- 更新日 : 2026年2月19日
振込作業のミス防止チェックリスト!原因と個人・法人の対策を解説
注意喚起といった精神論ではなく手入力をなくす仕組み化が必須です。
- 手入力をなくし作業時間を確保する
- 全銀データやAPI連携で入力を自動化する
- 作成者と承認者を分ける権限設定を行う
経理業務において、振込作業のミスは防止しなければならない取り組みです。精神論ではなく「仕組み」で解決する必要があります。
振込金額の桁間違いや二重払いといったミスは、資金繰りの悪化や取引先との信頼関係の崩壊につながりかねません。本記事ではヒューマンエラーが起きる原因を分析し、個人でできる対策から組織的なシステム導入、さらには発生時の対応手順までをわかりやすく解説します。
目次
振込作業で発生しやすいミスの種類とは?
振込作業におけるミスは、主に「入力情報の誤り」と「処理プロセスの重複」が原因になる場合が多いです。
どのようなミスが現場で起きているのかを把握することは、適切な対策を講じるために必要です。ここでは、特に頻発しやすいパターンについて解説します。
金額や口座番号の入力数値を誤る
金額の入力ミスは最も発生頻度が高く、かつ経営への影響が大きいエラーの一つです。
手入力による作業では、「0」を1つ多く入力してしまったり、テンキーの隣り合う数字を押し間違えたりするケースがあります。特に月末の繁忙期には、請求書の金額を目視で確認しながらインターネットバンキングへ入力する際に、視線の移動による転記ミスが起こりやすくなります。
学術的な調査においても、キーボード入力における単純なミスの発生率は約0.5%(200文字に1文字程度)存在すると指摘されており、人間が作業する以上、一定の確率で避けられないエラーと言えます。
参照: 社会調査の入力ミスの発生率について|青森大学、奈良大学
振込先や科目を間違えて選択する
取引先名が類似している企業への誤送金や、振込手数料の負担区分(当方負担・先方負担)の選択ミスもよくある事例です。
株式会社や有限会社の表記位置(前株・後株)の違いや、同名の会社が複数登録されている場合に、プルダウン選択で誤った相手を選んでしまうことが原因です。また、買掛金と未払金の科目を間違えて計上・振込を行うと、決算時の残高確認で不整合が生じ、原因究明に多大な時間を要することになります。
東京商工リサーチの調査(2024年度)では、上場企業の不適切会計の原因として「誤り」が全体の約半数を占めており、意図的な不正よりも、経理処理上の単純ミスや科目の計上ミスが大きな課題となっていることがわかります。
参照: 2024年度の「不適切会計」開示は67社・67件 4年連続で増加|東京商工リサーチ
二重払いや支払い漏れが発生する
二重払いは、担当者が代わった際や、修正前の請求書と差し替え後の請求書が混在している状況で発生しがちです。支払い漏れは、請求書の受領が遅れたり、承認フローの中で書類が滞留したりすることで起きます。
これらは会計システム上の消込作業がリアルタイムに行われていない場合や、振込リストのバージョン管理が不十分な場合に起こりやすいミスです。
なぜ振込ミスは起きるのか?主な原因と背景
振込ミスが起きるのは、担当者の不注意だけでなく、業務プロセスや仕組みも原因の一つです。
「気をつける」という意識だけでは防げない要因を理解し、環境そのものを改善する必要があります。
手入力・目視確認への過度な依存がある
振込データをインターネットバンキングへ一件ずつ手入力していることも、ミスの原因です。
人間が手作業で数字を入力する以上、一定の確率で入力ミスは避けられません。また、目視確認も万能ではなく、「正しいはずだ」と思い込んでチェックを行うと、明らかな間違いも見落としてしまう傾向があります。
厚生労働省が提供する職場の安全対策やヒューマンエラーに関する資料では、単純作業の繰り返しによる注意力の低下も指摘されています。
業務の集中と心理的な焦りが影響する
