- 更新日 : 2024年8月8日
火災保険は経費にできる?仕訳と勘定科目の解説
万が一の備えとして加入する人が多い火災保険。火災保険は事業に必要な物件の保険料に限り、経費算入が可能です。反対に自宅のような事業と無関係の物件にかけた保険料は経費算入が認められません。今回は火災保険で経費にできるケース・できないケース、仕訳例、経費にする際の注意点を解説します。
火災保険は経費にできる?
火災保険の保険料を経費に入れられるのは、保険をかけた物件が事業用の場合に限ります。業務に必要な費用は、経費算入が可能なため、事業とは関係ない自宅にかけた火災保険は対象にはなりません。自宅兼事務所の場合、家事按分によって事業に使用している箇所に該当する部分のみ経費化できます。
経費にできるケース
火災保険とは火災をはじめ、落雷・風雪・盗難などの理由で保険の目的物である建物や家財がダメージを受けたときに備える保険です。地震・噴火・津波が原因の損害は火災保険ではなく地震保険の保険事故となるため注意しましょう。
事業に関係がある店舗やオフィス、屋内の家財にかけた火災保険に対する保険料を経費にできます。個人事業を経営していて自宅に火災保険をかけている場合、保険料の一定割合を経費にできる可能性があります。
一方、事業には使用していない自宅の火災保険料は経費には含まれません。また、地震保険料も火災保険料と同様の扱いで、事業に関係がある店舗にかけているものは経費として算入可能です。
経費にできないケース
経費にできないのは事業と無関係の自宅にかけられた火災保険です。原則経費にできるのは事業の継続に必要な費用のため、衣食住に含まれる自宅にかかる費用は対象外です。自宅を事務所としても使用している場合、事業用途の部分だけ経費算入しても構いません。
ある費用における事業用とプライベートの割合を算出する処理が家事按分です。家事按分では面積や時間といった基準に基づき「事業3:プライベート7」というように費用の配分を明らかにします。火災保険料では、保険料に按分割合を乗じて算出した金額だけ経費算入が認められます。
自宅兼事務所の場合、一室を事業用スペースに使用している場合が多いと推定されるため、面積が基準になりやすいです。たとえば、同じ面積の部屋が4つあり、そのうちの一室が事業用の場合は「事業1:プライベート3(按分割合25%)」と計算できます。
火災保険の仕訳と勘定科目
火災保険は1年契約か複数年契約かどうかで仕訳内容が異なるのが特徴です。会計年度は1年間で区切ることがルールであるため、複数年契約の場合は、経過した期間の保険料だけ費用計上します。
仕訳例①)1年契約の保険料として120,000円を支払った場合
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 | 120,000円 | 普通預金 | 120,000円 | 火災保険 |
上記は1年契約の火災保険料の仕訳です。勘定科目には損害保険料を使用するのが一般的です。契約期間が1年以内の場合、次の会計年度にまたいだとしても、支出のタイミングで一括経費計上できます。
仕訳例②)事業年度が1月~12月までの事業者が、7月に3年契約で450,000円を支払った場合
【契約時】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 長期前払費用 | 75,000円 375,000円 | 普通預金 | 450,000円 | 火災保険 |
【翌年度の決算時】
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
損害保険料 | 150,000円 | 長期前払費用 | 150,000円 | 火災保険 |
契約期間が複数年におよぶ場合、契約時に加えて決算時にも仕訳が必要になります。上記のケースでは、3年契約で保険料が450,000円になるため、1年当たり150,000円です。
さらに初年度は年度終了時には契約から6ヵ月しか経過していないため、経費に計上できるのは半分の75,000円のみです。残りの金額は前払費用として処理し、翌年度以降の期末時点で損害保険料へ振り替える仕訳が必要です。
火災保険を必要経費を計上する際の注意点
長期契約において契約時に全額の保険料を負担した場合、そのすべてを経費計上できないことに注意してください。経過した期間分だけを当期の費用として計上可能です。
もう一つ把握しておきたいのは個人の所得にかかる取扱いです。個人事業主の場合、確定申告によって自らの所得を計算して当年度分の所得税を納付します。所得税の計算では年金や健康保険の保険料を売上から控除して、節税につなげることが可能です。しかし火災保険料は、これらの保険料と扱いが異なります。
火災保険料は法人会計で経費には計上できますが、個人の所得税における保険料控除の対象ではありません。損害保険料で所得の控除対象となっているのは地震保険だけです。家事按分で経費算入が認められなかったプライベートな費用を、個人の所得から控除する扱いは不可となるため注意しましょう。
火災保険は事業に関係がある保険料なら経費に入れられる
火災保険が経費になるかどうかは事業との関係性次第です。オフィスや自宅兼事務所に対する火災保険の保険料は経費に入れられます。ただし自宅にしか使用していない物件や、自宅兼事務所の事業用以外のスペースにかかる保険料は経費に含められません。
火災保険の契約が複数年におよぶ場合、必要な会計処理が異なるため注意しましょう。複数年契約では契約時点で保険料全額を一括計上する処理は不可です。毎年経過期間分の保険料を算出し、決算で振り替え仕訳を行う必要があります。
よくある質問
火災保険は経費にできる?
事業に関係する店舗やオフィスにかけた火災保険の保険料は経費にできます。詳しくはこちらをご覧ください。
火災保険の仕訳はどうやればいい?
1年以内の契約のものは全額を拠出したタイミングで、複数年にわたるものは長期前払い費用という勘定科目を用いて期間按分の処理が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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