいネットの利用方法までわかりやすく解説
電子記録債権とは、従来の手形や売掛金に代わる電子化されたデジタルの金銭債権です。債権の発生や譲渡がオンラインで行えるため、企業間決済が効率化するとともに、円滑な資金調達や回収リスクの低減を通じた資金繰り改善にも役立ちます。 本記事では、電子…
詳しくみるIFRSにおけるファクタリングの会計処理・仕訳は?売掛金・借入金に要注意
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうサービスのことです。ファクタリングの会計処理は、日本基準とIFRSで異なります。IFRSのファクタリングの扱いや仕訳、関連する項目として、サプライヤー・ファイナンスの一種であ…
詳しくみる約束手形の裏書とは?書き方や譲渡するメリット・デメリット、仕訳などをわかりやすく解説
約束手形は商取引で多く利用される信用取引の代表的な手段です。その中でも「裏書」は、手形を他者に譲渡するための重要な手続きであり、資金流動性や企業間信用の強化に大きく関わります。 この記事では、約束手形の裏書の基本的な内容から、メリット・デメ…
詳しくみる請求業務を効率化する方法とは?業務の流れや課題を理解しよう!
請求業務には、請求書発行、送付、入金消込、場合によっては督促などの多くの業務が含まれます。業務の流れを紹介し、どのような課題があるかについてまとめました。請求業務の課題を解決する方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 請求業務の内容 …
詳しくみる請求代行サービスの手数料と選び方のポイント
請求代行には様々なサービスがあるため、導入を検討する際にはサービス内容と手数料を比べる必要があります。今回の記事では、請求代行サービスを比較する際にチェックしたいポイントを紹介します。 請求代行のサービス内容とは? まず、請求代行のサービス…
詳しくみる