• 更新日 : 2024年9月25日

個人事業主がクレジットカードで経費計上するメリットや方法を詳しく紹介

個人事業主の方はクレジットカードで経費処理をしましょう。毎月の明細を確認すれば、経費を一目で把握できます。また会計ソフトと連携して明細データを取り込み、仕訳処理を自動化することも可能です。経費処理の悩みはクレジットカードで解決しましょう。

個人事業主やフリーランスの方が抱える悩みの一つが、毎月の経費処理です。領収書やレシートを整理し、勘定科目の仕訳をする作業だけでも、時間や手間がかかります。

会計業務で悩んでいる方におすすめなのが、クレジットカードを用いた経費処理です。経費の支払いを事業用のクレジットカードに一本化すれば、領収書やレシートを一枚ずつチェックし、手作業で帳簿に記入する必要はありません。クレジットカードと会計ソフトを連携し、毎月の経費処理を自動化することも可能です。

本記事では、個人事業主の方がクレジットカードで経費処理をするメリットや、確定申告の際の勘定科目・仕訳例、経費計上するときの注意点を解説します。

個人事業主がクレジットカードで経費処理をするメリット

個人事業主やフリーランスの方が、クレジットカードで経費処理をするメリットは6つあります。

  • 経費を簡単に把握できる
  • ポイントによる特典を得られる
  • 資金繰りを改善できる
  • ビジネスに役立つサービスを利用できる
  • 仕訳作業を効率化できる
  • クレジットカードの年会費を経費にできる

以下で、詳しく解説します。

経費を簡単に把握できる

クレジットカードで経費を計上すれば、毎月送られてくる明細書やインターネット上での確認を通じて、経費をどの程度使ったのかを簡単に把握できます。近年はインターネット上で確認できるWeb明細も普及しているため、時間や場所を問わず利用状況を確認することが可能です。

事業用のクレジットカードを作成し経費の支払いを一本化すれば、明細書をチェックし、プライベートの支払いと振り分ける手間もかかりません。

その結果、会計業務にかける時間を大幅に短縮できるでしょう。

ポイントによる特典を得られる

クレジットカードなら、経費を支払いながらポイントを貯めることも可能です。経費の中にはオフィスの賃料をはじめとした高額の支払いもあります。クレジットカードで経費計上すれば、毎月安定的かつ効率的にポイントを貯められるでしょう。

カードによっては、獲得したポイントを店舗での支払いに活用できたり、カードの支払いに充当できたりします。その結果、経費の削減につながり、事業の資金繰り改善に貢献してくれるでしょう。

資金繰りを改善できる

クレジットカードの利用金額は、締め日の翌月または翌々月にまとめて口座から引き落とされる仕組みになっています。クレジットカードで経費計上すると、支払いを1~2カ月程度先延ばしにでき、その間に資金を調達できます。

また手元に現金がなくても、クレジットカードで仕入れや発注を行うことが可能です。資金繰りを改善するだけでなく、急な支払いにも対応できる点はクレジットカードの強みです。

ビジネスに役立つサービスを利用できる

事業用のクレジットカード(法人カード)には、以下のようにビジネス向けのさまざまな付帯サービスが用意されています。

  • 海外・国内旅行傷害保険
  • 国内・海外の空港ラウンジサービス
  • ホテルやレストラン、スポーツジムなどの割引
  • レンタルオフィスや会議室の利用
  • 無料の税務相談・法律相談
  • ETCカードの発行
  • 会計ソフトや経費精算システムの優待など

付帯サービスの中には、事業を進める上で役に立つものが多くあります。サービス内容も考慮してクレジットカードを選べば、自分のビジネスを助けてくれるでしょう。

仕訳作業を効率化できる

会計ソフトには、クレジットカードと連携して明細データを自動で取り込む機能があります。取り込んだ明細データを利用して仕訳処理を効率化すれば、手入力・手作業の手間を減らすことが可能です。

会計ソフトと連携する場合は、事業用のクレジットカードを用意すると便利です。事業用のカードを会計ソフトと連携させれば、個人用カードの明細データと混在する事態を防げます。

クレジットカードの年会費を経費にできる

事業用のクレジットカードがあれば、年会費を経費として計上し、所得金額を圧縮できます。例えば、クレジットカードの年会費が1万円発生した場合、経費計上すれば事業収入から1万円を控除することが可能です。

