- 作成日 : 2025年9月9日
ファクタリング会社から取り立てされる可能性は?具体的なケースや対処法も紹介
ファクタリングは取り立てを規制する貸金業法が適用されないため、契約金額を期日までに支払わないと取り立てされる場合があります。
ただ、ファクタリングの利用を考えている人の中には「具体的にどのような取り立てをされる?」「厳しい取り立てに遭う可能性はある?」などと気になる人もいるでしょう。
そこで本記事では、ファクタリング会社の一般的な取り立て方法について詳しく解説します。また、悪徳業者から過度な取り立てをされたときの相談先もまとめています。
目次
ファクタリングで取り立てされる?
ファクタリング会社に契約通りのお金を支払わなければ、取り立てされる可能性があります。
ファクタリングは貸金ではないため、取り立てに関して規制している貸金業法が適用されません。つまり、基本的にファクタリング会社は、自由に取り立ての手段を決められます。
ただし民法の200条1項や414条1項には、法的な手続きを経ずに実力で当初の権利を回復させることを規制する「自力救済禁止の原則」があります。たとえば、ファクタリング会社の担当者が会社に押しかけてきて、無理やり金品を奪うような取り立て行為は違法です。
よって、一般的なファクタリング会社は嫌がらせのような取り立ては行いません。
ファクタリング会社に取り立てされる3つのケース
ファクタリング会社の取り立て対象となるケースを3つ紹介します。
回収した売掛金を使い込んだ場合
ファクタリングの契約形態のうち2社間ファクタリングを選択した場合、取引先から回収した売掛金をファクタリング会社に送金しなければなりません。
もし、回収したお金をファクタリング会社に送金せずに、会社の運転資金として使い込んでしまうと取り立ての対象となります。売掛金の支払い期日を過ぎても振り込みがない場合、確認の連絡が来たり支払いを催促されたりするでしょう。
売掛金の所有権はファクタリング会社に移転する契約が多いため、回収した売掛金はファクタリング会社に送金する義務があります。これを怠ると契約違反となり、悪質な場合は刑事責任が問われる可能性もあります。
売掛金を回収したら直ちにファクタリング会社へ送金しましょう。スケジュールの関係ですぐに送金するのが難しいのであれば、誤って使用しないように別の口座に移すといった対策を取りましょう。
売掛先がお金を支払わない場合
倒産や破産などが原因で取引先からお金が支払われない場合も、ファクタリング会社に取り立てされる可能性があります。
ただ、ファクタリング会社と償還請求権のない「ノンリコース契約」を締結すれば、取引先がお金を支払わなかったとしても基本的には、取り立てされることはありません。ノンリコース契約のもとでは、ファクタリング会社に売掛金の支払いを請求する権利がないためです。
一方、償還請求権のある「ウィズリコース契約」を締結すると、売掛金を回収できなくなった場合はファクタリングを申し込んだ企業がお金を負担しなければなりません。売掛金の支払い期日を過ぎた時点で、貸し倒れの事実確認や売掛金の負担に関する連絡が来るでしょう。
貸し倒れとなった場合に売掛金を負担するのが懸念であるなら、契約を締結するタイミングでノンリコース契約かウィズリコース契約か確認しましょう。
不良債権や架空債権を譲渡した場合
不良債権とは売掛金を回収できる見込みのない債権、架空債権とは存在しない取引をでっち上げて請求する債権のことです。
もし、不良債権や架空債権などをファクタリング会社に譲渡すると、その事実が発覚した時点で取り立ての対象となる可能性が高いです。
具体的には、詳しく事実確認をされたり買い戻しを求められたりするでしょう。場合によっては、損害賠償を請求されることも考えられます。
そもそもファクタリング会社に売却できるのは、支払い日や支払い額が決定している確定債権のみです。すぐにでも資金を調達したいからといって、不良債権や架空債権を確定債権と偽って売却するのはやめてください。
ファクタリング会社の取り立て方法
ファクタリング会社の一般的な取り立て方法について紹介します。