月末や支払い日(五十日など)に業務が集中し、時間的な余裕がない状態で作業を行うとミスが誘発されます。
「15時までに承認を完了させなければならない」というプレッシャーや、電話応対などの割り込み業務による中断が重なると、集中力が途切れ、確認プロセスがおろそかになりがちです。
マニュアルやチェック体制が形骸化している
ダブルチェック(二人一組での確認)が形骸化し、単なる承認印を押すだけの作業になっている現場も少なくありません。
「前の人が確認しているから大丈夫だろう」という心理が働くと、多重チェックの意味がなくなります。また、マニュアルが古く、現在のシステムや運用ルールに即していない場合も、担当者の判断による作業のばらつきを生む原因となります。
個人ですぐできる振込作業のミス防止策
まずは担当者個人の工夫や習慣で、今日から実践できる対策を紹介します。
コストをかけずにリスクを低減できる方法ですが、あくまで補助的な対策として捉え、後述する組織的な対策と組み合わせることが望ましいでしょう。
データの「コピペ」を徹底し手入力をなくす
振込先口座番号や金額は、可能な限りExcelや請求書データからのコピー&ペースト(貼り付け)で行いましょう。
手でキーボードを叩く回数を減らすだけで、打ち間違いのリスクは大幅に下がります。PDFの請求書であっても、数字を選択できる場合はコピー機能を活用し、読み取り専用の場合はOCR(光学文字認識)ツールの活用も検討してみてください。
指差し確認と声出し確認(指差喚呼)を行う
アナログな手法ですが、指を差して声に出して読み上げる確認方法は、脳の認知機能を高めミス発見に役立ちます。
「金額よし」「口座番号よし」「振込指定日よし」と声に出すことで、目だけで追うよりも意識が覚醒しやすくなります。周囲への配慮が必要な場合は、小声や心の中での発声でも一定の効果が見込めます。
作業時間を確保し「割り込み」を遮断する
振込作業を行う時間帯をあらかじめ決め、その時間は電話に出ない・話しかけられない環境を作ることが大切です。
例えば、「毎月25日の午前中は集中タイム」と社内に周知したり、会議室に移動して作業を行なったりする方法があります。マルチタスクを避け、一点集中できる環境を自ら整えることが、精度の高い業務につながります。
組織・システムで実現する振込作業のミス防止
振込ミスを根本からなくすためには、人の注意力に頼らない「仕組み化」を進めることが最も確実です。
会計ソフトや銀行の機能を活用し、自動化できる部分は機械に任せることで、人間は最終確認のみに集中できる体制を構築しましょう。
総合振込(全銀フォーマット)データを活用する
会計ソフトで作成した「全銀フォーマット」の振込データ(CSVファイルなど)を、インターネットバンキングにアップロードする方式を採用しましょう。
これにより、インターネットバンキング上での手入力作業がゼロになります。会計ソフトに入力された仕訳データがそのまま振込データになるため、会計帳簿と振込内容の不一致も防ぐことができます。
| 方式 | 特徴 | ミス発生リスク | 推奨度 |
|---|---|---|---|
| 手入力 | 振込先・金額を1件ずつ入力 | 高(転記ミス多) | × |
| 登録済呼出 | 過去の履歴を呼び出して金額修正 | 中(金額ミスあり) | △ |
| 全銀データ | 会計ソフトから一括出力・取込 | 低(元データに依存) | ◎ |
API連携機能を導入して自動化する
近年多くのクラウド会計ソフトや債務管理システムで利用可能な、銀行API連携機能を導入することも有効です。
API連携を行えば、ファイルのエクスポート・インポート操作さえ不要になり、システム上のボタン一つで振込予約データが銀行側に送信されます。ファイルの取り違えや改ざんリスクもなくなるため、セキュリティ面でも安心できる運用です。
経済産業省や金融庁は、中小企業の生産性向上のためにFinTechや銀行APIの活用を推奨しています。
承認フロー(メーカー・チェッカー制)をシステム化する
