- 作成日 : 2024年8月19日
車両費を経費にする場合の仕訳に使う勘定科目まとめ
事業用の車両に関する費用を適切に処理するには、どのような仕訳のパターンを理解しておけばよいのでしょうか。この記事では、車両費を経費にする場合の勘定科目やパターン別の仕訳例を解説します。
目次
車両費に該当する費用
ここで説明する車両費とは、車に関連する費用としての車両費のことです。車両費には下記の費用が含まれます。
車両費に該当する費用の一覧 |
---|
など |
車両関連の費用ですが、車の購入代金は車両費には含まれません。取得時に固定資産として計上した後、減価償却費として耐用年数にわたって費用を計上していきます。
車両費を経費計上するための条件
車両費を経費計上するには、取引先への訪問や営業回りなど、事業で使用することが条件です。法人の場合は、事業で使用する車を法人名義にしてから経費に計上します。
個人事業主の場合は、所有する自動車を業務にもプライベートにも使用するケースが考えられます。特殊車両など、完全に事業でしか使用しない車は全額を経費にできます。しかし、プライベートでも使用する車は家事按分が必要です。合理的な基準を設けて、事業にかかった費用とプライベートで消費した費用に区分し、事業にかかった費用のみを車両費として経費に計上します。
車両費の仕訳に使える勘定科目
車両費の仕訳で使える勘定科目には、以下のようなものがあります。
それぞれどのようなケースで使えるのか、勘定科目を説明して仕訳例を紹介します。
車両費を車両費で仕訳する
車両費は車に関わる費用のうち、車の管理や維持に関する勘定科目です。車の修繕費や車検費用の他、ガソリン代や洗車代なども車両費にできます。また、車にかかる費用が少額の場合は、その他の車関連の費用もまとめて車両費として仕訳をすることもあります。
(仕訳例)
ガソリン代5千円を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
車両費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
(摘要) ガソリン代 〇〇石油 社用車01 |
車両費を租税公課で仕訳する
租税公課とは、国や地方自治体に納める税金や公共団体などに納める税金以外の会費などのことです。車両費のうち、税金関連を租税公課として仕訳をします。例えば、自動車税種別割・軽自動車税種別割や自動車重量税などが該当します。
(仕訳例)
会社で事業用として使用しているトラック(最大積載量3トン)の自動車税種別割12,000円を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | 12,000円 | 現金 | 12,000円 |
(摘要)自動車税種別割 3トントラック |
車両費を損害保険料で仕訳する
自賠責保険料を支払ったときや任意の自動車保険料を支払ったときは、損害保険料の勘定科目を使って仕訳をします。
自賠責保険は車検と同じタイミングで支払うため、最長37ヵ月分を一度に負担します。ただし、強制加入の保険であることから、支払った際に全額を経費にすることができます。任意保険については、契約期間が2年以上のときは期間を按分し、翌期以降の保険料分は「長期前払費用」などとして仕訳をします。
(仕訳例)
任意の自動車保険1年分(契約期間1年)につき8万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
損害保険料 | 80,000円 | 普通預金 | 80,000円 |
(摘要)任意自動車保険料 ○○損保 |
車両費を地代家賃で仕訳する
事業のために月極駐車場を契約しており、駐車場代を支払っているときは、地代家賃の勘定科目を使って仕訳をします。地代家賃は土地や建物の賃借に関する勘定科目であるため、コインパーキングを利用したときは旅費交通費などの勘定科目を使います。
(仕訳例)
社用車の保管場所として契約している月極駐車場の今月の駐車場代として、5万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
地代家賃 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
(摘要)月極駐車場代 ○○駐車場/〇年□月分 |
車両費を減価償却費で仕訳する
自動車の購入費は数十万~数百万円に及ぶことが多いため、基本的には購入時に全額を経費にはできません。
自動車の購入費は「車両運搬具」として固定資産に計上した後、購入した自動車の耐用年数に応じて期間配分により費用に計上します。自動車購入費の費用計上のために用いる勘定科目が「減価償却費」です。
減価償却費の仕訳には、直接法と間接法があります。直接法は、固定資産の取得価額から直接減額する方法です。自動車を購入した場合、相手科目は「車両運搬具」になります。間接法は、「減価償却累計額」の勘定科目を使って間接的に減価償却をする方法です。
(仕訳例)
決算日となったため、当期首に取得した自動車500万円の減価償却を行った。自動車は前期に新車で購入した普通自動車(耐用年数6年)で、当社は定額法(耐用年数6年の償却率は0.167)を選択しており、間接法で仕訳をしている。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 835,000円 | 減価償却累計額 | 835,000円 |
(摘要)社用車01 減価償却 |
※計算:5,000,000×0.167×12/12=835,000円
車両費を支払利息で仕訳する
カーローン(自動車ローン)を利用して自動車を取得したときは、返済に加えて利息の支払いが発生します。事業のために取得した自動車の場合、カーローンの利息については経費計上が可能です。この場合、カーローンの元本は「長期未払金」、利息は「支払利息」で仕訳をします。
(仕訳例)
社用車の毎月のカーローンの返済について、当月分として、元本10万円と利息2,000円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期未払金 | 100,000円 | 普通預金 | 102,000円 |
支払利息 | 2,000円 | ||
(摘要)社用車02 カーローン返済〇月分 |
車両費をリース料で仕訳する
カーリースを利用した場合、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引では勘定科目や仕訳が異なります。
ファイナンス・リース取引は、実質的に固定資産を取得したときと同等の効果があるリース取引です。ファイナンス・リース取引に該当する場合は、先に紹介した減価償却により経費に計上します。
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引以外のリース取引です。残価設定のあるカーリースの多くは、オペレーティング・リースに該当します。オペレーティング・リースは賃貸借取引として、定期的に支払うリース料全額を経費に計上します。
(仕訳例)
オペレーティング・リース取引で契約している社用車の当月のリース料5万円を普通預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
リース料 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
(摘要)カーリース 社用車03 ○○リース会社 |
車両費は内容に応じて勘定科目を使い分けよう
事業用の車両にかかわる費用は、支出の内容によって適切な勘定科目が異なります。車両費に関しては複数のパターンがあるため、状況に応じて使い分けられるようにしておきましょう。
また、個人事業主の場合には、車両費について経費にする場合には原則として家事按分をしなければなりません。その場合、合理的な基準に基づいて事業用とプライベート用の使用割合を算出する必要があり、按分の根拠となる運転の記録を残すなど按分の根拠を明らかにしておくことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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