- 更新日 : 2024年8月8日
印鑑を経費にする場合の仕訳に使う勘定科目まとめ
会社で事業を行う場合、印鑑は必須ですが、購入する機会は少ないものです。そのため、経費として計上できることはわかっていても、どのように扱うのか、仕訳にどの勘定科目を使えばよいのか悩む方もいるのではないでしょうか。本記事では、使用する勘定科目や仕訳の方法について解説します。
印鑑の仕訳に使える勘定科目
会社の業務の中で用いる印鑑は経費として処理できます。経費計上できる主な印鑑には以下のものがあります。
印鑑の種類 | 概要 | 使う場面 |
---|---|---|
実印(丸印・代表者印) | 法人設立の登記時に、法務局へ印鑑登録した印鑑。法的効力を持つ | 企業の重要な意思決定の場面 ・高額取引などの重要な契約書 ・不動産や車両の売買 など |
角印(社判・社印) | 印影が四角の印鑑。 | 企業が発行する文書 ・請求書 ・納品書 ・領収書 など |
銀行印 | 金融機関で口座開設をする際に届け出る印鑑。実印より一回り小さいものが多い | 金融機関とのお金に関するやり取り ・預金口座の開設 ・預金の払い出し ・小切手・手形の振出 ・融資の申し込み など |
ゴム印(住所印) | 会社名・住所・代表者名・電話番号などの入った、スタンプ面がゴム製の印鑑。長方形のものが多い | 会社の情報の記入が必要な場合 ・申込書・申請書 ・領収書の発行人欄 ・郵便物などの署名 など |
勘定科目は、消耗品費・事務用品費を用いることが一般的です。このほか、工具器具備品・開業費で仕訳をする特殊なケースもあります。
印鑑を消耗品費で仕訳する
消耗品費は、使えば古くなったり価値が減少したりという、消耗性のあるものにかかる費用です。税法においては定義されていませんが、国税庁のホームページには次の記載があります。
- 帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
- 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
取得価額が10万円未満であるかどうかは、税込経理方式又は税抜経理方式に応じ、その適用している方式により算定した金額によります。
印鑑は、事務業務で日常的に用いる文房具の一つです。長期間使うことが一般的ですが、取得価額は数千円~数万円のものが多いため、消耗品として扱えます。
消耗品費を用いると、以下のように仕訳できます。
【例】会社の実印を5,000円で購入し、現金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 | A文具店で会社の実印を購入した |
印鑑を事務用品費で仕訳する
印鑑の購入費用の仕訳に、消耗品費とともに多く用いられるのが事務用品費です。事務用品費は、消耗品のうち事務業務に用いるものを区別して管理するための勘定科目です。
消耗品費は対象となる範囲が広く、事務業務に用いるもののほかにも日用品や文房具などさまざまなものが含まれる勘定科目です。そのため、消耗品費ですべて処理すると内訳を把握しにくくなります。
事務用品費を用いて仕訳することで、事務業務に用いるものにかかる費用を詳細に管理できます。消耗品費の内訳を把握したい場合や事務業務に用いる費用が多い場合は、事務用品費で仕訳するのがおすすめです。
事務用品費を用いた仕訳例は、以下のようになります。
【例】会社の角印を3,000円で購入し、現金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
事務用品費 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 | B文具店で会社の角印を購入した |
特殊な場合の仕訳方法
通常の場合は消耗品費・事務用品費のいずれかで仕訳することが多いですが、場合によっては工具器具備品・創立費といった別の勘定科目を使うこともあります。両者とも特定の場合に限り使用される勘定科目であるため、日常的に使うものではありません。
印鑑を工具器具備品で仕訳する
取得価額が10万円未満の場合は消耗品として仕訳を行いますが、10万円以上の場合は固定資産となります。その場合は、以下の勘定科目を用いることが一般的です。
- 工具器具備品
- 器具備品
- 備品
固定資産として計上した場合は、減価償却が必要です。耐用年数は国税庁のホームページに記載されています。ただし、印鑑についての明記はないため、税務署や税理士に確認するのがおすすめです。
参考:国税庁 確定申告書等作成コーナーよくある質問 耐用年数(器具・備品)(その1)
印鑑の購入を備品勘定で仕訳した場合は、以下のようになります。
【例】実印・角印・銀行印のセットを15万円で購入し、現金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
備品 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 | C商店で会社の印鑑セットを購入した |
ただし、取得価額が10万円以上20万円未満であれば、一括償却資産として扱えます。法定耐用に応じた減価償却を行わず、使用開始後3年間で取得価額の3分の1ずつ償却できる特例です。
また、青色申告を行う中小企業者は、少額減価償却資産の特例を受けられます。取得価額が10万円以上30万円未満の場合、適用を受ける事業年度において、少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を限度として全額経費計上できる特例です。
参考:経済産業省 一括償却資産とは
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
印鑑を創立費で仕訳する
会社設立のために、設立前にかかった経費を創立費といいます。会社を設立するには、実印となる印鑑をあらかじめ購入し、法務局に届け出る印鑑登録が必要です。この場合にかかった費用は創立費に該当します。
ただし、10万円以上の場合は創立費ではなく、固定資産として扱います。
創立費を用いた仕訳例は、以下のようになります。
【例】会社の設立に先立ち、会社の実印を4,000円で購入し、現金で支払った。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
創立費 | 4,000円 | 現金 | 4,000円 | D商店で実印を購入した |
印鑑は管理しやすい勘定科目で仕訳しよう
印鑑の購入に利用すべき勘定科目は定められていませんが、消耗品費か事務用品費での処理が一般的です。ただし、自由に勘定科目を決められるわけではありません。社内で仕訳のルールを一貫し、費用の現状を管理しやすい勘定科目で仕訳を行うことが大切です。
よくある質問
印鑑は経費にできる?
会社での事業に利用するものであれば、経費に計上できます。ただし、個人の認印は会社での業務以外にも使えるものであり、会社により取り扱いが異なります。 詳しくはこちらをご覧ください。
印鑑を消耗品費で仕訳するポイントは?
消耗品費のうち、印鑑などの事務的な用途に使うものとそれ以外とに分けて管理したい場合は、事務用品費を用いるとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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