- 更新日 : 2024年8月8日
弁護士費用の仕訳に使える勘定科目まとめ
弁護士への相談料や顧問料弁護士費用は、「支払手数料」などの勘定科目で仕訳をすることができます。ただし弁護士が個人として働いている場合は源泉徴収する必要が生じるため、仕訳の方法も変わることに注意しましょう。
この記事では弁護士個人に依頼するときや法人に依頼するとき、また着手金や預け金などの仕訳についても詳しく解説します。ぜひご覧になり、正しい弁護士費用の仕訳にお役立てください。
目次
弁護士費用を仕訳する場合の勘定科目
事業を運営していくうえで、弁護士に業務を依頼することがあります。例えば、確定申告書の作成や、取引先や顧客から賠償責任を問われたときなどに弁護士に依頼することがあるでしょう。弁護士に支払った費用は、経費として算入できます。主な勘定科目としては「支払報酬料」「支払手数料」「業務委託料」「支払顧問料」などが挙げられます。
どの勘定科目でも問題はありませんが、定期的に依頼するときは同じ勘定科目を使うと、帳簿がすっきりと見やすくなります。また弁護士以外にも税理士や会計士などの専門家に依頼することがある場合には、補助科目に「弁護士契約」や「税理士報酬」のように但し書きを記入しておくと後で見返しやすくなるでしょう。
支払報酬料
弁護士などによる専門的な業務に報酬を支払うときは「支払報酬料」の勘定科目を用いることができます。ただし専門業務以外の業務を依頼し費用が発生したときでも、まとめて「支払報酬料」と仕訳することが可能です。
例えば弁護士しかできない業務に加えて資料集めなどの雑務も依頼した場合は、それぞれの費用を細かく分けて仕訳することができますが、まとめて「支払報酬料」の勘定科目で仕訳することもできます。支払った費用が8万8,000円のときの仕訳は以下のとおりです。
明細についての記録を残しておきたい場合は、備考欄などに「報酬50,000円、雑務10,000×3日」のように残すこともできます。後で見返してわかりやすい帳簿を意識して記入しましょう。
支払手数料
取引や契約に基づいて手数料を支払うときは、すべて「支払手数料」の勘定科目で仕訳をすることもできます。ただし弁護士費用以外にも「支払手数料」として仕訳をする経費が多いときは、何の支払手数料なのかわからなくなることがあるので注意しましょう。
補助科目に「弁護士報酬」などのように但し書きを記載しておくと、後で見返しやすくなります。また「支払手数料」として仕訳をする明細が多いときは、別の勘定科目を使ってわかりやすい帳簿を作成しましょう。
業務委託費
弁護士に業務を委託したという意味で「業務委託費」の勘定科目で仕訳もできます。ただし、弁護士以外にも個人や法人に外注することはすべて「業務委託費」として仕訳をすることが可能なため、外注サービスを頻繁に利用している場合はどれがどの業務委託になるのか分かりにくくなる点に注意しましょう。
補助科目に「弁護士委託」のように但し書きを記載しておくと、後で見返しやすくなります。また外注サービスの利用が多い場合は、弁護士費用は「業務委託費」以外の勘定科目で仕訳をするほうがよいかもしれません。
支払顧問料
弁護士と顧問契約をしている場合は、「支払顧問料」として弁護士費用を仕訳すると後で見返しやすくなります。また、年間にかかった弁護士費用がいくらかわかりやすくなるので、経費を見直すときにも役立つでしょう。
なお、ベースとなる顧問料だけでなく、そのときに追加でかかった費用もまとめて「支払顧問料」として仕訳ができます。その場合は顧問料がいくらか、他の費用がいくらかわかりにくくなるので、備考欄などに「顧問料50,000円、訴訟書類作成費30,000円」と記載しておきましょう。
個人事務所の弁護士に報酬を支払う場合のポイント
依頼する弁護士が個人として事務所を構えている場合には、源泉徴収をする必要があります。源泉徴収をしてから支払うことで、弁護士が納税や申告を忘れることを回避できるでしょう。なお、源泉徴収する金額は以下のとおりです。
- 100万円以下:支払金額×10.21%
- 100万円超:(報酬-100万円)×20.42%+102,100円
弁護士報酬を個人事務所の弁護士に10万円支払う場合は、以下のように仕訳ができます。
一方、100万円を超えると計算方法が変わります。弁護士報酬を個人事務所の弁護士に120万円支払う場合(銀行振込。手数料なし)は以下のように仕訳をしましょう。
法人の弁護士事務所に報酬を支払う場合のポイント
法人に所属する弁護士に報酬を支払うときは、源泉徴収をする必要はありません。貸方に「預り金」の勘定科目で細目を記す必要もないので、支払った費用を「支払報酬料」や「支払手数料」などの勘定科目で仕訳をしましょう。
着手金の仕訳
弁護士に業務を依頼するときに、まだ仕事が完了していない状態で着手金を支払うことがあります。着手金も「支払手数料」の勘定科目で仕訳が可能です。
個人事務所の弁護士であれば源泉徴収をして、法人であれば源泉徴収せずに支払いましょう。個人事務所の弁護士に業務を依頼し、着手金として10万円を現金で支払う場合は、以下のように仕訳ができます。
一方、法人事務所に所属する弁護士に業務を依頼し、着手金として10万円を現金で支払う場合は、以下のように仕訳ができます。
預け金の仕訳
何かの報酬や費用として支払うのではなく、後で返還されることがわかっているお金は「預け金」です。業務を始める前に想定される費用や費用の一部を弁護士に渡し、業務が終わってから精算するスタイルのときは、「預け金」を支払うことになります。
例えば、預け金を100万円振り込む場合(手数料なし)は、まだ報酬として確定したわけではないため源泉徴収を差し引かずに以下のように仕訳ができるでしょう。
なお預け金は、業務の後で精算されます。そのため、業務後の報酬については預け金を除いた形で仕訳をして、帳簿に記録しておきましょう。
弁護士費用とわかるように補足しよう
弁護士費用の勘定科目としては、支払手数料や支払報酬料、業務委託費、支払顧問料を使用することができます。またいずれも弁護士としての専門業務だけでなく、資料集めなどの付随する作業に対する報酬も、まとめて仕訳をすることが可能です。
ただし、いずれの勘定科目も弁護士費用に特化したものではないため、弁護士以外にも委託する業務があるときや外注サービスを多用しているときなどには、同じ勘定科目で仕訳される明細が増えてしまいます。後で帳簿を見返したときに弁護士費用に支払ったことがわかるように、補助科目や備考欄に補足しておきましょう。
また、個人事務所の弁護士に報酬を支払うときは、金額に応じて源泉徴収をすることが必要です。100万円以下と100万円超で計算方法が異なるので、正しく計算して貸方に「預り金」として仕訳をしておきましょう。
着手金を支払うときは支払手数料、預け金は預け金として仕訳をしますが、預け金は原則として返還される金額なので源泉徴収をしないで帳簿に記します。正しく仕訳をして、見やすい帳簿を作成しましょう。
よくある質問
弁護士費用の勘定科目は?
弁護士費用の勘定科目としては、支払手数料や支払報酬料、業務委託費、支払顧問料が適しているが、他の業務委託や士業への依頼があるときは補助科目にコメントをつけるようにします。詳しくはこちらをご覧ください。
着手金の仕訳はどうする?
着手金は支払手数料として仕訳をすることができるが、他の支払手数料と混乱しないためにも、補助科目に弁護士費用や着手金と記載しておきます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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