- 更新日 : 2025年9月9日
ファクタリングで詐欺罪に?違法行為の例や逮捕事例、相談窓口まで徹底解説
ファクタリングは、売掛債権の売却という正当な資金調達の手段ですが、その仕組みを悪用した詐欺も増えています。なかには利用者が知らないうちに違法行為に加担し、トラブルや刑事責任に問われるケースもあります。
とくに架空債権や二重譲渡などは、詐欺罪に直結するため注意が必要です。
本記事では、ファクタリングでよくある詐欺行為、逮捕事例、相談窓口などについて詳しく解説します。
目次
ファクタリング詐欺の背景とは?
ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できる合法的な資金調達の方法です。その仕組みを利用して、利用者自身が詐欺行為に加担してしまうケースも少なくありません。
とくに2社間ファクタリングは、売掛先の同意が不要なため、架空債権や二重譲渡といった不正が行われやすい特徴があります。
悪質なケースの中には詐欺罪として刑事事件に発展し、逮捕された事例も存在します。どういった行為が詐欺にあたるのか、あらかじめ知っておくことが重要です。
ファクタリングで詐欺罪にあたる行為とは
知らないうちに不正行為に加担してしまうことがないよう、詐欺罪にあたる行為を確認しておきましょう。
債権の二重譲渡|同じ売掛債権を複数の業者へ売却
売却済みの売掛債権をほかのファクタリング会社にも持ち込み、同じ債権で現金を二重に得ようとすることです。とくに、売掛先の同意が必要ない2社間ファクタリングで行われやすい傾向です。
最初の契約で債権譲渡登記がされていれば、他社が審査の際に不正を見抜ける可能性が高いですが、登記がなければ契約前に発覚しにくいこともあります。
もっとも売掛金の入金後には複数のファクタリング会社への支払いが必要になり、支払いができなくなった時点で不正が発覚します。これは単なる契約違反にとどまらず、場合によっては詐欺罪や民事上の不法行為として責任を問われる可能性も否定できません。状況によっては横領罪や業務上横領が成立することもあります。
請求書偽造|請求金額の水増しや虚偽請求
請求書を改ざんする行為は、すべて偽造とみなされる可能性が高く危険です。請求書に、本来の金額より多い金額を記載して資金を多く調達するケースや、納品やサービス提供が終わる前に請求書を発行して現金化を急ぐケースが該当します。
さらに請求書の日付や支払期日、売掛先の情報などにおいて、勝手に書き換えることも私文書偽造にあたる可能性が高いです。
たとえ金額を水増ししても、入金される売掛金は本来の金額であるため、支払えなければすぐに発覚し、詐欺罪や私文書偽造罪で刑事責任を問われるリスクがあります。
架空債権|実在しない取引で売掛金を捏造
実在しない取引の請求書や契約書を作成し、架空の売掛債権としてファクタリング会社に売却して資金を得ようとする行為は詐欺罪にあたります。売上金が存在するように見せかけて現金をだまし取る悪質な詐欺行為です。
売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングで起こりやすく、すぐに現金が調達できることから誘惑されやすいのが特徴です。こういったケースでは、知らなかったという言い訳は通用しません。詐欺罪で刑事罰を問われる可能性が高いでしょう。
不良債権の譲渡|回収困難な売掛金を現金化
不良債権とは、納品やサービス提供をした後に、取引先から代金を回収できない可能性が極めて高い売掛債権のことをさします。
取引先が経営不振や倒産で、今後も回収の見込みが極めて低いことを知りながら売却し、ファクタリング会社をだまして資金を得ようとした場合は、詐欺罪に問われる可能性があります。
ファクタリングは、回収可能な売掛債権がある場合のみ利用できる仕組みです。不良債権を無理矢理譲渡しようとすると、ファクタリング会社の審査や入金時に発覚します。売掛金の回収に不安がある場合は、ファクタリング会社に相談しましょう。
粉飾決算|赤字を隠して信用を偽装
粉飾決算とは、経営不振や赤字決算などの場合に、自社の経営状況が良好であると見せかけようと決算書や財務諸表、税務書類などを偽造する行為です。
ファクタリングの審査対象は売掛先の信用力であり、利用者側が赤字でも資金調達自体は可能です。ただし、利用者側の経営状況が手数料に影響するため、手数料が高くなる傾向があります。
自社の信用力を偽って申請すると本来より低い手数料が適用され、本来の契約条件と異なる状況が発生します。虚偽の情報による契約で損害賠償請求を受ける可能性も高いです。
何より粉飾決算は詐欺罪や私文書偽造罪にあたる可能性がある違法行為であるため、このようなリスクがある行為は避けてください。
ファクタリング詐欺をした場合に問われる罪は?
