- 作成日 : 2025年9月9日
定額小為替とは?購入方法や書き方・勘定科目と仕訳例について徹底解説
定額小為替は、郵便局(ゆうちょ銀行)で発行されている定額の証書で、少額の送金に用いられます。
しかし、定額小為替とはどういうものか知らない方もいるでしょう。
そこで、本記事では、定額小為替の購入方法や書き方について解説します。
また、定額小為替の会計処理を行う経理担当者向けに仕訳例についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
定額小為替とは?種類や利用シーンを解説
定額小為替は郵便局やゆうちょ銀行で発行される証書で、少額の送金や公的手数料の支払いに使える便利な方法です。
定額小為替は、現在もさまざまな場面で利用されており、とくに住民票や戸籍謄本などの公的書類を郵送で請求する際に手数料を納める方法として広く使われています。
現金を封筒に入れて送るのは危険ですが、定額小為替は普通郵便で送れるため、現金書留よりも安くて手軽に利用できるメリットがあります。
受け取った相手は郵便局で証書を提示するだけで現金を受け取れるので、安全かつ確実に送金できる点が特徴です。
定額小為替の種類
定額小為替には12種類の金額が用意されており、50円から1,000円までの額面が揃っています。
具体的には、以下の12種類が用意されています。
- 50円
- 100円
- 150円
- 200円
- 250円
- 300円
- 350円
- 400円
- 450円
- 500円
- 750円
- 1,000円
必要な金額に応じて1枚を購入するか、複数枚を組み合わせて支払いに充てます。
たとえば1,050円の支払いが必要であれば、1,000円と50円を1枚ずつ購入して送るといった利用方法です。
定額小為替の利用シーン
定額小為替は、行政機関に住民票や戸籍謄本を郵送で請求する際の手数料支払いとして多く使われています。
市区町村役場へ現金を直接送ることはできないため、定額小為替が確実な手段です。
また、弁護士や司法書士などの専門家が依頼人の代理で書類を取り寄せる際にも利用され、相続や不動産の手続きなどで複数の戸籍謄本を取り寄せる場合にも役立ちます。
さらに、固定資産評価証明書など各種証明書を役所から取り寄せる場面でも使用されるため、日常生活や業務において欠かせない送金方法といえます。
定額小為替の購入方法と手数料
定額小為替を購入する際は、郵便局やゆうちょ銀行の窓口で1枚につき200円の手数料が必要です。
定額小為替の購入場所
定額小為替を購入できるのは、ゆうちょ銀行や郵便局の貯金窓口です。
コンビニや銀行では取り扱っていないため、必ず窓口に出向く必要があります。
購入の際には希望する金額の小為替を窓口で指定し、必要な現金と手数料を支払うと発行される仕組みです。
1枚ごとに200円の手数料がかかるため、複数枚購入するとその分の費用もかさみます。
利用者は手数料を考慮した、多めの合計金額を準備して窓口へ行きましょう。
定額小為替を購入する際に必要なもの
定額小為替を購入する際には、窓口で「定額小為替振出請求書」に必要事項を記入し、支払いに必要なお金を準備することが必要です。
取扱金額が10万円を超える場合は犯罪収益移転防止法に基づき本人確認が求められるため、本人確認書類を持参しましょう。
本人確認書類として利用できるものは以下のとおりです。
- 運転免許証
- マイナンバーカード(個人番号カード)
- パスポート(旅券)
- 健康保険証
- 在留カードまたは特別永住者証明書
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- 各種福祉手帳(身体障害者手帳、療育手帳など)
本人確認ができないと購入ができないため、大きな金額を扱う場合には必ず事前に準備しておきましょう。
定額小為替の郵送での書き方と送り方
戸籍や住民票を郵送で請求する場合は、必要書類と定額小為替を封筒に同封して役所へ送付する流れになります。
ここでは、定額小為替の正しい書き方や郵送時の送り方について、手続きに不備が出ないように注意点もあわせて解説します。
受取人欄は記入しない
定額小為替の表面にある「指定受取人欄」は基本的に記入せず、そのまま送付するのが正しい扱い方です。
自治体や大学などによっては、誤って記入された小為替を受け取らない場合があります。
記入が必要かどうか不安な場合は、事前に送り先の市区町村や機関へ確認してから対応しましょう。
定額小為替証書と定額小為替払渡票は切り取らずに送る
定額小為替は、証書部分と払渡票が一体になっていますが、送付する際に切り離してはいけません。
切り離した状態では市区町村の役所や大学などの請求先機関が受け取れず、再度購入を求められることもあります。
したがって、購入した時のままの形で封筒に入れて送付することが正しい手順です。
加えて、現金のようにお釣りが出ないため、請求手数料の金額に過不足がないよう、必要な金額分をきちんとそろえて購入して送りましょう。