お金を回収すべき会社の確認
基本的にファクタリング会社は、最初から取り立てをすることはほとんどありません。まず、申し込み会社と売掛先のどちらからお金を回収すべきなのか状況を確認します。
たとえば、2社間ファクタリングの場合は、売掛先が振り込んでいないのか、申し込み会社が回収済みのお金を支払っていないのかなどが確認されます。
もし、売掛先の振り込みが遅れているのであれば、取り立ての対象は売掛先です。反対に、申し込み会社が回収した売掛金を放置している状態なのであれば、申し込み会社が取り立て対象となります。
上記のように、お金を回収すべき会社やなぜ売掛金が支払われていないのかなど、状況をしっかり把握してから次のアクションに移るファクタリング会社がほとんどです。
電話や郵便物での催促
取り立ての対象が判明したら、電話・メール・郵便物などで支払いを催促します。
売掛金を放置しているために電話や郵便物などで支払いを催促された場合は、すぐにファクタリング会社へ振り込みましょう。支払い期日を過ぎてしまったとしても、早めに対応すれば延滞金も発生せず穏便に取引を完了させられる可能性があります。
なお、電話や郵便物による催促は、あくまで支払い期日のリマインドや支払い状況の確認を目的としていることが大半です。そのため、一般的なファクタリング会社であれば、すぐにでも売掛金を回収しようと、嫌がらせのような取り立てをすることはありません。
法的措置への移行
もし、ファクタリング会社からの電話や督促状を無視し続けると、法的措置を取られる可能性があります。
具体的には「支払督促申立書」がファクタリング会社から送付され、最終的に預金や不動産などの財産を差し押さえる強制執行が取られる場合もあるでしょう。
もしくは、損害賠償を請求されたり横領罪に問われたりすることもあるため、督促状が届いたら直ちに売掛金を支払う必要があります。
売掛金を支払うのが難しい場合は、ファクタリング会社に相談すれば柔軟に対応してもらえることもあります。売掛金の支払いが困難であると分かった時点で、すぐファクタリング会社に相談しましょう。
悪徳業者の取り立て方法
一般的なファクタリング会社とは違い、悪徳業者は法律を無視した嫌がらせや脅迫に近い取り立てを行うことがあります。
- 早朝や深夜に電話をかけてくる
- 会社に訪問して何時間も居座る
- 会社の入り口に張り紙を残す
- 家族や親族の自宅へ押しかけてくる
たとえば、早朝や深夜を問わず1日に何十回も電話をかけてくる可能性があります。貸金業法の21条では、21時~翌朝8時の時間帯に電話することは基本的に禁止されていますが、ファクタリング会社には適用されません。そのため、悪徳業者の場合は、一般常識を無視した時間帯に連絡をしてくる場合があります。
また、会社に訪問してきて売掛金を回収するまで居座ったり、会社の入り口に売掛金の支払いを迫るような張り紙を残したりするケースもあります。業務を邪魔されるだけでなく、会社の評判にまで影響が及ぶこともあるでしょう。
ほかにも、契約者本人だけでなく家族や親族の自宅へ押しかけてくる場合もあります。取引とは全く関係のない人にまで嫌がらせをして、精神的に追い詰めようとしてくるケースも少なくありません。
悪徳業者に取り立てされた場合の相談先
悪徳業者に厳しい取り立てをされたり、嫌がらせを受けたりしたときの相談先を紹介します。
- 警察
- 弁護士
- 消費者生活センター
- 金融庁
過度な迷惑行為や身の危険を感じるような脅迫があった場合は、警察相談専用の「#9110」に電話をかけましょう。録音や張り紙など具体的な証拠があれば、よりスムーズに対応してもらえます。
法的に解決したいのであれば弁護士に頼るのもおすすめです。ヤミ金問題や金融トラブルに強い弁護士に依頼すれば、代理人として交渉してくれたり法的手続きを行ってくれたりします。
もしくは、消費者生活センターという消費生活全般の相談を受け付けている公的機関に連絡するという方法もあります。専用の電話番号である「188」に電話すれば、トラブル解決の助言をもらえるほか、悪徳業者に取り立てを止めるようかけあってくれることもあるでしょう。