ファクタリング詐欺に関わった場合にどのような罪に問われるのか、詳しく紹介します。
詐欺罪
詐欺罪は刑法246条によると、相手をだまして不当に金品や物品を取得することで、10年以下の懲役が科されることがあります。ファクタリング契約では、架空債権や請求書、契約書の偽造、債権の二重譲渡などが該当します。
詐欺罪は、その不正行為を直接実行していなくても、何らかの形で関わった人も罪に問われる可能性があるため注意が必要です。他社から依頼されてちょっとした手続きに協力しただけなのに、詐欺行為に加担していたとみなされるケースがあります。
少しでも不安がある場合は、弁護士や公的機関に相談するとよいでしょう。
参考:刑法|e-Gov法令検索
横領罪
刑法252条によると「自己の占有する他人のものを横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する」とあります。これは、自己の占有する他人の財物を、不正に自分のものにすることを意味しています。
ファクタリングの場合、利用者が回収した売掛金を本来の所有者であるファクタリング会社に渡さずに、自分の利益のために他の用途に使用することです。
また、二重譲渡のようにすでに譲渡した債権を、再び別の会社との契約で流用することも、同様に横領罪にあたります。発覚した場合は刑事責任を問われる可能性が高く、社会的信用も失います。
横領罪について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:横領とは?法的な定義や種類、会社側の対策などを解説
私文書偽造罪
私文書とは、公的な立場にない一般の個人や法人が作成した契約書や履歴書、証明書など事実や権利、義務などを証明するすべての書類です。
刑法159条によると私文書偽造罪は、文書の改ざんだけでなく印章や署名の偽造、電磁的記録文書の改ざんなども含まれます。
ファクタリングでは、請求書を水増ししたり、決算書を改ざんして信用を装ったりする行為です。これらは私文書偽造罪に該当し、3ヶ月以上5年以内の懲役を科せられる可能性があります。
たとえ金銭を受け取っていなくても、書類の改ざんをした時点で罪が成立するためリスクが非常に大きいでしょう。
私文書偽造罪について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
関連記事:契約書の偽造や改ざんにあたる行為は?問われる罪や防止策を解説
電子計算機使用詐欺罪
電子計算機使用詐欺罪は刑法246条2項で定められ、コンピュータシステムに虚偽の情報や不正な指令を与えて財産上の利益を得る行為です。
ファクタリングの場合は、オンライン契約の際に架空の売掛債権を入力して申請し、不正に資金を得る行為が典型例です。紙の契約書を改ざんする代わりに、虚偽のデータを入力することで資金をだまし取ります。
近年ファクタリング契約でもオンライン化が進み、この電子計算機使用詐欺罪も増加傾向にあります。10年以下の懲役に処せられる可能性があり、私文書偽造罪同様に、虚偽のデータを入力して送信した時点で成立するためリスクが高いです。
背任罪
背任罪は刑法第247条に規定され、他人の事務を処理する立場で自分や第三者の利益のために本人に財産上の損害を与える行為です。
ファクタリングでは、経理担当者や経営者などが個人的な利益を優先して存在しない架空の債権を作り出し、不正な契約を結ぶケースがあります。
また、売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社へ渡さずに、別の会社の支払いや個人的な用途に流用する行為も同様の問題です。
会社や取引先からの信頼を失う重大な行為で、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
ファクタリング会社側による詐欺行為の見極め方
ファクタリング会社側でも違法行為を行う業者が存在するため注意が必要です。ここでは、違法業者の見極め方を4つ紹介します。
高すぎる手数料を要求する
ファクタリング手数料の相場は、2社間ファクタリングはおおむね10〜20%、3社間ファクタリングはおおむね2〜9%です。これらの相場より大幅に上回る手数料を要求してくる業者は、違法な業者である可能性が高いため注意が必要です。
ファクタリングは貸金業ではないため、利息制限法や出資法は直接適用されません。そのため、手数料に明確な上限はありません。よって、この仕組みを悪用して、30%程度の手数料を提示する業者が存在します。
このような業者は、実際は貸付を目的としながら貸金業の登録を行っていない業者である場合が大半で、貸金業法違反に問われるリスクがあります。