定額小為替の勘定科目
定額小為替は、郵便局やゆうちょ銀行で現金に換えられ、支払手段として第三者に譲渡できるため、会計上では現金と同じ扱いが基本となります。
ここでは定額小為替の勘定科目について、以下について詳しく解説します。
- 会計上の取り扱い
- 購入時の処理
- 使用時の処理
それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
会計上の取り扱いは資産の「現金」
定額小為替は、会計上では「通貨代用証券」という位置づけになります。
通貨代用証券は、現金と同じように価値を持ち、金融機関でそのまま換金できることを指します。
小切手や郵便為替と同じ分類に入り、企業会計や経理処理では資産として「現金」勘定で計上します。
つまり、帳簿上は現金を支払って別の形に変えただけであり、資産の内容を変えただけ考えるのが適切です。
購入時の勘定科目
定額小為替を購入した場合、額面金額部分は「現金」で処理します。
たとえば1,000円分の定額小為替を買った場合、帳簿上では「現金」を1,000円減らし、その代わりに「現金(定額小為替)」を1,000円分得た形で仕訳されます。
発行手数料は額面とは別の性質を持つため、費用として「支払手数料」勘定で処理されるのです。
使用時の勘定科目
定額小為替を実際に使うときは、目的に応じた勘定科目で処理しましょう。
たとえば、行政機関に証明書の手数料として支払った場合は「租税公課」や「支払手数料」として計上します。
取引先に代金を支払うために使用した場合には「仕入」や「買掛金」といった形で処理します。
使用時には「現金」を減らし、支払い目的に応じた費用や負債の勘定科目を同時に記入しましょう。
定額小為替の仕訳例【購入時】
定額小為替は通貨代用証券であるため、会計上は「現金」勘定で扱います。
一方で発行手数料は郵便局へのサービス対価とされるため、「支払手数料」勘定で費用処理するのが正しい方法です。
仕訳例(定額小為替を1,000円分購入し、手数料200円を支払った場合)
(借方)現金 1,000 / (貸方)現金 1,200 (借方)支払手数料 200 |
借方の「現金 1,000円」は小為替の額面部分を資産として計上し、借方の「支払手数料 200円」は郵便局へ支払った発行手数料を費用として処理します。
貸方の「現金 1,200円」は窓口で実際に支払った金額であり、この仕訳により資産部分と費用部分を正しく区分することができます。
再発行手数料を現金で支払った場合
再発行手数料を現金で支払った場合について解説します。
たとえば、誤って有効期限が切れた定額小為替を再発行してもらう際に、200円の再発行手数料を現金で払った場合を考えましょう。
このとき仕訳では、費用として「支払手数料」を200円計上し、現金の200円を減らす形になります。
再発行後も小為替の額面は引き続き「現金」として扱われるため、新たに仕訳を切る必要はありません。
処理すべきは支払った再発行手数料200円のみであり、仕訳は「支払手数料200/現金200」となります。
再発行の場合は資産部分の増減はなく、処理すべきは支払った再発行手数料のみです。
この仕訳により、費用部分だけを正しく計上できます。
複数の定額小為替を購入した場合
複数の定額小為替を購入した場合について解説します。
たとえば、役所への手数料として2,500円分を送る必要があり、1,000円券を2枚と500円券を1枚購入した場合を考えましょう。
このとき額面合計の2,500円は「現金」で資産として計上します。
同時に3枚分の発行手数料600円(200円×3枚)は「支払手数料」として費用処理するので、仕訳は次のようになります。
(借方)現金 2,500 / (貸方)現金 3,100 (借方)支払手数料 600 |
借方の「現金 2,500円」は額面部分を資産として計上し、「支払手数料 600円」は発行手数料として費用処理します。
そして貸方の「現金 3,100円」は実際に窓口で支払った金額です。
上記のように仕訳を切ることで、資産と費用を明確に分けて処理できます。
複数枚購入する場面は日常的に多いため、この仕訳方法を理解しておくことが大切です。
定額小為替の仕訳例【使用時】
定額小為替を使うときは、会計上「現金」と同じ扱いになります。
購入時に支払った発行手数料はすでに「支払手数料」として処理済みのため、使用時の仕訳には含まれません。
行政機関に支払う場合
行政機関に支払う場合について解説します。
たとえば役所で戸籍謄本を請求する際に、手数料として1,500円分の定額小為替を送った場合で考えましょう。
このときの仕訳は、次のようになります。
(借方)租税公課1,500/(貸方)現金(定額小為替)1,500 |
費用科目として「租税公課」(または「支払手数料」)を計上し、同額を「現金(定額小為替)」から減らすことで、帳簿上も現金で直接支払った場合と同じ処理になります。
