- 更新日 : 2024年8月8日
固定長期適合率とは?計算式と目安、改善方法まで
固定長期適合率は、固定資産と自己資本と固定負債の合計額との割合を示す数値です。固定資産が安定した資金で賄えているかを表し、会社の財務状況が安定しているかどうかの判断に用いることができます。
固定長期適合率は、会社を経営していく上で大切な指標となり、良好の数値となっていない場合は改善が必要です。この記事では固定長期適合率を求める公式、目安となる数値について説明します。業種ごとの平均値や同業他社と比較して、会社の財務状況を把握できるようになりましょう。
目次
固定長期適合率とは
固定長期適合率とは、自己資本と固定負債の合計額に対して、固定資産がどのぐらいの割合になっているかを示す数値です。会社の収益を生み出す固定資産が安定した資金で賄えているかどうかを表し、財務条項の把握に用いられます。固定長期適合率は低い方が好ましく、高い場合は改善に努める必要があります。
固定長期適合率に似た指標に固定比率があります。固定比率は固定資産と自己資本との割合を示し、固定長期適合率との違いは固定負債を計算に用いるか・用いないかという点です。固定長期適合率は固定負債の分だけ大きい数で固定資産を割ることになるため、固定長期適合率の方が固定比率よりも数値は大きく計算されます。会社の財務状況把握に用いる際は、この違いに注意する必要があります。
固定長期適合率の計算方法
固定長期適合率の計算式は以下のとおりです。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
- 固定資産800万円、自己資本500万円、固定負債300万円の場合
- 固定資産800万円、自己資本440万円、固定負債200万円の場合
- 固定資産800万円、自己資本600万円、固定負債400万円の場合
8,000,000÷(5,000,000+3,000,000)×100=100
この場合の固定長期適合率は100%になります。
8,000,000÷(4,400,000+2,000,000)×100=125
この場合の固定長期適合率は125%になります。
8,000,000÷(6,000,000+4,000,000)×100=80
この場合の固定長期適合率は80%になります。
固定長期適合率の目安
固定長期適合率は、100%を基準に会社の財務状況が健全か健全でないかの判断が行われます。固定資産と自己資本と固定負債の合計額が同じである場合は、固定長期適合率が100%と計算されます。固定長期適合率が100%未満だと保有している固定資産は自己資本と固定負債の合計額以下であることになり、健全な財務状況だと判断されます。
固定長期適合率が100%を超える場合、120%程度までは要注意、150%程度になると危険と判断されます。
固定長期適合率が高い場合の改善方法
固定長期適合率は計算式のとおり固定資産、自己資本、固定負債を増減させることによって、改善が図れます。「固定資産の減少」「自己資本と固定負債の増加」が固定長期適合率を低下させることにつながりますが、借入である固定負債を増やすことは、かえって会社の財務状況に悪影響を与えます。自己資本の増加と固定資産の減少に結びつく方法には、以下のようなものがあります。
遊休資産の売却
使用していない、遊んでいる状態の資産は、会社にとって不必要な存在です。固定長期適合率を悪化させているだけでなく管理や手入れ、固定資産税の支払いが必要となるなどのデメリットも有しています。整理して売却することで、固定長期適合率を低くすることができます。
今後の設備投資の見直し
固定長期適合率が高いと言うことは、自己資本と固定負債に対して固定資産を多く保有していることを意味しています。計画している設備投資がある場合には必要性や金額の妥当性を検討し直すことが必要です。
過去に行った設備投資の効率的な回収
すでにある設備の有効な活用は、利益向上につながります。可処分利益が増えて自己資本とすることができ、固定長期適合率を低くする効果が期待できます。
固定長期適合率を活用して経営の健全化を
会社の財務状況を平均や他者との比較によって把握する際には、同業種の平均、同業他社の固定長期適合率と比べる必要があります。会社の安定性を示す固定長期適合率は会社を経営していく上で大切な指標です。100%を目安として、100%よりも高い場合は改善が必要になります。意味や求め方をしっかりと理解し、計算できるようになりましょう。
また固定長期適合率は、業種ごとに差があるという特徴を持っていることも理解しましょう。業種ごとの平均値や同業他社と比較して自社の財務状況を把握し、経営の健全化を図って下さい。
よくある質問
固定長期適合率とは?
自己資本と固定負債の合計額に対して、固定資産がどのぐらいの割合になっているかを示す数値です。詳しくはこちらをご覧ください。
固定長期適合率の目安は?
固定長期適合率が100%未満だと健全な財務状況で、100%を超える場合、120%程度までは要注意、150%程度になると危険と判断されます。詳しくはこちらをご覧ください。
固定長期適合率が高い場合の改善方法は?
固定資産、自己資本、固定負債を増減させること、具体的には遊休資産の売却、今後の設備投資の見直し、過去に行った設備投資の効率的な回収によって、改善が図れます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
資金繰りは経営の必須項目
経営にかかわる数字のうち、経営者はどうしても売上高や利益に目が向きますが、資金繰りに目を向けることも重要です。資金繰りがおろそかになると、利益は出ているのに資金が不足して、事業の存続が危ぶまれることもあります。 これから、なぜ利益は出ている…
詳しくみる固定負債とは?流動負債との違いや貸借対照表での勘定科目の具体例を紹介
固定負債の「負債」という文字から借金をイメージする方も多いかもしれません。しかし、会計上の負債は借金だけでなく、未払金や買掛金など返済義務のあるもの全てを含んでいます。 貸借対照表上ではこの負債を「固定負債」と「流動負債」に分けて扱うため、…
詳しくみる売掛金の消し込みとは?消込漏れの原因や課題も解説
ビジネスの現場では、代金は一旦掛取引とされ、入金は複数の取引先から異なる条件で行われることが一般的です。よって、どの入金がどの売掛金に対するものか、消込によって管理する必要が出てきます。この記事では、まず入金消込の意味や相殺との違いを分かり…
詳しくみる手形とは?小切手との違いや種類、取引の流れを解説
手形とは、一定期間後に現金化できる証書のことです。現金化できる証書としては小切手もありますが、小切手はすぐに現金化できる点が異なります。手形の種類や取引の流れ、メリット・デメリット、使用する際の注意点についてまとめました。また、政府が実施し…
詳しくみる原価管理は重要? 原価管理の目的と経営改善への活用方法とは
これまでは、製造業や飲食店といった特定の業種で行われてきた原価管理ですが、業種にかかわらず原価管理を活用する企業が増えてきました。 そこで今回は、原価管理を行うことの目的やその活用方法などについて紹介していきます。 原価管理はなぜ必要? そ…
詳しくみる仕入れ・売上の管理をエクセルで行いたい!メリットデメリットや手順を解説
売上や仕入の管理をするのにすぐ実行できる手段として、エクセルが挙げられます。それほどデータ件数が多くない場合、PCに入っているエクセルで売上や仕入の管理ができないかと考え、チャレンジした人も多いのではないでしょうか? この記事では、売上・仕…
詳しくみる