また、金融庁の「金融サービス利用者相談室」に相談することも可能です。金融サービスに関する相談や質問に対応してもらえるため、厳しい取り立ての対処法や具体的な解決策を教えてくれる場合があります。
ファクタリング会社に売掛金を支払えない場合の対処法
ファクタリング会社に売掛金を支払うのが厳しい場合は、支払えないと分かった時点で正直に申告しましょう。早めに連絡をすれば、支払い期日を先延ばしにしてもらえたり分割払いに応じてもらえたりする可能性があります。
資金繰りを見直して売掛金をなんとか捻出するのも一つの手です。たとえば、取引先への支払いを遅らせてもらったり、別会社からの売掛金を早めに振り込んでもらったりなどの方法があります。
もしくは、つなぎ資金として別の金融機関からお金を借りるという方法も検討できるでしょう。ただ、融資を受けるには審査に通過する必要があり、審査自体にも時間がかかります。また、自転車操業にならないように、必要最低限のお金だけ借りるようにしましょう。
ファクタリングの取り立てに関するよくある質問
最後に、ファクタリングの取り立てに関するよくある質問をいくつか紹介します。
悪徳会社の見分け方は?
悪徳業者かどうかを見極めるには、以下のポイントを確認してみてください。
- 会社の所在地や固定電話の番号が掲載されていない
- 契約書がない
- 「審査が甘い」「取り立てなし」などの謳い文句を使用している
- 見積もりを出してくれない
- 手数料が異様に高い、手数料の内訳を明示していない
上記のような特徴が一つでも当てはまるような会社とは、契約するのを避けた方が良いでしょう。厳しい取り立てにあったり、不利な内容で取引をしてしまったりする可能性があります。
ファクタリング会社について不安に思うところがあれば、過去の実績や利用者の口コミを確認してみると良いでしょう。
安全なファクタリング会社の特徴とは?
安全なファクタリング会社に共通する具体的な特徴は以下の通りです。
- 会社の所在地、代表者、固定電話の番号などの情報を開示している
- 見積もりの内容が明瞭で分かりやすい
- 質問や相談に丁寧に対応してくれる
- 契約書の内容を細かく説明してくれる
上記のような会社は善良な会社である可能性が高いです。取引が完了するまで手厚くサポートしてもらえるほか、売掛金の支払いが厳しくなったとしても柔軟に対応してもらえる場合があります。
3社間ファクタリングで売掛先がお金を支払わなかったら会社に連絡は来る?
3社間ファクタリングを選択した場合、売掛先が直接ファクタリング会社に支払うため会社へ督促の連絡が来ることは基本的にありません。ただし、売掛先の支払い遅延が長引く場合は、ファクタリング会社からその旨の連絡が入るケースはあるでしょう。
3社間ファクタリングでは、売掛先が直接ファクタリング会社に代金を支払うため、ファクタリングを申し込んだ側の会社は契約金額が振り込まれた時点で取引が終了します。
よって、支払い期日が過ぎても売掛金が支払われなかった場合、ファクタリング会社は売掛先に状況確認や催促の連絡をします。
2社間ファクタリングで売掛先が支払ってくれない場合はどうすれば良い?
2社間ファクタリングを契約した場合において、支払い期日を過ぎているのに売掛金を振り込んでもらえないときは、メールや電話で取引先に催促してみましょう。
あわせて、ファクタリング会社に取引先の支払いが遅れていることも伝えることを推奨します。無断で滞納すると、信頼度が下がってしまい今後ファクタリングの取引を行えない可能性があります。ファクタリング会社の担当者に、支払いが遅れていることや遅れている原因を簡単にでも共有しましょう。
なおノンリコース契約を締結している場合、取引先が倒産や破産をして売掛金を回収できなくなったら、ファクタリングを申し込んだ会社が売掛金を負担しなければなりません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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