行政手続きに伴う支払いでは上記のように整理することで、費用の内容を正しく反映させることが可能です。
取引先に支払う場合
取引先に支払う場合について解説します。
たとえば仕入代金の一部3,000円を定額小為替で支払ったとします。
この場合、取引先に対する債務を減らす仕訳を行い、同時に「現金(定額小為替)」を支払い分だけ減らします。
仕訳は次のとおりです。
(借方)買掛金3,000/(貸方)現金(定額小為替)3,000 |
取引先への支払いに使うときは、通常の現金支払いと同じ仕組みで処理するため、特別な勘定科目を使う必要はありません。
上記の考え方を知っていれば、実務で迷わずに済みます。
複数の定額小為替で支払う場合
複数の定額小為替で支払う場合について解説します。
たとえば役所に提出する申請で4,500円の手数料を支払うため、1,000円券を4枚と500円券を1枚購入して送ったとしましょう。
このときの仕訳は、支払った合計額4,500円を「租税公課」や「支払手数料」として計上し、同じ額だけ「現金(定額小為替)」を減らします。
複数の券をまとめて支払ったとしても、帳簿上は合計額で処理することになります。
上記の仕組みを理解しておくと、複数の小為替を組み合わせる場面でも混乱せずに処理可能です。
年度末に未使用の定額小為替があった場合
年度末に未使用の定額小為替があった場合について解説します。
たとえば、年度末の時点で2,000円分の定額小為替がまだ使われていなかったとします。
この場合も帳簿上では「現金」と同じ資産に当たるため、繰り越して次の年度に持ち越します。
未使用だからといって費用として処理する必要はなく、単に形を変えた現金が残っているだけと考えましょう。
もし次年度に実際に使えば、そのときに支払った内容に応じて勘定科目を割り当てる形になります。
正しく扱うことで、資産の過不足を防ぐことが可能です。
定額小為替の仕訳例【受け取り時】
定額小為替を受け取った場合、その証書は現金と同じ価値を持つため、帳簿上も「現金」として扱います。
たとえば、取引先から2,000円の支払いを定額小為替で受け取った場合には、「現金2,000円/売掛金2,000円」と仕訳します。
これは実際に紙幣で受け取るのと同じ考え方です。
もし行政機関から返還金を定額小為替で受け取った場合でも同様で、「現金」で計上し、相手科目を「雑収入」などの適切な科目に振り分けます。
つまり、受け取りの場面では現金受領と同じ仕訳を行うのが原則です。
上記の仕組みを理解することで、会計処理の正確性を保ち、資産の把握を誤ることがなくなります。
定額小為替に関するよくある質問
定額小為替を実際に利用するとき、多くの人が気になるのは有効期限、紛失時の対応、そして現金化の方法です。
以下でそれぞれ解説していきます。
有効期限はあるか
定額小為替には有効期限が設定されており、発行日から6か月間となっています。
もし6か月を過ぎると証書は使えなくなり、そのままでは支払いに使うことも換金することもできません。
有効期限が切れた場合は、発行元である郵便局やゆうちょ銀行で再発行を申請する必要があります。
その際には、古い証書を持参し、必要に応じて手数料を支払うことになります。
期限を把握しておくことで、利用できないトラブルを避けられます。。
紛失した場合に再発行はできるか
定額小為替を紛失してしまった場合でも、請求によって再発行を受けられる仕組みがあります。
ただし注意点として、紛失した証書がまだ有効期限内である場合は、その期間中に再発行の手続きはできません。
これは二重発行を防ぐための仕組みです。
有効期限を過ぎていれば再交付が可能になるため、その際に本人確認書類や所定の手続きを行う必要があります。
したがって、紛失が発生したら期限を確認しましょう。
現金化する方法はあるか
定額小為替は支払いだけでなく、受け取った側が現金として引き換えることも可能です。
現金化する場合は、郵便局やゆうちょ銀行の貯金窓口に証書を持参すれば、額面通りの金額を現金で受け取れます。
このときに特別な申請は不要で、本人確認書類が必要になるケースも限られています。
受け取った定額小為替をそのまま利用せず、すぐに現金として使いたい場合にはこの方法が便利です。
窓口の営業時間内に手続きを行いましょう。
まとめ
定額小為替は、住民票や戸籍謄本の請求など日常的な場面で利用される、安全かつ便利な送金手段です。
郵便局やゆうちょ銀行で購入でき、現金を直接送るよりも安心して手数料を納められるのが特徴です。
また、会計処理では現金と同様に扱われ、仕訳の方法を理解しておくことで正しく処理できます。
有効期限や紛失時の対応、現金化の仕組みを把握しておけば、トラブルを防ぎつつ安心して活用できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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