つまり、この場合は「1万円×税率」分だけ税額を軽減できます。

クレジットカードで処理した経費を確定申告する方法!勘定科目・仕訳例を紹介

確定申告をする場合、簿記(帳簿)の記帳方法によって、所得金額から控除される金額が異なります(※)。

確定申告の方法控除額簿記の記帳方法
青色申告55万円控除(条件を満たすと65万円控除)複式簿記
10万円控除単式簿記
白色申告なし

ここでは、クレジットカードで経費を計上する場合を想定し、複式簿記・単式簿記の記帳方法をそれぞれ紹介します。

※ 国税庁「No.2072 青色申告特別控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm

青色申告(65万円控除)により確定申告するケース

複式簿記によって青色申告を行う場合は、所得金額から55万円(条件を満たすと65万円)の控除を受けられます。クレジットカードで経費計上する場合も、複式簿記のルールに従って仕訳をしましょう。

例えば、7月8日に1万円の経費(消耗品費)を計上し、翌月の8月26日に事業用の銀行口座から引き落としが行われたとします。複式簿記は発生主義という考え方に基づいているため、経費を計上したタイミングだけでなく、銀行口座から引き落としが行われたタイミングも記帳しなければなりません。

クレジットカードで支払うときは、以下のように未払金の勘定科目、引き落としが行われたときは普通預金(口座による)の勘定科目を使用するのが一般的です。

取引日借方金額貸方金額
7月8日消耗品費1万円未払金1万円
8月26日未払金1万円普通預金1万円

「実際に購入したタイミング」「実際に支払ったタイミング」で、それぞれ記帳する必要がある点を押さえておきましょう。

白色申告・青色申告(10万円控除)により確定申告するケース

単式簿記によって青色申告を行う場合は、所得金額から10万円の控除を受けられます。白色申告の場合も単式簿記で記帳しましょう。

単式簿記は複式簿記よりもシンプルで簡略化された記帳方法です。単式簿記の場合、クレジットカードで支払いを行ったタイミングのみ記帳すればよく、勘定科目には事業主借を使用します。

例えば、7月8日に1万円の経費(消耗品費)を計上し、翌月の8月26日に個人の銀行口座から引き落としが行われたとすると以下のとおり仕訳します。

取引日借方金額貸方金額
7月8日消耗品費1万円事業主借1万円

個人事業主がクレジットカードで経費計上するときの注意点

個人事業主の方がクレジットカードで経費計上する場合は、以下の3つのポイントに注意しましょう。

  • 領収書の代わりに取引明細を保存しておく
  • ポイントの仕訳に注意する
  • 取引明細の保管期間を確認する

以下で、それぞれ詳しく解説します。

領収書の代わりに取引明細を保存しておく

クレジットカードで経費を支払う場合、紙のレシートや領収書がもらえないことがあります。代わりに取引の記録として、カードの明細書(取引明細や利用明細、Web明細など)が発行されます。明細書に店名、日付、商品・サービス名、購入金額などが記載されていれば領収書と同じ証憑書類として扱うことが可能です。

なお、Web明細を利用する場合は、必ず電子データのまま保存しましょう。電子帳簿保存法の改正により、電子データで受け取った証憑書類は電子データとして保存する必要があります。会計ソフトと明細データを連携すれば、電子帳簿保存法への対応も簡単です。

ポイントの仕訳に注意する

クレジットカードのポイントを経費の支払いに充てた場合は、値引きや雑収入の勘定科目で仕訳しましょう。支払い額からポイント相当額を差し引いた場合は値引き、ポイントのキャッシュバックを利用した場合は雑収入として仕訳するのが一般的です。

例えば、1万円の備品を購入するときに500円分のポイントを使用して支払いをしたとき、以下のような仕訳になります。

借方金額貸方金額
普通預金9,500円備品1万円
値引き500円

ポイント還元のサービスがあるカードを利用する際には、注意しましょう。

取引明細の保管期間を確認する

確定申告方法によって、取引明細の保管期間が変わります。青色申告の場合、領収書や利用明細などの帳簿書類は現金預金取引等関係書類と呼ばれ、7年間の保管が必要です。白色申告の場合は5年間保管しましょう(※)。

なお、領収書やレシート、取引明細が感熱紙に印字されている場合は、インクが消えないように直射日光を避けて保管してください。

※ 国税庁:記帳や帳簿等保存・青色申告

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

個人事業主の方はクレジットカードで経費を計上しよう

個人事業主の方は、クレジットカードで経費を計上しましょう。経費の支払いを事業用のクレジットカードに一本化すると、経理業務の効率化につながるだけでなく、ポイント還元やビジネスに役立つ付帯サービスを利用できるなど、さまざまなメリットを得られます。

クレジットカードで経費計上する際は、紙のレシートや領収書がもらえないことがあります。しかし、領収書の代わりにカード会社が発行する明細書(取引明細や利用明細)を保管すれば問題ありません。またクレジットカードのポイントを支払いに利用する場合は、仕訳処理がやや複雑になる点に注意しましょう。


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