振込データの作成者(メーカー)と承認者(チェッカー)をシステム上で明確に分離し、権限設定を行いましょう。
インターネットバンキングの機能には、作成者が振込登録をした後、別のIDを持つ管理者が承認操作を行わないと送金が実行されない設定があります。これを必須化することで、一人だけで完結してしまう不正やミスのリスクを物理的に遮断できます。
【チェックリスト】振込作業の各工程における確認ポイント
実際の業務で使用できるチェックリストを工程別に整理しました。
このリストをプリントアウトして都度チェックを入れる、あるいは業務マニュアルに組み込むなどして活用してください。
振込データ作成前の確認事項
正しい請求書が手元にあり、支払条件が満たされているかを確認するフェーズです。
- 受領した請求書の内容(金額・日付)に誤りはないか
- 支払いサイト(翌月末払い、翌々月払い等)は契約どおりか
- 今回支払うべき対象は「未払金」か「買掛金」か明確か
- 新規取引先の場合、口座登録依頼書(写し)と請求書の口座情報は一致しているか
- 前月からの繰越残高や、相殺項目(返品・値引き)は反映されているか
インターネットバンキング操作中の確認事項
実際の入力またはデータアップロードを行う際の確認ポイントです。
- 振込指定日は正しく設定されているか(銀行休業日の場合の前倒し・後倒しルール確認)
- 振込手数料の負担区分(当方・先方)は正しいか
- 「株式会社」等の略称やカナ表記に誤りはないか
- 総合振込の場合、アップロードした件数と合計金額は、手元の集計表と一致しているか
- 承認者への依頼通知は完了しているか
振込完了後の事後確認
振込予約後、あるいは実行日に行う最終確認です。
もし振込ミスが発生してしまったら?
万が一、誤った振込を行なってしまった場合は、冷静かつ迅速な対応が求められます。
時間が経過するほど資金の回収が難しくなるため、以下の手順を事前に把握しましょう。
直ちに金融機関へ連絡し「組戻し」を依頼する
振込先の口座に入金される前であれば取り消しができる場合もありますが、入金済みの場合は「組戻し(くみもどし)」の手続きが必要です。
組戻しとは、銀行を通じて受取人に連絡を取り、資金の返却を依頼する手続きです。ただし、相手(受取人)の承諾が得られない限り、銀行が勝手に資金を戻すことはできません。
組戻しには手数料がかかります(銀行により異なりますが、おおむね660円〜880円程度)。この手数料は、返金が成功しなくても返還されないケースが一般的です。
誤振込先の相手へ誠心誠意連絡する
銀行からの連絡だけでなく、連絡先がわかる場合は自社からも速やかに相手へ連絡を入れましょう。
「なぜ間違えたのか」「いつ返金してほしいか」を丁寧に説明し、謝罪することが大切です。特に、関係のない第三者に送金してしまった場合は、個人情報保護の観点からも慎重な対応が必要となります。
再発防止策を策定し社内共有する
トラブル対応が完了したら、必ず「なぜ起きたのか」を分析し、レポートとして残しましょう。
個人の不注意で終わらせず、「チェックリストの項目を増やす」「ダブルチェックのタイミングを変える」といった具体的な改善策を組織全体で共有することが、次なるミスを防ぐ資産となります。
振込作業のミス防止はツール活用と環境整備で解決する
人間が作業する以上、振込ミスをゼロにするのは困難ですが、「全銀データの活用」や「承認フローのシステム化」といったデジタルツールを導入することで、リスクを極限まで減らすことは可能です。
日々の業務に追われる中で、新しい仕組みを取り入れるのは手間に感じるかもしれません。しかし、一度の誤送金が招く信用失墜や回収の手間を考えれば、事前の対策コストは決して高くはないはずです。
まずは、現在の振込業務が「手入力」に依存していないかを見直し、会計ソフトからのデータ連携など、小さな自動化から始めてみてはいかがでしょうか。
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