- 更新日 : 2024年8月8日
運転代行料を経費計上する際の勘定科目について解説
社内外の懇親会後の帰宅手段として運転代行サービスを利用する方もいるでしょう。車も送り届けてもらえるので、車で移動する機会が多い方にとってはタクシー以上に便利な移動手段です。
運転代行サービスの利用料は経費に算入できます。ただし、会計処理では正しい科目を使用しなくてはいけません。今回は運転代行料の勘定科目や仕訳例について解説します。
運転代行料を経費計上する際の勘定科目
運転代行料とは、運転代行サービス(飲酒などにより運転できないドライバーの代わりに車を運転し、ドライバーとともに所定の場所まで送り届けるサービス)の利用料です。
事業に関わる懇親会への参加後に利用した運転代行サービスの費用は、経費に計上できます。勘定科目としては「旅費交通費」と「交際費」の2つが考えられます。
旅費交通費は業務上の命令で、通常の勤務地以外の場所へ移動するために要した交通費および業務に必要な費用を記帳する項目です。
交際費は法人が得意先や仕入先をはじめ、事業に関係がある者等に対して、接待・供応・慰安・贈答その他これらに類する行為をした場合に使う項目です。
運転代行料について旅費交通費と交際費のどちらを用いて仕訳するかは、接待を行う主体によって異なります。
外部の人間を「自社が接待する」際に要した運転代行料は、交際費として記帳します。逆に自社が「他社から接待を受ける」場合に要した運転代行料は、旅費交通費として記帳するのがルールです。
運転代行料を旅費交通費で仕訳する
取引先が催した懇親会へ参加し、自社社員の帰宅のために運転代行サービスを利用した場合、運転代行料は旅費交通費で仕訳します。
(仕訳例)
取引先の慰労パーティーから帰路に着く際の交通手段として運転代行サービスを活用し、8,000円を支払った
旅費交通費とよく似た勘定科目として交通費がありますが、両者には明確な違いがあります。
本来所属している勤務地や近隣の取引先への移動に要した費用は交通費、それ以外の遠隔地への移動に要した費用は旅費交通費と考えてください。
基本的に旅費交通費は出張の際に使われる勘定項目で、旅費以外にも出張中の交通費も含まれます。運転代行料は出張にかかる費用ではありませんが、勤務地を起点とする移動ではないため旅費交通費として扱います。
運転代行料以外で旅費交通費に計上できる移動費としては、飛行機代、電車・バス・新幹線などの公共交通機関の料金、タクシー代、有料道路通行料金などです。
なお、旅費交通費として計上できる有料道路料金は、遠方への出張に行った場合に限られるので注意しましょう。例えば、通常の勤務地を拠点にした移動(勤務地から近隣の取引先事業所への移動に要した有料道路料金)は、交通費として計上します。
旅費交通費の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
運転代行料を交際費で仕訳する
自社で懇親会を催す場合、利用者が自社・他社であるかを問わず、送迎に要した運転代行サービスの利用料は交際費(接待交際費)として記帳します。
(仕訳例)
自社が開催した慰労パーティーにおいて、取引先の帰宅手段として運転代行サービスを活用し、1万円を支払った
交際費の場合、すべての金額を経費として算入することが認められない場合もあるので注意が必要です(交際費の損金不算入制度)。
租税負担を回避するために必要以上の接待を行う企業が出るおそれがあるため、法人税法では上限額が設けられています。交際費の損金不算入制度の内容は大企業と中小企業(出資金、もしくは期末の資本金額が1億円以下である法人)で異なるのが特徴です。
中小企業の場合、交際費の損金算入の上限額は「年間800万円」、「交際費のうち、接待飲食費の50%」のいずれかを選択できます。大企業の場合「交際費のうち、接待飲食費の50%」が上限です。
また個人事業主の場合、企業とは異なり交際費の上限額は定められていません。取引先との関係性で仕事を得るケースが多く、そもそも交際費に回せる資金が少ないという理由から、際限なく交際費を計上する扱いが認められています。
交際費の詳細について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
運転代行料は接待する側は「交際費」、される側は「旅費交通費」で仕訳しよう
運転代行料の仕訳では「交際費」や「旅費交通費」が使用できます。使い分けで考慮してほしいのは、接待をする主体が自社・外部のどちらかどうかです。
簡単にまとめると、接待する側は「交際費」、接待される側は「旅費交通費」で処理を行ってください。会を主催してもてなす側であれば、自社社員の運転代行料も交際費として処理します。交際費の場合、企業規模に応じた上限額があることに留意しましょう。
あまりに接待の頻度が多い会社だと、上限規制に抵触してしまい、経費に算入できない可能性があります。
よくある質問
運転代行料は経費にできる?
懇親会後に使用した運転代行サービスの料金は、送迎したのが自社・他社社員のどちらの場合でも、経費計上が可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
運転代行料の勘定科目は?
運転代行料の仕訳に使える勘定科目は「旅費交通費」、もしくは「交際費」が考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
リース料の仕訳に使える勘定科目
リース契約を行ったときに支払う費用の額を、リース料といいます。リース料の支払いについては会計処理上2つに区分されます。リース料支払時にはどのような会計処理を行わなければならないのか、リース料支払時の仕訳と勘定科目、賃貸借との違いについて見て…
詳しくみる人件費は経費にできる?節税効果や人件費削減方法・勘定科目も解説!
人件費や労務費として支出した費用は経費計上できるため、課税所得額の減少による法人税の節税につながります。しかし、人件費や経費という単語にはさまざまな解釈や意味が含まれているため、処理方法や扱いについて戸惑ってしまうケースも少なくありません。…
詳しくみる外注費の消費税の扱いとは?個人・法人の仕訳例、給与との違いを解説
業務の一部を外部に委託する「外注」は、多くの企業で活用されています。しかし、外注費にかかる消費税の扱いは、インボイス制度の導入もあったため、注意が必要です。正しく処理しないと、仕入税額控除ができなかったり、税務調査で給与と判断されたりするお…
詳しくみる移動平均法による評価方法をわかりやすく解説
企業の利益を把握するうえで、売上原価管理は無くてはならない業務のひとつです。棚卸資産の原価を正しく把握できていなければ、利益の数字が不正確となり経営判断や戦略に大きな影響を及ぼすでしょう。 その原価計算をより正確なものとする方法に「移動平均…
詳しくみる支払利息とはどんな勘定科目?仕訳まで解説
支払利息とは、ローンや借入金の返済で利子を支払う際の勘定科目です。会計上は経費にカウントされるため、所得税や法人税の節税につながります。もとの借入金は負債に該当し、会計上は支払利息と別個に考えるのが重要なポイントです。 借入金の返済期限が1…
詳しくみるタクシー代を仕訳する場合の勘定科目まとめ
タクシー代は業務上使用したものであれば経費にできますが、状況によって適切な勘定科目が変わるため、取り扱いに注意が必要な費目でもあります。この記事では、仕訳をする際、どの勘定科目を選べばよいのか、実例を紹介しながら解説していきます。個人事業主…
詳しくみる