とくに2社間ファクタリングにおいて、不当に高い手数料を提示された場合は、契約を避けた方がよいでしょう。
所在や法人名など会社情報に不明点が多い
正規のファクタリング業者は、運営元の情報が公式ホームページで公開されています。住所や代表者の名前、電話番号、設立年月日、支店の情報など不審な点はないか確認しましょう。代表者名が明記されていない場合は責任の所在を隠しており、悪質業者の可能性が高いです。
記載はされていても、架空会社や虚偽の所在地である可能性もあります。実際に電話をかけたり、Googleマップで所在地をチェックしたり、実在を確かめることも大切です。また、会社の登記情報を法務局で確認するのも有効で、設立履歴も調べられます。
少しでも不審な点がある場合は、安易に契約せず取引を見合わせましょう。
契約書に不利な項目や不明点がある
交付された契約書は、利用者側にとって不利な点や不審な点がないか確認しましょう。2社間ファクタリングでは「売掛債権譲渡契約書」、3社間ファクタリングではさらに「業務委託契約書」が原則として必要です。
契約書に記載されている契約者や契約期間、譲渡額、支払いや契約解除の条件をチェックします。
とくに、売掛先から回収不能となったときに返済義務がない「償還請求権なし」の条件が明記されているかを契約書で確認することが重要です。また、ファクタリング契約書に「金銭消費貸借契約」と文言がある場合は貸付契約として扱われる可能性があり、悪質業者である可能性が高いため注意してください。
過去に金融庁・都道府県の行政処分歴がある
過去に金融庁や都道府県の行政処分歴がある場合は、違法行為や不正な取引を行った業者である可能性が高く信用できません。
行政処分には、貸金業登録せずに貸付を行ったケースや給与ファクタリングを装った違法な貸付などがあり、業務停止命令や業務改善命令などの処分が下されることがあります。
金融庁の場合は、公式サイトの行政処分事例集から、都道府県の場合は各自治体のホームページで処分歴をそれぞれ調べられます。
ファクタリング詐欺に関わるとSNS・掲示板で「晒し」にあうリスクも
ファクタリング詐欺はいずれは発覚するため、取引先や銀行、顧客などから信用を失くし、経営も困難になるでしょう。刑事罰が科された場合は実名報道される可能性もあり、企業や代表者の社会的な信用も失墜します。
とくに手口が悪質だった場合は、SNSの掲示板で顔写真や実名、住所、年齢などが公開されるリスクも高いでしょう。
実際のファクタリング詐欺事件・逮捕事例
ファクタリング利用者側が、架空債権を利用してファクタリング会社をだました詐欺事件が実際に発生しています。
あるイベント会社の代表が、存在しない取引の売掛債権をファクタリング会社へ持ち込み、現金3億4,600万円で買い取らせてだまし取ったのです。
この事件では、売掛先が大企業であるかのように偽装していたためファクタリング会社も信用し、そのまま契約を進めてしまいました。犯人は逮捕され、実刑判決を受けただけでなくテレビや新聞で実名報道され、社会的制裁も受けることになりました。
参考:朝日新聞
ファクタリングで詐欺が疑われるときは弁護士・相談窓口へ
ファクタリングで詐欺の加害者や被害者になってしまったのではと不安なときは、弁護士や専門機関へ相談することが大切です。以下に相談先を紹介します。
弁護士
万が一、ファクタリングに関する詐欺行為に関わってしまったときは、まずは弁護士へ相談しましょう。契約書で契約内容や条件をチェックし、法律に基づいた適切な対応を取ってくれます。
ファクタリング詐欺に加担した恐れがある場合は、賠償責任や損害賠償の対象になる可能性や、刑事罰を受ける可能性もあるため状況を整理しておく必要があります。
一方、詐欺にあった場合は、返金請求や刑事告訴等の手続きのサポートを依頼する必要があるため、早めに相談しましょう。
弁護士以外の無料相談窓口
まずは無料で気軽に相談したいなら、金融庁の相談窓口や消費者センターなど複数の窓口があるため、早めに相談することが大切です。
金融庁の金融サービス利用者相談室では、金融に関する問題についてアドバイスを行ったり、必要であれば他の機関を紹介してくれます。
貸金業相談・紛争センターでは、「ヤミ金への対処法」や「債務相談」にも応じており、ひとりで悩むより専門機関に相談することが解決への第一歩です。
以下、金融や貸金業、多重債務に関する相談窓口です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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