- 作成日 : 2024年8月19日
売上割引とはどんな勘定科目?仕訳例や売上値引との違い
売上割引とは、商品販売やサービス提供において期日よりも前に取引先から入金があった場合に、代金の一部を免除することです。
売上割引を行った場合、仕訳はどのように行えばよいのでしょうか。また、売上値引は課税取引となるのか、そして混同しがちな「売上割引」と「仕入割引」「売上値引」の違いについても解説します。
売上割引とは
売上割引とは、商品販売やサービス提供の後、決められた期日よりも前に取引先から入金される場合に行われる債権の一部免除のことです。
売上割引があることで支払い遅延を防止でき、債権を回収しやすくなります。特に、代金を後日回収する「掛取引」の場合、損失を出さないためには債権回収が非常に重要です。また、掛取引では期日までの利息が債権金額に含まれているため、売上割引をしても販売側に損失はありません。
「仕入割引」との違い
売上割引と混同しやすい用語に「仕入割引」があります。それぞれの特徴を押さえておきましょう。
売上割引:債権(売掛金)が支払期日前に入金される場合に行う割引
仕入割引:商品やサービスを掛けで購入した際、期日前に代金の支払った場合に受ける買掛金の一部割引
売上割引は売った時に行う割引、仕入割引は買ったときに受ける割引と覚えておきましょう。
売上割引の仕訳例
売上割引を行った場合の仕訳例を紹介します。
1. 1万円の商品を掛けで販売した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
2. 入金期日よりも早めに代金の入金があったため、1割(1,000円)の割引を行った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上割引 | 1,000 | 売掛金 | 10,000 |
現金 | 9,000 |
売掛で販売した時に一度に仕訳を行い、入金時点で再度仕訳を行います。割引金額については「売上割引」という勘定科目を使ってください。また、売上割引は「費用」なので、借方に記入します。
売上割引は課税取引になる?
会計学上では、売上割引は期日より早く入金されたことで、利息分から割引が行われているとみなします。しかし、実際には売り手側は利息を受け取っていません。売上割引は「利子を対価とする金銭の貸付け等」ではないため、不課税取引には該当しないのです。
消費税法では、売上割引は「売上にかかる対価の返還等」に該当するとされています。
これらの理由により、売上割引を計上する際は課税取引として扱うべきです。
売上割引と売上値引の違い
売上割引と売上値引の違いについても確認しておきましょう。
売上値引とは
売上値引とは、販売した商品や提供したサービスに不備があった場合、売上を計上した後に値引きをすることです。売上割引が「早めの入金があった際に行われるもの」であるのに対し、売上値引は「販売したものに不備があった際に行われる値引き」であることを理解しておきましょう。
また、値引きには「出精値引(しゅっせいねびき)」というものもあります。こちらは、不備とは関係なく行われる値引きです。長期間取引を行う企業に対し、人件費等を削り、企業努力として行う値引きなどが該当します。仕訳の際は、売上値引との違いを理解した上で使いましょう。
売上値引の仕訳例
売上値引を行った際の仕訳例を紹介します。
1. 1万円の商品を掛けで販売した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
2. 販売した商品に不備があったため、1,000円の値引きをした。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上値引 | 1,000 | 売掛金 | 1,000 |
売上値引を使って仕訳をすることで、売掛金から値引き分が引かれる流れがはっきりわかります。
「売上値引」の勘定科目を使わない仕訳方法もありますので、参考までに紹介します。
①1万円の商品を掛けで販売した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
②販売した商品に不備があったため、1,000円の値引きをした。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売上高 | 1,000 | 売掛金 | 1,000 |
こちらは「売上高を減らす」という方法で仕訳を行います。なお、消費税法上では「売上値引」の勘定科目を使って仕訳を行うのが原則です。
売上割引の意味を理解して仕訳を行おう
売上割引とは、売掛で販売した商品・サービスの代金が期日よりも早く入金された場合に行う値引きのことです。掛けで購入し、早めに支払った場合に受ける「仕入割引」、販売した商品に不備があった際に値引きを行う「売上値引」とは異なりますので、理解して使い分けましょう。
売上割引は「割引分は利息分から差し引かれる」という考え方ですが、実際に割引分から差し引いているわけではなく、消費税法では「売上にかかる対価の返還等」に該当するとされています。よって、課税取引として計上する決まりなので、間違えないようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
災害損失とは?特別勘定や会計処理について解説
被災された事業者は災害損失だけでなく、復旧費用も負担しなければいけません。 そのような事態のため税金面で特別の優遇制度があります。 この記事では、優遇制度を受けるために必要な事項である災害損失の基本的な内容から、災害損失特別勘定に加えて引当…
詳しくみる初穂料の勘定科目は?玉串料や祈禱料との違いも解説
法人が神社仏閣等に初穂料を支払った場合、寄附金あるいは雑費の勘定科目で経費計上できます。しかし、個人事業主は経費に計上できないとする判例があり、個人事業主が初穂料を支払った場合は事業主貸で仕訳しなければなりません。 本記事では初穂料の勘定科…
詳しくみる特許権の会計処理と償却方法を仕訳まで解説
特許権の耐用年数は8年間で、その間に償却することになります。特許権を購入したときなどには、適切に会計処理を行わなくてはいけません。具体的にどのように会計処理を行うのかについて、仕訳例を用いて解説します。 特許権とは 特許権とは、特許を受けた…
詳しくみる仲介手数料の仕訳と勘定科目まとめ
不動産を購入するときや借りるときには、不動産会社に仲介手数料を支払います。不動産の購入や賃貸が事業に関わるときは、仲介手数料を経費として計上することが可能です。どの勘定科目で仕訳をするのか、具体的な例を挙げて解説します。 仲介手数料とは 仲…
詳しくみる委託買付と受託買付を仕訳から解説
「委託買付」は、手数料を支払って他者に商品の購入を委託することを指します。一方の「受託買付」は、商品の購入を委託された受託者側からみた場合の買付業務のことを指します。立場が異なるため、仕訳に使用する勘定科目は当然違うものになります。ここでは…
詳しくみる貸倒引当金とは?仕訳処理や計算方法をわかりやすく解説
貸倒引当金とは、貸し出したお金が回収できなくなるリスクに備えて、企業が利益からあらかじめ設定する積立金のことです。この引当金は、潜在的な損失を見込んで計上され、実際の損失発生時に利用されます。この記事では、貸倒引当金の概要や仕訳の処理につい…
詳しくみる